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詩 ロウプライス

午後6時のサッカー台難民

献立の攻防を乗り越えて

帰路に向かう群れから外れて

最後尾に並びレジへと向かう

籠の中は1人分の命を繋ぐ材料

暗い部屋に帰れば

冷蔵庫の寝息が聞こえてくる

店内に取り残された商品達の叫びを

脳裏に思い浮かべた 

後ろめたい願いは叶わず

消費期限切れの言葉で君に呼びかけた

振り返る事も無いだろうから

添加物の入ったセリフは聞きたくないから

明日には、この気持ちも廃棄しよう 

届く事が怖くて、 乾きたての傷に 

避雷針を突き刺して

あなたが落ちるのを待ってしまった


午前6時のバックヤード開戦

存在価値なしのレッテルを貼られ

ショーケースに残る物を引き上げて

残念な視線を集めたビニール袋

頭の中は昨日までの言い訳で出来た材料

ガラスの向こう側に

通勤者の足音に合図を感じた

外で待たされたカート達の疲労感を 

優しく招き入れた

前向きな気持ちはカラ回って

出鱈目のJANコードで君に近づいた 

読みとらることはないから

エラーで返される返事は見たくないから

今日中には、この自惚れは処分しよう

傷つくのが怖くて、恐怖の震源地に

白旗を突き刺して

あなたが遠ざかるのを見送ってしまった

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