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今週の全米No.1アルバム事情 #79 - 2021/5/15付

いつもとは全く違う話題ですが、開幕から1ヶ月で大谷翔平選手がMLBで成し遂げたことは改めて刮目に値しますね。ここ1ヶ月でホームラン10本でMLB3位というのはやはり凄いことで、コロナへの対応が遅れる日本の状況をしばし忘れさせてくれますね。ピッチングの方は多分夏頃にはスタミナの関係でセーブしていかなくてはいけないでしょうが、こちらも今のところ5試合で防御率2点台前半と立派な成績なので、怪我さえなければ今シーズン10勝40本の大谷が見られそう。オリンピックなくたってこれで充分OKですわ。なお、この記事連動のポッドキャスト、いつもと同じように下記のリンクに配信しましたので併せてお楽しみ下さい。

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さて今週末のBillboard 200のアルバムチャートですが、1位に初登場してきたのは、危惧していた通りヒップホップ・ファンの支持をガッツリ集めたDJキャレドの12作目、その名も自分の名前をそのままタイトルにした『Khaled Khaled』。93,000ポイント(実売14,000枚というヒップホップにしてはかなりの売上)というしっかりポイントも実売も稼いでの1位は、何といってもこのアルバムにほとんど1年前の昨年7月に先行シングルとしてトップ10ヒットとなった、ドレイクをフィーチャーした2枚のシングル「Popstar」(最高位3位)と「Greece」(最高位8位)が収録されてるのと、毎度毎度の豪華ゲスト陣満載の内容だからまあ当然ですよね。

参加ゲストは、ジェイZ、ジャスティン・ティンバレイク、リル・ウェイン、ジャスティン・ビーバー、ミーガン・ザ・スタリオン、カーディB、H.E.R.、ポスティ、リル・ベイビーダベイビーとまあ、ここまでやるんかよ!ってくらいこれでもかのゲストてんこ盛り。このオジサン、毎度そうだけど結局はこのゲスト陣の提供する曲に自分のライターとプロデューサーのクレジットだけ付けて、やってることと言ったらそのゲスト達を楽曲の中で名前を連呼して紹介してるだけ。ホントこいつが売れると頭くるな。でもこの豪華ゲスト陣のパフォーマンスに金を出すファンに罪はないわけで。それがまた腹立つけど。でも上の「Popstar」のPVは、キャレドドレイクに「ビデオ一緒にやってくれ!」としつこく迫るのに「コロナでカナダ出れるわけないだろ??」と苛ついた結果、何とジャスティン・ビーバードレイクの口パクでビデオに出演させる、っていうこれはこれでなかなか笑わせるアイデア。結局はキャレド、憎めないのも悔しいなあ。

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そしてそのDJキャレドを蹴散らして1位になってくれんかなあ、と思っていたカントリーのトーマス・レットの5作目になる『Country Again: Side A』は残念ながら30,000ポイント(実売14,000枚で売上でもDJキャレドと同じ枚数にとどまってます)で今週10位初登場でした。アルバムのプロデュースはカントリー界のレジェンド・プロデューサー、ダン・ハフと、デビュー以来の付き合いで、カントリー系の仕事中心ながら、メーガン・トレイナーとかのポップ系のアーティストの仕事もする傍らでR&Bやヒップホップ系のアーティストのイベントでDJもやるというジェシー・フレイジャーの二人によるデビュー以来のパターンを踏襲した作品。

トーマス自身、先週ご紹介したエリック・チャーチなどがバリバリ伝統的なカントリー的発声なのとは少し違って、よりポップやR&B寄りの発声でカントリーとR&Bのハイブリッド的な味わいも漂わせるそんなシンガーです。その彼が今回のアルバムでは、カントリーの基本に返ってというか、「カントリーって自分にとって何だろう?」的にアプローチしたのがこのアルバムのようでして。先行シングルの「What’s Your Country Song」(今年3月Hot 100最高位29位、カントリーチャート2週1位、今週またHot 100 47位で再上昇中)も、歌詞に有名なカントリー・ソングのタイトルを読み込んで「誰でも自分のアンセムを持ってるよね/君の好きなカントリー・ソングは何?」と問いかけてくる作品。登場するタイトルは自分のお父さん、レット・エイキンスの「That Ain’t My Truck」をはじめ、アラバマDixieland Delight」、アラン・ジャクソンChattahoochee」、ジェイク・オーウェンBarefoot Blue Jean Night」、ジョージ・ストレイトAll My Ex’s Live In Texas」、ハンク・ウィリアムスI’m So Lonesome I Could Cry」、ガース・ブルックスFriends In Low Places」、バーバラ・マンドレルI Was Country When Country Wasn’t Cool」、ディアナ・カーターStrawberry Wine」などなど、新旧様々なカントリーの有名曲が出てきて、カントリー・ファンにはたまらんだろうなあ、という感じです。

実はこのアルバム、エリック・チャーチの3枚連続リリースの向こうを張ってるわけでもないでしょうが、今年後半にはこの続編の『Country Again: Side B』がリリース予定だとか。このやり方、ヒップホップのように、カントリー界では単なるデラックス・バージョンでない、新しいマーケティング手法としてまた流行るのかも。作品の質が確保されるのであればこれはこれで面白いやり方かもですね。

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と、ちょっと長くなりましたが、今週トップ10内初登場はこの2枚のみ。一方、今週のトップ10圏外ですが、先週のこの記事ポスト後に、90年代来の洋楽友人であるS君から「来週結構上位に来ると思うので取り上げて!」とリクエストが入っていた、フランスのメタル・バンド、その名もゴジラロードランナー・レーベルからの3作目『Fortuitude』が、今回大健闘で圏外12位に初登場しているので、リクエストにお応えして取り上げます(笑)。もともとこのバンド、名前は英語風にGodzillaだったんですが、権利関係でクレームが付いて2001年レコードデビュー時にGojiraに改名しているという、微笑ましいエピソードも。

で、単なる色物バンドではなく、結構しっかりしたサウンドで今回メタリカ当たりも思わせるようなプログレッシヴ・メタル風で迫ってますし、前作の『Magma』(2016年24位)からの「Silvera」はその年の第59回グラミー賞の最優秀メタル・パフォーマンス部門にもノミネートされているという、実力も認められてるバンド。今回のこのアルバムがキャリア最高位(UKアルバムチャートでは堂々6位初登場!)でしかも、実売枚数の24,104枚は今週の売上トップと結構な人気なので、今後も要注目ですかね。

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それ以外の圏外初登場では、25位にデッドヘッズの間では有名なグレイトフル・デッドのライブ音源コレクターの選曲によるシリーズ38作目(!)『Dave’s Picks Volume 38: Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY - 9/8/73』、30位にはノース・キャロライナ州シャーロットのエレヴェーション教会所属のコンテンポラリー・クリスチャン・バンド、エレヴェーション・ワーシップが、アトランタの教会所属のメイヴェリック・シティ・ミュージックとコラボした『Old Church Basement』、31位にはアトランタのインディ・ロック・バンド、マンチェスター・オーケストラの6作目になる『The Million Masks Of God』、41位にはHot 100で今「Quicksand」(今週65位上昇中)がブレイクしつつある、ノース・キャロライナ州フェイエットヴィル出身のラッパー、モレイの初ミックステープ『Street Sermons』、48位にはUKでは今週初登場1位で作品としてもいいのに、USでは何とこんな下だったんか!と個人的にはガッカリのロイヤル・ブラッド3作目『Typhoons』。これ、今回は1,2作目から趣向をぐっと変えて結構ビートの効いた作品で、ちょうどアークティック・モンキーズが化けた時みたいな感じで結構カッコいいんですけどねえ。

そしてこれもUKでは7位初登場と大ブレイクしてるのに、USでは今週67位初登場というのが寂しい、ガール・イン・レッドことノルウェーの女性シンガーソングライター、マリー・ウルフェンのインディ・デビュー作『If I Could Make It Go Quiet』(下の赤ずきんちゃんみたいなジャケがそうです)、74位には2000年頃以降アメリカで何故か根強い人気があって前3作はトップ10初登場だったんですが、今回はかなり地味なドロップキック・マーフィーズの10作目『Turn Up That Dial』、78位にはコンテンポラリー・クリスチャン・バンドの今や大御所、マーシーミーの10作目『Inhale (Exhale)』、そして100位にはUKでも8位初登場の、ピンク・フロイドの1990年ネブワースでのライブ盤が初登場と、まあ今週はいったいどうしたの?と思うほど圏外100位までに何と10作のアルバムが初登場という最近例を見ない賑わいぶり。これから夏にかけてUSはコロナ収束の兆しも見えてきているようだし、ぐっとリリースが充実していくのかもしれません。

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ということで今週のトップ10のおさらい(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

*1 (-) (1) Khaled Khaled - DJ Khaled
2 (1) (2) A Gangsta’s Pain - Moneybagg Yo
3 (3) (17) Dangerous: The Double Album - Morgan Wallen
4 (5) (7) Justice ● - Justin Bieber
5 (2) (3) Young Stoner Life: Slime Language 2 _ Young Thug & Various Artists
6 (6) (6) SoulFly - Rod Wave
7 (8) (57) Future Nostalgia ▲ - Dua Lipa
8 (10) (44) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
9 (7) (55) After Hours ▲2 - The Weeknd
*10 (-) (1) Country Again (Side A) - Thomas Rhett

さて、来週の1位予想。来週のチャート集計対象期間は5/7-13。その初日にリリースされたラインアップを見てもこれがガーンとDJキャレドを蹴落としそうなやつがないんですよねえビービー・レクサウィーザーといった中堅どころは目に付くんだけど、この様子だと下手すると来週もまたDJキャレドの天下になってしまうのか?それ、凄く嫌なんですけど(笑)。ということでまた来週。

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