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今週の全米アルバムチャート事情 #143- 2022/8/6付

夢のようなフジロックから帰ってきていきなり火曜日から現実に引き戻されてますが(笑)今年やっぱり3年ぶりに参戦して良かったというしかない、そんなフジロックでした。またフジロックで見たライブのレポートをここnote.comでまとめてアップしますが、今年のフジロックは、天気よし、ブッキングも相次ぐキャンセルも何のその頑張ってたし、コロナ対策もしっかり徹底してたし、もう運営サイドの皆さんにリスペクトしかない、そんな4日間でした。来年も頑張って行きますよ!

"Un Verano Sin Ti" by Bad Bunny

さて今週8月6日付Billboard 200、全米アルバムチャートの1位ですが、まあ先週も予想通り今週もラテンの大スター、バッド・バニーの『Un Verano Sin Ti』が初めて10万ポイントを割る98,000ポイント(今週も実売は1,000枚以下)になりながら、やはり対抗馬がない中通算7週目の1位を獲得。しかし後で触れますが来週はほぼ間違いなくバッド・バニー天下は終了しますよ

ということなので「今週のバッド・バニーの一曲」は今週がどうやら最後になりそうです。そんな中で選んだのが「Un Ratito(しばらくの間)」。この曲もご多分に漏れずダンスホールビートの曲ですが、他の曲に比べるとBPMが少なめでちょっとゆっくり。でもやっぱり歌の内容は「ちょっと前カノに戻ろうかな/君は寂しくなるかもしれないけど/ちょっとの間だけだからいいよね/その前にもう一回チョメチョメしようぜ/だって愛はこんなに美しいから」という、いつものバッド・バニー節全開(笑)。お後がよろしいようで。

"SEVENTEEN 4th Album Repackage: Sector 17" by SEVENTEEN

今週の一番人気の初登場はまたまた来たぜKポップ!というわけで4位に登場したのが13人組のボーイズ・バンド、SEVENTEENの『SEVENTEEN 4th Album Repackage: Sector 17』(34,000ポイント、うち実売31,000枚で今週のアルバム・セールス・チャート堂々1位)。このアルバム、実は今年5月にリリースしてBB200の7位初登場で彼ら初の全米トップ10アルバムとなった『Face The Sun』にシングル「Cheers」など3曲を追加して再発した、そのタイトル通りのリパッケージ盤のようなんですな。しかしこういうの別アルバムカウントするのって、ビルボードのチャート方針からしてどうなの?と思ってしまいますが。

これで先週のiTZYに続いて2週連続でKポップがトップ10初登場ということになります。BTSj-hopeも先週は登場してましたが圏外17位でしたから、ここのところまたKポップの勢いが増してきている感がありますね。

"Entering Heaven Alive" by Jack White

そして今週トップ10もう1枚の初登場は、先週末のフジロック2日目のグリーン・ステージのヘッドライナーで度肝を抜くようなど迫力の「ひとりツェッペリン・ステージ」を展開した、ジャック・ホワイトの今年2作目のアルバム『Entering Heaven Alive』。ポイントは27,000ポイントで実売25,000枚と、SEVENTEENがいなければ間違いなく今週のアルバムセールス・チャート1位だったと思われる実売を叩き出しています。

いやあでもあのステージはもの凄かった。自分は今年の4月に出て4位に初登場した前作『Fear Of The Dawn』を聴いて何だか中途半端なエレクトロ・ヘヴィー・ロックだなあ、と思ってあまり期待せずにグリーン・ステージに望んだんですが、文字通りぶっ飛びました。彼のライブはレコードより遙かにスゴいですね。そのライブではホワイト・ストライプスの曲と前作『Fear Of The Dawn』の曲がほとんどで、このアルバムからは「Love Is Selfish」と「A Tip From You To Me」の2曲しかやってませんでしたけど、他の曲との一体感もスゴかった。ライブでまた来たら是非観に行って下さい。絶対その価値はあります

"The Last Goodbye" by ODESZA

ということで今週のトップ10内初登場は2枚。一方圏外11位から100位までには、今週5枚のアルバムが初登場しています。その一番人気が11位初登場と惜しくもトップ10を逃しているのが、アメリカ西海岸のワシントン州ベリンガム出身のハリソン・ミルズクレイトン・ナイトの2人によるエレクトロ・デュオ、オデッサの4作目になる『The Last Goodbye』。彼らは前作『A Moment Apart』が2017年に3位と彼ら最大のヒットを記録して、その年のグラミー賞最優秀ダンス・エレクトロニック・アルバム部門と最優秀ダンス・レコーディング部門にノミネートされて一気にブレイクしたのですが、今回はそれに続く作品になります。

僕が個人的に好きなパワフルなベテラン女性R&Bシンガー、ベティ・ラヴェットの1965年の曲「Let Me Down Easy」の歌唱をフィーチャーしたタイトル・ナンバーを聴くと、非常にシアトリカルで静謐な感じのエレクトロ・サウンドとビートで60年代R&Bのパフォーマンスを見事な形で昇華した楽曲になっていて、こりゃなかなかいいですね。ちょうど90年代のケミカルズプロディジーといったビッグ・ビート・ブームの後に出てきたプロペラヘッズあたりを思い出しました。彼らもシャーリー・バッシーの歌唱を同様にフィーチャーした曲がUKでヒットしてましたよね。

"I Love Life, Thank You" by Mac Miller

そして22位に登場してきたのは死してなおレコードを残す、マック・ミラーの皮肉なタイトルのミックステープ『I Love Life, Thank You』。こちらは2011年にマックツイッターのフォロワーが100万人に到達したのを記念してリリースされたミックステープで、当時はリリースチャネルが限定的だったのでチャートインしてませんが、今回マックの遺族が全てのデジタルプラットフォームにストリーミング配信したため、ここにドーンと入って来たということのようです。

既に彼の遺作発表シリーズは、昨年のアルバム『Circles』(3位、名盤でした!)と2014年のミックステープの再リリース『Faces』(こちらも3位)に続く3作目になります。今回もファンの間で人気のあったミックステープの再リリースということで、10年前まだマックがブレイクする前も、我々が知っているマック同様、ひたすらポジティブなヴァイブと楽しいビートを繰り出していたことが判る内容。本当に惜しいアーティストをなくしました。改めてR.I.P.マック

"Red & White" by Lil Uzi Vert

そのすぐ下、23位に入って来たのは、2017年の『Luv Is Rage 2』、2020年の『Eternal Atake』と2枚連続1位をマークしてたのに比べるといつになく地味な順位での初登場になった、リル・ウジ・ヴァートのEPとしては4作目になる『Red & White』。ちょっと聴いたところEPだからといって内容クオリティがこれまでと比べると落ちるという訳でもなさそうだし(というか「Cigarette」とか結構出来のいいトラックもいくつかある)、あれだけ大量のストリーミングを集めた『Eternal Atake』以来の新曲で構成されていて、リリースも2段階に分けて構成トラックを微妙に変えたりとかしてプロモーションも工夫しているのにこの順位。これってやはりトラップ・フォーマット自体に対するリスナーの熱量が2年前に比べると減ってきていることの証左なのかもしれないな。

かといってトラップ以外やってるウジってのも想像付かないし、ドレイクフューチャーのように次回のフルアルバムでは微妙に方向性を変えてくるのか、次のウジの一手にちょっと興味がありますね。

"2000" by Joey Bada$$

そして先週の予想ではトップ10に来るんじゃないか、と言ってたジョーイ・バッダス(Joey Bada$$)の5年ぶりになる3作目『2000』は25位初登場でした。2012年にリリースした最初のミックステープ『1999』の続編の位置づけらしい今回のこのアルバム、前作『All-Amerikkan Badass』(2017年5位)がシーンの評価も高く、自分もお気に入りでその年の年間17位に入れてたくらいだったんだけど、今回は順位から言ってもちょっとイマイチのようです。

オープニングのディディ(旧パフ・ダディ)をフィーチャーした「The Baddest」とか、自分の地元のNYを題材にコンシャスな感じのトラックで聴かせるし、それに続く各トラックも彼の持ち味であるオールド・スクールなトラック使いで自分なんかは割と気に入ってます。でもヒップホップに甘いはずのピッチフォークが6.8点しか付けず「トラックとか内容とかはいいんだけど、『1999』からこっち10年で積み上がった内容としては物足りないよなあ」という評価してるくらいなんで、そういう受け取られ方なんでしょうね。90年代とかのオールドスクール・ヒップホップ好きな人にはお勧めですが。

"Survivor's Guilt" by Mozzy

今週最後の初登場は、40位に入って来たのはカリフォルニア州サクラメント出身、35歳のベテラン・ラッパー、モジー(本名:ティモシー・コーネル・パターソン)の7作目『Survivor’s Guilt』。ウジと同じくらいの10年選手ながら、これまでアルバムがトップ20入りしたのは昨年の6作目『Untreated Trauma』(19位)くらいなので、今回も平均的な評価ということなんでしょう。

教会らしきところで花が供えられた黒い棺桶を前にポーズを取るモジー、ということで過去に何度も不法銃器所有でパクられてる彼らしく、どうやら銃で仲間を失ったことによる罪悪感、みたいな内容をラップしてるんでしょうか。楽曲はピアノやアコースティック楽器などをフィーチャーしたコンシャス・トラップみたいな感じでまあまあ聴けますが、まあそれ以上でもそれ以下でもないってことで、彼の場合もトラップ熱量低下のトラップ(罠)にハマってるって感じなのかもしれません。

ということで今週の初登場はトップ10に2枚、圏外100位までに5枚の計7枚でした。ここでいつもの今週トップ10おさらいですが、何やらどさくさに紛れていつの間にかモーガン・ウォレンが2位に上昇してきているのが何かやな感じですね。(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (12) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <98,000 pt/1,000-枚>
*2 (4) (81) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <49,000 pt/1,071枚*>
3 (3) (10) Harry’s House ▲ - Harry Styles <48,000 pt/11,000枚>
*4 (-) (1) SEVENTEEN 4th Album Repackage: Sector 17 - SEVENTEEN <34,000 pt/31,000枚>
5 (6) (13) I Never Liked You ● - Future <33,000 pt/90枚*>
6 (5) (6) Honestly, Nevermind - Drake <37,000 pt/229枚*>
7 (2) (2) Special - Lizzo <28,000 pt/10,000枚>
8 (10) (20) 7220 ● - Lil Durk <31,000 pt/44枚*>
*9 (-) (1) Entering Heaven Alive - Jack White <27,000 pt/25,000枚>
10 (13) (62) Sour ▲3 - Olivia Rodrigo <26,000 pt/6,000枚>

フジロック明けの今週の「全米アルバムチャート事情!」、いかがだったでしょうか。最後に、7/29~8/4が対象期間となる来週の1位予想ですが、これはもう間違いなくビヨンセの新譜がブッチギリで1位でしょう。というかもうビルボード誌によると、リリース4日で既に275,000ポイント稼いでるそうなんでもう確定ですね。あとトップ10に入ってきそうなのはマギー・ロジャーステデスキ・トラックス・バンド、そしてヒップホップ・デュオのスイサイドボーイズくらいでしょうか。来週はビヨンセ祭りになりそうですね。ではまた来週。

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