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今週の全米アルバムチャート事情 #137- 2022/6/25付

R.I.P. Mr. Joel Whitburn

先週は、我々洋楽、そして全米チャートファンにとって大変残念なニュースが届きましたHot 100やこの記事のネタになっているBillboard 200総合アルバムチャートを始め、様々なビルボード誌のチャートに関するデータ書籍を我々チャートファンに届けてきてくれた、ジョエル・ホイットバーンさんが82歳で他界されたのです。洋楽やビルボード誌のチャートに興味ないよ、と言う方には全く知られていない方だと思いますが、我々チャートファンには正しく神様のような存在。まだ駆け出しの洋楽ファンだった頃、ジョエルさんの会社、レコード・リサーチ社が発行する数々のチャート本に記載されたデータやトリビアがいかに洋楽に対する興味と興奮を掻き立ててくれたか、我々の洋楽熱に計り知れない影響を与えた方なのです。レコード・リサーチ社自体は、彼のお子様達や家族によってしっかり運営されていますから、彼の偉業のレガシーは今後も面々と続くことでしょう。心からのご冥福をお祈り致します。

"Proof" by BTS

さて今週の全米アルバムチャート、6月25日付のBillboard 200の1位は先週の予想通り、BTSがデビューした2013年から今年に至るまでの全シングル、メンバーによるソロまたは複数メンバーのスピンオフトラック、更にはデモ・バージョンなどを収録した、BTSのこれまでのキャリアを完全パッケージしたCD3枚組ベスト盤『Proof』が314,000ポイント(うち実売266,000枚で今週のアルバム・セールスダントツの1位)で堂々1位初登場、BTSとして通算6枚目の全米ナンバーワンアルバムを達成してます。そしてアルバム・シングル同時1位では?と言っていた、このアルバムからの新曲シングル「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」ですが、こちらは何故か思ったほど伸びず、今週Hot 100の12位初登場に留まってますね。「Dynamite」や「Butter」といったアップテンポのダンス・ポップ・ナンバーではなく、ややノスタルジックなメロディを持つ王道のメインストリーム・ポップ・ナンバー(途中ラップもちゃんと入る)なので、爆発的な人気とは行かなかったのかもしれませんが、なかなかいい感じのシングルだと思いますね。

あと、既にBTSの音源は持ってるファンでも、ディスク1のオープニングに収録されている2013年に無料でリリースされていて、これまでどのアルバムにも収録のなかった、J.コールの「Born Sinner」をサンプリングしている「Born Singer」のリミックス・バージンが入ってる、ということで買いに走った人多いんだろうなあ。でもこういうマーケティングは嫌いじゃないですね。少なくともCDジャケ・同梱フォトカード違いでCD何枚も買わせるやり方よりは遙かにまし。また今回のリリース・フォーマットは35曲入りのデジタル・ダウンロード/ストリーミングか、48曲入りCD(デジタルにないデモ音源など14曲収録)の2パターンというシンプルなリリースだったのもセールス・パフォーマンスには貢献したんでしょうね。時を同じくして無期限活動中止をアナウンスしたBTS、今後はメンバーのソロ活動中心になるようですが、今全世界を席巻しているハリー・スタイルズのように引き続きシーンを引っ張るメンバーが登場することができるか、ちょっと興味ありますね。

さて今週はHot 100の方では、12位のBTS初登場の上を行って、日本人のR&Bシンガー、ジョージ(本名:ジョージ・クスノキ・ミラー)の「Glimpse Of Us」が10位初登場と、日本人ソロシンガーとしては坂本九さんの1963年の全米ナンバーワンヒット「Sukiyaki(上を向いて歩こう)」以来60年ぶりのトップ10という快挙を達成、話題を呼んでますが、過去にこのBillboard 200でもアルバム『Ballads 1』(2018)、『Nectar』(2020)年と連続3位を決めているジョージ、この曲収録のアルバム・リリースが待ち遠しいですね。

"Denim & Rhinestones" by Carrie Underwood

さてBillboard 200に戻って、今週のトップ10内初登場はもう1枚、これも先週予想していた、キャリー・アンダーウッドの9作目のアルバム『Denim & Rhinestones』が31,000ポイント(うち実売22,000枚)で10位に初登場。これでデビュー以来9作連続オリジナル・アルバムをトップ10に入れてきているキャリーですが、これまでは全てトップ5だったのが今回はギリギリの10位ということで、勢いに陰りが見えてるというべきか、これだけヒップホップやKポップなどが台頭してて、かつコロナの影響でライブも行えなかったカントリー・アーティストとしては健闘していると言うべきか。

3月のグラミー賞でお披露目パフォーマンスされた先行シングルの「Ghost Story」も、その直前にジェイソン・オルディーンとのデュエット「If I Didn’t Love You」(35位)がヒットしていたにもかかわらず72位と冴えないチャートパフォーマンスだっただけに今回の新作も心配だった訳ですが、何とか10位はキープして面目を保ったというところか。アルバムの楽曲はいずれもソリッドでそつなく作られたメインストリーム・カントリー・ポップ・ナンバーが並んでいて、MOR的な人気は間違いなく確保してるんでしょうね。今年10月から来年3月まではこのアルバムのプロモーションツアーで全米を回るようなので、2枚目、3枚目のシングルヒットも期待されるところです。

"Scoring The End Of The World" by Motionless In White

というところで今週のトップ10内初登場は2枚。続いて圏外11位から100位ですが、今週も商いは薄めで、初登場はわずか2枚。まず12位初登場、わずかにトップ10を逃したのは、東海岸ペンシルヴァニア州スクラントン出身のゴシック・メタル・バンド、モーションレス・イン・ホワイトの6作目となる『Scoring The End Of The World』。2014年に3作目『Reincarnate』がBillboard 200で9位とトップ10ブレイクして以来のトップ20入りを果たしてます。いやあしかし最近やはりチャート上位にアルバムを送り込んできたゴーストとか、ドイツのラムシュタインとか、アメリカ人ってこういうデスメタルというかゴシック・メタル系、好きな人結構未だに多いんですねえ。自分は正直ノーサンキュー、って感じです、すいません。

"Look At Me: The Album (Soundtrack)" by XXXTENTACION

そしてもう1枚は、先週予想でトップ10もあるかも、と言っていた今は亡きXXXテンタシオンのコンピアルバム『Look At Me: The Album. (Soundtrack)』。サウンドトラック、ということでこの3月にテキサス州オースティンでのフェス、SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)フィルムフェスティバルで初公開された、Xの短い一生を追ったドキュメンタリー・フィルムのサントラ盤扱いにもなっているようです。

Xがブレイクした最初のヒット曲(2017年34位)をタイトルに冠したこのアルバム、2018年のナンバーワンヒット「Sad!」をはじめ、「Changes」(2018年18位)「Moonlight」(同13位)「Jocelyn Flores」(同19位)などなど、彼のヒット曲満載のさながらベスト盤的な構成な上に、カニエの『Donda 2』に収録されていた先行シングル「True Love」も含まれていて、Xのワイルドなキャリアを振り返るには絶好の一枚となってますね。

"Ctrl (Deluxe)" by SZA

ということで以上がトップ10及び圏外の初登場でした。ここで毎度のトップ10おさらいですが、今週は初登場以外に、リリース5周年で7曲を追加したデラックス・リイシュー盤がリリースされた、SZAの『Ctrl』(2017年最高位3位)がチャートイン262週目(ほぼ5年)で先週の35位からいきなり9位にトップ10復帰してます(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) Proof - BTS <314,000 pt/266,000枚>
2 (1) (6) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <129,000 pt/784枚*>
3 (3) (4) Harry’s House - Harry Styles <91,000 pt/26,000枚>
4 (2) (2) Twelve Carat Toothache - Post Malone <59,000 pt/6,057枚*>
5 (4) (7) I Never Liked You - Future <55,000 pt/228枚*>
6 (6) (75) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <52,000 pt/1,325枚*>
7 (5) (5) Mr. Morale & The Big Steppers - Kendrick Lamar <42,000 pt/3,130枚*>
8 (8) (56) Sour ▲3 - Olivia Rodrigo <32,000 pt/10,000枚>
*9 (35) (262) Ctrl ▲2 - SZA <32,000 pt/623枚*>
*10 (-) (1) Denim & Rhinestones - Carrie Underwood <31,000 pt/22,000枚>

今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。さて最後はいつもの来週1位予想です。来週のチャートの対象期間は6/17-23ですが、何と言っても来週は急遽リリースがアナウンスされたドレイクの新作が強いでしょうねえ。今年の初週ポイントの最高記録は今のところハリー・スタイルズの521,500ポイント。ドレイクは前作『Certified Lover Boy』の初週ポイントが60万越えしてますから、来週はハリーの記録を超えてくるかもしれません。ではまた来週。


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