見出し画像

今週の全米No.1アルバム事情 #55 - 2020/11/28付

いよいよトランプ大統領も新政権への移行手続きに応じたようで、やっとこれで来年1/20の新政権スタートに向けてのプロセスがスタート、未だにアメリカもコロナに苦しんでますが、何とか新しい年に向けて進み出しましたね。コロナ対応もぐっと進むことを期待しましょう。あ、日本もよその国のことを言ってられない状況になってきたので、くれぐれも感染拡大防止に努めなくては。

画像1

さて今週はグラミーのノミネート発表で、その困った内容についての記事を書いてたらこちらの記事が遅くなってしまいました(グラミーのノミネートについての記事はこちらをご覧下さい)が、何と今週のBillboard 200は嬉しい驚きが。先週の予想では、フューチャーリル・ウジ・ヴァートという最近のトラップ勢では人気最右翼の二人がコラボ・アルバムをドロップするのでそいつがぶっちぎりだろう、と言ってたんですが、何と今週1位に初登場したのはAC/DCの17作目になる『Power Up』(117,000ポイント、実売111,000枚)でした!いやあAC/DCには期待していたものの、さすがにトラップスター2人組には勝てないだろうと思っていたのでなかなか痛快です、これ(笑)。

今回のアルバムは2017年に創立メンバーの一人、ギターのマルコム・ヤングが亡くなってからの初のアルバムで、その間にボーカルのブライアン・ジョンソンは難聴のためにツアー出られなくなって一時脱退したり、ドラマーのフィル・ラッドは薬物不法所持や脅迫罪で在宅勾留のためこれも一時離脱とバンドがバラバラになりかけてたんですが、今回彼らも含めて前作『Rock Or Bust』(2014年3位)のメンバーがマルコム以外全員復帰(マルコムの代わりに甥のスティーヴィーが参加)するという何しろめでたいアルバムなんで、ファンがわっと群がったのも判るなあ。そしてこのアルバム、今週UKでも初登場1位です。

画像2

プラス、今回は通常のCD、デジタルダウンロード、ヴァイナルの他、49ドルの限定デラックスCDボックスをリリース。こちらは赤いAC/DCのロゴのボックスにスピーカーが埋め込まれていて、リード・シングルの「Shot In The Dark」(現在メインストリーム・ロック・チャート1位)が数小節流れるという凝った造り。いやいやいろいろやってくれます。そして音の方もちょっと耳にしただけで変わらず安心できる重厚なAC/DC節のハード・ロック!プロデュースはここ3作を手掛けている、名匠ブレンダン・オブライエン。ああ久しぶりにAC/DC聴いて血が沸いたわ(笑)。

画像3

そしててっきりこっちがぶっちぎり1位だと思ったトラップ・シーンの人気最右翼の二人、フューチャーリル・ウジ・ヴァートの『Plute x Baby Pluto』は105,000ポイント(実売5,500枚)で2位に初登場でした。まあ実売11万枚対5千枚の勝負ではしょうがないわなあ。こちらはヒップホップ作品の例に漏れず、ストリーミングでがっつりポイント稼いでて、この1週間で1億3,600回のオンデマンド・ストリーミングを記録したようですね。

そしてもう一つ、こちらも最近のヒップホップ作品の典型的マーケティング手法の、トラックを追加したデラックス・バージョンをオリジナル・バージョンの4日後にすかさずリリースしてポイントを稼いだわけですがそれでもAC/DCには及ばなかったというのが痛快です(もうええって)。これでフューチャーは5月の『High Off Life』(1位)に続いて今年2作目のトップ10チャートインですが、2015年の『DS2』以来続いていたアルバム連続1位記録は6枚(ドレイクとのコラボアルバムを入れると7枚)でストップということになりました。ちなみにHot 100の方では31位の「Drankin N Smokin」を筆頭に10曲が今週初登場してます。

画像4

そして3位に初登場したのが、こちらも先週名前が出ていた、クリス・ステイプルトンの4作目『Starting Over』(103,000ポイント、実売75,000枚)。こうしてみると今週の上位3位はむちゃくちゃ僅差の、そして高レベルの戦いだったんですね。上位3枚が10万ポイント以上を揃って付けたのは今年の2月29日付、1位ジャスティン・ビーバーChanges』の231,000ポイント、2位ア・ブギー・ウィット・ダ・フディArtist 2.0』の111,000ポイント、3位テイム・インパラThe Slow Rush』の110,000ポイント以来とのことでした。

今週カントリー・アルバム・チャートも当然征した『Starting Over』ですが、併せて全米アメリカーナ/フォーク・アルバム・チャートでも今週初登場1位。で、実はこのチャートではクリスの3作前の『Traveller』(2015年1位)が未だにロングセラーになっていて、つい先月も通算115週目の1位(!)を記録して、今週も『Starting Over』と並んで2位に着けているというオバケアルバムになってます。このアルバムもきっとロングセラーになるんだろうなあ。今回も『Traveller』以来クリスと一緒にプロデュースしている、今アメリカーナでは注目のデイヴ・コブがプロデュースしてます。

画像5

そしてAC/DCの1位に次ぐ今週のサプライズは、初登場ではないですが、先週36位→今週8位に大躍進した何とクイーンの『Greatest Hits』(36,000ポイント、実売24,000枚)!この要因としては、今週米小売大手のウォルマートが、在庫のすべてのヴァイナル・アルバムを15ドルに値下げして、常日頃ロングセラーを続けていた(ここ数年、強力なロック作品がなくて商いの薄い週はよくこのアルバムがロック・アルバム・チャートの1位にそろりと復活していました)このアルバムが最大の恩恵を受けたということらしいです。何でも実売24,000枚のうちヴァイナルが23,000枚の売上で、これは2020年では2/29付のテイム・インパラThe Slow Rush』(さっきも名前が出たな)の26,000枚に次ぐ今年2番めの記録らしいですやはりコロナの中、ヴァイナルは強い

画像6

そして今週最後の初登場は、今年これで4作目のトップ10初登場になる、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインのミックステープ『Until I Return』の10位初登場(31,000ポイント、実売500枚)。しかしこいつもよく出すな。そこらによくあるトラップ野郎達とは一線を画しているスタイルは一定評価できるし、まあそういうところが出せば売れる所以なんでしょうね。そういう意味ではスタイルは全然違うけどフューチャーに通じるようなところもあるな。ボーカル何言ってるかよーわからんところも似てるし(笑)。

彼も聞くところによると21歳にして何と5人の子持ち(!)らしいので、稼がなあかん、というのもこれだけ多作な活動のモティベーションなのかもね。ティーンエイジャーの頃はかなりのワルで、少年拘置所なんかにもいた経験があるらしいけど、今は逆に子供も抱えてるんだから真面目に仕事してもらって、ポップジュースみたいに早死しないように頑張ってもらいたいもんです。

画像7

ということで今週のトップ10まとめ。今週圏外では15位に2チェインズの『So Help Me God!』(おいどうした)、26位に盲目のオペラ歌手、アンドレア・ボッチェリの1位だった前作『Si』(2018)以来になる『Believe』、30位に最近毎年クリスマス・アルバム出してるアカペラ5人組ペンタトニックスの『We Need A Little Christmas』といったあたりが初登場してます(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

*1 (-) (1) Power Up - AC/DC
*2 (-) (1) Pluto x Baby Pluto - Future & Lil Uzi Vert
*3 (-) (1) Starting Over - Chris Stapleton

4 (1) (3) Positions - Ariana Grande
5 (2) (20) Shoot For The Stars, Aim For The Moon - Pop Smoke
6 (4) (54) What You See Is What You Get ▲ - Luke Combs
7 (6) (18) Legends Never Die - Juice WRLD
*8 (36) (413) Greatest Hits ▲8 - Queen
9 (3) (17) F*ck Love - Kid LAROI
*10 (-) (1) Until I Return - YoungBoy Never Broke Again

さて来週の1位予想ですが、11/20-11/26の対象期間でブラック・フライデー直前の期間にリリースされてる中でひときわ光ってるのがBTSの『BE』。そしてそれを阻む可能性があるのがジージー、ジョッシュ・グローバン、ミーガン・ザ・スタリオンのデビューフルアルバムといったあたりか。BTSミーガングラミー・ノミネート組ということで結構競るかもしれません。そしてもう一つひょっとすると絡んでくるかもしれないのが、ティム・マグローの2013-2019のベスト。いよいよ年末商戦の雰囲気が漂って来ました。ということでまた来週。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?