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大和正伝紀 ~教科書が絶対に載せない真実の歴史~

 ここは江戸時代。読者の皆さんも知っているだろう、西暦1600年に関ヶ原の戦いで徳川家康が豊臣秀吉を倒して開いた幕府だ。史実では江戸時代はその後、数百年にわたって続くが……ここに真実を記そう。
「うわあ、怪物だ!」
「助けてー」
 街が燃え人々が逃げ惑っている。人々を追い立てているのは恐ろしい鬼……そう、妖怪だ。架空の存在である筈の妖怪が街を焼いている!そして妖怪の群れを率いるのは、史実では名将として知られる平将門!なぜ彼がこんなことを?
「待て、将門!」
 だが将門軍から人々を守るべく侍の一団が立ちはだかった。テレビの『大暴れ将軍』で有名な徳川吉綱だ。
「将門、名将として知られるお主が何故こんなことを」
「フフフ、将軍様よ。オレは偉大な妖怪の力を手に入れた。もはや幕府に従わずオレが天下を取る」
「なにっ」
「妖怪ども、かかれ!」
 妖怪たちが吉綱軍に襲いかかった!吉綱の側近である新撰組も応戦する!「士道心得!士道心得!」勇ましい掛け声をあげて戦う新撰組。だが妖怪は強く数も多いので劣勢に追い込まれる!吉綱も聖剣・政宗を抜き将門と激しい死闘を繰り広げた……だが。
「くたばれ、吉綱!」
「ぐわあ!」
 数時間の死闘の末、政宗は折れ、将門の妖刀村雨が吉綱の胸を貫いた。「む、無念…… 江戸時代もここまでか……」
 吉綱は息を引き取った。
「これでオレの天下だ。人間は愚か、妖怪の方が聡明なのだ!」
 将門の高笑いが燃える江戸に響き渡り、ここに江戸時代は終わりを告げた。天皇を操り人形にした将門は将門幕府を開き、恐るべき妖怪の力で各国を独裁支配した。抵抗する国もあったが、恐ろしい妖怪の力の前には屈していった。
 だが将門は知らなかった。吉綱が討たれたあの日……新撰組の副長である山本勘助が吉綱のおさない赤子を連れて江戸を脱出していたのを。

 それから17年後。貿易都市・長崎のとある中国拳法道場にて、一人の少年が修業に励んでいた。彼の名は劉備。

【つづく】

#逆噴射小説大賞2019

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