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詩 溶ける

日が沈むみ、あなたの輪郭が
溶け始める頃
寂しさが心から浮かびあがる

夏の濃度を掻き回して
生ぬるさを運んだ風に
弾きだされた胸の思い

ファンタジーと名付けた恋愛が
窓の隙間から侵入してきた

目覚めたらあなたが隣にいるような
都合の良い物語を思い込んでいた

見苦しい程自分勝手で
息苦しい程あなたが重い

隠してきた醜さが夜と共に暴かれる
誰もが愛情と呼ぶそれを
優しい嘘と言った

取り返せない時間と痛みが
後悔の瘡蓋になった 

美しさがこれから始まるなら
今は甘えでもいい

側にいれる内に消え去る前に
暑苦しさを残して欲しい
寒い季節に凍えないように
この瞬間を閉じ込めた


月が現れ、あなたの面影を
重ね合わす頃
愛しさが歪さに形を変える

羽を無様に擦り合わせて
あなたへ弱音を運んだ虫に
炙り出された怖い願い

リアリティーと感じた世界が
妄想の隙間に侵入してきた

気付いたらあなたと暮らしているような
地に足がつかない幻想を抱いていた

人恋しい程一日が長く
虚しい程言葉が軽い

騙してきた弱さが燈のしたに晒される
誰かが手にしてきた幸せを
運が良いだけと言った

手に入るはずと勘違いして
優しさをゴミ箱に落とした

虚しさがここで終わりなら
今日は一瞬でいい

近くいる内に薄れる前に
腕に痺れを残して欲しい
温もりが去っていくから
あなたの輪郭を焼き付けた

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