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読書録 「生きがいについて」

神谷美恵子「生きがいについて」(みすゞ書房)

書店や図書館で手に取った本の中で心に刺さる一文を見つけた時、生きていてよかったなと感じる。

本書はそんな一冊だ。

結局、人間の心のほんとうの幸福を知っているひとは、世にときめいているひとや、いわゆる幸福な人種ではない。かえって不幸なひと、悩んでいるひと、貧しいひとのほうが、人間らしい、そぼくな心を持ち、人間の持ちうる、朽ちぬよろこびを知っていることが多いのだ。

人間の存在意義は、その利用価値や有用性によるものではない。
野に咲く花のように、ただ「無償に」存在しているひとも、大きな立場からみたら存在理由があるにちがいない。自分の眼に自分の存在の意味が感じられないひと、他人の眼にも認められないようなひとでも、私たちと同じ生を受けた同胞なのである。もし彼らの存在意義が問題になるなら、まず自分の、そして人類全体の存在意義が問われなくてはならない。
そもそも宇宙のなかで、人類の生存とはそれほど重大なものであろうか。
人類を万物の中心と考え、生物のなかでの「霊長」と考えることからしてすでにこっけいな思い上がりではなかろうか。
現に私たちも自分の存在意義の根拠を自分の内にはみいだしえず、「他者」のなかにのみみいだしたものではなかったか。

何度読み返しても胸が熱くなる。
他人からの賞賛や褒賞のために努力を続けた結果、膨らんだ自尊心は自らを圧迫して更なる成果を無意識のうちに強制し、苦しくなる。

何かを所有して見せびらかすことを幸福の条件とするのは止めよう。
幸せや生きがいは他人に見せびらかすものではない。
「生きがいについて」で書かれていたように、「発見型」の幸せを目指すこと。

周囲の評価に惑わされず自らの内側から切なるものを求める。
自己満足でオールライトだ。

本当のしあわせを さがしたときに
愛し愛されたいと考えるようになりました
そしてあたしは君の強さも隠しがちな弱さも汲んで

時の流れと空の色に何も望みはしない様に
素顔で泣いて笑う君にエナジィを燃やすだけなのです

本当のしあわせは目に映らずに
案外傍にあって気付かずにいたのですが
かじかむ指の求めるものが 見慣れたその手だったと知って、

あたしは君のメロディーやその哲学や言葉、全てを
守る為なら少し位する苦労もいとわないのです

時の流れと空の色に何も望みはしない様に
素顔で泣いて笑う君のそのままを愛している故に
あたしは君のメロディーやその哲学や言葉、全てを守り通します
君が其処に生きているという真実だけで 幸福なのです。

椎名林檎「幸福論」

今日も皆様にとってよい一日でありますように。
幸せのカタチも生きがいも人それぞれ。
だから他人と違っていい。


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