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BtoBライティングに専門知識は必要か?

よく、「ライターは、自分の専門分野を持ちましょう」的なことが言われます。このあたりについて、ちょっと考えてみようと思います。


専門知識はあったほうがいいけど、なくても割と大丈夫

専門知識を持っているに越したことはありません。でも、専門知識がなくても、仕事は結構あります。

実は私、つい最近まで、BtoBライターに専門知識は必要ない派だったんです。でも、TAMLOさん主催のライター向けセミナー『B2Bライティングでキャリアアップ』に参加して、「あ、やっぱり専門知識あったほうがいいな」に考えが変わりました。

TAMLOさんのセミナーでは、専門知識の大切さが説かれていました。
突き抜けた専門知識があると、指名で依頼されたり、高単価の案件をいただいたりするチャンスが高まります。
TAMLOさんのセミナーでは、「ここまで出しちゃっていいの?」と心配になるような事例満載で、高度なBtoBライティングについて教えていただきました。
本当にすごいクライアントさんばかりで、トップクラスのお仕事をチラ見させていただいて。専門知識があると、こんなカッコイイお仕事もできるのかぁ...と、胸が熱くなりました。

しかし、こんなトップオブトップなお仕事、そうそうありません。専門性不要なBtoBライティングのお仕事のほうが、ずっと多いです。
というか、何なら「BtoB自体が私の専門分野のひとつだ」くらいに思っています。

バーティカルとホリゾンタル

専門知識の要・不要には、何が影響してくるのかについて、考えてみました。
ここでひとつ重要になってくるのが「バーティカル/ホリゾンタル」という概念です。
その企業が扱うプロダクトが「バーティカル」か「ホリゾンタル」かで、ライターに求められる専門知識のレベルが変わる。これが、私の立てた仮説です。

バーティカルなプロダクトを扱うBtoB企業

「バーティカル」とは、直訳すると「垂直」という意味で、ビジネス用語としては、「特定の産業や業界に特化していること」を指します。バーティカルなプロダクトには、たとえば、心電計やMRIのような医療機器、設計用CADシステム、工場で使われる産業用ロボットなどがあげられます。
これらバーティカルなプロダクトは、提供側も顧客側も、専門知識や業界ノウハウを持っているものです。つまり、読者のリテラシーが高い。当然、ライターにも相応の専門知識が求められることになります。
このようなプロダクトは高額であることが多く、また、専門知識が必要なため、ライターへの報酬も高くなる傾向にあると思われます(自分が請けたことないので、ここは憶測です)。
あと、対応できるライターが少ないので、「誰でもいいから書いて」ではなく、「○○さんにお願いします」と指名されることが多いのではないかと思います(再び憶測)。指名案件は、単価が高くなりやすいのと、一定の信頼関係のもとで気持ちよく仕事ができる、というメリットがあります。

ホリゾンタルなプロダクトを扱うBtoB企業

「ホリゾンタル」とは、直訳すると「水平」という意味で、ビジネス用語としては、「さまざまな業界や市場を横断的に展開すること」を指します。あっちの業界でもこっちの業界でも、企業であればどこでも使われる可能性のあるものです。たとえば、オフィス家具、倉庫・物流サービス、勤怠管理や会計といったバックオフィス業務ソフトなどは、ホリゾンタルに該当します。
ホリゾンタルなプロダクトの場合、提供側はその道のプロですが、顧客側はそこまででもありません。在庫管理と発送業務を頼みたいだけの企業が、物流業界の動向について知っている必要はないからです。
この場合、ライターが専門知識をもっている必要はあまりありません。専門的な内容が必要なときは、取材で聞けばよいのです。それを噛み砕いて素人にも分かるように執筆する「解説能力」のほうが、ずっと重要だと感じています。

専門的な原稿とそうでない原稿、両輪を目指す

読者の知識レベルによって、ライターに必要とされる知識レベルが変わってくるわけです。バーティカルは知識レベルが高く、ホリゾンタルはそこまででもない...ということですね。
専門知識があったほうが、いい仕事が回ってくる可能性が高いです。「いい仕事」なんて雑な表現で恐縮ですが、大きなクライアント、高い原稿料、優秀な担当者、みたいなもろもろのあれこれです。短絡的で書いててちょっと恥ずかしいですが、ひとつよしなにお汲み取りください。

専門的すぎるとマッチングしづらい問題

「いい仕事がくるなら、専門性を磨いてバーティカルで勝負すればいいじゃん」って思うかもしれません。でも、専門性って、尖れば尖るほどマッチングが難しいという問題があるんです。
たとえば私は、プリント配線板の開発をしていたことがあります。でも、自分の専門に「プリント配線板」とは書いていません。だって、プリント配線板に詳しいライターを探している企業とマッチングできるとは思えませんから。ニッチすぎて。
もちろん、専門的な仕事はどこかに存在します。ただ、そういう案件は、テクニカルライターとして専門性をゴリゴリに高めたライターさんに回るものだと思います。
専門性をそこまで高めていくのか。ライターとしての方向性を考えたとき、私は「ちょっとゆるめでいいかなぁ」という感じです。今のところ。

ホリゾンタルのほうが、たぶん仕事が多い

バーティカルよりも、ホリゾンタルのほうが、たぶん仕事は多いです。
ホリゾンタルは業界に関係なくあらゆる企業が顧客候補となるため、広く情報を伝えたいはず。
一方、バーティカルの場合は業界狙い撃ちなので、業界内での認知がすでにある程度とれているケースがほとんどだと思います。なので、「今からオウンドメディアを作って、認知獲得だ!」という発想にはなりにくい。
あと、単純に、ホリゾンタルのほうが企業が多い(少なくともSaaSでは)ということも。
もろもろのことを考慮すると、ライターに回ってくるお仕事というのは、ホリゾンタルのほうが多いと思われます。
なので、今の段階で特に専門性をもっていなくても、BtoBライターとしてやっていくことはできるんじゃないかなぁ。
仕事をしていくうちに、「これは!」というテーマに出合ったら、それを追求していく。そんな感じで専門分野を開拓していけるといいですよね。


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