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コラム:創作者のためのヒント~兵器と任務~

 さて、ここではコラムとして『兵器と任務』について適当に綴ってみたいと思います。
 以下はコラムとある通り筆者個人の考えですから、まぁ気負わずに『アホ抜かしてんなぁ』位の理解で読んで頂ければ幸いです。

 兵器とは、軍が任務達成の為に運用する破壊/殺傷能力を持つ器具の事であり、定義を拡大すれば軍用の器具を総称したものであり、要するに軍隊が運用する武器やらを指します。

 つまり武器を狭義――狭く見たとするならば、武器として用いられる猟銃でも軍隊が部隊として運用すれば兵器になりますし、広義に解釈すればレーダーやら無線機やらの、直接に敵を攻撃しない装備品であっても兵器となる訳です。
 ここで重要なのは、飽くまで兵器とは軍隊、部隊にとっての道具であり、軍隊、部隊とは飽くまで国家にとっての一機関、即ち道具であるという理解です。

 我々は近代軍隊を見る時『この部隊はあんな兵器を保有しているから強い』とか、『この軍隊にはこの兵器がある、だから強い』という理解をしがちですが、これは一見は正しいものの、実は誤った理解では無いかと考えます。

 何故なら、兵器とは飽くまで道具であり手段であって、それらは目的、軍隊に於いては任務を達成する為の手段に過ぎないからです。
 例えば、機甲師団というのは基本的に複数の戦車大隊を指揮下に置き、戦車の機動力を以て敵部隊を打撃蹂躙し或いは機動防御を実施する等を事を主な任務としますが、これは戦車が大量に配備されているから敵部隊を打撃蹂躙出来るのでは無く、敵部隊を打撃蹂躙したいから戦車が複数配備されているのです。

 兵器ありきの部隊としては戦略爆撃機等を配備されている戦略部隊等が挙げられますが、これだって『迅速に戦略目標を打撃する能力による抑止力の維持』という任務を達成する為に兵器が開発され、配備されている訳です。

 では兵器はどのように開発されるかと言うと、ここでもやはり任務が出てきます。
 任務は、攻撃か防御ないし支援に大別されますが、任務の計画や部隊の編成等には土台となる思想、ドクトリンが必要です。

 例えば、進行してくる敵機甲部隊を阻止したいという場面で、歩兵が塹壕等の陣地を構築して対戦車ミサイルで迎え撃つのか、戦車部隊が機動防御を行うのか、ヘリ部隊が攻撃を行うのか、ロケット砲で阻止砲撃するのか、核兵器で蒸発させるのか――ナドナドの手段が考えられますが、これらの手段のどれを採用し、どのように組み合わせ、どのような規模で行うのか、また戦場正面以外ではどのように部隊を動かし、同盟国はどう動いてくれるのか……といった事を考慮して、戦闘教義ドクトリンを決定します。

 例えばソ連では、彼我が核兵器の運用を積極的に行う事を前提として、いち早くNATO軍の懐に飛び込んで戦略目標を蹂躙する為に、圧倒的な火力及び航空優勢の援護の下で大規模な機甲部隊が無停止進撃を行う『縦深攻撃』というドクトリンを採用し、それに基づいた戦力整備が行われました。

 このドクトリンの下では、戦車はその機動力と装甲防護力、砲火力で一挙に突撃を敢行して敵部隊を突破する任務を付与されるとされていましたから、それに適した、比較的安価な航続距離の長い戦車が開発され、配備される事となります。
 一方、対するNATOでは戦車は機動的に防御を行い敵部隊の進撃を食い止めるものとされていましたから、砲の命中精度や装甲防護力を重視した比較的高価な戦車が開発、配備されました。

 ここで注意して頂きたいのが、同じ年代の戦車一つ取っても違いがあり、その強弱を一概に比較する事は困難であるという事です。
 飽くまで兵器とは軍隊が任務を達成する事に最適化された道具であり、その仕様はドクトリン等に依存する事は先に述べました。
 しかしながら、インターネットには『世界最強!〇〇式戦車!』とか『世界最弱!X半島国産(笑)戦車!』といったコンテンツが溢れています。
 それらのコンテンツで、すべての兵器にはドクトリンに立脚した要求性能が存在するという事実はどの程度考慮されているのでしょうか?
 確かに事物の強弱というのは好奇心を喚起しますが、偏見に立脚した単純な理解は誤解の原因となります。

 単純な理解は、初歩的な理解には有用ですが、それに偏見が交じると取り返しが付かない結果を得てしまう事があります。
 どうかご注意下さい。

 さて、このように任務がドクトリンに依存する以上、それを達成する為の道具である部隊や装備もドクトリンに依存する事がお分かり頂けたかと思います。

 ドクトリンは、その国の政経状況、政策、技術水準、仮想敵ナドナドを考慮して決定されます。
 是非皆様も、ご自身の作品での登場勢力にドクトリンを設定してみて下さい。
 兵器、任務、ドクトリンの関係を理解して設定を作り込むと、現実的な架空兵器の構想を練る事が出来ます。滅茶苦茶楽しいので、ロマンとに溢れた架空兵器を創作してみて下さい。

 おっと、作品の主体は飽くまでキャラクターであり、世界観や兵器では無いですからね、そこはお気をつけて。


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