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今週の全米No.1アルバム事情 #73 - 2021/4/3付

いよいよ新年度、今週はこんなコロナの中でも新しい学校、職場、場所での新しい生活をスタートする人がいっぱいいますよね。折から今週はとてもいい天気でそういう人達を祝福しているかのようです。この機会に自分も新しいことを始めよう、ということでこの「今週の全米No.1アルバム事情」、今週からSpotifyやアップル、グーグルでのポッドキャスト配信をスタートすることにしました。楽曲自体はポッドキャスト内ではかけられませんが、音についてはこちらの動画リンクや、別途SpotifyApple Musicにアップを予定しているポッドキャスト連動プレイリストなどと併せてお楽しみ頂ければ、と思ってます。で、最初のポッドキャストはこちら↓からお聴きになれますのでよろしくお願いします!

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ということでこの記事にとってそういう新しい門出となった今週にふさわしく、今週はとうとうBillboard 200の1位が交代しました!先週予想のとおり、今週の1位にはジャスティン・ビーバー8枚目の初登場1位アルバムとなった『Justice』が飛び込んできました。ただこの1位、彼のこれまでの初登場1位初週のポイント・実売数としては最低の154,000ポイント(実売30,000枚)という堂々ぶっちぎりの、とはちょっと言いづらい成績なのがやや気にかかります。特に前回の『Changes』(2020)の初週実売枚数が126,000枚と過去最低だったのが今回10万枚を大きく割り込んでいるあたり、ジャスティンとしてのアーティストパワーもピークを過ぎたのか、と思わざるを得ません。とはいえ、ストリーミングでは1億5,700万回オンデマンドストリーミング相当のポイントを稼いでいるので、むしろこの5年くらいで彼のファン層はより若い、ストリーミングのみで音楽消費をする層にシフトしたのでは、という見方もできます。

この1位で、ジャスティンは全米No.1アルバムを8枚達成したアーティストとして、1965年のビートルズが『Yesterday And Today』で8作目の1位を記録した時(全員26歳未満)以来の年少記録を達成したことになりますが、それよりも今週はHot 100の方でも、ダニエル・シーザーと先週アルバムが初トップ10入りしたギヴィオンの2人をフィーチャーしたシングル「Peaches」が初登場1位を記録。これでBillboard 200とHot 100で同時に初登場1位を記録した史上3組目のアーティストになったわけで、やっぱりまだまだ人気の程は鉄板のようですね。あ、ちなみに他の2組のBillboard 200/Hot 100同時初登場1位達成アーティストは、テイラー・スウィフト(2020年8月の『Folklore』と「Cardigan」、同12月の『Evermore』と「Willow」の2回!)と何とBTS(同12月の『BE』と「Life Goes On」)。僅か1年足らず前まで考えられなかったこの記録がここ1年足らずで4回も起きてることが驚きですが、それ以上にここでBTSの名前が出てきてしまうのが凄いテイラーの2回も凄いが)。これほどK-PopがUSシーンそして世界中でメインストリームの人気を獲得することは、わずか1〜2年前は想像だにしていなかったわけなので、ここに日本のアーティストの名前が登場する、そんな時代が来ることを改めて期待したいと思いますね。

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そして今週は2位も初登場。これも先週名前を出していたラナ・デル・レイの新譜『Chemtrails Over The Country Club』が75,000ポイント(実売58,000枚で今週の売上ナンバーワン)で2位に入ってきました。リリース前から期待が高まっていたラナの新譜、昨年末にリリースされた先行シングル「Let Me Love You Like A Woman」が、前作『Norman F**king Rockwell』のロック寄りの路線とはちょっと異なる、よりドリーミーな靄のかかったようなラナのボーカルがコロナのロックダウン状況を思わせるようなピアノバラードだったので、今度はまた微妙に新たなサウンドスタイルを指向してるのかな、と思ってました。

今回届けられたこのアルバム、さっそく聴いてますがサウンドスタイルとしては前作より以上にゴージャスでアトモスフェリックな感じなんですが、楽曲のメロディとかがよりシンガーソングライター然としているというか。例えば前作で唯一収録されていたカバーがあのサブライムの「Doin’ Time」だったのに対して、今度のアルバムではラストで何とジョニ・ミッチェルの1970年のアルバム『Ladies Of The Canyon』からの「For Free」が唯一のカバー曲、というのがある意味象徴的にこのアルバムのラナに取っての位置付けを物語っているような気がします。全編プロデュースがジャック・アントノフってのも、テイラーのアプローチに通じる部分もあるのかな、と思ったりして。でもラナの世界観はまた違うので、もっと詞を読みながら聴き込まなければいけませんけど。ちなみにジャスティンの『Justice』とこのラナのアルバム、今週のUKアルバムチャートでは順位が逆で、ラナが1位、ジャスティンが2位初登場ってのも何か象徴的ですね。

一方初登場以来11週連続1位を阻止されたモーガン・ウォレンですが、しぶとく3位に66,000ポイント(わずか先週比4%減)で食い下がってます。来週がどうなるか予断は許しませんね。

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トップ10圏外では、NY州バッファロー出身のラッパー、ベニー・ザ・ブッチャーがプロデューサーのハリー・フロードとコラボしたEP『The Plugs I Met 2』が33位初登場してるのが初登場一番人気ですが、おっと思ったのは昨年12月にリリースされていたのが何故か今週78位に初登場してきた、2017年衝撃の自殺で他界した元サウンドガーデン、オーディオスレイヴのボーカリスト、クリス・コーネルの遺作となったカバー集『No One Sings Like You Anymore, Vol.1』。ガンズの「Patience」やジョン・レノンの「Watching The Wheels」、プリンス/シニード・オコナーの「Nothing Compares 2 U」など、歌唱力では定評あるクリスのボーカルによるパフォーマンスが感動的なアルバムになっているようです。90年代のロックシーンに一時期どっぷりつかった音楽ファンとしてはこれはちゃんと聴かなくては、と思っちゃいますよね。ではトップ10のおさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

*1 (-) (1) Justice - Justin Bieber
*2 (-) (1) Chemtrails Over The Country Club - Lana Del Rey

3 (1) (11) Dangerous: The Double Album - Morgan Wallen
4 (2) (38) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
5 (3) (51) Future Nostalgia ▲ - Dua Lipa
*6 (6) (7) Shiesty Season - Pooh Shiesty
7 (4) (53) After Hours ▲2- The Weeknd
8 (7) (56) My Turn ▲3 - Lil Baby
9 (8) (14) The Voice - Lil Durk
10 (11) (72) What You See Is What You Get ▲2- Luke Combs

さて来週の1位予想です。来週チャートの対象リリース期間は3/26-4/1ですが、目立つのはキャリー・アンダーウッド(今回ゴスペル・アルバムってのがちょい引っかかりますが)くらい。一方、ジャスティンの『Justice』に6曲追加した「トリプル・チャックス・デラックス」バージョンが3/26にリリースされているので(そしてこのバージョン、よりヒップホップ系でリル・ウジ・ヴァートとかダベイビーをフィーチャーした曲が入ってます)、これは来週もジャスティンが2週連続を決めると思いますね。ではまた来週。

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