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今週の全米アルバムチャート事情 #214- 2023/12/16付

やっと大谷翔平の来年のチームがドジャーズに決まって、このディールの決定待ちだったMLBのFA選手達の動きやトレードがどんどん決まって行くね。しかし大谷ーベッツーフリーマンーマンシーの打線は超強力だけど、ドジャーズも先発ピッチャーが全く足りてないから、まだまだドジャーズもトレード戦線を大いに賑わさないと来年の優勝は簡単ではないと思うね。いずれにしても大谷選手はこれで落ち着いて来年に向けてトレーニングに専念できるのは何より。来年が大谷に取って大きな実りの年になりますように。

"The World EP.FIN: WILL" by ATEEZ

さて先週の予想で、KポップのATEEZ(エイティーズ)は10万ポイントは難しいだろう、なんて言ってたら何と今週の全米アルバムチャート、12月16日付のBillboard 200の1位はそのATEEZの『The World EP.FIN: WILL』が152,000ポイント(うち実売146,000枚!)と彼ら過去最高の週間ポイントを達成して堂々の1位を獲得しました。これでKポップではBTSスーパーM、ストレイ・キッズ、ブラックピンク、トゥモローXトゥゲザー、ニュージーンズに続く7組目の全米ナンバーワン達成ということになります。ちなみにこのATEEZ、何とUKチャートでも今週2位初登場。UKでも彼ら最大のヒットアルバムになってます。ただ今回の15万枚に届こうかという実売枚数が稼げた大きな要因は、何といってもKポップのマーケティング常套手段、多数のバージョン違いのフィジカル(今回はCDとヴァイナル)のリリースでKポップファンの買い占め行動をドライブしたことにあります。今回のATEEZのバージョン違いは何と33パターン!うち26パターンがCDで7パターンがヴァイナルですが、CDについてはそれぞれに異なるパッケージに組合せの異なる2枚のメンバーのフォトカード(ATEEZは8人組なので、8人から2人選ぶ組合せは全部で28通り!あれ?計算合わないな)が同梱されてるといういつものパターンですが、何しろパターンの数が多い。

一方ストリーミングポイントはわずか5,500ポイント(オンデマンドストリーミング759万回相当)という薄さなので、ストリーミングではほとんど聴かれていない(従って来週は順位がた落ち必至)というのもKポップのいつものパターンで、今回はそれがちょっと極端に出てる気がしますね。何せ彼ら、Hot 100はおろか、Global 200チャート(米国も非米国も)にすらこれまで一曲もチャートインしてないですから、やっぱりストリーミングでは聴かれてないんだろうなあ。これって健全なんでしょうか。ちなみにタイトルにEPとありながら、12曲収録されてますから立派なアルバムなんですが、そのほとんどが韓国語で歌われてるということで、今年1位になったアルバムだけでも、ストレイ・キッズROCK-STAR』『5-STAR』、バッド・バニーの『Nadie Sabe Lo Que Va A Pasar Mañana』、ニュージーンズの『2nd EP ‘Get Up’』、カロルGの『Mañana Será Bonito』そしてTXTThe Name Chapter: Temptation』に続く7枚目の非英語ナンバーワン・アルバムということになります。あ、内容はここのところのパワー・ダンス・ポップ路線ですが、今回は久しぶりにいくつかラップもしてるみたいです。

"The Christmas Song" by Nat King Cole

さて先週同様、今週もこの時節柄強力新譜はあまりドロップされていないので、トップ10内初登場もこのATEEZのみ。その他では、初登場ではないですがこれもこの季節のお約束、ということでナット・キング・コールの『The Christmas Song』が先週16位→10位と昨年同様トップ10に復帰しています。あの「暖炉では栗がこんがり焼けて/霜焼けで鼻がヒリヒリする/合唱隊がクリスマス讃歌を歌って/行き交う人達はまるでエスキモーのようなかっこ」という歌詞のあの定番クリスマス・ソング収録のアルバムです。これでホリデーシーズン6回連続トップ10を果たしたこのアルバム、今年の1月に過去最高5位を記録してますが、今回はその記録を更新するのか。

"A Philly Special Christmas Special" by The Philly Specials (Lane Johnson, Jason Kelce and Jordan Mailata, featuring Travis Kelce)

一方11位以下100位までの初登場は今週3枚、いや実質は2枚。なぜ実質2枚かというと、25位に初登場している『A Philly Special Christmas Special』は、今年の1月第1週のチャートで80位にチャートインしてた、NFLフィラデルフィア・イーグルスのオフェンス3人、レーン・ジョンソンジョーダン・メイラタジェイソン・ケルシーが録音した『A Philly Special Christmas』のいわばパート2で、55位に初登場している『A Philly Special Christmas Special (The Deluxe Album 2022 & 2023)』は、その去年の盤と今年の盤をパッケージにしたカップリング盤なんですわ。去年の盤の時にも書いたけど、この3人実は結構パフォーマンス経験もあってそれなりに歌えるメンバー。その3人が去年の盤では定番のクリスマス・ソング中心だったところに、この第2弾ではマライアのあの歌とか、ナット・キング・コールのあの曲とか、ダニー・ハサウェイウィスパーズで有名な「This Christmas」など、普通のポピュラー・ファンにも「おっ」と思わせる選曲で迫ってます。

しかしそれよりも今回のこの第2弾の最大の話題は、ジェイソンの弟で、今テイラーの彼氏としてつとに注目を集めてる、カンザスシティ・チーフスのトラヴィス・ケルシーが一曲参加してること。しかもその曲が、つい先頃惜しくも他界したシェーン・マクゴーワン率いるポーグスのあのクリスマスの名曲「Fairytales Of New York」をフィリーに読み替えた「Fairytales Of Philadelphia」っていうからもう話題性満点。この曲のアイデアはトラヴィスの兄貴のジェイソンだっていうから、ジェイソン、なかなかいい趣味してるなあ、やるなあ、と思ってしまいました。そしてメインヴァースを歌ってるトラヴィスもなかなか歌えてますね。これ、アメリカではさっそくTVで話題になってるみたいなので、そのうちHot 100に入ってくるかもしれません(今週はまだチャートインせず)。イーグルスは今NFCのワイルドカードで頑張ってますので、もしプレイオフ進出となるとその可能性も上がってきそうです。

"I/O: Bright-Side / Dark-Side Mixes" by Peter Gabriel

そして今週のもう1枚の初登場はギリギリ99位にエントリーしてきた、ピーター・ガブリエルのオリジナル・アルバムとしては実に2002年の『Up』(全米9位、全英11位)以来21年ぶりの新作になる『I/O』。このアルバム、収録12曲が2種類の異なるミックス、ブライト・サイド・ミックスとダーク・サイド・ミックスで収録されてて実質24曲、68分に及ぶ超大作になってます。そういった冒険的な試みの作品ながら今回音楽メディアの評価は軒並み高く、メタクリティックは87点。本国UKでもATEEZを押さえて(笑)堂々アルバムチャート1位を決めていますね

さっそく聴いてみましたが、まず驚くのは『Up』やその前作の『Us』(1992年、英米共に2位)の頃の作品スタイルと全く今回の作品スタイルが違和感なく世界観がシームレスにつながっていること。まるで21年間のブランクがなかったかのようなのが驚きです。その理由の一つは、ピーガブのボーカルが今年73歳なのに、21年前のボーカルとほとんど聴いた感じ声のハリとか声の出方とかが変わってないこともありますね。楽曲はいずれも抑えめのカタルシスを持ったタイプが多く、何曲かはフルオーケストラや、ゴスペル・クワイアをバックにピーガブが飄々と歌う、といった感じのものもあります。あと、ミックスの違いですが、まだまだちゃんと聴き込めてないので何とも言えないですけど、何となくダークサイド・ミックスの方がやや覚醒した、ビートを強調した感じになってる曲が多いような気がします。バックにはブライアン・イーノ、トニー・レヴィン(ベース)などこの辺の作品ではおなじみのミュージシャンをはじめ多数のミュージシャンが参加してますが、何と言ってもこの年になってもこれだけのスケールの、独自のビジョンを持った作品を作り出せるピーガブのミュージシャンシップにはまあ脱帽という感じです。なかなか今のアメリカのリスナーには受け入れられにくいこともあってこの順位なんでしょうが、結構このアルバムは聴き込む価値がありそうですね。

ということで今週の100位までの初登場は計4枚、実質3枚でした。一方Hot 100の方では、先週数々の歴史的記録を打ち立てて1位を取ったブレンダ・リーの「Rockin’ Around The Christmas Tree」が今週も2週目の1位を記録、今週彼女は79歳の誕生日を迎えてますから、先週うちたてた最年長者によるナンバーワンの記録を自ら塗り替えたことになります。去年まで常に1位だったマライアは今週も2位ですが、Spotifyデイリーチャートの様子とかを見てるとなかなかマライアの逆転は厳しそうな気がしますが、さあどうなるでしょうか。上のビデオはブレンダが先週末、ナッシュヴィルのグランド・オール・オプリでこの曲をパフォームした様子です。御年79歳、まだまだ元気ですね!ここで今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) The World EP.FIN: WILL - ATEEZ <152,000 pt/146,000枚>
2 (1) (6) 1989 (Taylor’s Version) - Taylor Swift <101,000 pt/52,492枚*>
3 (2) (9) For All The Dogs - Drake <76,000 pt/251枚*>
4 (4) (40) One Thing At A Time - Morgan Wallen <65,000 pt/3,654枚*>
*5 (9) (114) Christmas ▲6 - Michael Buble <60,000 pt/7,294枚*>
6 (3) (59) Midnights ▲2 - Taylor Swift <55,000 pt/20,667枚*>
7 (7) (52) SOS ▲3 - SZA <51,000 pt/5,316枚*>
*8 (13) (54) Stick Season ● - Noah Kahan <48,000 pt/3,802枚*>
9 (5) (176) Folklore - Taylor Swift <46,000 pt/22,058枚*>
*10 (16) (78) The Christmas Song ▲6 - Nat King Cole <44,000 pt/2,462枚*>

あっと驚くATEEZが首位を取った今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。さて今年のこの記事もあと2回で終わり、ありきたりですが一年経つのは早いもんですね。最後にいつものように来週の一位予想(チャート集計対象期間:12/8-14)ですが、ATEEZテイラーともに10万ポイント割れは確実な中、新譜が薄いこの時期に敢えてドロップしてきたニッキー・ミナージの新譜、これは間違いなく10万ポイント超えで余裕の1位でしょう。トップ10に入ってきそうなのは、現在「Greedy」が大ヒット中のテイト・マクレー、そしてキラーズのベスト盤くらいでしょうか。ではまた来週。


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