英語学習の羅針盤『語学マニアが教える!コスパ最強の英語学習法』

英語学習に正解はない。しかし、効率的に学ぶための指針は存在する。吉野周氏の『語学マニアが教える!コスパ最強の英語学習法』は、著者自身の半世紀にわたる語学学習の経験と知見の結晶だ。本書は、英語習得を目指すすべての人に、実践的で具体的なアドバイスを惜しみなく提供してくれる。

目的と目標設定の重要性

本書の魅力は、まず「目的と目標設定」の重要性を説いている点にある。

人間、何をするにも成功するには目的と目標が不可欠です。

漠然と「英語を勉強したい」と考えるだけでは、学習効果は望めない。仕事での英語使用を目指すのか、趣味の幅を広げるためなのか。まずは学習の方向性を決めることが肝要だと著者は説く。

そして、その目的に沿った具体的な目標設定の必要性も忘れてはならない。単なる「上達したい」では曖昧すぎる。「旅行で不便しないレベル」なのか「ニュースの内容がわかるレベル」なのか。目標レベルを設定すれば、必要な学習時間の算出も可能になるのだ。

学習時間はどれくらい必要?

では、一体どれくらいの学習時間が必要なのか。著者はアメリカ国務省の語学研修のデータを引き合いに出し、驚くべき数字を提示する。

アメリカ人が、日本語で新聞が読め、交渉ごとの絡まない難易度の仕事の話ができ、テレビのニュースがだいたいわかる英語力(中級の一番高いレベル)に達するのには、2200時間となっています。

日本人が英語で同レベルに達するには、2500時間が必要だと著者は試算する。しかし、ここで挫折してはならない。

ここに自分の目的と目標を組み合わせて、優先順位をつけ、様々なツールで効率を上げましょう。

まずは自分の目的と目標に照らし合わせ、優先順位をつけることが大切なのだ。そして、効率を上げるためのツールを活用することで、学習時間を大幅に短縮できると著者は述べている。

英語学校と独学、二つの選択肢

英語学習の手段として、英語学校に通うか、独学で学ぶか。本書は両者のメリットとデメリットを丁寧に解説してくれる。

英語学校の最大の利点は、受動的に学べる点にある。カリキュラムに沿って学習を進められるため、自分で学習内容を選択する必要がない。一方で、移動時間がかかることや、高額な費用がネックとなる。

対して独学の利点は、時間と場所を選ばずに学習できる点だ。通学の必要がないため、隙間時間を有効活用できる。しかし、自発的に学習を進めるためのモチベーション維持が難しいのも事実である。

学校でも自習でも能動受動どちらの部分もある程度は含まれているので、レベルによって学校と自習を組み合わせるのが私のおすすめです。

著者は、学校と独学のバランスを取ることが最良の方法だと説く。初級レベルなら学校中心の学習を、中級以上なら独学中心の学習を推奨している。

教材選びのポイント

独学で学ぶ際に重要なのが、教材選びだ。本書は、良い参考書の条件を細かく解説してくれる。

私が考えるいい参考書の基準は、以下の通りです。

  1. 文法の整理の仕方が体系的

  2. 文法の整理の順序が自然

  3. 練習問題の形式が選択式ではない

  4. 練習問題に自由英作文がある

  5. ページ数が多すぎない

  6. 音声がついている

  7. カタカナ発音でない

  8. 索引がある

これらの基準を満たす参考書を選ぶことで、効果的な学習が可能になるという。

特に、日本人に馴染み深い「英文法書」の選び方は参考になった。

日本語で書かれた参考書でこの基準に合格するものは、残念ながらありません。

著者のお気に入りは、なんと英語で書かれた『English Grammar in Use』シリーズだという。日本の英文法書に頼るよりも、英語の文法書を直接読む方が効果的だと説得力を持って語る姿が印象的だった。

著者自身が実践し効果を上げてきた学習テクニックとツールの数々が紹介されている。中でも印象的だったのは、「English Immersion作戦」と「Anki」という単語学習アプリの活用法だ。

English Immersion作戦

「English Immersion作戦」とは、日常生活のあらゆる場面で英語に触れる環境を意図的に作り出すことを指す。

①lmmersion作戦その1 「パソコンの言語設定を英語に切り替える」

②mmersion作戦その2「スマホの言語を英語に切り替える」

③mmersion作戦その3 「英語で書かれた参考書を使う」

このように、PCやスマホの言語設定を英語に変更したり、英語の参考書を使ったりすることで、自然と英語に囲まれる環境を作ることができるのだ。

著者は、こうした日常的な英語との接点が、英語学習に大きな効果をもたらすと力説する。

慣れてしまった状態が貴重です。

英語環境に「慣れる」ことが、語学習得の第一歩なのだと著者は述べている。

Ankiによる効率的な単語学習

また、本書では「Anki」という単語学習アプリの活用法が詳しく解説されている。

Ankiは、 PCとスマホの両方で使えるソフトウエアアプリで、単語を「問い」と「答え」の組み合わせにして答えていく仕組みです。この形式は、単語カードと同じなので英語ではflashcardsと呼ばれます。「電子単語帳」ですね。

従来の紙の単語帳とは異なり、デジタル化されたAnkiには様々な利点がある。

保存する単語の量に制限がありませんし、嵩張ることもありません。どこでも復習できますね。

また、答えの文字を音声に変換できるので、使うたびに正しい発音を確認できます。

大量の単語を保存でき、場所を選ばず復習できる上、音声による発音チェックも可能だ。さらに、Ankiには学習者の記憶度合いに合わせて単語を出題してくれる機能も備わっている。

覚えていない単語ほど頻繁に、だいたい覚えた単語はたまに登場し、完全に覚えた単語は、滅多に出てきません。非常に効率がいいですね。

こうしたAnkiの機能を活用することで、単語学習の効率が飛躍的に向上するのだ。

著者は、自身の語学学習において、Ankiが非常に重要な役割を果たしたと述べている。

私が複雑なドイツ語をマスターできた秘密をご理解いただけましたか。 Ankiがあるので、歳をとっても安心して語学マニアの道を探究し続けるつもりです。

Ankiは、著者の語学習得の原動力となったようだ。

4技能のバランスを取った学習法

英語の4技能と言えば、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4つだ。本書では、これら4技能をバランス良く伸ばすための学習法が詳しく解説されている。

「読む」力の鍛え方

「読む」力を鍛えるには、多読が効果的だと著者は言う。

日本語と英語の大きな違いは、語順です。英語を日本語に訳そうとすると、日本語として意味をなす語順に入れ替えなければならなくなります。

日本語と英語の語順の違いを意識しながら、英文を読む練習を重ねることが大切だ。そして、徐々に長い文章に挑戦していくことで、英文読解力が身につくのだと著者は述べている。

「書く」力の鍛え方

「書く」力を鍛えるには、ライティングの練習が欠かせない。著者は、日記を書くことを推奨している。

日記には、自分にとって興味のあることや、習ったばかりの言い回しを使いますから、記憶が定着しやすいというメリットもあります。ライティングはスピーキングのベースです。

日常的な話題について英語で日記を書く習慣をつけることで、ライティング力とスピーキング力の両方を伸ばすことができるのだ。

「聞く」力の鍛え方

「聞く」力を鍛えるには、英語の音声に数多く触れることが重要だ。著者は、リスニング教材を活用することを勧めている。

リスニングで重要なことは、2つ。1つ目は、英語の音を理解して捉えられるスキルを磨くこと。そのためには、34ページで紹介した発音の参考書で、発音自体を理解して覚え、自分でも発音できるようにしてください。

2つ目は、英語の音を聴き取る技術を高める参考書で勉強することです。ここで目指すのは、理解できなくても音は把握できるというレベルです。

発音の理解と聴き取る技術の向上。この2つを意識的に練習することで、リスニング力が格段に上がるというわけだ。

「話す」力の鍛え方

最後に、「話す」力の鍛え方だ。著者は、スピーキング力向上のためのポイントを次のように述べている。

会話の中では、自分が少し時間をもらって話せるチャンスが巡ってくることがあります。この時に話すネタを用意練習しておいて、実行するのです。

日常会話でよく使われるフレーズを予め用意しておき、実際の会話の中で使ってみる。こうした地道な練習の積み重ねが、スピーキング力アップにつながるのだ。

以上、4技能をバランス良く伸ばすための学習テクニックを紹介した。著者は、これら4技能のどれか一つに偏るのではなく、バランスを取って学習することが語学上達の近道だと説いている。

レベルアップに効果的なツール

英語学習者のためのツールは、今やネット上に溢れている。本書では、数あるツールの中から、レベルアップに効果的な厳選ツールが紹介されている。

電子辞書とアプリの活用法

まず、電子辞書とアプリの活用法だ。著者は、いつでも持ち歩ける電子辞書の利点を強調する。

せっかく携帯性が高いのだから、いつでも持ち歩きましょう。

私はよく「あっ、これって英語でなんていうんだろう」と自問自答することがあります。

こんな時、手元に辞書があれば、その場で調べ、すぐ覚えることができます。

日常のふとした疑問を即座に解決できるのが、電子辞書の大きな魅力だ。また、電子辞書にはない検索機能を備えた辞書アプリも併用することを著者は推奨している。

効率的な暗記のコツ

英語学習において、暗記は避けて通れない道だ。しかし、その暗記の効率を上げる方法を知らない人が多いのも事実だ。本書の終盤では、著者自身が実践してきた「記憶の加速装置」とも言うべき暗記のコツが詳しく解説されている。

コツ1: 英語のルールを理解する

暗記に関して一番重要な原則が「理解」です。

著者は、暗記の大前提として「理解」の重要性を説く。例えば、英単語を暗記する際、その単語のルーツや成り立ちを理解することで、記憶の定着度が格段に上がるのだという。

具体的には、以下のようなルールの理解が役立つと著者は述べている。

  • 英語の発音ルール

  • 品詞を変換し意味を付け加える接頭辞・接尾辞

  • 同じ語幹を持つ単語のファミリー

こうした英語のルールを理解することが、単語暗記の効率アップにつながるのだ。

コツ2: 一度に覚えることは1つだけにする

我々の脳は、一度に1つのことだけ覚えることを一番得意としています。

著者は、一度に複数のことを覚えようとすることは逆効果だと警告する。脳が情報の整理に混乱をきたし、記憶の定着度が下がってしまうのだ。

したがって、複数の意味を持つ単語は、意味ごとに区切って覚えることが重要だと著者は説く。

間違っても、「rightの3つの意味を挙げよ」という課題を復習してはいけません。

一見このほうが一度で済んで合理的に見えますが、このように答えを列挙させる問いで記憶しようとするのは、最悪の方法です。

一見非効率に思える方法こそ、実は記憶力アップの近道なのだ。

コツ3: 冗長性を活用する

記憶力を高めるには、「冗長性」の活用が有効だと著者は言う。

日本語→英語、英語→日本語で覚えておくことで忘れない

英語を日本語に、日本語を英語に、両方向から翻訳して覚える。一見回り道に思えるこの方法こそ、実は記憶を強化する秘訣なのだという。

記憶は、時間がたったり、他の記憶が邪魔して曖昧になったりすることがあります。

こんなときもう1つの記憶は、いわば道路工事中の「迂回路」のように別ルートとして働き、思い出させてくれます。

時間の経過とともに記憶が薄れても、別ルートから記憶を呼び覚ますことができる。これが冗長性活用の利点だ。

著者は、こうした「冗長性」の重要性を脳科学の研究結果を引き合いに出しながら説明してくれる。

コツ4: 記憶の干渉を防ぐ

似た言葉や表現を覚える際には、「記憶の干渉」が起こりやすい。これを防ぐのが暗記の4つ目のコツだ。

著者は、以下のような具体的な方法を提示している。

  • 反意語から覚える(relevantとreverentの例)

  • 単語を組み合わせて覚える(historicalとhistoricの例)

  • どちらかを確実に覚えておく(flowerとflourの例)

  • 語源を調べる(combineとconfineの例)

こうした工夫により、記憶の混同を避け、スムーズに暗記できるようになるのだ。

コツ5: 連想を活用する

暗記の5つ目のコツは、「連想」の活用だ。

個人的な経験を連想させる単語を積極的に使いましょう。

例えば、小学校時代の友人の特徴的な帽子を思い浮かべながら、"Koji's bizarre cap"と覚える。こうした個人的な思い出とひも付けることで、記憶の定着度が増すのだという。

また、著者は自身の海外ヒッチハイク経験を交えながら、連想記憶の重要性を説いている。

旧中待って数キロしか進めなかったことや、身の危険もありましたが、自分たちもヒッチハイクで知り合ったご夫婦、怪しげな商売をする日本人など、普段知り合えない人たちと出会いました。今でも時々鮮烈に思い出します。

鮮烈な体験や強い感情は、記憶を助ける強力な武器になるのだ。

コツ6: 記憶術を活用する

著者のおすすめする6つ目のコツは、「記憶術」の活用だ。中でも、日本発の記憶術「語呂合わせ」の有効性を力説している。

私は、西洋発の記憶術より有効だと考えています。

例えば私は、「否定する」to denyを「~でない」から否定するだと覚えました。

あるいは、Mondayは「月曜は学校に行きたくない。問題だ」と覚えました。

一見ちゃらんぽらんに見えるこうした語呂合わせこそ、実は記憶力アップの強い味方なのだと著者は述べている。

邪道だと言う人がいるかもしれません。しかし、覚えるが勝ち。

一度覚えてしまえば、最初に語呂合わせを使ったことはどうでも良くなります。覚えにくい言葉を覚えやすくし、ハードルを下げる「きっかけ」にすぎないと考えて、私は割り切っています。

記憶術に頼ることを頭ごなしに否定するのではなく、覚える「きっかけ」として積極的に活用する。これが著者の持論だ。

コツ7: 重要でない単語を見極める

7つ目のコツは、覚える単語の取捨選択だ。

学習すべき単語や表現は数限りなくあります。

中には自分の中で「どうでもいい」と思えるものも出てきます。

著者は、初級者は頻出単語を優先し、中級者以上は自分の関心事に沿った単語を選ぶことを勧めている。

そして、一時的に出会っただけの重要性の低い単語は、思い切って捨てることも必要だと説く。

覚える本人がそう思っていれば、覚えられるわけがありません。

思い切って削除しましょう。

限られた時間と記憶容量を有効活用するためには、取捨選択が欠かせないのだ。

コツ8: 復習は「ペンキ塗り」と心得る

最後に、著者は復習の重要性を「ペンキ塗り」に例えて説明している。

塗装は、下塗りから始まり、何度も塗り重ねることで完成します。

記憶も、同じような道筋をたどると考えれば、すぐに覚えられなくてもいいことがわかり、気が楽になりました。

一度や二度の学習では完璧に覚えられない。だからこそ、あきらめずに何度も復習を重ねることが大切なのだ。

著者は、こうした地道な復習作業をサポートするツールとして、Ankiを推奨している。

そして、このペンキ塗りのプロセスを強力にサポートしてくれるのがAnkiです。

もう、「あれなんだったっけ」と思って、忘れている自分にイライラしたり、失望したりすることはありません。毎日の隙間時間にその日の復習セッションをするだけ。復習以外の時は気にしなくていいのです。

Ankiを活用すれば、負担感なくコツコツと復習を継続できる。これが著者の信念だ。

以上、『語学マニアが教える!コスパ最強の英語学習法』を通して得られた、効率的な英語学習のエッセンスを8つのコツにまとめてみた。

正直、これだけの情報量とノウハウが一冊の本に凝縮されているのだから驚きだ。まるで著者の半生をかけた英語学習の集大成のような、濃密な内容だった。

しかし、こうした膨大な知識も、実践してこそ意味がある。著者は本書のまとめとして、こう述べている。

皆さんもここで紹介したツールを活用し、ご自分でも検索や工夫をして、英語を楽しく楽に習得してください。

私も著者の勧めに従い、今日から実践してみようと思う。

本書を手に取ったあなたも、ぜひ自分なりの学習法を探求し、英語習得への道を歩んでほしい。

著者の吉野氏が示してくれたように、英語学習に終わりはない。たとえつまずいても、挫けずに歩み続けることが大切なのだ。

私も微力ながら、あなたの英語学習の一助となれれば幸いだ。let's enjoy studying English together!


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