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飲食と人生 ( 取り留めのない放言とレシピ) その13

世界一のタコ焼き
 私のホームスクールでの呼称で、
本当に世界一ではないのですが、
 しかし、私自身、コレは凄い!!と思う一品です。
 ある日、普段と違う元気の無いホームスクール生に気付き、声を掛け、いろいろ話し合いましたが、何だかスッキリしない様子なので、食べ物は何が好き? ( ご機嫌取りですね) 尋ねると、珍しく、蛸と答えました。
 あまり、自分の事を話したがらない子なので、よしわかった、ということで、普段なら、スーパーで、輸入、
冷凍のモロッコあたりのタコを買うところを 魚屋さんに行き、活ダコを買いました。たこ焼きごときに活ダコかあ、とも思いましたが、ほとんど自己主張しない彼の要望に、私なりに答えたかったのです。

 活蛸の下処理は、まず、おとなしくさせて、ぬめり取り、皮が破れない程度に、かつ、シッカリ、大根などで叩くことが重要です。
 食感の強い刺し身にする場合は、
叩きませんが、桜煮や柔らかい刺し身にする場合は重要です。
大根で叩くのは、重量があって、優しく、しっかり蛸の繊維が潰せるのと、煮物にする場合、さらに柔らかく煮るために必ず使うので、ちょうど都合が良いという側面があります。

 活蛸をおとなしくさせるには、2つの方法があります。一つは真水につけます。もう一つは、目と目の間を包丁の柄や両親指でグッと押えます。驚くほど簡単に瞬殺出来ます。

4−50年前までの海は、みんなの海で、漁業権も限られていて、潜って、
蛸が岩場に潜んでいるのを取っていました。大きいモノはなかなかの強敵で引き出せませんが、目の間の急所を突くと一瞬で死ぬようで、色が変わり、無抵抗のスライムのようになります。

 それから、塩揉みですが、蛸の身は塩を吸い込みますから、手早く、塩揉み、水洗いを数回に分けて、ヌメリを取ります。
 タコ焼きの蛸は食感を残したいので叩かず、タップリの、ぐらぐら湧いた大鍋に入れて、丸まったら(4−5分)ザルに上げて自然冷却します。
 冷水に漬けると風味が無くなります。
 和食のプロは 味も抜けるといいます。
 
 蛸の旬は、地方によって様々ですが、瀬戸内の一級品は、盆だこ と言って、御挨拶にも使われたそうです。
夏ですね。湯がいた栗のような風味を感じるのは、間違い無く、味が濃い、
美味いヤツです。

たこ焼きの汁の作り方
 最重要なのは、だし汁です。一応、書きますが、現実的では無いとおっしゃる方も多そうです。
 その場合は、本枯節の鰹節の粉、ミルサーなどで細かく粉にした昆布を混ぜても良いです。
 更に譲って、市販の白だしを使う場合は、アミノ酸、蛋白質加水分解物等の化学調味料や、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン等の人工甘味料、等の入っていないもの(ほとんど探すのが不可能に近いけれど、有りますよ。) 七福醸造の最高級品は、かなりの品質で、バランスがとても良く、急に出汁を引く時間が無いときは、使っています。
 出汁は、真昆布か、利尻、礼文の1−2等検(特等は高価ですが味の出方は変わりません。)とカツオの厚削りを前日から 水出し します。
 水は軟水が良く、もち吉というあられ、煎餅屋さんの力水というのがオススメです。折角の昆布と鰹節の出汁ですから是非、旨味の出方が全く違いますよ。
 当日、ユックリ温度を上げていき、60−65度で10分程度キープしてから 昆布を先に抜きます。
 その後、90−95度まで温度を上げて20−30分キープしてから、濾し、出来上がりです。(昆布と鰹節は、捨てるとバチが当たります。どちらも吸収しやすいカルシウムを含んでいて、捨ててはイケません。       食べやすく切って、日本酒、味醂、追い鰹(薄削り)醤油、あれば干し椎茸を戻して、スライスし、汁ごと入れると最高の飯の友になります。
天然のアミノ酸、イノシン酸、
グアニル酸の組合せです。)
 

出汁900 CC,
卵 2個
地元産薄力粉 150g
片栗粉    50g
薄口醤油   30cc
大切なのは、小麦粉は親水性が低く、美味しく混ぜ合わさるまでに 時間が掛かるという性質があることです。
(パンケーキやホットケーキも前日から作っておいて、朝、焼くのが決定的な差になります。)
 現実的には、前日から仕込むことが大事です。
具材は、キャベツか青ネギでしょうか?
 キャベツは好みも有りますが、蛸の旨味と風味を損なわぬように7−8分茹でてから、細かく切ります。甘みを加えて、キャベツの匂いは主張させないためです。
 ネギは香草で、それなりの香りが有りますが、蛸の風味とは喧嘩せず、良い調和をもたらすように思います。
揚げ玉も良いのですが、市販品は化学調味料が強く、油の質が悪く、使い物になりません。卵多め、細かく切った裂きイカ(調味していない,
ただ干して炙ったもの)、地元産小麦を前日から混ぜ合わせて置き、太白圧搾胡麻油で高温であげると調子の良いものが出来ます。p
 紅生姜はアクセントとして私は好きですが、主張が強いのでなくても良いでしょう。(最近は、強烈な着色料や酢酸のようなキツイ酸味のモノで無く、紫蘇で色付けし、良い酢に漬け込んだものが安価に手に入ります。)
なんせ、世界一を謳うわけですから、これくらいの準備は当然です。はは。
いよいよ、タコ焼きの 焼き ですね。
油は、通常のたこ焼きでは、コク出しの為に、ラードを使っています。
今回は、太白圧搾胡麻油を使います。     油の主張をさせてはなりません。
 外カリカリを目指すので、油多め、高温が必要です。ベトつかず、熱に強い、この油が最適です。
 汁をたこ焼き鉄板のそれぞれの穴に8割程度入れて、大き目にぶつ切りした蛸、具材を入れて更に汁を目一杯全体に張ります。強火です。そこからは皆さんと大差有りませんが、途中、丸まって来たら、油を少量足して、表面を揚げ焼きのようにしてください。
 外カリカリでも中はトロトロです。薄力粉も前日から浸水しているので、粉っぽかったり、生焼け感はありません。
ここまでヤると、ソースもあの甘ったるいたこ焼きソースでは、蛸の美味しさを台無しにします。
 明石焼きのように、美味しい出汁にネギや、海苔、あおさ海苔等をちらして食べるか、

最近は有機農法の野菜を季節ごとに加熱保存して、添加物の無い、真面目に熟成されたソースが有りますから、それを醤油と出汁で割って、かけるのもアリです。
 青のりは、わずかに、又は大いに、ドブの匂いがするモノが多いと思います。
 四万十川や熊本、山口県の日本海側の物産館や道の駅で手に入れた物は、素晴らしい香りと甘みを持っていますこれと天日干し海水塩の自作ふりかけは、圧倒的な逸品です。
 たこ焼きとの相性も抜群です。 
 季節モノなのでネットで探すのも難しい場合が有ります。  無いなら、無理してスーパーで買わず、板海苔を炙って、散らしたほうがよほど良いのではないでしょうか。
トロトロの出汁のなかで、驚くほどの旨味と香りを主張するのは、間違い無く、このたこ焼の  です。
 わかりやすく、蛸の旨味と香りを
味わえる最高のタコ料理の1つだと、密かに考えております。

無論、我が国の 長く、他国に比べて、途切れることの無かった伝統と文化に培われた、たこ料理が数多く有ります。
次回は、その中から、思いつくままに。



 


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