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#553 読書論23|空飛ぶタイヤ(池井戸潤)

池井戸潤の小説は大好きで、半沢直樹に触発され「俺たちバブル入行組」「俺たち花のバブル組」を購入し、そこから多分全部買ってます。
メジャーどころももちろんですが、「最終退行」「仇敵」「かばん屋の相続」「銀行仕置人」などのコアな所もしっかり押さえております。
とにかく読んでいてスッキリするので、池井戸小説は辞められないですね。

そんな池井戸小説の中で、一番好きな小説は何かと聞かれたら…
ドラマとのクロスオーヴァーなどもあるので評価が難しいのですが、私は小説のみの魅力だと、本日紹介する「空飛ぶタイヤ」が一番好きと答える気がします。
とにかくこの小説はボリューミーではあるのですが、とにかく熱い小説です。


空飛ぶタイヤ あらすじ

実写版は見ていないのですが、社長が原作ではこんなカッコよくないですね…笑

都内の赤松運送という小さな運送会社が、この物語の中心となります。
ある日、赤松運送が配送中のトラックの前輪が外れ、タイヤが空を飛んでしまい、道行く通行人に直撃し、その通行人は即死。一児の母でした。
そんなエグい形でストーリーは始まります。
元々展開を全く知らずに読んで、タイトル的に「空飛ぶじゅうたん」とかに近しいファンタジー系を想像していただけに、この展開は意表を突かれましたが、惹かれるものがありました。

そうして赤松社長は、その母親の葬式に行くんですが、とにかく遺族から鬼のように叩かれます。
そしてそうした悪評が影響し、取引先からも取引を切られて、銀行からも融資を引き揚げられて、更には従業員も会社を離れ、そして更にはPTA会長もやっており、モンスターペアレントに苦しめられるという四面楚歌。
地獄です。

ただ、赤松社長は自分たちの製品や仕事に誇りを持っており、その事故を起こしたトラックも整備はしっかりやっていたので、そもそもトラックの品質を疑います。

そのトラックを製造するのはホープ自動車
旧財閥からの自動車会社であり、モデルは言うまでもなく三菱自動車ですね。
そして、今回の小説の元ネタになっているのは下記の事件です。

赤松社長は、ホープ自動車に対して「とにかく調べてくれ」と言うんですが、ホープは殿様商売で、「悪いのはメンテナンスしてなかった御社でしょ」という舐め腐ったスタンス。

そんな九回裏ツーアウト満塁の状況なのですが…そこから赤松社長、赤松運送は奮闘し、無罪という勝利を目指すドラマとなります。


空飛ぶタイヤ 魅力

長瀬がカッコよすぎて使いたくなってしまいます笑

1. 超大手企業 vs 中小企業の戦い

これに尽きますね。まさに像とアリの戦い。
とにかくホープ自動車は横柄で、とんでもないワルなんです。
だけれども赤松社長は愚直に、真摯に正義を貫き、大企業の論理ーすなわちカネにも踊らないスタンス。これは本当に素晴らしいです。


2. 現実世界とのクロスオーヴァー

三菱自動車は2000年にリコールを起こした後の2004年、再度リコールを発生させてしまうのですが、この作品の世界でも一度リコールが起きた後の世界で、「もうあんなことはしたくない」という苦悩・葛藤がある中で登場人物たちが侃侃諤諤、色々な意見を言います。
「隠せ」という意見、「隠したらもっと大変な事になる」という意見…
その描写が非常にリアルです。
つい最近のダイハツの例もありますので、マジでカネ掛かるんでしょうね…

あとは、実際に三菱自動車もそうですが、グループ企業に三菱UFJ銀行があるが故に、融資は簡単にもらえるものとか、目標予算未達でなんぼのもんじゃいと舐めくさってるんですよね。
その辺の殿様商売具合は非常にリアルですね。


3. 最初と最後の同じ「着信」ラッシュ

この物語のスタートは、商談を終えた赤松社長にメチャクチャ着信があり、折り返すと前述の事故があって…という展開なのですが、エンディングでも同じく商談を終えた赤松社長にメチャクチャ着信があるんですが…
そのエンディングは最高に感動しますので、これは是非見てみて欲しいですね。


空飛ぶタイヤ 実写版

見てないんですが・・・ちょっと見たいですね。
てか日曜劇場のドラマでやって欲しかった思いがあります。

そして主役が長瀬の時点で熱いんですが、長瀬の妻が恭子という最強のフォーメーション。キャストが豪華すぎるんです笑

先日の投稿で原作の実写化は「興業としての成立」がマストになるので、その点は理解できるんですが、それにしても豪華すぎるのがちょっと違和感なのかも知れません。
原作はちょっとヘアーも薄くなりつつある40歳中年とかだったので、ブラマヨ小杉とかが適任なんでしょうが…数字絶対取れないですもんね笑

いつか見たい映画ですね。


まとめ

池井戸作品はまだまだまだ語れるので、次回以降も紹介していきたいと思ってますが、池井戸作品はTVも良いので「ひょっとしたらTV論の方がいいかも?」みたいな苦悩があったりなので、僕が実写を見ていない池井戸作品について次回以降でも紹介しましょう。

では今日はこの辺で。

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