盛夏のアート見聞録(2)

というわけで続きである。第一弾はこちらからどうぞ。
https://note.com/bookskkwt/n/nbc040ab0a673


ネタバレがしばらく続くので、その点十分ご留意されたい。


続いて向かったのは
「もつれるものたち」というまた別の企画展である。

本展覧会には、木、化石、道具や工芸品など、私たちの日々の暮らしとは切り離せない「もの」がさまざまなかたちで登場します。12人/組のアーティストたちは、ある場所や時代と結びついたものを多角的に見つめ、それらが物質や生き物として、あるいは意味や価値、記憶を運ぶものとして紡いだ変化や移動の軌跡を描き出します。彼らの仕事は、人類学、考古学、歴史編纂を思い起こさせますが、何かを掘り出し明らかにしようとするのではなく、ある存在をいかに解釈するのかという問いを私たちに投げかけます。
―美術館公式サイトより(一部抜粋)

まず私の興味を引いたのは、ビオ・アバドの作品「ジェーン・ライアンとウィリアム・サンダースのコレクション」(2014-2019)であった。
フィリピンのマルコス大統領とその妻イメルダが権力を使って手に入れ、後に政府に差し押さえられた絵画の数々をポストカードに印刷し、来場者はそれを持ち帰れるというもの。

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私も何枚か頂戴してきた。ちなみに裏面には、マルコス氏の悪事を伝える記事が掲載されている。

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見る者に還元して初めて完成する作品、という訳である。ちなみに作品名は夫妻のスイス銀行の隠し口座用の偽名とのこと。なかなかウィットに富んでいるではないか。面白い。

続いて目に飛び込んできたのは磯辺行久「不確かな風向」(1998)。
大きなパッチワークのような作品で、目前にすると実際に風を感じられるようだった。部屋に空いている壁があるので、これの小さいのがあれば飾りたいと思ったほどである。

隣では、なにか不思議な映像が流れていた。この手の展示は時間もかかるし、実はこの手前でも映像作品をひとつスルーしてきたのだが、古代中国の王が、大きな銅鐸(だったはず)を作るために改鋳をして経済を混乱させた、という話題に興味を惹かれ、そもそも特に急がなくてはいけない理由もないので見てみることにした。このリウ・チュアン「ビットコイン採掘と少数民族のフィールド・レコーディング」は先述の古代の話題から、タイトルにもあるビットコインマイニングまで、「音」に主軸を置いた世界の歴史探訪の映像作品である。堂々の3面投影で、素晴らしい作品だった。音は傾国の宝であり、良くも悪くも人を狂わせるのだなあ、とぼんやり考えた。