兄ちゃんとオカンの家から、阪大まで約1時間くらい
中央環状線をずっと北に真っ直ぐいくだけの道。

兄ちゃんと二人だけで病院に行く日は数回あって、決まって聞く音楽があった。
ブランキージェットシティとイースタンユースと
ザ　ブルーハーブ

兄ちゃんはブランキージェットシティが特に好きで、おれが中学生の時にバンドで胸が壊れそうという曲を練習していた時に兄ちゃんがそれを聞いてハマりそれから全アルバムを持っていたし、部屋にはレコードやポスターも貼っていた。
ゲームのアカウントIDはいつもI loveBJCにして　　　　
RPG主人公の名前はベンジーだった。

二人で病院へ行くときは、おれが運転して兄ちゃんが選曲して、イントロクイズをして楽しんだり、ブランキーのカッコいい歌詞について語りあった。

イースタンユースは、兄ちゃんもおれも高校生になって知ったバンドで、ソンゲントジユウという曲に

生きてる事に遠慮なんてしねぇ

というフレーズがおれと兄ちゃんを奮い立たせた。

ザ　ブルーハーブは兄ちゃんの大学にライブで来ていて、観て一発で好きになったラッパーで、BOSSの叩き出すライムにやられました。ブルーハーブの2枚組の最新アルバムは兄ちゃんに貸したら病気になる前、仕事行く前に車の中で毎日、毎日聴いたそうです。

兄ちゃんが死んでからオカンが兄ちゃんの聴いてた曲が聴きたいと言ってきた。
ブランキーの水色っていう曲。綺麗な声の人やなって。言って聴いてた。
オカンはブルーハーブの
THE BEST IS YET TO COME

俺のベストはまだ来てない　俺を乗り越えて行くののは俺だけ

の歌詞を何回も、自分の折り返せなかった息子の人生に照らして何回も確かめる様に聴いていた。

AND AGAIN

あなたのやり残した事はなんだい？

おれは、兄ちゃんが死んでからずっと考えてます。
やりたかった事　やらなかった事　これからはそれだよと、BOSSが言う様に、兄ちゃんができなかった事を想い生きていくしかないと思います。

生きていたら、自分の知らなかった事、バンドや映画、漫画の続きは知れるから。兄ちゃんが死んでからカッコいいバンド見つけたで。オールディックフォギーってバンド絶対好きになるわ！
と見つけた自慢も今はできないけど。

兄ちゃん覚えてるか？
おれが中学生の時買ったギターを。
ホコリまみれになってたけど、またあの時みたいにブランキージェットシティの曲を上手く弾けるように弦を張り替えて練習してるから。