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山本君

 小学校6年生も終わりを告げるころ、同じクラスの山本君が、急に僕に接近してきた。
「銭湯に行こう」
 といきなり言われた。それまで野球とか以外は、ケンジとか少数の塊でしか遊ぶことはなかったので、不思議に思ったが、別に断る理由もないので、いくことにした。
 銭湯は広島の白島というところにあった。山本君が馴染?かどうかはしらないが、しってるところなのだろう。今はJRの駅も出来たので、多少有名になっているかもしれない。最も広島市民にしかわからんじゃろうけど。
 家からは、そこまで遠くもないが、歩いていくには遠いので2人自転車をこいでいった。
 銭湯は初めての経験だった。漫画とかでは見るものの、ああこれが富士山の絵か(富士山の絵だったかどうかは憶えていない)とかジェット風呂とかを楽しんだ。
 それだけの1日であったが、山本君は終始笑っていた。彼の真意はよくわからないけれど、次は三滝寺に行こうという。僕はいったことのない寺だし、そもそも寺なんぞに興味がある年頃ではない。でも山本君の笑顔の前に寺なんぞ行きたくないともいえず、一緒に行く約束をした。
 まるで特に好きでもない男の子にデートに誘われついていく女の子のような気分である。
 三滝寺は少し遠かった。到着して、自転車を降りると、急な坂道になっており、名前の通り3つ以上?滝があり、石仏がたくさんあって、秋に来れば紅葉狩りによさそうな場所だった。なかなか雰囲気のいいお寺で、古刹という感じがした。ググってみる。
三滝寺(三滝観音)
 広大な境内は樹林で覆われ、白糸滝や朱の多宝塔が散在する。多宝塔は県の重要文化財。秋は紅葉の名所として知られてる。(じゃらんのWEBページより)
 そんな訳で思わぬ思い出が出来てしまったのである。とはいっても50年近い過去だったので、あやふやな記憶をもとに、グーグルで寺の名前も探し出した次第である。
 その2回だけである。2人で遊びにいったのは。小学校3学期は終わっていて春休みの時期になった。
 僕は五日市のほうに祖父祖母と一緒に暮らすようになり、引っ越した。中学校はだからみんなと別々である。山本君ともあれっ切りあっていない。仲の良かった友達は数人手紙をくれたけれど、山本君からはなかった。あれっきりであった。何だったんだろう、山本君、君の真意を聞きたい。


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