渋谷のハロウインの現場にやってきた。人、人、人ばかりである。ついこないだ、韓国で大事故が起きたにもかかわらず、仮装した、いかれ者が沢山いる。馬鹿じゃあないだろうか。
　そもそもヨソの国のお祭りに酔って、集まって賑わうっていうのが気に食わない。気に食わないが、何故か楽しい。公然とこの姿のまま渋谷の人通りの多い場所を騒いで歩いて行けるっていうのがいい。誰にも怪しまれない。もしかしたらこのお祭りは俺たちのためにあるのじゃないだろうか。そんな錯覚さえ覚える。
　向こうからフランケンシュタインがやってきた。どうやら本物らしい。
「お前、人のシマで大きなツラしてんじゃねーよ」
　俺は言ってやった。
「お祭りなんだからいいじゃないか、兄弟」
　フランケンシュタインは笑顔でそう答えた。
「まあ穏便にしましょうや、ぬらりひょん様」
　唐傘お化けがそういった。
　そう俺たちは妖怪軍団だ。ハロウインにまぎれれば、変装していると思われて、誰にも怪しまれない。そこを狙って集団で渋谷を徘徊しようということになったのだ。別に悪いことなどするつもりもない。
　一反木綿が空を飛んで見張っている。混雑しすぎている場所はないかチェックしているのだ。細い道や坂道に人が集まると悲惨なことが起こりえるので、その時は一反木綿から、塗り壁に連絡が行き、人の行く手を遮って、これ以上人がそっちへ行かないようにしているみたいだ。
「どうやら、なんとかの鬼太郎もきているっぽいな」
　俺はどうもあいつの正義の味方ヅラした顔が気に入らねえ。元を辿れば同じ穴のムジナじゃねえか。
　まあいい。俺にとってはここで人間が何人死のうが知ったことではないが、人間好きの鬼太郎は、どこかの国みたいに渋谷がなってほしくないから、誰にも頼まれずに、パトロールしているんだろう。
　それにしても若い連中が多い。仮装して酒飲んで、暴れまわってやがる。いっぺん本物の怖さを教えてやろうか、とも思ったが、思いとどまった。せっかく俺たちも楽しんでいることだし、何かしでかしたら、あの鬼太郎がやってくるわな。
　鬼太郎は怖くはないが、これだけの群衆に被害を及ぼすことになったら大変なことになる。俺だって悪者にはなりたくないからな。

　この度の事故で亡くなられた方に心からご冥福をお祈りいたします。