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バカバカ罵っているうちに好きになっちゃうこともあるよね

小学5年生のとき。
とにかく嫌いなクラスメイトがいた。

家が近所のT君は5年生なのに登校班の班長をしている。
僕は別の班の副班長だ。
班長が先頭を歩き、副班長が最後尾を守るというのが決まりで、およそ10人前後で登校をする。

T君の班はいつも一糸乱れぬ隊列を組み、しかも歩くのが速い。
そうすると後ろから「遅えよ」と小言を言われ、あっという間に僕らの班は抜き去られてしまう。
歩くスピードは低学年がいるかどうかによっても違うし、そもそも班長の考え(性格?)もある。
それを知ってか知らずか、まるでエリートを気取ったかのように前を歩く姿が妙に腹だたしい。
そういう態度が鼻につき、教室に着くなりたびたび言い合いとなるのだった。

ところが毎日顔を合わせ、決まって「うるせえ、バーカ!」とやりあっているうちに、気が付いた。
僕と罵りあうときだけ歩幅を合わせ、僕の班を抜かそうとしないT君。
しかもよくよく観察してみれば、僕の班以外の別の班とは一切、関わらないのだ。
きっとT君は班のリーダーである手前、後ろを歩く後輩に先輩としてのプライドを見せつけたいのだろう…と。
で、恰好の的となったのがチビでひ弱な僕だった。

そう考えるようになってから、不思議なものでT君とは仲良くなった。
終いには6年生のクラス会で2人でコントをするという、人生は何があるかわからない展開に。

植物もそうだと思う。

いまは嫌いでも、嫌いながらに付き合っていくうちに、偶然にも「良い部分」を見つけてしまうときがある。
嫌いだと思っていた時には想像もつかない一面を目の当たりにしたとき、一気にその意外さに心を奪われてしまう。
それをあれこれと考えるうちに、なぜか好きになってしまうのだ。

そんな存在にバラがなりつつある。

生花店勤務時代にはその刺に泣き、ちっとも美しいとは思わなかった。
ローズガーデンを歩けば、どこが面白いのか理解ができないし、熱狂的なファンが却って滑稽に見えたりもした。

ところが、である。
ここ最近、バラにまつわる出会いが重なっている。

仕事でバラの生産現場を目の当たりにしたかと思えば、イヌバラの花のポップに輝く姿に目を奪われたりもした。
今日も、わざわざ図書館にまで足を運び、バラについての書籍を開いてしまった。
一般論でいう職場の上司かのごとく、とりあえずプライベートにまでは入ってきてほしくはなかったのに。
嗚呼、痛恨の極み。
僕としたことが。

T君とは今も、ことあるごとに会っては酒を酌み交わす。
バラと僕とも振り返れば、只ならぬ関係性に発展してしまうのだろうか…。
とりあえずいまは、考えないでおこう。


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