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今週の全米アルバムチャート事情 #165- 2023/1/7付

皆さん明けましておめでとうございます!東京は穏やかな天気の3が日でしたが、皆さんお住まいのところはどうだったでしょうか。年末駆け込むようにDJ Boonzzyの2023年ベスト・アルバム・ランキングをお届けしましたが、お正月の間お楽しみ頂けていたらうれしいです。今年は早々に2/5(日本時間2/6)に第65回グラミー賞が発表されますが、例年音楽評論家の吉岡正晴さんとやっている、グラミー大予想DJ&トーク・イベント「ソウル・サーチン・ラウンジ」、今年は1/24(火)新宿カブキラウンジで19時から開催です。詳細は吉岡さんの下記のnoteの記事に掲載されていますので、是非お時間のある方はお越し下さい。

"SOS" by SZA

さて新年第1週、1月7日付のBillboard 200、全米アルバムチャートの1位。先週の予想ではSZAがポイントを下げ、テイラーがあまり下げずにテイラーが1位返り咲き、と言ってたのですがテイラーが32%と思いの外ポイントを減らしたのに対してポイント減は29%と粘り腰を見せたSZAの『SOS』が128,000ポイント(うち実売1,000枚)で3週目の1位をマークしています

このアルバム、お伝えしているようにメディアの評価も高いんですが、去年から家を出て友人とアパートに住んでる末娘が年末年始に帰省してきた時に、家に帰ってくるなりこのアルバムいいよね、といってガッツリ聴いていたので、思わずそうそう、これいいよね!という会話が一瞬はずんで、何だかうれしくなりました。そんなSZAのこのアルバム、今週もそのポイントのほとんどがストリーミングなので、来週もあまりポイントを減らさずに、10万ポイントくらいは維持するんじゃないでしょうか。そしてこのアルバム、まだフィジカルがリリースされてないので、この後1位を譲ったとしても、CDやヴァイナルがリリースされたらまたどーんと戻ってくるでしょうね。いずれにしてもこのアルバムは個人的にもしばらくパワロテしそうです。

"A Christmas Gift For You From Phil Spector" V.A.

さて、年末新譜リリースがほとんどない中、今週はトップ10内初登場はゼロです。そして、集計期間がクリスマスを含む去年の12/23〜29ということもあってトップ10では引き続きクリスマス・アルバムが元気にポイントを伸ばしていて、ナット・キング・コールが5位にアップしてチャート最高位を更新している他、マライアが9位、チャーリー・ブラウンのクリスマス・アルバムが10位で頑張ってます。あと、圏外11位〜8位に、Hot 100でランクされているロネッツの「Sleigh Ride」などを含むフィル・スペクターのクリスマス・アルバムがトップ10復帰してます。でも来週は集計期間が12/30-1/5になりますので、クリスマス・アルバムは来週はそろってチャートから姿を消すことになるでしょうね。

"Lost Files" by YoungBoy Never Broke Again

一方トップ10圏外100位までに目を向けると今週の初登場は3枚。そのトップを切っているのが、45位に初登場しているヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン(YBNBA)のコンピ・アルバムというかミックステープの『Lost Files』。相変わらずのバリバリトラップ一色のアルバムですが、これまでと違うプロデューサーを起用しているとのこと。正直言って違いはよく判りませんが(笑)ちょっとエモっぽいトラックが多いのかもしれません。

このミックステープはコラボ作も含めて2022年で8つめで、最終リリースで、ファンに向けてのクリスマス・プレゼント代わりとのこと。相変わらずの多作ぶりですが、2023年早くも1月1週目にアルバムリリースが予定されていて、本当に露出過多で人気が維持できるのか、他人事ながら心配になりますわ。

"A Philly Special Christmas" by Lane Johnson, Jason Kelce & Jordan Mailata of Philadelphia Eagles

続いてぐーっと下がって80位に入って来たのが、NFLフィラデルフィア・イーグルスのオフェンス・チームのレーン・ジョンソンジョーダン・メイラタ(共にオフェンシヴ・タックル)、そしてジェイソン・ケルシー(センター)によるクリスマス・アルバム『A Philly Special Christmas』。今正にNFLシーズンも終盤でプレイオフに向けて盛り上がる中、今シーズン13勝3敗という圧倒的成績で既にプレイオフ進出を決めているイーグルスのオフェンス3人が、フィリーに愛を届けたい!ということで昨年夏にレコーディングされたアルバムみたいです。当初はヴァイナルのみのリリースだったんですが、今週のチャートの集計期間にデジタルダウンロードとストリーミングが始まったため、一気にポイントを伸ばしてこの初登場になった模様。そのレコーディングの様子を収めたミニドキュメンタリーがなかなか微笑ましい内容なのでご覧下さい。

ただの有名人のお遊びではなく、かなり真剣に取り組んでる(でも楽しみながら)様子が伝わって来ますが、実はケルシーは以前フィラデルフィアのラジオ局の番組で、自作曲とジェイソン・イズベルの曲を演奏した経験があり、メイラタは韓国発祥のTV番組『マスクト・シンガー』に出演したこともあるという、実はそれなりの実力派のようです。プロデュースは同じフィリーのオルタナ・ロックバンド、ザ・ウォー・オン・ドラッグスのドラマー、チャーリー・ホールがこちらも楽しみながら務めてます。これからプレイオフに入って行くNFL好調イーグルスが2017年以来2回目のスーパーボウル・チャンピオンを決めるかという状況なので、イーグルスファン、そしてフィラデルフィアのスポーツファンが大いに盛り上がるアルバムであることは間違いないですね。

"All My Homies Hate Ticketmaster (Live From Red Rocks)" by Zach Bryan

そして今週最後の100位までの初登場アルバムは、2022年に最も大きくブレイクしたアーティストの一人、ザック・ブライアンのライブ盤『All My Homies Hate Ticketmaster (Live From Red Rocks)』。大ヒットアルバムで去年6月から今週もアメリカーナ・フォーク・アルバムチャート首位を通算30週、先週までロック・アルバム・チャートでも通算12週首位を走っていた『American Heatbreak』、7月にリリースしたEP『Summertime Blues』に続く2022年リリース3作目で、昨年11月にコロラド州の野外ライブ会場、レッド・ロックス・アンフィシアターで行われたザックのライブを収録したもの。当日は11月にもかかわらず会場を吹雪が襲ったそうで、曲間で「こんなに寒い日に来てくれてありがとう!」とザックが何度もコメントしてます。

そしてこのタイトル。そう、今や全米のコンサート・チケット・マーケットを寡占してチケット料金を吊り上げていると目されているチケットマスター社に対して、ザックは以前からツイッターで厳しい発言を繰り返してますが、この時のライブのチケットが450ドルまで高騰していたことを聴き、11月のツイートで「俺の今後のコンサートチケットの流通はチケットマスター以外のルートを使って普通の子達が少しでも安く観てもらうようにするぜ。俺の仲間(Homies)はみんなチケットマスター、大嫌いだからな!」といったのをそのまんまアルバムタイトルにしてるんですね(笑)。チケットマスターライヴネイションによるチケット市場寡占は、FTC(合衆国公正取引委員会)米国法務省が両者の合併解消を要求したくらい今全米で大きな問題なので、このタイトルを見てザックのファンのみならず多くの音楽ファンが喜んでこのアルバムをストリーミングしたんでしょうな。既に今年新作リリースを予定しているというザックの活躍、まだまだ続きそうです。

さて正月なのにまだクリスマスアルバムが強くて、やや違和感がある今週の全米アルバムチャートですが(トップ10内5枚、100位内では何と33枚!)、来週はこれらが一掃される予定で、ガラリと違うチャートになりますね。ではトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (3) SOS ● - SZA <128,000 pt/1,000枚>
2 (2) (10) Midnights ▲2 - Taylor Swift <106,000 pt/55,000枚>
3 (5) (108) Christmas ▲6 - Michael Buble <62,000 pt/3,855枚*>
4 (4) (4) Heroes & Villains - Metro Boomin <58,000 pt/333枚*>
5 (7) (73) The Christmas Song ▲6 - Nat King Cole <57,000 pt/2,576枚*>
6 (6) (8) Her Loss - Drake & 21 Savage <50,000 pt/288枚*>
7 (10) (34) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <48,000 pt/1,399枚*>
8 (11) (31) A Christmas Gift For You From Phil Spector - Various Artists <47,000 pt/994枚*>
9 (9) (116) Merry Christmas ▲8 - Mariah Carey <47,000 pt/3,068枚*>
10 (8) (107) A Charlie Brown Christmas (Soundtrack) ▲5 - Vince Guaraldi Trio <45,000 pt/11,000枚>

2023年最初の「全米アルバムチャート事情!」、今週はやや地味なチャートでしたがいかがでしたか?最後はいつものように来週の1位予測ですが、来週のチャートの集計期間、12/30-1/5は新譜リリースがほとんど皆無の空白の週だったので、来週も10万ポイントを維持しそうなSZA2008年のアリシア『As I Am』以来の黒人女性シンガー4週1位を決めるのではないかな、と思ってます。ではまた来週!


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