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今週の全米アルバムチャート事情 #221- 2024/2/3付

こないだの週末は、ゴルフのPGAでは松山英樹選手が優勝争いには参加できなかったけど上がりイーグルで締めくくり、LPGAでは古江彩佳選手が最後まで堂々の優勝争いに絡むなど、ゴルフ好きにはたまらない週末になりました。そう言っていると今週末2月4日は立春で、週明けにはグラミー賞。野球の方もあと2ヶ月でもう開幕。未だに契約の決まらない藤浪晋太郎はどうなるのかというのも気になりますが、これから少しずつ春に向かう中開幕が既に待ち遠しいですし、2024年の音楽も次々に新しい作品が出て来るこの時期、いろいろと楽しみですね。

American Dream" by 21 Savage

さて今週の全米アルバムチャート、2月3日付のBillboard 200の首位は、何とか21サヴェージが2週目のポイント減を半分以下の40%に抑えるという踏ん張りを見せてくれて、今週も何と4%ポイントを増やしたモーガン野郎を抑えて、『American Dream』が無事2週目の首位をキープしました(78,000ポイント、うち実売1,000枚)。めでたしめでたし。今週はそのポイントのほとんど(77,000ポイント、1.03億回オンデマンドストリーミング相当)がストリーミング・ポイントだったんですが、先週Hot 100に5位初登場していた「Redrum」がチャート集計期間初日の1/19付スポティファイ・デイリー・チャートで、首位のジャック・ハーロウLovin On Me」と並んで2位を維持していた、というのがストリーミング・ポイントを支えた大きなポイントだったようです。

ところで実は21はイギリス生まれなので本来アメリカに住むにはビザが必要なところ、その事実をどうも届けていなかったらしく、2019年2月にアメリカ移民税関捜査局(ICE)に不法移民として逮捕されたんですが、その後移民法廷手続を経て拘留を免れ、永住権獲得に向けてここ数年いろいろ対応進めてたみたいです。そして晴れて去年10月にグリーンカードを取得した(去年コラボアルバムを出したドレイクがアルバム『For All The Dogs』収録の「8am In Charlotte」でこのことをラップしてるようです)21が今回のアルバムを『American Dream』というタイトルにしたのはそういう背景があったようです。これに合わせて、今年1月上旬にチャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーと自分が主演の自身の伝記映画『American Dream: The 21 Savage Story』をリリースする、とアナウンスしたんですがどうもこれはプロモーションを狙ったシャレだったらしいですわ(笑)。しかし改めてこのアルバム聴き返しても結局は全編トラップ・アルバムなので正直飽きますね。トラヴィス・スコットがフィーチャーされてる「Nee-Nah」とか、トラップ・ビートが比較的控えめに使われてるトラックはまだ聴く気がしますけど、いずれにしても先週Hot 100に初登場してた14曲(アルバムには15曲収録)は予想通り今週大きく順位を下げたり、圏外に消えたりして今週は10曲しか残ってない状況なので、今週リリースされた新譜の出力次第では来週の首位は厳しいでしょうね。

"Saviors" by Green Day

今週トップ10もう一つの初登場は49,000ポイント(うち実売39,000枚で今週のアルバム・セールス・チャート1位)で4位に入ってきた、グリーン・デイ4年ぶりの新作『Saviors』。UKアルバムチャートでは今週見事首位発進、通算5作目の全英ナンバーワン・アルバムを決めています。いかにもグリーン・デイ!という感じの先行シングルの「The American Dream Is Killing Me」は既に年末から年始にかけて、メインストリーム・ロック・トラック・チャートで8週1位を張るなど、相変わらずの根強い人気です。

先行シングルからも判るように、いつものロブ・キャヴァロの手堅いプロデュースで、アルバム全体お馴染みのグリーン・デイらしいストレートでポップながら、歌詞の内容もパンクなナンバー満載のアルバムで、音楽メディアの評価もまずまず(メタクリティックで72点)。ビリー・ジョーが50歳を超えても、グリーン・デイ・パワーは相変わらず健在です。去る1月16日には、レイトナイト・ショー・ホストのジミー・ファロンを従えて、NYミッドタウンのロックフェラーセンター地下鉄駅構内でサプライズ・ライブを敢行して、集まった地下鉄乗客たちのやんやの喝采を浴びたとのことで、こういうストリート・スピリットいいですよねえ。今年は5月からヨーロッパ、7月からは全米のスタジアム・ツアーに出るらしく、噂ではライブでは彼らの名盤『Dookie』や『American Idiot』から全曲をプレイするそう。この夏アメリカにライブ観に行く人、見逃せませんぜ。

"Sol Maria" by Eladio Carrión

さて今週トップ10の初登場はグリーン・デイのみですが、11〜100位の圏外は今週2枚が初登場。じわじわと新譜リリースも増えて来てるようです。まず37位にチャートインしてきたのは、今話題のカンザスシティ生まれ、プエルトリコ育ちのラテン・トラップ・ラッパー兼シンガーのエラディオ・カリオンの5作目になるアルバム『Sol Maria』。去年3月に出た前作『3men2Kbrn』が16位にチャートイン、彼にとって初のトップ40アルバムかつ過去最高位となってブレイクしたのですが、今回はちょっと順位を下げてます。

アルバムタイトルは彼のお母さんの名前らしく、多分ジャケ写の女性もそうなんでしょう。何でも今回のアルバムはこれまで彼のナンバーワンファンでいてくれている母親に捧げるアルバムにして、曲もお母さんが気に入ってくれそうな曲を集めた作品にしたい、ということのよう。そのせいか、先行シングルの「TQMQA」を筆頭に、全体的にラテン・トラップというよりはメインストリームなレガトン系のメロウなナンバーが多いようで、フューチャーリル・ウェインらをゲストに並べた前作よりはエッジが少ない感じですね。迎えてるゲストも今回はラウ・アレハンドロヤンデルなど、ラテン・アーティストで固めていて、さぞかしお母さん、喜んでるんでしょうね。親孝行なやつだなあ(笑)。

"Penith (The Dave Soundtrack)" by Lil Dicky

そしてもう1枚、54位に初登場しているのはペンシルヴァニア州出身の白人コメディ・ラッパーのリル・ディッキーの2作目で、彼自身が主演して自分をモデルにした架空の白人ラッパーがブレイクして世界一のラッパーになるまでを描いた(笑)という、ディズニー系ケーブル・チャンネルFXXで2020年から昨年5月まで放送されていたシットコム(ドラマ仕立てのコメディ番組)『Dave』のサントラ盤、『Penith (The Dave Soundtrack)』。よくそんなゆるい内容で3シーズンも保ったもんだ、と思いますが、ほぼ毎回ガンナヤング・サグ、リル・ナズXドレイクなど有名ラッパーや、ジャスティン・ビーバードジャ・キャット、アッシャーや更にはブラッド・ピットNBAレジェンドのカリーム・アブドゥル・ジャバーなど有名人ゲストが続々出てたみたいなので、それでもってたのかもしれません。

リル・ディッキーというと2018年にクリス・ブラウンをフィーチャーしていきなりHot 100に9位初登場した「Freaky Friday」(最高位は8位)でブレイクしたラッパーで、その後レオナルド・ディカプリオ財団と提携して、ジャスティン・ビーバーアリアナ、マイリー、エド・シーランなど大勢の有名シンガー達のボーカルをフィーチャーした地球環境保護を訴えた「Earth」(2019年17位)をヒットさせた、マジなんだかそうじゃないのかよく判らないヤツなんですが、今回のこのアルバムは番組の関係もあるんでしょうが、マジでラップはしてますね。ただあれだけ番組にゲスト入れてるのに共演はゼロで全部ピンでやってます。まあそれが54位という順位(前作のアルバム『Professional Rapper』は2015年に全米7位)のゆえんなんでしょうけど。

というわけで今週は100位までの初登場が3枚という、依然地味なチャートでした。Hot 100の方も、先週華々しく1位初登場を決めていたアリアナYes, And?」は今週6位に落ちて、代わりにジャック・ハーロウの「Lovin On Me」が通算4週目の首位に返り咲いてます。この鼻歌ソング、1位から落ちてもトップ10に居残っててクリスマス・ソングが消えた後とか、1位の強力な初登場がない週はするっと1位になってるというなかなか侮れないチャートアクションを見せてます。ただ来週のチャート集計期間初日の1/26付のスポティファイ・デイリー・チャートではこの曲を21サヴェージの「Redrum」が1位から引きずり下ろしているので、来週はひょっとして21サヴェージが今週のHot 100の10位から1位になるのかもしれませんね。では今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (2) American Dream - 21 Savage <78,000 pt/1,000枚>
2 (3) (47) One Thing At A Time - Morgan Wallen <63,000 pt/1,756枚*>
3 (4) (16) For All The Dogs - Drake <53,000 pt/64枚*>
*4 (-) (1) Saviors - Green Day <49,000 pt/39,000枚>
*5 (6) (61) Stick Season ● - Noah Kahan <48,000 pt/4,869枚*>
6 (5) (13) 1989 (Taylor’s Version) - Taylor Swift <47,000 pt/11,152枚*>
7 (9) (59) SOS ▲3 - SZA <41,000 pt/2,087枚*>
8 (7) (7) Pink Friday 2 - Nicki Minaj <39,000 pt/1,508枚*>
9 (12) (22) Zach Bryan ● - Zach Bryan <38,000 pt/2,338枚*>
10 (10) (231) Lover ▲3 - Taylor Swift <38,000- pt/6,071枚*>

ということで21サヴェージが徳俵に残って2週目の首位をキープした今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの来週の1位予想(チャート集計対象期間:1/26~2/1)ですが、今週もドーンと首位に登場しそうな新譜は見当たらず。レディへトム・ヨークのバンド、ザ・スマイルの2作目は上位に来ると思うんですが、6万ポイントを叩き出すのはキツそうで、せいぜいトップ10だと思うので、来週は21サヴェージにもうひと頑張りしてもらわないと、またまたポイントを減らさないモーガン野郎のゾンビ的首位復活がありそうないやーな雰囲気です。ではまた来週。

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