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海外ユニコーンからみるクリエイターエコノミーの未来

皆さんめちゃくちゃご無沙汰です。初めましての方はありがとうございます。ちょっと久しぶりの予定のない連休だったこともあり、自分の頭の整理も兼ねてクリエイターエコノミー領域の海外ユニコーンといえば…といった会社を13社ほど改めてまとめてます。またその中で感じたことも忙しい人向けにいつも通り冒頭に結論だけ書かせていただくので、個別企業については是非twitterなのかnoteなのかわからないですが、保存でもして後でじっくり目を通していただければ幸いです。

これまでクリエイターエコノミー領域においてユニコーンステータスを築き上げた海外企業を改めて整理し、直近のこの業界の新サービスや話題の中心になっている会社と話す中で感じたこととしては、

・本稿で取り上げているいわゆるクリエイターエコノミー黎明期から事業を展開している会社はどこもコロナ環境下における競合の急激な台頭及び生成AIのブレイクスルーによる技術の地殻変動によって苦境に立たされている印象が強い(市場要因も相まって直近の大型調達も少ない)。

・一方で、本稿では取り上げていない生成AI系の企業や(市場の浮き沈みはあるものの)web3.0領域のクリエイターエコノミー関連企業はビジネスの在り方を根本的に変えるものが多く、企業価値もユニコーンステータスまであっという間に跳ね上がるものが多い印象。(クリエイターエコノミー黎明期でいうYouTubeやインスタグラムに近い位置づけ)

・結局これまで以上に①クリエイターにとっての活動ROI、②消費者にとってのコンテンツ価値、③サービスプロバイダーによる持続的なビジネスモデルのバランスが大切になってくるし、ここは本質としては変わらない。

※こちらはあくまでも仕事と関係なく趣味として書かせていただいているので、所属に関係なく個人のものとしてお考え下さい。また、特に細かい部分は配慮せず徒然なるままに書かせていただいてるので、細かいデータや論点は大目に見ていただけると幸いです。少しでもこれを読んでもう少し話したいと思った方は気軽にお声がけください。

クリエイターエコノミー海外ユニコーン13選

1.Pateron(メンバーシップPF)

https://www.patreon.com

創業:2013
直近ポストバリュエーション:$4B(約5,600億円)(2021/11時点)

【事業概要】
Patreonはコンテンツクリエイターやアーティストが自分のファンを直接マネタイズできるようなプラットフォームを運営しています。クリエイターに動画、写真、画像、アートワーク、グラフィック、音声クリップ、コメント、データ、テキスト、ソフトウェア、スクリプト、プロジェクト、その他の素材や情報、関連する商標や著作権作品など、さまざまなコンテンツ制作ツール及び発信手段を提供しており、これらを月額メンバーシップといった形でファンからマネタイズできます。

【補足・コメント】
テキストから動画コンテンツまで自由に投稿できる上に、メンバーシッププラットフォームの先駆けだけあってメンバーシップのTier毎の細かい区分けや顧客分析ツール含めて充実している印象です。日本で同社と類似したサービスとしてはまさしく本プラットフォームであるnote社。一方で、今となってはかなりサービスとしてはコモディティ化してしまってなかなか差別化が難しい印象。

2.Lightricks(編集アプリ)

https://www.lightricks.com/

創業:2013
直近ポストバリュエーション:$1.8B(約2500億円)(2022/2時点)

【事業概要】
Lightricksは、モバイルデバイス上で視覚コンテンツを作成して共有できるクリエイティブツールを開発しています。Lightricksの製品にはFacetune、Facetune 2、Enlight、Enlight Photofox、Enlight Videoleap、Enlight Quickshotがあります。

【補足・コメント】
俗に言うユニークなフィルターや編集機能を持つアプリを複数開発している会社。画像生成AIのようなツールが急激に台頭する中で、こういった革新的な技術にどこまで対抗できるか?またTiktokのようにプラットフォーム側が簡易的で十分な機能を提供できるように中、わざわざ別アプリという導線がどこまで有効かもチャレンジの1つ。

※同領域のユニコーンとしてPicsartも挙げられますが、こちらも同様の課題があると感じられます。さらに同社の場合は上位交換サービスとしてAdobeが存在するのでさらに難しいと個人的には感じております…

3.Clubhouse(音声PF)

https://www.clubhouse.com/

創業:2020
直近ポストバリュエーション:$4B(約5,600億円)(2021/6時点)

【事業概要】
Clubhouseは、ユーザーがグループチャットに参加することができるオーディオベースのソーシャルアプリです。友達や他の興味深い人々とのカジュアルなオーディオ会話の場を提供し、ユーザーはいつでもオンラインでフォローしている人々とチャットしたり、リスナーとして他の人々が話している内容を聞くことができます。

【補足・コメント】
日本でも一世を風靡したClubhouse。今となっては懐かしいって言う人の方が多いのではないでしょうか?諸説ありますが、結局twitterのスペースやVoicyのようなプラットフォームによる代替、(発信者含む)コンテンツの弱さ、そしてコロナの一過性需要といった理由で最近ではすっかり聞かなくなってしまいましたね。

4.Cameo

https://www.cameo.com/

創業:2016
直近ポストバリュエーション:$1.0B(約1,400億円)(2021/3時点)

【事業概要】
Cameo(カメオ)は、ファンがお気に入りの人物からパーソナライズされたビデオシャウトアウトを予約できるマーケットプレイスであり、ミッションは世界で最もパーソナライズされた本物のファン体験を創造することです。

【補足・コメント】
今となってはクリエイターエコノミー領域のユニコーンだと老舗感が出ているCameo。憧れの人からビデオメッセージが届くというアイデア自体は当時斬新だったのですが、今では日本でも類似サービスがいくつか誕生しております。また実務上、トップクリエイターであればあるほどビデオメッセージをしてもらうための稼働を確保するのが1つこのビジネスを伸ばすうえでの難しさと感じております。

5.Masterclass(教育PF)

https://www.masterclass.com/

創業:2014
直近ポストバリュエーション:$2.7B(約3,800億円)(2021/7時点)

【事業概要】
MasterClassは誰もが芸術・エンタメ・ビジネス・デザイン・スポーツ・ゲームといった様々なジャンルから有料で学べるストリーミングプラットフォームです。

【補足・コメント】
YouTube・Khan Academyといった無料で優良コンテンツが公開され学べる時代においては一見なかなか難しそうなビジネスモデルである印象ですが、ユーザーからすると芸術分野のように大衆向けというよりはより専門性が高く個に依拠した領域においてはこのビジネスモデルは一定機能しています。
※同領域のユニコーンとしてDomestikaも挙げられます。

6.Linktree(管理PF)

https://linktr.ee/

創業:2016
直近ポストバリュエーション:$1.3B(約1,800億円)(2022/3時点)

【事業概要】
LinktreeはInstagram, TikTok, Twitter, YouTubeといった複数メディアに分散したアカウントを一括でリンクさせて管理したうえで、課金に応じてファンベースを伸ばすための機能やサービスラインナップを提供してます。

【補足・コメント】
多くのクリエイターエコノミー領域のユニコーンがここ数年のコロナによる競争環境激化や生成AIのような技術の地殻変動の影響を受けている中、影響が少ない会社の1つである印象。個人的にはあと2Cフリーミアムモデルを採用している同社がどこまでマネタイズに持っていけるかが興味深いですね。

7.LTK(EC直販PF)

https://www.shopltk.com/

創業:2011
直近ポストバリュエーション:$2.0B(約2,800億円)(2021/11時点)

【事業概要】
LTKは、ECに特化したブランド販売プラットフォームです。ユーザーはクリエイターの自社ブランドからプロモーション商品までインフルエンサーページから直接購入でき、クリエイターは自分が販売するブランドのパフォーマンスを探索から取引までのROIやフルファネルのブランドパフォーマンス測定ができます。また、ブランドに対してもコンサルティング提携、ショッパー配布、ショッピングアプリ、パフォーマンス測定、マーケティングサービスも提供しています。

【補足・コメント】
2022年の販売総額が36億ドルと、クリエイターの稼ぎ頭であるコマース領域に特化している点ではクリエイターエコノミーど真ん中のサービス。懸念点があるとすればinstagramやtiktokのようなファンが直接コンテンツを消費するPFから商品購入導線を引かれた場合は一部バッティングするリスクはありえますね。私が知らないだけかもしれませんが、日本はまだこういうクリエイターコマース特化のアプリはない印象ですね。

8.Whatnot(コレクター向けライブコマースPF)

https://selleracademy.whatnot.com/

創業:2019
直近ポストバリュエーション:$3.7B(約5,000億円)(2022/7時点)

【事業概要】
Whatnot(ワットノット)は、ロサンゼルスを拠点とするスタートアップ企業であり、コレクターアイテムを買ったり売ったりするためのマーケットプレイスです。

【補足・コメント】
a16z, Y Combinatorといった錚々たる投資家から支援を受けた同社は創業からわずか2年足らずで、米国でもっとも価値の高い独立系ライブストリームショッピング企業となりました。一般的にはこのようなサービスはニッチ向けだからスケールしづらいと言われますが、同社のように複数ニッチ領域を抱えてしっかりブランディングしていければ面白い可能性は十分にありえますね。あとはライブショッピングという形態が①対他PFとどのように棲み分けるか?、②国ごとの商慣習にどう適応していくかあたりが大きな焦点ですね。

9.Flutterwave(クリエイター向け決済インフラ)

https://flutterwave.com/us/


創業:2016
直近ポストバリュエーション:$3.0B(約4,200億円)(2022/2時点)

【事業概要】
Flutterwave(フラッターウェーブ)は、EC業者や決済サービスプロバイダー向けの決済インフラを提供しています。商品やサービスを販売するためのオンラインマーケットプレイスも提供しています。さらに、ビジネスが支払いを受け取るためのスマートペイメントオーダーシステムを含む支払いツールも提供しています。

【補足・コメント】
サービスとしてはルーツのアフリカを中心にローカルの細かいニーズを取り込んでfintech giantであるstripeのような会社にも局所的に勝ちを収めている一方で、どこまで競争の激しいfintech領域でシェアを広げられるかがチャレンジとして残り続ける印象ですね。

10.Jellysmack(クリエイター収益最大化サービス)

https://jellysmack.com/

創業:2016
直近ポストバリュエーション:$1.0B(約1,400億円)(2021/5時点)

【事業概要】
Jellysmack(ジェリースマック)は、デジタルメディア企業であり、ソーシャルメディアコンテンツの制作と配信に特化しています。彼らは人気のあるソーシャルメディアクリエイター、インフルエンサー、コンテンツオーナーと協力し、Facebook、Snapchat、YouTube、Instagram、TikTokを含むさまざまなプラットフォーム上でのコンテンツの最適化と収益化をサポートしています。Jellysmackは、データに基づいた戦略とコンテンツ最適化を通じてコンテンツクリエイターがより広い視聴者に届き、エンゲージメントを増やし、収益を最大化する手助けをしています。

【補足・コメント】
伝統的なIP企業のようにクリエイターの動画権利を買い取ってそこのマネタイズを最大化していくことで利ザヤをとっていくビジネスモデル。非常に面白いアプローチである一方で、目利きとプライシングが命であり、一歩間違えるととんでもない逆ザヤになります。また、広告市場全体の影響を受ける点も留意しないといけないですね。

※同領域の後発ユニコーンとしてSpotterも挙げられます。

11.Opensea(NFT PF)

創業:2017
直近ポストバリュエーション:$13.3B(約1.9兆円)(2022/1時点)

【事業概要】
OpenSeaは暗号化コレクティブルと非代替トークンのためのP2Pマーケットプレイスです。コレクティブル、ゲームアイテム、およびブロックチェーンによって裏付けられた仮想商品が含まれています。OpenSeaでは、誰でもスマートコントラクトを通じてこれらのアイテムを購入または販売することができます。

【補足・コメント】
言わずもがな世界最大のNFT流通プラットフォーム。広義な意味ではクリエイターエコノミーに入る気がしますが、正直これまでのものとはまったく評価軸含めて異なる気がするのでなんともいえないですね…業界人は良く耳にしますが、やはりどこまでNFTというものの意味を消費者観点から投機目的以外で生み出せるかが今後の業界の発展を占う大きなポイントになると思います。

12.Axie Infinity(X to Earn)

創業:2018
直近ポストバリュエーション:$3B(約4,000億円)(2021/10時点)

【事業概要】
Axie Infinityは、Ethereumプラットフォーム上でアクシーと呼ばれるファンタジークリーチャーを集めて育てるゲームです。集めたり育てたりする他にも、アクシーチームを組んでアリーナでバトルすることができます。また、マーケットプレイスで他の人とアクシーを買ったり売ったりトレードしたりすることもできます。

【補足・コメント】
X to Earnの先駆けとして注目を集めたAxie Infinity。web3.0の概念を取り込んでこれまでのビジネスモデルとは一線を画して話題になりましたが、ポンジースキームとも一部で言われた同社のビジネスモデルは実質的に難しい状況にあります。参入時期に関わらず、全ての参加者にとって持続的なインセンティブ設計・魅力的なコンテンツ、投機的なプレイヤーに左右されないスケールとトークンエコノミクスの設計の重要性を理解させてくれる事例。

13.Genies(アバター制作PF)

https://genies.com/


創業:2017
直近ポストバリュエーション:$1B(約1,400億円)(2022/4時点)

【事業概要】
Genies(ジーニーズ)は、アバターテクノロジー企業です。Geniesは最近、消費者向けのARデベロッパーキットを介して事業を立ち上げ、開発者がモバイルおよびハードウェアAR向けの相互運用可能なアバターエクスペリエンスを作成できるようにしています。最初のアバターエクスペリエンスであるSilver Studioでは、ユーザーがデジタルファッションをデザインして交換することができます。

【補足・コメント】
DisneyのBob Igerから出資を受けたり、ユニバーサル ミュージック グループやワーナー ミュージック グループと提携して、彼らのアーティストの"公式アバター"として活用されたり、業界知名度の高い会社。注目を集め始めているのも比較的最近であり、アバターのクリエーションプラットフォーム・マーケットプレイス・メタバースなどのユースケース含めてこれからの動向に注目ですね。



最後まで読んでくださった方ありがとうございました!最近はちょっとnoteの更新はできていませんが、twitterなどでは不定期にクリエイターエコノミーまわりの海外動向やスタートアップ実務と投資両サイドからたまに言及してるんで興味ある方は気軽にフォローしてください。

次回は需要あれば、個人的にクリエイターエコノミーに大きな影響を与えそうな生成AI・web3.0まわりの海外企業について深堀ります。明日からまた頑張りましょう~

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