見出し画像

「小さな心ダイアリー」プロジェクトからみる新たな協働のカタチ


「コレクティブインパクト」という言葉を知っていますか?

米国のコンサルティング会社で働くJohn Kania氏とMark Kramer氏が提唱した概念で、企業や行政、NPO、市民などが協力し、社会問題に取り組むことで生まれる成果のことを指します。

編集部は、ボーダレス・カンパニオの取り組みを知れば知るほど、さまざまなコレクティブインパクトが生まれていることに気づきました。これから少しずつ具体的な事例を紹介していきたいと考えています。

今回ご紹介するのは、子どもの心の変化にいち早く気づくための小さな心ダイアリー」プロジェクト。発起人であるワオフル株式会社の辻田寛明さんと小さな森の学童株式会社の戸倉恵利香さんにどのような共創が生まれているのか話を聞きました。

<話を聞いた人>
辻田 寛明
2019年、株式会社ボーダレス・ジャパンに入社。事業の立ち上げサポートなどを経て、子どもたちが自分と世界を好きになれる社会をつくるため、20年にワオフル株式会社を設立。不登校の子のためのオンライン伴走家庭教師「夢中教室WOW!」を展開する。

戸倉恵利香
一般企業での社会人経験を経てフィリピンで日本人向けのオルタナティブスクールの運営に携わる。帰国後、公設学童で経験を積んだ後、民間学童の施設責任者を務める。子どもたちが自分らしくいられる場所をより持続的な形で作りたいと思い2021年6月ボーダレス・ジャパンのカンパニオに参画。少人数制の学童保育「小さな森の学童」を設立し、現在は2施設目の開設準備中。

子どもの教育に取り組む同志が「小さな心ダイアリー」づくりに至るまで

− お二人が一緒にプロジェクトを始めるに至った背景について教えてください

辻田:僕と戸倉さんは、互いに「子どもの教育」をテーマにソーシャルビジネスに取り組んでいることもあって、以前から定期的に情報交換を行っていました。

僕は、オンラインで事業をやっていますが、小さな森の学童は、オフラインで事業をやっています。視点やノウハウが異なるので、お互いに学びがたくさんあるんです。

戸倉:経営のことはもちろん、ソーシャルインパクトをどうやって大きくしていくかも話せますし、何よりなかなか話せない資金繰りなど経営的な側面もなども相談できるのがありがたいです。

辻田:ボーダレスのカンパニオならではですよね。外部のビジネスパーソンと話すと、どうしても売上や利益の話になりがちですが、あくまでも「ソーシャルインパクトを拡大するためのビジネス」という共通認識があるため、事業の目的を見失わずに話せるのが良さだと思います。

− 子どもたちの心の変化に気づく「小さな心ダイアリー」を作ることになったきっかけは何だったのでしょうか?

昨年の4月ごろ、お互いの近況を話している時に、戸倉さんが学童で使用しているノートについて紹介してくれたのが最初のきっかけでした。

戸倉:小さな森の学童では、子どもたちがやりたいことをみんなで話し合って決めるようにしていますが、いきなり話がスタートすると「みんながこう言ってるからそうしよう」という子がいることに課題を感じていました。

そこで、まずは一人ひとりが「今、自分は何を考えているかな。今日は何をしたいかな」と考える習慣を付けたいと思い作ったのが、このノートでした。

小さな森の学童で使われていた実際のノート

子どもたちの意見を取り入れながら改善を重ね、次第に子どもたちも「学校でこんなことがあった」「今日はちょっとしんどい」など、いろいろなことを書いてくれるようになり、私たち大人も子どもの気持ちの変化を今までよりキャッチアップできるようになったんです。

辻田:僕も不登校の子に伴走するオンライン家庭教師事業を行っているため、「そのノート、うちでも取り入れたい!」と話しているうちに、「このノートをもっと良いものにできるんじゃないか」という話からプロジェクトがスタートしたんです。

専門家と個々の強みを活かすことで見えたプロジェクトの「道筋」

− プロジェクトはどんな風に進めていったのですか?

戸倉:小さな森の学童で使っているノートは、私の感覚で作ったものだったので、心理学的な観点から専門家の方に監修をお願いして、「子どもの小さな心の変化に気づけるもの」を作ろうという話になりました。必ずノートでなければならないというこだわりはなかったんです。

辻田:僕らは現場の感覚は分かるけど、専門知識に長けているわけではありません。お互い知っている専門家の方にお声がけしたところ、みなさん取り組みに共感してくださり参画いただけました。

戸倉:臨床心理士、児童精神科医、スクールカウンセラー、教師、発達支援の専門家などさまざまな分野の方に参加いただいています。それぞれの立場の観点を活かしながらディスカッションを重ねました。

オンラインミーティングの様子

最初は、子どもたちが楽しく遊べるボードゲームなどさまざまなアイデアが出ましたが、最終的には「日常的に使えるもの」かつ「子どもたちが面白く楽しくできる」という観点から「小さな心ダイアリー」にしようと決めました。

− 小さな心ダイアリーを制作する上で工夫した点はありますか?

辻田:より子どもたちの心の変化に気づけるような工夫を取り入れています。例えば、自由記述式だと、言語化が難しい子がいて心の変化に子ども自身も気づきにくいことがあります。そのため、表情を選ぶ選択式にしています。他にも、問いに対して子どもの状態に寄り添った回答ができる選択肢を追加したり、別添の付録を用意したりしています。

問いや選択肢の一つひとつに、専門家の方からのアドバイスが反映されており、私たち自身も制作する中で大変勉強になりました。大人たちは、子どもの答えに合わせて「そういう時どうするか」を考えることができますし、子ども自身も対処法が学べるようになっているのは大きな特長です。

多くの人を巻き込むために仕掛けたクラウドファンディング

− 現在、クラウドファンディングに挑戦されているとのことですが、その理由を教えてください。

戸倉:「たくさんの人に知ってほしい、巻き込みたい」という気持ちが一番大きかったです。専門家の方の協力を仰ぎながら制作したこともあり、より多くの方に知ってほしい、使ってほしいなと思いました。

辻田:クラウドファンディングであれば、子どもとのコミュニケーションに悩む親御さんや僕たちのような子どもたちと接する仕事に従事している方々に知っていただけると思ったんです。応援してくれた方々と一緒に、オープンチャットなどを活用してダイアリーの使い方を共有するのも今から楽しみです。

小さな心ダイアリーのイメージ

− クラウドファンディングをやると決めてからの動きを教えてください

辻田:昨年の11月末頃に動き始めて、1月にプロジェクトを公開しました。僕たちが選んだのは、掲載手数料0円のクラウドファンディングプラットフォームFor Goodの「じぶんプラン」です。ボーダレスの事業の一つですが、実行者として初めて使ってみてとても学びがありました。

戸倉:利用料0円の「じぶんプラン」にもかかわらず、2回まで無料でミーティングをしていただけるのはありがたかったですね。For Goodの始め方に関する分かりやすい資料や参考事例もたくさん紹介してもらい、具体的なイメージがもてました。

辻田:プロジェクトの概要やリターンを考えるのも楽しかったです。ノート使用券だけでなく、専門家の方々とのミーティングに招待する「公開打合せ」のリターンも作りました。私たちと専門家の方との打合せの様子を公開するのですが、学問的な観点から学びがある場でもあるので、教育に興味のある人だったら絶対に面白いと思っていただける自信があります。

小さな心ダイアリーのリターン

一人でも多くの子どもたちに「小さな心ダイアリー」を届けたい

− 「小さな心ダイアリー」は誰にどういった場所で使ってもらいたいですか?

戸倉:使ってもらいたい対象は小学生でとくに1年生から4年生をメインに想定しています。ここについても、たくさん議論を重ねてきました。心理学の観点から、1年生から4年生くらいまでと5年生以降で、心の変化の仕方やそこに対する声のかけ方が変わるというアドバイスを受け、1年生から4年生をメインの対象にしたノートを作ることにした背景があります。

辻田:家庭はもちろん、学童保育やフリースクール、子どもたちの心に寄り添いたいという思いで運営されている塾などに使っていただけると嬉しいです。今後は、オンライン版も展開する予定なので、オンラインのフリースクールなどでも使ってもらえたらと思っています。

また、学校現場でも導入していただきたいと思っています。リターンにも「学校出張授業」を作りました。導入を検討してくださる学校があれば、僕が出張授業に出向かせていただきます。

− 最後に、今後の展望について教えてください

辻田:ノートについて色々お話してきましたが、子どもたちは目に見えないストレスを抱えています。学校や勉強、友達、SNSなどさまざまな要因が複合的に重なり、悩みを言語化するのがとても難しいことも事実です。これらは、不登校や精神疾患を抱える子に限らず、すべての子どもたちに関連する問題だと思っています。

そんな子どもたちに対する、大人の関わり方はとても重要です。しかし、子どもとの関わり方について悩んでいる人も少なくないでしょう。子どもも大人も、「小さな心ダイアリー」を使うことで自然とちょっとした心の変化に気づけるようになってもらえたらと思います。そういった意味でも、今回のプロジェクトにはとてもポテンシャルを感じています。

戸倉:小さな心ダイアリーは今後も進化していく必要があります。私たち大人が子どもたちの心の変化をキャッチアップする精度を上げていくことが重要だと思っています。

子どもたちの心の変化って、本当に読めないし難しいです。だからこそ、子どもの心の変化を表やグラフで視覚化し、いろいろな観点からキャッチアップできるようなツールにしていくことで、どんな子にとっても有意義なものになっていくと思うんですよね。たくさんの人に関わってもらいながら、より良いツールにしていきたいです。

採用情報

現在、ボーダレスでは世界13カ国で51のソーシャルビジネスを展開しており、新規事業開発やマーケティング・クリエイティブなど複数ポジションで採用強化中です。

カジュアル面談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

●キャリア採用
●新卒採用(新規事業開発コース)
●インターンシップ

◇社会起業を目指す方はこちらをご覧ください
◇ボーダレスの最新情報をメルマガで受け取る

-LINEで説明会や新着求人情報も発信中です!-
●新卒向けLINE
●社会人向けLINE

TOPICS
奈良県三宅町のまちづくり戦略を考える「Mラボオープンミーティング2024 vol.2」に田口が登壇します
Text: Kumi Sakata
Edit: Mikiko Mine



この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?