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健康マインド(箱入り娘①)

昭和の性生活ファイル❗箱入り娘の嫁入り 慎太郎と麗子の場合

麗子との見合いの話が来たのは、福岡勤務から戻った年だった。大学を出て商社に入り、3年目で福岡勤務になった。5年間で、福岡・熊本・鹿児島と廻り、取り引き先が東京支社を出す事に合わせて本社に戻った。
仕事に没頭していたので、気がつくと30歳になっていた。

実家に戻ると母親が早速見合いの話を持って来て、2〜3度断ってから会ったのが麗子だった。
実家は東京の郊外の古い洋館で、祖父の時代の建物だった。
祖父が起こした事業が発展して父が継ぎ、母は華族の娘だったが、昭和恐慌の影響で会社は倒産し慎太郎が中学に上がる頃父が亡くなり遺産で食いつなぐ状態だったので、贅沢等無縁で、公立大学に入学してからも奨学金を貰っていた。

母親は慎太郎だけが頼みと、見合い相手も本人よりも家柄や財産を条件にして選んでいる。
麗子との見合いを慎太郎が受けたのは、いい加減に母親の期待にも応えなければとの気持ちと、写真の麗子が目を引いたからだった。

箱入り娘だと言う麗子は世田谷の資産家の次女で女学校を出て直ぐに父親の仕事の手伝いをして3年目との事だった。
見合いの席では、麗子の母親が姉は大学に行かせて、海外に行ってしまい、結婚どころか連絡もつかない状態で、次女の麗子は姉に懲りて親元で育てたので世間知らず、(慎太郎さんどうか手とり足とりして育ててやってください。)とおかしな言い方をした。隣の麗子は身売りをする要な母親の言い方にもこだわらず食事を楽しんでいるようだった。

二人になった時に、慎太郎が(何度かお見合いしたの?)と聞くと(え〜っと、3回目ですね)(前のお見合いはどうでした?)(さあ〜、お母様がお断りになったみたいです。)(あなたはどうでした?)(私は、男の方はよくわかりませんので、お母様にまかせてますの、結婚したら旦那様におまかせしますわ。)と浮き世離れした事を言った。
重ねて慎太郎が(へぇ〜、今どき古風な事を言いますね、結婚して主人の言いなりになってもいいの❓)
(ええ、そうするのが女の幸せと教わっています。)と目を見ていった。

慎太郎はこの人を他の誰かに渡したくない思いで結婚を決めた。母親も資産家の箱入り娘の麗子を歓迎した。
結婚してからは、いずれ実家に帰るにしても、しばらくは二人でとの事で、麗子の父親の会社の持ち物で小さな借家が世田谷にあるとの話を聞いたので、会社にも近く、慎太郎は見に行かず、そこに決めた。本社に戻って間もなくのバタバタした結婚で、麗子はおっとりと支度していた様で二人がその借家に住んだのは式から3ヶ月も立ってからになった。

やっと落ち着いて、二人で顔を見合わせた。麗子は慎太郎の実家で2ヶ月暮らして、慎太郎の母親から家事全般を教わったようで、慎太郎は慣れた手順で食事や出社の支度をしてもらった。二人で住んで2週間立った週末、そろそろかと、慎太郎はソファーに座って毛糸の編み物をする麗子に言った。

(麗子はみんな母親から家事の事は教わったの?)    (はい、お義母様から教えていただきました。)  
(へぇ~、今どき古くさい事ぼかり言ってただろう!)
(いいえ、うちの母より進歩的ですわ、お義母は。)
(夜の事も習ったの❓)麗子は手を止め、顔をあげた。
(夜の事?)(そう、夜の結婚生活の事だよ。)
(いいえ、教わりません、母からは慎太郎さんが言われる様にしなさいと。)(言われる様に❓)

慎太郎と麗子の性生活が始まった。
続く




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