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今週の全米No.1アルバム事情 #48 - 2020/10/10付

日々秋が深まりゆく今日この頃。MLBのポストシーズンも地区シリーズに進んで盛り上がってるけど個人的には年末のサイ・ヤング賞ダルビッシュが取れるかどうかいうことのみ。WSは何だかんだでコールのいるヤンキースが取りそうだな、というのが僕の見立てです...なんて呑気なこと書いてたら、朝から何とエディ・ヴァン・ヘイレンジョニー・ナッシュの訃報が立て続けに飛び込んできて、ショック2連発VHのファーストのあの衝撃は未だに忘れないよ。R.I.P.エディ、そしてR.I.P.ジョニー。しかし最近訃報、多すぎる。

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さて今週末のBillboard 200の1位、先週の予想をまんまと覆して今週1位初登場したのは何とラッパーのはずだったマシンガン・ケリー(本名:リチャード・コルソン・ベイカー)がブリンク182トラヴィス・バーカーと組んでポップ・パンク・アルバムに挑戦した新作の5作目『Tickets To My Downfall』。マシンガン・ケリーなんつーと、自分は世代的にジェームス・テイラーの『マッド・スライド・スリム』を連想しちゃうのですが、このアルバム、126,000ポイントで実売も何と63,000枚というここんとこではテイラーの『folklore』初週(8/8の週)以来の数字を上げて、かつ8,110万回オンデマンドストリーミングを記録してるのが今回の躍進につながってますね。

実売の方もデジタルだけじゃなくて、ターゲット(アメリカの大手家電リテール)でのセールスも大きく貢献している模様。それもこれもブラックベアとコラボしてる先行シングルの「My Ex’s Best Friend」(先週付Hot 100で58位上昇中)が正にトラップ風味のポップ・パンク・ナンバー!って感じで今の若いリスナーにはとっても新鮮に響いたのかも。何か2000年代に流行ったシンプル・プランがトラップのビートに乗ってパンクしてるみたいな奇妙な爽やかさが。マシンガンブラックベアも白人だから、白人ティーンが結構喜んで聴いてる気もするな。いやでもこれは意外でした。

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そして1位初登場を予想していたスーパーMの初フルアルバム『Super One: The 1st Album』は初登場2位に泣きました。ポイント数は104,000ポイントとちょっとマシンガンに水をあけられたものの、実売では101,000枚と今週1位の売上で一応面目を保った格好。それでも前回1位のEP『SuperM: The 1st Mini Album (EP)』の実売164,000枚からは数字を落としていて、この間のBTSMap Of The Soul: 7』の初週実売が約35万枚だったのとはかなりの差。スーパーグループのはずなのに、後輩グループのBTSにここまで水をあけられたのって、本人たちも忸怩たる思いなんじゃないかなあ。

やっぱりこれはシングルのプロモーションの差が出てるのかもしれませんね。かたやガッチリプロモーションされた、70年代ディスコ風味マルーン5ブルーノ・マーズ的な売れ線バッチリのBTSと、硬派な楽曲作りのシングルがプロモーションも充分じゃなくてチャートインもしてないスーパーM、的な。どっちがいいかはよく判りませんが。

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そしてちょっと意外だったのが3位に初登場してきたジョージの2作目のアルバム『Nectar』(92,000ポイント、実売41,000枚)。去年音響派の今風R&Bバラード「Slow Dancing In The Dark」(全米69位)の小ヒットが、この手の音好きの間で話題になって、初アルバム『Ballads 1』もBillboard 200で今回同様初登場3位と躍進してて気にはなってたんだけど、こう続けて来るとやっぱこれ買わなきゃ、と思わせるに充分。しかも彼は日本人とオーストラリアのハーフで、日本姓は楠木さんというらしいからよけい親近感。

そして彼のPVはいつも諧謔精神たっぷりなのもいい。「Slow Dancing〜」は夜の街を白のタキシードで歩くジョージが矢を撃たれたりして血みどろになっていく、っていうやつだったし(ザ・ウィークンドの今回のPVは絶対これパクってると思う)今回のシングル「Sanctuary」は何とスターウォーズ+仮面ライダー的なキッチュなPVスーパーMといいこのジョージといい、アジア系、今週は熱いです。

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さあ今週は忙しい。続いて5位に初登場してきたのが、こちらは90〜2000年代ロックファンにはかなり懐かしいデフトーンズの4年ぶりの新作『Ohms』(49,000ポイント、実売43,000枚)。ふと思えばリンプ・ビズキットとかのミクスチャー・メタル・バンド最盛期に、それを上回る存在感で新しいメタルを提示した名盤『White Pony』から今年は20周年。で、今回のアルバムで彼らがやってることもパワーとテンションでは全く変わってないのがすごいなあ、と思うところですね。『White Pony』以降もコンスタントにヒットアルバム出してたの、今回改めて認識したので、一度聴き返してみようかなあ、と思ったのでした。そしてこのアルバム、ヴァイナルの売上が14,000枚で今週トップとのこと。根強いファンがついてるんですね。

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8位に初登場してきたのは、もうそんな季節なの?と思ってしまう、キャリー・アンダーウッドのクリスマス・アルバム『My Gift』(43,000ポイント、実売41,000枚)。これが彼女初のクリスマス・アルバムというのは意外ですが、デビュー以来の6作がすべてBillboard 200初登場1位か2位、という彼女にしてみれば、この8位初登場というのはやや不服なのでは。まあ内容的には2曲のオリジナル以外はすべてクリスマス・スタンダード曲なのでまあこんなもんでしょう。多分来年には前作『Cry Pretty』(2018年全米1位)以来の新作が出るんでしょうから、そちらは力強くチャートインしてくると思います。ではファーストシングルで彼女も共作しているオリジナル曲「Let There Be Peace」をちょっと聴いてみましょう。

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そして今週のトップ10内初登場のしんがりを務めるのが、10位初登場のトーリー・レインズ5作目のフルアルバム『Daystar』(36,000ポイント、実売2,000枚)。昨年リリースの『Chixtape 5』が83,000ポイントの実売9,000枚でしたから今回はかなり地味な商いになってしまってますが、その大きな要因と思われるのが、一つは前作までのインタースコープとの契約から離れて今回はOne Umbrellaという自ら設立したインディからのリリースになったこと。

そしてもう一つは何と言っても今年の7月に起きたと言われる、トーリーが今カーディBとのコラボ曲「WAP」が大ヒット中のミーガン・ザ・スタリオンの脚を銃で撃ったという事件とその後の両者間の泥仕合状況。この『Daystar』の曲は全曲この事件に言及していて、自分が無実であることを訴えてるらしいのだけど、そういうネガティブ・パブリシティは売上やストリーミングにはいい影響はないわけで。この争いの行方次第では、自分でレーベル立ち上げたはいいけど先行きが大いに不安なトーリーですなあ。ちなみにアルバムタイトルのDaystarというのはトーリーの本名。まあ自分を赤裸々にぶちまけた作品、って感じなんでしょうか。

ということで今週のおさらいです。今週は久しぶりにトップ10がにぎやか。6枚初登場というのは2年ぶりのことらしいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

*1 (-) (1) Tickets To My Downfall - Machine Gun Kelly
*2 (-) (1) Super One: The 1st Album - SuperM
*3 (-) (1) Nectar - Joji

4 (2) (13) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
*5 (-) (1) Ohms - Deftones
6 (5) (12) Legends Never Die - Juice WRLD
7 (1) (10) folklore - Taylor Swift
*8 (-) (1) My Gift - Carrie Underwood
9 (3) (3) Top - YoungBoy Never Broke Again
*10 (-) (1) Daystar - Tory Lanez

さて来週の1位予想。対象リリース期間の10/2-8リリース予定の作品リストを見ると、これはかなり混戦が予想される雰囲気。ヒップホップ系では21サヴェージメトロ・ブーミンのコラボ作、K-Pop系ではブラックピンクの満を持してのUS初アルバム、メインストリームだとボン・ジョヴィ(根強いファン多いですからね〜)、マライアの未発表曲集、そしてクイーン+アダム・ランバートのライブ盤あたりが、そろそろ始まる年末商戦に向けて結構強そう。この中だとひょっとしてボン・ジョヴィマライアが来そうな気がしますねー。さてどうなりますか、また来週。


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