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第35回(令和4年度)社会福祉士国家試験 過去問解説 午前の問題 問1~83 【のんびり社会福祉士講座】

最初に

この過去問解説は、全部最初から読んでいるとかなり時間を使うので、効率的に勉強を進めるためには、自分の間違えたり、苦手な分野の解説だけ読むほうがいいです。


人体の構造と機能及び疾病

問題1  思春期に伴う心身の変化に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 この時期の心理的特徴として、自意識に乏しいことが特徴である。
 2 女子では、初経から始まり、次いで乳房や骨盤の発育がみられる。
 3 男子は、女子より早い時期から思春期が始まる。
 4 身体の変化は緩徐な変化が多い。
 5 第二次性徴と言う身体的な変化が始まる。 ※正解
【解説】
 
思春期の性的な発達は、タナー段階という指標があり、幼児期から青年期、成人になるまでの成長を、男性器(男性)・乳房(女性)の発達状況、陰毛(男女)の発生・発達状況などを定義していますが、この問題は知らなくても、自身の知識で解けると思います。
 1は✕、思春期は、”自意識”そのものですよね、
 2は✕、女子は、タナー段階では乳房の発育が一番最初になります。
 3は✕、女子の方が、思春期は早いです。男子はいつまでたっても幼いですよね。児童福祉の観点からすると、思春期って今までは親の言うことが全部だったのが、”自我”ができて、親の言うことを自分なりに、”自分”が判断していく時期だと思います。大体、女子は小5~6、男子は中1~3から、そういう”自我”ができる印象です。
 児童養護施設に入所している子どもは、この”自我”により、今までは”大人”に言われて施設に入所していて、あまり疑問に思わず職員や先生の言うことを聞いていたのが、”何で私、ここにいるの?”って考えだすので、それに対して納得いく答えがないと、施設での(※大人にとって)不適切行動になっていくんです。施設に入っていなくても、”自我”に対して、納得いく答えが必要になってきますね。
 4は✕、急に変化しますよ。なんかいつの間にか大きくなっているみたいな。
 5が〇、1~4が全部✕なので、読まなくても5が〇になりますが、確実に得点するには、きちんと選択肢を読むことが大事なので、読みます。特に問題ない内容ですね。ということで〇にしましょう。

問題2  国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  対象は障害のある人に限定されている。
2  「社会的不利」はICFの構成要素の一つである。
3  「活動」とは、生活・人生場面への関わりのことである。
4  仕事上の仲間は「環境因子」の一つである。※正解
5  その人の住居は「個人因子」の一つである。
【解説】
 
ICFは社会福祉士のおおきなポイントの一つです。歴史的な流れを捉えると、
 ICIDH(国際障害分類) ➡ ICF(国際生活機能分類)
 ICIDHも当時は画期的で、それ以前は「障害」は「個人」だけに返されていましたが、「社会的な不利」があると、「障害」を受け入れできないのは、社会の方だという考え方が加わったのです。例えば、肢体不自由であれば電車を使うことができないのは、その人の「障害」のせいではなく、社会の環境のせいで、エレベーターを設置したり、まわりの人が協力することで、電車を使うことができるようになり、「社会的不利」という「障害」を解消できるのではないか?というものでした。それが1980年で、そこから社会が見直して、街づくりや雇用などの施策が展開されました。それから20年経って、さらに発展させたのがICF(国際生活機能分類)です。
 20年の経過の中で、分かったことは「社会モデル」だけではなく、やっぱり「医学モデル」の影響も交互作用があるということで、「生活モデル」として統合されました。
 また、名前も「障害分類」から「生活機能分類」に変わってます。
 詳しくは、厚生労働省にも国立長寿医療センター 研究所がまとめた資料があります。ご参考に ↓ ↓
 ICF(国際生活機能分類)
 -「生きることの全体像」についての「共通言語」-
 
 さて、選択肢に戻りますが、
1の「障害のある人に限定されている」ですが、ICF以前で議論になった事柄に、「社会的不利」は障害がある人にとって、「社会的不利」になるのではなく、生活する人全体にとっての「社会的不利」と一緒だという話があります。ICFはそのへんも踏まえ、障害のある人だけに限定するのはおかしいよねという、「生活機能分類」になっています。つまり✕
2は、「社会的不利」は ICIDHのキーワードです。✕
3は、「生活・人生場面への関わりのことである。」って日本語的に意味わからないですね。✕の可能性は高いですが、これは他の選択肢と見比べましょう。
4は、正解〇、3の選択肢より具体的に正解を示していますので、〇
5は、普通に考えて、「住居」➡「環境」だと思います。✕

問題3  次のうち、疾病の予防に関する記述として、正しいものを1つ選びなさい。

1  特定健康診査は一次予防である。
2  糖尿病予防教室は一次予防である。※正解
3  ワクチン接種は二次予防である。
4  リハビリテーションは二次予防である。
5  胃がんの手術は三次予防である。
【解説】
 
これは介護予防でも疾病予防でも同じ概念なので、考え方を理解すれば大丈夫です。
一次        まわりの環境 つまり発生する前
二次        早期発見   発生したら早く見つけること
三次        社会復帰、再発防止 いったんなってから、次に再発しない。
選択肢を見ると、
1の特定健康診査は、早期発見を目的にしているので、二次予防。✕
 ※特定健康診査とは、「メタボ健診」とも呼ばれます。2008年4月から始まりました。特定健診の対象は40歳以上75歳未満の保険加入者であり、生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症等)の初期は自覚症状がない場合も多いため、早期の発見・予防を目的としています。
2の糖尿病予防教室は、早期発見を目的にしているので、二次予防
3のワクチン接種は、まだ発生前なので、一次予防。✕
4のリハビリテーションは、再発防止で、三次予防。リハビリ≒三次で覚えておきましょう。✕
5は、手術そのものなので、既に予防ではないです。✕
 自分の病気を中心にして、一番外の環境が一次、早期発見が二次、病気になってしまってからのことが三次くらいのイメージと結びつくといいです。

問題4  次のうち、2021年(令和3年)における、がん(悪性新生物)の主な部位別にみた死亡数で女性の第1位として、正しいものを1つ選びなさい。

1  大腸がん ※正解
2  胃がん
3  膵臓{すいぞう}がん
4  乳がん
5  肺がん
【解説】
 
わざわざ「女性の」とつけるあたりが問題の核心だと思いますが、そこはひっかけです。「乳がん」を選択したいところです。「男性の」とくれば、喫煙と結びつくので、肺がんを疑うところです。

 正解は「大腸がん」です。こればかりは、下の引用先を参考にして、見ておいてください。
 がんの部位別統計 | 日本対がん協会 (jcancer.jp)
 女性は、「その他」が一番多く、いろいろながんに疾患する可能性があると思います。ただ、男性はがんで22万人、女性は15万人の死亡数なので、圧倒的に男性の方が多いです。

問題5  パーキンソン病の原因と症状に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。

1  小脳の異常である。
2  脳内のドーパミンが増加して発症する。
3  安静時に震えが起こる。※正解
4  筋固縮がみられる。※正解
5  大股で歩行する。
【解説】パーキンソン病って言えば、何を思い出しますか?体のふるえ、動作がゆっくりになったり、手足が動かしににくなり、そのため転びやすいというものです。まずはそのイメージをもって、問題を解いていきましょう。  
 小脳=知覚と運動機能の調節って覚えていると、それっぽいですが、正確には、体の平均感覚や眼球運動の調整と覚えておきましょう。小脳の障害による病気は、脊髄小脳変性症と別の名前のものがあります。
ドーパミンが “減少” 減るから、うまく情報が伝わらないっていう病気です。
“ふるえ”、“筋固縮”っていうキーワードがでてきました。これですね。

問題6 事例を読んで、Aさんの症状として、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事  例〕
Aさん(55歳)は、出勤途中に突然歩けなくなり、救急病院に運ばれた。脳梗塞と診断され、治療とリハビリテーションを受けたが、左の上下肢に運動麻痺{まひ}が残った。左足の感覚が鈍く、足が床についているかどうか分かりにくい。歩行障害があり、室内は杖{つえ}歩行又は伝い歩きをしている。呂律が回らないことがあるが、会話、読み書き、計算は可能である。食事は右手で箸を持って問題なく食べることができる。尿便意はあるが、自分でトイレに行くのが難しいため、間に合わず失禁することがある。
1  失語症
2  対麻痺
3  感覚障害 ※正解
4  嚥下{えんげ}障害
5  腎臓機能障害
【解説】まずはそれぞれの用語を知っていないと回答できません。ある程度の知識から導いていきましょう。最初に選択肢をみて、このへんを気にしたうえで、事例を見ていくこととしましょう。
「失語症」と混在しやすいのが「構音障害」です。違いは言語中枢に障害があり、「言われたことが分からない、言葉がでてこない。」で、構音障害は、運動中枢に障害があり、「理解しているのだけど、声が思ったようにだせない、口がうまく動かない」です。
「対麻痺」とは、両側の下肢の麻痺、混同しやすいのは、「片麻痺」で片側の上肢と下肢の麻痺です。
感覚障害とは、感覚低下 、感覚過敏、異常感覚、神経痛です。
嚥下障害とは、口の中のものを上手く飲み込めなくなる状態のことを言います。
腎臓機能障害では、腎臓の機能低下により体内には処理しきれない様々な老廃物がたまってしまい、体内の環境を維持できなくなり、食欲不振、全身倦怠感といったいわゆる尿毒症の症状が出てきます。
最初の、「脳梗塞と診断」というワードから、5の腎臓機能障害は✕、4の嚥下障害も✕、脳梗塞と関係なさそうですね。
次に「左の上下肢」とありますが、2の対麻痺は、下肢の両方の運動麻痺を指すので、✕となります。これは片麻痺(左上下肢)とのひっかけです。
次に「会話は可能」とあり、どちらかというと「構音障害」に近く、1失語症とまではいかないので、✕
「問題なく食べることができる」ともあるので、4嚥下障害もなさそうで✕
残りは、3の感覚障害になります。
何をもって、「障害」や「病気」とするかという点についても理解しておいた方がよいでしょう。「日常生活に支障があるか」という点で、おなじ症状でも「障害」や「病気」の基準となる場合があります。
1失語症と判断するには、「会話ができない」という「日常生活に支障がある」という判断があるのが前提になります。
以上です。

問題7 注意欠如・多動症(ADHD)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  学童期の有病率はおよそ20%とされている。
2  多動性の症状は、青年期及び成人期には改善することが多い。※正解
3  学校での症状が主であり、家庭では症状がみられないことが多い。
4  精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)では、4歳以前に症状があることを診断基準としている。
5  治療としては、薬物療法が第一選択となることが多い。
【解説】
ADHDは、12歳以前からこれらの行動特徴があり、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断されます。
1そんなに多くないと思います。40人学級だと、8人の割合になるので多すぎます。クラスに5人以下ではないでしょうか。✕
2肌感覚で、改善していることが多いように思います。
3ADHDは、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断されます。✕
4 12歳以前です。4歳以前だと、発達の速度との区別がつかないと思います。具体的に困難がみられる場面は、保育所や幼稚園、小学校など集団活動をした時に顕著に出てきます。✕
5 困難な場面の程度によりますので、薬物療法が効く場合もありますが、第一選択(最初に選択される手段)より、環境の調整なども多く効果があります。
 (参考)国立精神・神経医療研究センター

心理学理論と心理的支援

問題8 次の記述のうち、内発的動機づけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  大学の入試の要件となっているため、英語外部検定を受検した。
2  叱責されないように、勉強に取り掛かった。
3  授業中、寒いので、窓を閉めた。
4  お腹が減ったので、席を立って食事に行った。
5  投資に偶然興味を持ったので、勉強した。※正解
【解説】
 
「内発的」 の字のごとく自分の内側からでるモチベーションです。
 キーワードは「興味」「関心」 ※自分の気持ちがある、5が正解です。
「外発的」 の字のごとく自分の外の理由からでるモチベーションです。
 キーワードは「試験の要件」「叱られる」「気温が低い(寒い)」がある1,2,3は「外発的」なものだと思います。
 4はひっかけだと思いますが、「お腹が減る」➡「食事に行く」は、「動機付け」とは違うかなと思います。そこに動機(やりたいという気持ち)があるのかどうか、選択肢だけでは判断できない生理的な状態と判断しました。
 内発的動機付けを選ぶという問題は、残りが必ず外発的動機付けだということではない可能性もあるかと思います。

問題9 次の記述のうち、性格特性の5因子モデル(ビッグファイブ)の1つである外向性の特徴として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  ささいなことで落ち込みやすい。
2  新しいことに好奇心を持ちやすい。
3  他者に対して親切である。
4  他者との交流を好む。※正解
5  責任感があり勤勉である。
【解説】
 
5因子モデルは、人のパーソナリティは「神経症傾向」「外向性」「誠実性」「調和性」「開放性」の5つの因子によって構成されるとする特性論ですが、いろいろな特性論が今までいろいろあり、それをいろいろな研究者がひたすら因子分析したら、5つの因子が出てきて、それらが相互に複雑に関係しているというモデルです。
 詳しく知るより、問題文の「外向性」をヒントに、選択肢を比較していきましょう。
 一般的な「外向性」というのは、
1、2、5の選択肢のように、自身の特性というより、他者に対する態度を指すことが多い気がします。あとは3、4の比較になりますが、他社に対する「親切」より、「交流」の方が、「外向性」の因子に近いと思いますので、4が〇

問題10 集団における行動に関する次の記述のうち、傍観者効果の事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  作業をするときに見学者がいることで、一人で行うよりも作業がはかどった
2  革新的な提案をチームで議論したが、現状を維持して様子を見ようという結論になってしまった。
3  路上でケガをしたために援助を必要とする人の周囲に大勢の人が集まったが、誰も手助けしようとしなかった※正解
4  チームで倉庫の片付けに取り組んだが、一人ひとりが少しずつ手抜きをした結果、時間までに作業が完了せず、残業になってしまった。
5  リーダーがチームの目標達成を重視しすぎることで、チームの友好的な雰囲気が損なわれ、チームワークに関心がないメンバーが増えてしまった。
【解説】
 
まずは、それぞれの効果について、できればどんな効果か名称も含め分かる方がいいです。
1は、「傍観者」という名称もヒントになります。「傍観」ってあまりいい意味ではないですよね。やらないといけないのに見過ごしていたという意味があるので、心理学の効果としても、ネガティブな意味合いが多いと思うので、選択肢を選ぶ際にもポジティブな内容より、かなりネガティブな効果が正解に近いと思います。
1は、「作業がはかどった」ので、ポジティブな効果です。
2は、「様子見」なので、特にどちらでもないです。
3は、「誰も手助けしなかった」なので、ネガティブな内容です。
4は、「チームで手抜き」なので、「傍観」とは違います。作業をしているけれど、効率が上がっていないということです。
5は、「チームワーク」なので、これも同じく「傍観」とは違います。4とほぼ同じポイントです。
  「傍観者効果」は、3の内容のとおりです。実際の場面では何が起こっているかというと、状況に対して、正しい行為を選択するのではなく、「思考停止」してしまって、何が正しいかどうかも分からない状態に陥っていると思います。つまり状況を取り巻く全員が「思考停止」になるくらいの「何か」が起こってしまい、「傍観」するしかない状況かと思います。「思考停止」しているので、状況そのものを考えるのではなく、「誰かがしてくれる」と目を背けてしまう状況なんでしょう。

問題11  子どもの発達に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  共同注意とは、他者との友情を構築することを示す。
2  初語を発する時期になると、喃語{なんご}が生起する。
3  社会的参照は、新奇な対象に会った際に、養育者などの表情を手掛かりにして行動を決める現象である。※正解
4  アニミズムとは、自分や他者の行動を予測し、説明する力を指す。
5  物体が隠れていても存在し続けるという「対象の永続性」は、3歳以降に理解できるようになる。
【解説】
1、他者の注意の所在を理解しその対象に対する他者の態度を共有することや、自分の注意の所在を他者に理解させその対象に対する自分の態度を他者に共有してもらう行動をしめします。✕
2、喃語は、母音+子音なので、初語の段階ではないです。✕
3、〇
4、アニミズムは非生物にも人間のような思考や感情があると思うことです。✕
5、対象の永続性は前操作期の特徴ですが、4歳以降と言われます。✕

問題12  次の記述のうち、問題焦点型ストレス対処法(コーピング)の事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  介護ストレスを解消してもらおうと、介護者に気晴らしを勧めた。
2  困難事例に対応できなかったので、専門書を読んで解決方法を勉強した。※正解
3  仕事がうまくはかどらなかったので、週末は映画を観てリラックスした。
4  育児に悩む母親が、友人に話を聞いてもらえて気分がすっきりしたと話した。
5  面接がうまくいかなかったので、職場の同僚に相談し、ねぎらってもらった
【解説】
 
相談援助をする中で、クライエントへの対応のパターンとして、「気持ちを聴く」、「具体的な対応策を教える。」「評価する。」などがあると思います。実務の場面では、それをうまく組み合わせながら、顧客満足につながる面接をしていくことが、面接力だと思います。
「問題焦点型」は、このうちそのうち、「問題そのものに具体的な対応策を教える。」にあたりあす。2以外は、「気持ちを聴く」になるので、問題そのものから派生した「感情への対処」になるので、正解は2でいいと思います。

問題13  心理検査に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  乳幼児の知能を測定するため、WPPSIを実施した。※正解
2  頭部外傷後の認知機能を測定するため、PFスタディを実施した。
3  投影法による人格検査を依頼されたので、東大式エゴグラムを実施した。
4  児童の発達を測定するため、内田クレペリン精神作業検査を実施した。
5  成人の記憶能力を把握するため、バウムテストを実施した。
【解説】
 
名称と内容が一致するのかの確認です。
 内容が分かりやすい物から省いていきます。
 5バウムテストは、「バウム」はドイツ語で「木」です。「バウムクーヘン」の「バウム」ですね。木をどう描くのかにより、人の気持ちを推し量る、いわゆる「投影法」の心理検査です。記憶能力の把握ではないので、✕
 4内田クレペリン検査は、就職の時によくやるひたすら数字を足していき、その作業への集中力などを検査するもので、児童の発達を関係ないので✕
 3投影法による人格検査は、あまり種類がないので、置きましょう。主なものは5のバウムテストと、ロールシャッハ(インクの染みをどうたとえるか)を覚えておけばいいと思います。東大式エコグラムは✕。
 2頭部外傷後の認知機能の測定は、かなり難しいと思います。心理検査とMRIを組み合わせてしないと頭部外傷の影響は見ることはできないと思います。ここは常識的に判断していきましょう。PFスタディがどんなものか知っていればなおよいでしょう。✕
 1乳幼児の知能を測定できる心理検査は、このWPPSIくらいしかないと思います。あとは、K式くらいかと。〇

問題14  心理療法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  ブリーフセラピーは、クライエントの過去に焦点を当てて解決を目指していく。
2  社会生活技能訓練(SST)は、クライエントが役割を演じることを通して、対人関係で必要な技能の習得を目指していく。※正解
3  来談者中心療法は、クライエントに指示を与えながら傾聴を続けていく。
4  精神分析療法は、学習理論に基づいて不適応行動の改善を行っていく。5  森田療法は、クライエントが抑圧している過去の変容を目指していく。
【解説】
1、ブリーフセラピー(Brief Therapy: 短期療法)は、短期間で効率の良い方法によって変化・効果を目指すケアの手法です。belief(信念)とは違います。Briefは「短期間の」の意味です。過去の原因を遡るのではないです。✕
2、〇
3、来談者中心なので、指示はしません。✕
4、精神分析療法は、フロイト(医者)が提唱した説なので、学習理論(どっちかというと教育寄り)とは違います。✕
5、森田療法は、過去の変容ではなく、現在の「あるがまま」がテーマです。✕

社会理論と社会システム

問題15  次の記述のうち、ヴェーバー(Weber, M.)の合法的支配における法の位置づけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  法は、被支配者を従わせ、超人的な支配者の権力を貫徹するための道具である。
2  法は、伝統的に継承されてきた支配体制を正当化するための道具である。3  法は、支配者の恣意的な判断により定められる。
4  法は、神意や事物の本性によって導き出される。
5  法は、万民が服さなければならないものであり、支配者も例外ではない。※正解
【解説】
法律ですので、「超人的」「伝統的」「恣意的」「神意」などとは異なります。✕です。

問題16 社会変動の理論に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  ルーマン(Luhmann, N.)は、社会の発展に伴い、軍事型社会から産業型社会へ移行すると主張した。
2  テンニース(Tonnies, F.)は、自然的な本質意志に基づくゲマインシャフトから人為的な選択意志に基づくゲゼルシャフトへ移行すると主張した。
※正解
3  デュルケム(Durkheim, E.)は、産業化の進展に伴い、工業社会の次の発展段階として脱工業社会が到来すると主張した。
4  スペンサー(Spencer, H.)は、近代社会では適応、目標達成、統合、潜在的パターン維持の四つの機能に対応した下位システムが分出すると主張した。
5  パーソンズ(Parsons, T.)は、同質的な個人が並列する機械的連帯から、異質な個人の分業による有機的な連帯へと変化していくと主張した。
【解説】
出てくる人はある程度決まっているので、覚えていきましょう。
 これも選択肢入れ替え系の問題です。選択肢3~5が玉突きで入れ替わっています。
1、ルーマンの選択肢の内容は、どこにもないです。パーソンズの後に、ニコラス・ルーマン(Niklas Luhmann 1927-1998)が独自の社会システム論を提示します。✕
2、テンニースといえば、ゲマインシャフト(Gemeinschaft)とゲゼルシャフト(Gesellschaft)です。〇
3、デュルケムの選択肢は、5の内容になります。✕
4、スペンサーの選択肢は、1の内容になります。✕
5、パーソンズの選択肢は、4の内容になります。✕

問題17 「令和4年版男女共同参画白書」(内閣府)に示された近年の家族の動向に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  2020年(令和2年)において、全婚姻件数における再婚件数の割合は40%を超えている。
2  家事、育児における配偶者間の負担割合について、「配偶者と半分ずつ分担したい」(外部サービスを利用しながら分担するを含む)と希望する18~39歳の男性の割合は、70%を超えている。※正解
3  20代の男性、女性ともに50%以上が、「配偶者はいないが恋人はいる」と回答している。
4  2021年(令和3年)において、妻が25~34歳の「夫婦と子供から成る世帯」のうち、妻が専業主婦である世帯の割合は、50%を超えている
5  子供がいる現役世帯のうち、「大人が一人」の世帯の世帯員の2018年(平成30年)における相対的貧困率は、30%を下回っている
【解説】
この問題は、常識の範囲で回答すれば十分対応可能です。
1について、再婚率が40%を超えているってすごい社会だと思います。✕
2について、最近は、共働きが「当たり前」になってきて、男性の7割が家事を半分ずつ分けたいと思っている。〇なんですが、”半分”のイメージが弾男女で一緒なのかは疑問です。
3について、結婚していないが恋人はいる20代が半分ってありえないです。✕
4について、妻が専業主婦の世帯が、50%を超えているって、最近は「共働き」が標準だと思います。✕
5について、正解そうですが、念のため不正解の場合も検証しておいてください。「大人が一人」と書いていますが、「ひとり親」のことです。わざとわかりにくく表現するのも、試験問題を作成するうえの手法なので、これは「ひとり親」のことだなと思って解いてください。
 ✕の場合は、「ひとり親世帯の世帯員の相対的貧困率は30%以上」となりますが、実際は48.3%になっています。

問題18 次の記述のうち、人々の生活を捉えるための概念の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  生活時間とは、個々人の人生の横断面に見られる生活の様式や構造、価値観を捉える概念である。
2  ライフステージとは、生活主体の主観的状態に注目し、多面的、多角的に生活の豊かさを評価しようとする概念である。
3  生活の質とは、時間的周期で繰り返される労働、休養、休暇がどのように配分されているかに注目する概念である。
4  家族周期とは、結婚、子どもの出生、配偶者の死亡といったライフイベントの時間的展開の規則性を説明する概念である。※正解
5  ライフスタイルとは、出生から死に至るまでの人の生涯の諸段階を示す概念である。
【解説】※典型的な選択肢入れ替え問題
1は、3の内容が〇
2は、5の内容が〇
3は、2の内容が〇
5は、1の内容が〇
 玉突きで、用語と内容がズラされて選択肢が作成されています。どれにも合致しない4が〇となります。

問題19 社会的役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  役割距離とは、個人が他者からの期待を自らに取り入れ、行為を形成することを指す。
2  役割取得とは、個人が他者との相互行為の中で相手の期待に変容をもたらすことで、既存の役割期待を超えた新たな行為が展開することを指す。
3  役割葛藤とは、個人が複数の役割を担うことで、役割の間に矛盾が生じ、個人の心理的緊張を引き起こすことを指す。※正解
4  役割期待とは、個人が他者からの期待と少しずらした形で行為をすることで、自己の主体性を表現することを指す。
5  役割形成とは、個人が社会的地位に応じた役割を果たすことを他者から期待されることを指す。
【解説】※典型的な選択肢入れ替え問題
1は、4の内容が〇
2は、該当する選択肢はない。役割新展開くらい?
4は、5の内容が〇
5は、1の内容が〇
 玉突きで、用語と内容がズラされて選択肢が作成されています。どれにも合致しない3が〇となります。

問題20 次の記述のうち、ハーディン(Hardin, G.)が提起した「共有地の悲劇」に関する説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  協力してお互いに利益を得るか、相手を裏切って自分だけの利益を得るか、選択しなければならない状況を指す。
2  財やサービスの対価を払うことなく、利益のみを享受する成員が生まれる状況を指す。
3  協力的行動を行うと報酬を得るが、非協力的行動を行うと罰を受ける状況を指す。
4  それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果、全体としては誰にとっても不利益な結果を招いてしまう状況を指す。※正解
5  本来、社会で広く共有されるべき公共財へのアクセスが、特定の成員に限られている状況を指す。
【解説】
選択肢が、どの用語を指すのか理解する必要があります。
1は、囚人のジレンマです。✕
2は、フリーライダー(タダ乗り)です。✕
3は、選択的誘因です。✕
4が、共有地の悲劇です。〇
5は、ローカルコモンズです。悲劇という名称と選択肢の内容はあっていないように思います。✕

問題21  次の記述のうち、ラベリング論の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  社会がある行為を逸脱とみなし統制しようとすることによって、逸脱が生じると考える立場である。※正解
2  非行少年が遵法的な世界と非行的な世界の間で揺れ動き漂っている中で、逸脱が生じると考える立場である。
3  地域社会の規範や共同体意識が弛緩{しかん}することから、非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
4  下位集団における逸脱文化の学習によって、逸脱が生じると考える立場である。
5  個人の生得的な資質によって、非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
【解説】
1、ラベリング論は、その名のとおり一方的に決めつけるというニュアンスになります。〇
2、遵守と非行の間で揺れ動くなので、✕
3、地域の規範が弛緩なので、✕
4、逸脱文化の学習なので、✕
5、生得的な資質なので、✕
 残った1が〇現代社会と福祉

現代社会と福祉

問題22  次の記述のうち、近年の政府による福祉改革の基調となっている「地域共生社会」の目指すものに関する内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  老親と子の同居を我が国の「福祉における含み資産」とし、その活用のために高齢者への所得保障と、同居を可能にする住宅等の諸条件の整備を図ること。
2  「地方にできることは地方に」という理念のもと、国庫補助負担金改革、税源移譲、地方交付税の見直しを一体のものとして進めること。
3  普遍性・公平性・総合性・権利性・有効性の五つの原則のもと、社会保障制度を整合性のとれたものにしていくこと。
4  行政がその職権により福祉サービスの対象者や必要性を判断し、サービスの種類やその提供者を決定の上、提供すること。
5  制度・分野ごとの縦割りや、支え手・受け手という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が我が事として参画すること等で、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていくこと。※正解

【解説】
 
今の行政の一番目指していることが「地域共生社会」です。厚生労働省というか、国は10年くらいのスパンや長期的なことを考え、その都度、テーマやスローガンを作ってきます。今はこの「地域共生社会」です。日本全体の大きなテーマはやはり「団塊の世代」でした。団塊の世代が年齢を重ねることで、「少子高齢化」が進んでいきます。団塊の世代と、それに伴う団塊Jr世代が大きなテーマです。
 現在、団塊の世代は後期高齢者になっています。むしろ65歳からの前期高齢者は減少傾向にあります。平均寿命が男性81歳、女性87歳だとすると、男性はあと5年ほど、女性はあと10年ほどで大幅に自然減していきます。そのため、ここ50年程、社会福祉の大きなテーマであった「少子高齢化」というテーマも、「人口減少」というテーマにかわっていくのではないかと考えます。
 さて、本題に戻りますが、まだ「少子高齢化」が大きなテーマであり、さらに大きな課題は、高齢化にと伴う医療費、介護費の増加が国の財政的なテーマとなります。誰が医療や介護を担うのか?誰が負担をするのか?今までどおり負担をしていくわけにはいかないので、自力でなんとかしてもらうというキーワードが、「地域共生社会」です。地域で共に生きる、元気なうちは人を助け、困ったことができたら助けてもらう。DXが進んだら、「地域」の範囲もかなり変わってくると思いますが、それはさておき、そういう視点で、選択肢をみていくと、
 1は、「家族」で何とかする。
 2は、国のお金を地方に渡し、「地方自治体」で何とかする。
 3は、論点がまったくあっていないですね。社会保障の原則は全く関係ないです。
 4は、「行政」で何とかする。ほぼ、2と近い選択肢です。
 5は、「地域」で何とかする。これが正解です。

問題23  福祉に関わる思想や運動についての次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  バーリン(Berlin, I.)のいう積極的自由とは、自らの行為を妨げる干渉などから解放されることで実現する自由を意味する。
2  ポジティブ・ウェルフェアは、人々の福祉を増進するために、女性参政権の実現を中心的な要求として掲げる思想である。
3  1960年代のアメリカにおける福祉権運動の主たる担い手は、就労支援プログラムの拡充を求める失業中の白人男性たちであった。
4  フェビアン社会主義は、ウェッブ夫妻(Webb, S.&B.)などのフェビアン協会への参加者が唱えた思想であり、イギリス福祉国家の形成に影響を与えた。※正解
5  コミュニタリアニズムは、家族や地域共同体の衰退を踏まえ、これらの機能を市場と福祉国家とによって積極的に代替するべきだとする思想である。
【解説】
 
この問題は選択肢入れ替え系ではなく、内容確認型です。
1、他人から行動が干渉されないことが消極的自由なので、選択肢はこの内容です。✕
2、ポジティブ・ウェルフェアは、参加型社会保障、つまり未来への投資という考え方です。女性参政権とか、性的な意味合いにウェイトはおかれていません。✕
3、黒人の解放運動がベースになります。✕
4、フェビアン協会 ➡ ウェッブ夫妻 とペアで覚えましょう。〇
5、コミュニタリアニズムを日本語に簡単に言うと、共同体主義なので、家族や地域共同体の衰退ではないです。✕

問題24  福祉政策に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  アダム・スミス(Smith, A.)は、充実した福祉政策を行う「大きな政府」からなる国家を主張した。
2  マルサス(Malthus, T.)は、欠乏・疾病・無知・不潔・無為の「五つの巨悪(巨人)」を克服するために、包括的な社会保障制度の整備を主張した。
3  ケインズ(Keynes, J.)は、不況により失業が増加した場合に、公共事業により雇用を創出することを主張した。※正解
4  フリードマン(Friedman, M.)は、福祉国家による市場への介入を通して人々の自由が実現されると主張した。
5  ロールズ(Rawls, J.)は、国家の役割を外交や国防等に限定し、困窮者の救済を慈善事業に委ねることを主張した。
【解説】
 
これは完全に経済学の問題ですね。今までの他の勉強がいきるところです。
1のアダム・スミスは「神の見えざる手」ですよね。これは経済はほっとらかしにしていても、神様がなんだかしてくれるというものなので、「大きな政府」とは真逆の「小さな政府」になります。
2は、『人口論』を著し、人口増加が貧困の要因となると論じ、人口抑制を説きました。✕
 欠乏・疾病・無知・不潔・無為の「五つの巨悪(巨人)」は、ヴィバレッジ報告です。
3は、ケインズ派です。アメリカのニューディール政策が有名です。〇
4は、フリードマンは「小さな政府」です。選択肢自体が矛盾しているので、そのへんも判断の材料です。市場への介入はすればするほど自由度は下がります。✕
5は、選択肢は小さな政府の内容ですが、格差があることを認めないのではなく,格差があっても,それがその社会の中で最も恵まれない人の利益になるような仕組みをつくることが,ロールズが提唱した「正義」です。どちらかというと、大きな政府が主旨です。

 問題25  近代日本において活躍した福祉の先駆者に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  石井十次は岡山孤児院を設立した。※正解
2  山室軍平は家庭学校を設立した。
3  留岡幸助は救世軍日本支部を設立した。
4  野口幽香は滝乃川{たきのがわ}学園を設立した。
5  石井亮一{りょういち}は二葉幼稚園を設立した。
【解説】
 
選択肢入れ替え系問題です。2と3、4と5で入れ替わっています。
 
連想法で覚えていきましょう。
1、石井十次(じゅうじ) ➡ 十字架(じゅうじか) ➡ キリスト ➡ 孤児院 〇
2、✕ 山室軍平 ➡ 軍 ➡ 救世軍 
  家庭学校は、留岡幸助。
3、✕ 留岡幸助 ➡ 幸せ ➡ 家庭 ➡ 家庭学校 
4、✕ 野口幽香 ➡ 野菜 ➡ 二葉 ➡ 二葉幼稚園(幼稚園のふたば、最初のころ)
5、✕ 石井亮一 ➡ 石井十次じゃないほう ➡ 滝乃川学園

問題26 福祉六法の制定時点の対象に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  児童福祉法(1947年(昭和22年))は、戦災によって保護者等を失った満18歳未満の者(戦災孤児)にその対象を限定していた。
2  身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))は、障害の種別を問わず全ての障害者を対象とし、その福祉の施策の基本となる事項を規定する法律と位置づけられていた。
3  (新)生活保護法(1950年(昭和25年))は、素行不良な者等を保護の対象から除外する欠格条項を有していた。
4  老人福祉法(1963年(昭和38年))は、介護を必要とする老人にその対象を限定していた。
5  母子福祉法(1964年(昭和39年))は、妻と離死別した夫が児童を扶養している家庭(父子家庭)を、その対象外としていた。※正解
【解説】
 
1、その当時、確かに戦災孤児は多かったと思いますが、それ以外にも貧困や非行などの問題もあり、限定していないです。✕
 2、法律の名前のとおり、身体のみを対象としていました。✕
 3、旧生活保護法には、欠格条項がありました。✕
 4、公的な介護というワードが出てくるのは、介護保険法まで待たないといけません。それ以前の法律には、介護の有無で法律の対象者を絞ることはできません。✕
 「限定していた」というワードに要注意で、限定していない時にあえて間違った選択肢を作るために使うワードです。今回は1と4に使われています。正解の5では、「対象外としていた」と違う表現を使っています。

問題27 福祉のニーズとその充足に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  ジャッジ(Judge, K.)は、福祉ニーズを充足する資源が不足する場合に、市場メカニズムを活用して両者の調整を行うことを割当(ラショニング)と呼んだ。
2  「ウルフェンデン報告(Wolfenden Report)」は、福祉ニーズを充足する部門を、インフォーマル、ボランタリー、法定(公定)の三つに分類した。
3  三浦文夫は、日本における社会福祉の発展の中で、非貨幣的ニーズが貨幣的ニーズと並んで、あるいはそれに代わって、社会福祉の主要な課題になると述べた。※正解
4  ブラッドショー(Bradshaw, J.)は、サービスの必要性を個人が自覚したニーズの類型として、「規範的ニード」を挙げた。
5  フレイザー(Fraser, N.)は、ニーズの中身が、当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況を、「必要解釈の政治」と呼んだ。
(注)「ウルフェンデン報告」とは、1978年にイギリスのウルフェンデン委員会が発表した報告書「The Future of Voluntary Organisations」のことである。
【解説】
選択肢の用語と人物は一致している内容ポイント確認型です。
1、ラショニングとは割り当ての意味で、市場メカニズムを用いないで、希少な資源を必要とする人々に供給する方法です。ジャッジが提唱しました。市場メカニズムと割当(ラショニング)の概念が矛盾しています。✕
2、ウルフェンデン報告は、福祉多元主義を提唱し、資源の供給主体をインフォーマル部⾨、ボランタリー部⾨、法定(公的)部⾨、⺠間営利部⾨に分類の4つに分類しました。✕
3、三浦文夫は、選択肢のとおりです。〇
4、本人が自覚しているニードは、感得されたニード(フェルト・ニード)です。本人の自覚と、規範(社会のルール)は矛盾した内容です。✕
5、ニーズの中身を専門職が客観的に把握し決定する状況を必要充足の政治と名付けました。大事なのは当事者の必要性を解釈することですというのが、必要会社の政治です。✕

問題28 生活困窮者自立支援法の目的規定に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ること。※正解
2  すべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、最低限度の生活を営めるよう必要な保護を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ること。
3  尊厳を保持し、能力に応じ自立した日常生活を営めるよう、必要な保健医療及び福祉サービスに係る給付を行い、生活困窮者の自立の促進を図ること。
4  能力に応じた教育を受ける機会を保障する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ること。
5  社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるよう施策を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ること。
【解説】
 
法律の名称は、法律の内容をそのまま表します。この法律は「自立支援」を目的としています。
 2の最低限度の保護、3の保健医療及び福祉サービス、4の教育を受ける機会を保障、5の参加する機会の確保は、✕です。

問題29 日本における人口の動向に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  第二次世界大戦後、1940年代後半、1970年代前半、2000年代後半の3回のベビーブームを経験した。
2  15~64歳の生産年齢人口は、高度経済成長期から1990年代後半まで減少を続け、以後は横ばいで推移している。
3  「『日本の将来推計人口』における中位推計」では、65歳以上の老年人口は2025年頃に最も多くなり、以後は緩やかに減少すると予想されている。
4  「2021年の人口推計」において、前年に比べて日本人人口が減少した一方、外国人人口が増加したため、総人口は増加した。
5  1970年代後半以降、合計特殊出生率は人口置換水準を下回っている。※正解
(注)1  「『日本の将来推計人口』における中位推計」とは、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」における、出生中位(死亡中位)の推計値を指す。
2  「2021年の人口推計」とは、総務省「人口推計2021年(令和3年)10月1日現在」における推計値を指す。
【解説】
 
1、ベビーブームは2回(団塊の世代と団塊の世代Jr)✕
 2、高度経済成長にあわせて人口は増加。✕
 3、人口について、年を覚えるのは、2つ。2025年と2042年。
   2025年問題は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になること。
   2042年に高齢者の割合がピークになる。
 4、総人口が減っており、人口減少はすでに始まっています。✕
 残った5が〇 
 5、人口置換水準は、ややこしく書いていますが、要するに「2」のことです。二人の夫婦から、二人の子どもが出生しないと、全体の人口が減っていきます。1970年代後半は、団塊Jrが生まれたくらいか、少しあとになります。

問題30 福祉サービスの利用に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  社会福祉法は、社会福祉事業の経営者に対し、常に、その提供する福祉サービスの利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないと規定している。※正解
2  社会福祉法は、社会福祉事業の経営者が、福祉サービスの利用契約の成立時に、利用者へのサービスの内容や金額等の告知を、書面の代わりに口頭で行っても差し支えないと規定している。
3  福祉サービスを真に必要とする人に、資力調査を用いて選別主義的に提供すると、利用者へのスティグマの付与を回避できる。
4  福祉サービス利用援助事業に基づく福祉サービスの利用援助のために、家庭裁判所は補助人・保佐人・後見人を選任しなければならない。
5  福祉サービスの利用者は、自らの健康状態や財力等の情報を有するため、サービスの提供者に比べて相対的に優位な立場で契約を結ぶことができる。
【解説】
 常識的な考え方で解答できると思います。
 2、民法では口頭でも契約は成立しますが、社会福祉法がわざわざ法律に書くくらいですから、利用者とのトラブルを防ぐ意味でも、書面を作成する必要はあります。✕
 3、資力調査も用いると、利用者へのスティグマの付与が回避できるとは思えません。難しく言っていますが、お金のあるなしを知るという手段は、回避に役立つとは言えません。✕
 4、補助人・保佐人・後見人は、福利サービスの利用援助のため「だけ」ではなく、契約の取消など、それ以外の日常のことにも権限ができます。そのため、家庭裁判所に提出する書類であったり、手続きもそれなりに煩雑で、「しなければならない」となると、利用援助まで至らない人が続出で大変なことになると思います。✕
 5、サービスは利用者と、供給者の需要と供給により、相対的に有利か不利か決まってきます。「自らの健康状態や財力等の情報を有するため」ではないです。✕
 1、苦情解決は基本ですね。〇

問題31  男女雇用機会均等政策に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は、女性の活躍に関する一般事業主行動計画を策定することが望ましいとされている。※正解
2  セクシュアルハラスメントを防止するために、事業主には雇用管理上の措置義務が課されている。
3  総合職の労働者を募集・採用する場合は、理由のいかんを問わず、全国転勤を要件とすることは差し支えないとされている。
4  育児休業を取得できるのは、期間の定めのない労働契約を結んだフルタイム勤務の労働者に限られている。
5  女性労働者が出産した場合、その配偶者である男性労働者は育児休業を取得することが義務づけられている。
【解説】
この問題も常識の範囲で考えて解いていきましょう。社労士あたりの勉強をしていたら問題なく解けます。
1、101人にピンときましょう。101人という人数がかかわってくるのは、女性の活躍に関する一般事業主行動計画だけです。〇
2、なんの設置義務?雑な選択肢です。✕
3、男女雇用機会均等法で禁止している 「間接差別」の一例です。間接差別とは、性別に関係がないように取り扱っても、運用の結果どちらかの性別が不利益になる制度や扱いを指します。しかも、さらに改正され、すべてのすべての労働者の募集、採用、昇進、職種の変更をする際に、 合理的な理由がないにもかかわらず転勤要件を設けることは、 「間接差別」として禁止されています。✕
 4、ざっくり言うとパートさんも可能です。期間の定めのある労働者も可能です。
 5、努力義務になります。取得率はまだ2割もいっていません。✕

地域福祉の理論と方法

問題32  地域福祉の基礎的な理念や概念に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  コミュニティケアとは、地域の特性や地域における課題やニーズを把握し、地域の状況を診断することをいう。
2  セルフアドボカシーとは、行政が、障害者や高齢者等の権利を擁護するよう主張することをいう。
3  福祉の多元化とは、全ての人々を排除せず、健康で文化的な生活が実現できるよう、社会の構成員として包み支え合う社会を目指すことをいう。
4  社会的企業とは、社会問題の解決を組織の主たる目的としており、その解決手段としてビジネスの手法を用いている企業のことである。※正解
5  住民主体の原則とは、サービス利用者である地域住民が、主体的にサービスを選択することを重視する考え方である。
【解説】
 
1、「把握」→「診断」のみではないと思います。✕
 
2、「セルフ」なので、「行政」ではないです。✕
 3、「健康で文化的な生活の実現」ってどこかできいたようなフレーズですが、生活保護法の「健康で文化的な最低限度の生活を保障」を真似たフレーズですね。こういう選択肢は間違いの選択肢をつくる際に用いられます。✕
 5、「サービス利用者である」となれば、そうでない住民が主体となれないので、✕
 残りの4が〇。特に不自然な内容ではないです。

問題33  地域福祉における多様な参加の形態に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  特定非営利活動法人は、市民が行うボランティア活動を促進することを目的としており、収益を目的とする事業を行うことは禁止されている。
2  社会福祉法に規定された市町村地域福祉計画を策定又は変更する場合には、地域住民等の意見を反映させるように努めなければならないとされている。※正解
3  重層的支援体制整備事業における参加支援事業は、ひきこもり状態にある人の就職を容易にするため、住居の確保に必要な給付金を支給する事業である。
4  共同募金の募金実績総額は、1990年代に減少に転じたが、2000年(平成12年)以降は一貫して増加している。
5  市民後見人の養成は、制度に対する理解の向上を目的としているため、家庭裁判所は養成された市民を成年後見人等として選任できないとされている。
【解説】
 
1、そもそもボランティアだけでないので、✕ですし、収益を目的とする場合もあります。
 3、「住宅確保に必要な給付金を支給」するのは、住宅確保給付金になります。違う法律や事業で同じような内容が乱立するのを行政は嫌います。単純にその目的が達成されるのであれば、特に事業として改めて実施することはないので、✕
 4、1990年代に減少に転じ、以降もずっと減少傾向が続いています。個人的にはNPOやふるさと納税など他の制度ができて、選択肢が増えたことの影響もあるのかなと思います。✕
 5、「養成」なのに、「理解の向上が目的」とはならないと思います。家庭裁判所が選任をするので、「養成」しています。ただ、これは自治体によるところもあり、家庭裁判所は選任をするのですが、市民には後見人が荷が重すぎる等の問題も考え、あえて養成をしていない地方自治体もあります。✕

問題34  地域共生社会の実現に向けた、厚生労働省の取組に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  2015年(平成27年)の「福祉の提供ビジョン」において、重層的支援体制整備事業の整備の必要性が示された。
2  2016年(平成28年)の「地域力強化検討会」の中間とりまとめにおいて、初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示された。
3  2017年(平成29年)の「地域力強化検討会」の最終とりまとめにおいて、縦割りの支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とする等の包括的な支援体制の整備の必要性が示された。※正解
4  2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は特定の分野の専門性に特化して養成すべきであると提言された。
5  2019年(令和元年)の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめにおいて、生活困窮者自立支援法の創設の必要性が示された。

(注)1  「福祉の提供ビジョン」とは、「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現―新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン―」のことである。
2  「地域力強化検討会」とは、「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会」のことである。
3  「地域共生社会推進検討会」とは、「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」のことである。
【解説】
この地域共生社会の実現に向けた、厚生労働省の取組の流れについては、
 WAMネットの 地域共生社会の実現に向けて に大まかな流れがあるので、参考にするとよいです。
また、この問題の構成をみながら回答することもできます。選択肢が上手く時系列に並んでいるので、議論の方向が分かっていれば回答することもできます。
 「地域福祉の推進」➡「地域包括ケア」、その方法として「重層的支援体制整備」 と議論になっているので、1と2は時系列が逆になります。5も個別の事業のことになるので、時系列の一番最後になるのは違和感があります。
 
1、「福祉の提供ビジョン」では、まだ重層的支援体制事業についての言及はなく、「地域包括ケアシステム」について言及された段階です。✕
 2、「はじめて」ではなく、前年に言及があります。✕
 3、〇
 4、「包括的に」が方向です。
 5、生活困窮者自立支援法は成立が、平成29年度(2017年)から施行になっています。法律が成立する過程は国会議員が提案する場合と、国が提案する場合があります。国が提案する場合も、この「地域共生社会推進検討会」のような会議に検討をしてもらって、報告書(とりまとめ)をもらったうえで、法案をつくって、国会に審議して成立します。もし2019年に生活困窮者自立支援法創設の必要性が示されたのであれば、その後に法案が作成されて、国会で議論されてるのが、2020年頃、成立してもすぐに施行されるのではなく、その準備期間が必要なため施行は2021年頃になるかなと思います。そんなに最近に生活困窮者自立支援法ができた記憶はないので、✕
 ちなみに、2、3にあるように「地域力強化検討会」も2016年に中間とりまとめ、2017年に最終とりまとめと、いきなり結論がでるわけでもなく、何回も議論をしたうえで、中間、最終ととりまとめが複数に渡ることもあります。

問題35  事例を読んで、自立相談支援機関のB主任相談支援員(社会福祉士)がこの時点で検討する支援として、適切なものを2つ選びなさい。

〔事  例〕
Cさん(30歳代、男性)は、60歳代の両親と同居している。終日、自室でオンラインゲームをして過ごしており、10年以上ひきこもりの状態にある。父親はいくつかの仕事を転々としてきたが、65歳で仕事を辞め、その後は主に基礎年金で生活をしているため、経済的にも困窮している様子である。また、母親は長年にわたるCさんとの関係に疲れており、それを心配した民生委員が、生活困窮者自立支援制度の相談機関を紹介したところ、母親は自立相談支援機関に来所し、B主任相談支援員にCさんのことを相談した。
1  ひきこもりの人に配慮された居場所が、地域のどこにあるかを調べ、Cさんにその場所と事業・活動を紹介する。※正解
2  まずはCさんが抱える心理的な課題に絞ってアセスメントを行い、支援計画を作成する。
3  福祉専門職による支援だけでなく、当事者や経験者が行うピアサポートや、ひきこもりの家族会などの情報を母親に提供する。※正解
4  手紙やメール等を用いた支援は不適切であるため行わず、直接、Cさんと対面して支援する。
5  地域の支援関係者間で早期に支援を行うため、Cさんの同意を取る前に、支援調整会議で詳細な情報を共有する。
【解説】
 
どの事例問題でも共通するのは、まず事実の確認です。特にまわりの情報より、本人から直接得る情報が一番正確で情報量が多いです。具体的な支援内容は、状況を確認してからになります。なぜそうするのか?と実務を経験していない人は思うかもしれませんが、状況がわからず支援内容を決めてしまうと、誤ったというか、無駄な効果のない支援をする可能性が高くなるからです。支援する側の時間や労力も限りがあります。それに付き合わされている相談者の時間も労力も費やさせることになります。
 1、資源の紹介も大切な支援です。〇
 2、心理的な面だけでなく、生物心理社会モデル(BPSモデル)でアセスメントなど多面的・包括的に捉えるモデルでアセスメントをしたうえで、計画を策定する方が効率的です。計画を立ててから違うアセスメントをすると、再度計画の練り直しになります。✕
 3、「同じ立場」であるということが支援するうえでの強みです。〇
 4、最初のきっかけは直接対面のみにかかわらず本人とコミュニケーションをとることができるチャンネルであれば、どんなものでもよいと思います。手紙やメールが不適切なことはないです。✕
 5、個人情報をやりとりするには、支援関係者間で知らないうちにされていると、逆に不信感が増すということもありますし、個人情報保護法にも法令にともづく場合や緊急の場合などでしか、個人情報の共有もできません。これには若干例外もあって、本人が同意している場合は除かれます。そのため、個人情報を関係者でやり取りするために同意を取ることは必要です。また、個人情報の収集も目的に沿った内容しかしてはいけないことも知っておきましょう。早期に調整会議をしたいからという関係者の「焦り」だけで同意のないまま詳細な情報(個人情報)をやりとりすることはできません。✕

問題36 次のうち、社会福祉法に規定されている地域福祉に関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  2017年(平成29年)の社会福祉法改正において、「地域福祉の推進」の条文が新設された。
2  市町村社会福祉協議会は、災害ボランティアセンターを整備しなければならない。
3  地域住民等は市町村からの指導により、地域福祉の推進に努めなければならない。
4  重層的支援体制整備事業は、参加支援、地域づくりに向けた支援の二つで構成されている。
5  市町村は、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならない。※正解
【解説】
1、地域福祉の推進は、以前から社会福祉の中で言われてきたことです。
ここ最近の大きな福祉の流れですが、
 「地域福祉の推進」➡「地域包括ケア」、その方法として「重層的支援体制整備」という枠組みになります。
2、「しなければならない」と義務付けすると、予算措置もペアになってきます。災害はどこで起こるか分からないものです。先に地方自治体に予算措置がされたうえで、まだ必要であれば「しなければならない」として予算措置されると思いますが、そこまで至っていないです。✕
3、「地域福祉の推進」の主人公は、住民で自律的に進めるものです。指導をされてするものではなく、住民が主体的に行うものです。✕
4、二つで構成されていたら、「重層」ではなく、「二層」になるので、✕
5、地域包括ケアの概念です。〇

問題37 地域福祉の推進に向けた役割を担う、社会福祉法に規定される市町村地域福祉計画に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  市町村地域福祉計画では、市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画をもって、地域福祉計画とみなすことができる。
2  市町村地域福祉計画の内容は、市町村の総合計画に盛り込まれなければならないとされている。
3  市町村地域福祉計画では、市町村は策定した計画について、定期的に調査、分析及び評価を行うよう努めるとされている。※正解
4  市町村地域福祉計画は、他の福祉計画と一体で策定できるように、計画期間が法文上定められている。
5  市町村地域福祉計画は、2000年(平成12年)の社会福祉法への改正によって策定が義務化され、全ての市町村で策定されている。
【解説】
 
市町村地域福祉計画のポイントは 厚生労働省HP を確認ください。
 今は任意から努力義務になっています。
 
1、市町村と、市町村社会福祉協議会は別法人です。役割が違うので、もしそれが本当にそうなら市町村の主体性がなさすぎる気がします。✕
 2、努力義務ですので、「盛り込まなければならない」とされると、そもそも作成しなければならなくなります。✕
 3、〇
 4、法文上としては定められていません。✕
 5、平成12年に規定されるようになり、作成は任意でした。平成30年度の改正時に努力義務になっています。義務化ではないです。✕

問題38 社会福祉法に規定される共同募金に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  災害に備えるため準備金を積み立て、他の共同募金会に拠出することができる。※正解
2  共同募金を行うには、あらかじめ都道府県の承認を得て、その目標額を定める。
3  共同募金を行う事業は第二種社会福祉事業である。
4  市町村を区域として行われる寄附金の募集である。
5  募金方法別実績で最も割合が高いのは街頭募金である。
【解説】
 
共同募金に関する問題は毎年出るので、基本的な事項は覚えておきましょう。
1、〇
2、都道府県ではなく、独自の配分委員会の承認です。✕
3、社会福祉法第113条により、第一種社会福祉事業とされています。✕
4、都道府県になります。✕
5、街頭ではなく、自治会などの個別募金が約7割で一番多いです。街頭は2%ほどです。街頭では領収書もでませんし。✕

問題39 災害時における支援体制に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  災害対策基本法は、国及び地方公共団体が、ボランティアによる防災活動を監督し、その指揮命令下で活動するよう指導しなければならないと規定している。
2  災害対策基本法は、市町村長が避難行動要支援者ごとに、避難支援等を実施するための個別避難計画を作成するよう努めなければならないと規定している。※正解
3  災害対策基本法は、本人が同意している場合でも、市町村長が作成した避難行動要支援者の名簿情報を避難支援等関係者に提供してはならないと規定している。
4  「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(2021年(令和3年)改定(内閣府))は、福祉避難所は社会福祉施設でなければならないとしている。
5  「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」(厚生労働省)は、国が主に福祉避難所において、災害時要配慮者の福祉支援を行う災害派遣福祉チームを組成するとしている。
【解説】
1、ボランティアと労働の違いについて、ざっくりでいいので覚えておいてください。ボランティアはあくまで自発的な活動なので、労働との大きな違いのひとつが、「指揮命令」です。仕事では指揮命令がありますが、ボランティアには、指揮命令がありません。それが災害時であっても、国及び地方公共団体であっても一緒です。指揮命令があれば、それは労働になります。✕
2、〇
3、個人情報保護法でも、本人同意の場合は情報提供は可能です。✕
4、まず、福祉避難所が何なのか?を知っている必要があるかと思います。そうでない一般の避難所は、地方自治体が中心になり、小学校くらいの単位で災害時に設置されます。その中で福祉的な配慮が必要な避難者に対応するのが福祉避難所です。福祉施設などが指定されることが多いですが、大規模な災害などでは、それでは対応できない場合もあり、社会福祉施設でなければならないとまでしていません。✕
5、国が個別にそこまでしません。各都道府県になります。✕

問題40 地域福祉におけるネットワーキングに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  地域介護予防活動支援事業は、市町村が介護保険の第二号被保険者に対して、介護予防の活動を行うために、地域住民とネットワークを構築して取り組むものである。
2  被災者見守り・相談支援事業では、復興公営住宅の居住者を対象として、生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)が見守りを中心としたネットワークを構築し、支援を行う。
3  社会福祉法人による「地域における公益的な取組」は、社会福祉充実残額が生じた場合に、社会福祉法人がネットワークを構築して取り組むものである。
4  介護保険の生活支援・介護予防サービスの体制整備に向けて、都道府県は、協議体を定期的な情報共有のネットワークの場として設置している。
5  ひきこもり地域支援センター事業では、地域の多様な関係機関で構成される連絡協議会を設置する等、ネットワークづくりに努めるとされている。※正解
【解説】
1、地域介護予防活動支援事業は、介護保険制度における介護予防活動の一環で地域の交流や社会交流を重視する国の制度のひとつです。本当は介護予防活動も、第二号被保険者(40~65歳未満)にも特定健診のようにしたらいいと思いますが、介護予防活動の中心は第一号被保険者(65歳以上)になります。✕
2、生活支援コーディネーターは、地域全体のネットワークづくりが主な仕事になり、被災者見守り・相談支援事業とは別の位置づけです。✕
3、「地域における公益的取組」は、社会福祉充実残額がある時だけの、できる時にだけするものではなく、常に取り組みが必要です。✕
4、生活支援・介護予防サービスの実施は市町村です。当然協議体も市町村が設置していきます。✕
5、〇

問題41  事例を読んで、会議に向けたD社会福祉士の方針に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事  例〕
独立型社会福祉士事務所のD社会福祉士は、一人暮らしのEさん(85歳、女性、要介護1、身寄りなし)の保佐人を務めている。Eさんが熱中症の症状で入院することになった際、担当介護支援専門員からEさんの退院後の支援方針について会議を持ちたいと提案があった。担当介護支援専門員は、Eさんは認知機能の低下もあり、単身生活に不安を表明する近隣住民もおり、今後の本人の安全も考えるとサービス付き高齢者向け住宅への転居を検討すべきではないかと話している。また、長年見守りを続け、Eさんが信頼を寄せるF民生委員は、「本人の思いを尊重したい」と述べている。
1  Eさんの最善の利益を実現するため、Eさんにサービス付き高齢者向け住宅への転居を促す。
2  Eさんにとって危険な状況であるため、緊急的な措置入所の可能性を検討する。
3  Eさんの意思を尊重するため、専門職を中心に自宅で暮らし続ける方法を検討する。
4  Eさんが思いを表明しやすくするため、Eさんが信頼するF民生委員に会議に同席してもらう。※正解
5  Eさんは認知機能の低下が見込まれるため、会議ではEさんや関係者で判断せず、かかりつけ医の判断に委ねる。
【解説】
 
ケースワークするうえで、必要なことは「本人の思い」と「納得」と「タイミング」だと思います。本人の思いや納得がないまま、支援者がイイと思った方向性に進んでも、そのうちトラブルになったり、思ったような結果が得られないと思います。そういう観点で選択肢を比較して正解を見つけてください。また、支援する人同士の調整も必要です。
1、サービス付き高齢者向け住宅は、介護支援専門員が判断する最善の利益になります。✕
2、危険な状況ではなく、緊急でもないので✕
3、認知機能の低下がみられるとはいえ、「専門職を中心に」検討しては、本人の思いや納得と必ずしも一致しているとは言えないので、✕とは言えなまでも△くらいにして、他の選択肢との比較で✕にします。
4、まずは本人の思いを表明してから、一緒に考えるという姿勢が大切だと思います。他の選択肢での比較から一番適切とし、〇
5、医者に判断させても、本人の思いや納得につながるとは言えません。✕

福祉行財政と福祉計画

問題42  次のうち、厚生労働省に設置されているものについて、正しいものを1つ選びなさい。

1  子ども・子育て会議
2  障害者政策委員会
3  中央防災会議
4  孤独・孤立対策推進会議
5  社会保障審議会 ※正解
【解説】
 
選択肢にあるような会議は、いわゆる審議会と言って、国(地方地自体も一緒です)が政策を立案するにあたって、専門家に意見を聞く、難しく言うと諮問する会議になります。まずは選択肢の会議そのものがあるかという点で言うと、調べましたが全ての会議は存在します。次に厚生労働省以外に、どの省庁に会議が設置されているかという点で、気にすると、あとは内閣府です。内閣府は内閣総理大臣のもとにおかれて、特に政策的に重要な内容や、人権、複数の省庁にまたがる事項(政策調整)に関するを管轄しているとイメージしてください。そのため1~4は全て内閣府に設置されています。それぞれ政策に紐づく法律がありますが、社会福祉士試験ではそこまで出題されていないように思います。
 1の子ども・子育ても厚生労働省が中心でしょうが、企業の取り組みは経済産業省が関係するでしょうし、特に少子化が進む中では重要な政策のひとつになります。✕
 2の障害者政策についても、バリアフリーなどは国土交通省も関係します。
 3の防災こそ、多くの省庁にまたがると思います。✕
 4の孤独・孤立対策も厚生労働省だけでなく、文部科学省にとっても大きな問題だと思います。✕
 5の社会保障審議会は、もとは社会保障制度審議会で1948年から設置された歴史ある審議会です。そのもとにいろいろな部会があり、厚生労働大臣の諮問に応じて、社会保障制度の横断的な基本事項などを調査審議する会議です。〇 

問題43  次のうち、福祉行政における、法に規定された都道府県知事の役割として、正しいものを1つ選びなさい。

1  介護保険法に規定される居宅介護サービス費の請求に関し不正があったときの指定居宅サービス事業者の指定の取消し又は効力の停止 ※正解
2  老人福祉法に規定される養護老人ホームの入所の措置
3  子ども・子育て支援法に規定される地域子ども・子育て支援事業に要する費用の支弁
4  社会福祉法に規定される共同募金事業の実施
5  「障害者総合支援法」に規定される自立支援給付の総合的かつ計画的な実施
(注)「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
【解説】
 
少しまわりくどい問題です。選択肢のポイントを書き換えて、判断していく必要があります。
 あわせて、行政的な措置や実施する主体は、都道府県と市町村が主になります。国の仕事もありますが、数は少ないです。
 市町村と都道府県の事務の違いを押さえておくと、実際に覚えていない事業であっても回答できる場合があります。
 市町村…直接市民にサービスが支給される。
 都道府県…入所施設など建物系、人材確保や研修系。後方支援や環境を整えるものが多いです。
1、居宅介護サービス指定権者は誰か?
 ➡取消や停止をすることができるのは指定権者のみとなります。指定するのは都道府県です。政令指定都市、中核市もできる。〇
2、養護老人ホームの措置権者は誰か?
 ➡措置するのは市町村。✕
3、費用の支弁(支払いのこと)をするということは、地域子ども・子育て支援事業を実施するのが誰か?そもそも地域子ども・子育て支援事業とは何か?
 ➡実施するのは市町村。✕
4、共同募金事業の実施者は誰か?
 ➡社会福祉法人である都道府県共同募金会。✕
5、自立支援給付は誰が実施するのか?
 ➡実施するのは市町村。✕

問題44  「令和4年版地方財政白書」(総務省)に示された民生費に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  民生費の歳出純計決算額の累計額を比べると、都道府県は市町村より多い。
2  民生費の目的別歳出の割合は、都道府県では生活保護費が最も高い。
3  民生費の目的別歳出の割合は、市町村では児童福祉費が最も高い。※正解
4  民生費の性質別歳出の割合は、都道府県では人件費が最も高い。
5  民生費の性質別歳出の割合は、市町村では補助費等が最も高い。
【解説】
歳出歳入は行政用語なので、歳出➡支出、歳入➡収入と捉えて問題を解きましょう。歳出については、事業名とペアにして覚えるといいです。
1、市町村が民生費が多い。児童手当です。✕
2、生活保護費は全国統一で生活保護法に基づく事務になり、国が3/4、地方自治体が1/4です。また、生活保護の実施期間は市などの福祉事務所ですし、都道府県が直接、生活保護の実施機関になっているのは郡部福祉事務所だけですので、最も高いということはないです。✕
3、市町村は児童手当です。これが子育て世帯全体に給付するため、金額が大きくなります。〇
4、国でも市町村でも人件費の割合が最も高いと批判されると思います。もし、この選択肢が正解ならどうなるのかという想定をすると選択肢の吟味に役立つと思います。✕
5、補助費は実費に対して、いくらかの割合を支給するものになり、多くのいろいろな補助金がありますが、建物に対する補助金の額が大きいです。市町村は補助する側というより、事業実施をする側が多いです。補助金は国や都道府県が実施する側になることが多いです。✕

問題45  社会福祉に係る法定の機関・施設の設置に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  都道府県は、地域包括支援センターを設置しなければならない。
2  指定都市(政令指定都市)は、児童相談所を設置しなければならない。※正解
3  中核市は、精神保健福祉センターを設置しなければならない。
4  市は、知的障害者更生相談所を設置しなければならない。
5  町村は、福祉事務所を設置しなければならない。
【解説】
 機関の設置についてのイメージを持つと理解しやすいと思います。
 市町村…身近な施設
 都道府県…専門的な施設、権限が強い施設(児童相談所の一時保護、措置など)
 これらの間に、選択肢の地方自治体が入ってきます。
 町村 ➡市町村 ➡市(中核市) ➡市(政令指定都市) ➡都道府県
1、地域包括支援センターは民間でも設置可能、人口2~3万人にあたり1か所が目安。✕
2、児童相談所は都道府県、政令指定都市に設置義務。大阪では大阪府と大阪市、堺市にそれぞれ独自の児童相談所(名称は児童相談所とはなっていませんが)を設置しています。最近のトピックとしては、特別区と中核市は設置できる(※しなくてもいい)となったので、東京の特別区は独自に設置する区が何か所かあるのと、中核市でも徐々に設置していっています。中核市は人口20万人以上の市がなることができます。〇
3、精神保健福祉センターは精神障害者保健福祉手帳の等級判定をするなど、専門的で権限のある施設です。✕
4、知的障害者更生相談所は専門的な施設です。✕
5、町村は福祉事務所は設置できるです。そのため福祉事務所がないので、生活保護については、都道府県が代わりに福祉事務所を設置しています。✕

問題46 次のうち、都道府県地域福祉支援計画に関して社会福祉法に明記されている事項として、正しいものを2つ選びなさい。

1  社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項 ※正解
2  重層的支援体制整備事業の提供体制に関する事項
3  地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項
4  福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項 ※正解
5  厚生労働大臣が指定する福利厚生センターの業務に関する事項
【解説】
都道府県は直接市民に接する事項は取り扱わないと考えてもらってよいです。直接市民に関わる支援者を支援する立場です。
1、資質向上に関する事項、ひらたくいうと研修です。〇
2、それっぽいですが、重層的支援体制整備事業自体が目指す目標として掲げられていますが、義務ではないので、義務ではないものが社会福祉法に明記されているとは思えません。✕
3、住民の参加の促進に関する事項、直接住民に関することなので、✕
4、基盤整備は〇
5、厚生労働大臣が指定しているので、都道府県のところに明記されているのは不自然です。✕

問題47 次のうち、法律で市町村に策定が義務づけられている福祉に関連する計画として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく高齢者居住安定確保計画
2  健康増進法に基づく市町村健康増進計画
3  自殺対策基本法に基づく市町村自殺対策計画 ※正解
4  再犯の防止等の推進に関する法律に基づく地方再犯防止推進計画
5  成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な計画
【解説】
 
福祉に関する計画でのポイントは、市町村か都道府県か?と義務か努力義務か?任意かです。法律的に言うと、義務は「しなければならない」、努力義務は「務める」、任意は「できる」です。また、いきなり義務になる計画よりかは、任意➡努力義務➡義務という流れがあったり、また緊急で対応しないといけない場合は、いきなり義務になったりします。
1、は「できる」の任意です。✕
2、は「務める」の努力義務です。✕
3、は2006年自殺対策基本法ができ、2016年に市町村自殺対策計画は義務化されました。〇
4、は「務める」の努力義務です。✕
5、は「務める」の努力義務です。✕
ざっと書きましたが市町村によって、濃淡があるような事象については、具体的な努力義務になって、自殺のようなどこの地域であっても起こりうる事象は義務を定めて、全国的に取り組むという理解でいいと思います。 

問題48 次のうち、法律に基づき、福祉計画で定める事項として、正しいものを1つ選びなさい。

1  都道府県介護保険事業支援計画における地域支援事業の見込み量
2  都道府県障害者計画における指定障害者支援施設の必要入所定員総数 
3  市町村子ども・子育て支援事業計画における地域子ども・子育て支援事業に従事する者の確保及び資質の向上のために講ずる措置に関する事項
4  市町村障害福祉計画における障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業の提供体制の確保に関する事項 ※正解
5  市町村老人福祉計画における老人福祉施設の整備及び老人福祉施設相互間の連携のために講ずる措置に関する事項
【解説】
 
市町村…直接市民にサービスが支給される。
 都道府県…入所施設など建物系、人材確保や研修系。後方支援や環境を整える。
 以上を基本に、選択肢をみていきます。
1、地域支援事業は直接市民へのサービスになるので、市町村です。✕
2、市町村と都道府県のひっかけだけでなく、「障害者計画」と「障害者福祉計画」のひっかけがあります。障害者と計画の間に「福祉」が入るだけでちょっと意味合いが変わってきます。障害者計画は中長期的な計画になり、具体的なサービスや入所施設の定員総数などは「障害者福祉計画」で定めます。✕
3、人材確保、研修は都道府県になります。✕
4、直接市民サービスの提供に関することなので市町村です。〇
5、施設の整備は都道府県。

社会保障

問題49 日本の社会保障の歴史に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  社会保険制度として最初に創設されたのは、健康保険制度である。※正解
2  社会保険制度のうち最も導入が遅かったのは、雇用保険制度である。
3  1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では、日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。
4  1986年(昭和61年)に基礎年金制度が導入され、国民皆年金が実現した。5  2008年(平成20年)に後期高齢者医療制度が導入され、老人医療費が無料化された。
【解説】
 
まず、社会福祉ではなく、社会保険とは何か?どこまでが範囲なのかを捉えておきます。
 社会福祉士と同じように社会保険労務士という資格があります。
実は重なる分野もありますが、主には
 健康保険(国民健康保険、被用者保険、後期高齢者医療)、年金保険(国民年金、厚生年金)、労働保険(雇用保険、労災)を対象としています。
 その名のとおり、対象者から保険料を徴収し、それと税金をあわせて、支給する保険制度が社会保険です。ちなみに生活保護制度は、保険料がないので社会保険ではないです。
1のとおり、社会保険制度として最初に創設されたのは、ドイツの健康保険制度です。〇
2、雇用保険(つまり失業保険)の導入は早いです。✕
3、社会保険を中心に充実すべきとされました。✕
4、国民皆年金は、国民年金ができた段階で実現です。1960年代です。✕
 その後、年金制度の整理が図られたのが基礎年金制度です。
5、後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者に医療費を払ってもらう制度です。それまで高齢者に対する医療費の負担の経過はいろいろあるのですが、高度経済成長期で高齢者の人数が少ない時は、老人医療費が無料になりました。老人医療費の無料化はお金が無くなったので、すぐに制度が改悪されて、ひとり親制度とかと同じ並びにして、1人500円の費用を取るようになりました。
 高齢者の医療費の負担に関する経過の背景には団塊の世代のボリューム感があり、そこの層が支える側にいるうちは、その層が定年になり、当時の老人医療費制度に組み込まれると、かなりの負担になるので、制度自体はそのボリューム層が対象になる前に制度設計されました。例えば、国民健康保険と一緒にすると、市町村によっては高齢化率に差が出るので、保険料の額が高額になり、むしろ若年者に負担が行くので、高齢者自身に負担を求めることができる制度に変えていく必要があり、75歳以上の高齢者だけ別建ての後期高齢者保険となっています。
 詳しい経過は過去の資料になりますが、厚生労働省のHP  を参照

問題50 日本の社会保険に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  国民健康保険は、保険料を支払わないことで自由に脱退できる。
2  健康保険の給付費に対する国庫補助はない。
3  雇用保険の被保険者に、国籍の要件は設けられていない。※正解
4  民間保険の原理の一つである給付・反対給付均等の原則は、社会保険においても必ず成立する。
5  介護保険の保険者はである。
【解説】
 
前の問題の解説で社会保険の範囲に触れましたが、社会保険は、働いたり生活したりするうえで必ず必要な保険のことで、世界と比べて皆保険、皆年金というのはかなりすごい制度になっています。つまり何かあった時に困らないようにある程度はなんとかなるように制度を作っています。 
1、国民健康保険が自由に脱退できるのであれば、お金がない人ほど入ることができないことになり、社会保険の役割を果たしていないと思います。✕
2、健康保険の給付費に対する国庫補助がないと、ただの民間の医療保険になります。✕
3、雇用保険の被保険者に国籍の要件は設けられていません。在日外国人であっても対象となります。〇
4、用語をわかりにくく出すのが試験の特徴なので、いったんわかる用語に翻訳すれば解けます。給付・反対給付均等の原則というのは、給付(保険料)と反対給付(保険金:もらう分)が全体では一緒という原則です。社会保険は、保険料+税が保険金になるので、必ずしも成立しません。✕
5、保険者という言い方がわかりにくかもしれませんが、その保険の実施をしている主です。介護保険は市町村です。国が保険者になっているのは、雇用保険くらいじゃないでしょうか。年金も国が保険者ですが、年金機構が代わりにしています。✕ 

問題51  事例を読んで、社会保険制度の加入に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

〔事  例〕
Gさん(76歳)は、年金を受給しながら被用者として働いている。同居しているのは、妻Hさん(64歳)、離婚して実家に戻っている娘Jさん(39歳)、大学生の孫Kさん(19歳)である。なお、Gさん以外の3人は、就労経験がなく、Gさんの収入で生活している。
1  Gさんは健康保険に加入している。
2  Hさんは国民健康保険に加入している。※正解
3  Jさんは健康保険に加入している。
4  Jさんは介護保険に加入している。
5  Kさんは国民年金に加入している。
【解説】
 
この問題は、それぞれの社会保険がどの年齢が要件になっているのかを確認するものです。特に難しくないので、覚えておきましょう。
1、Gさんは76歳です。75歳以上の人は健康保険は原則、全員後期高齢者医療制度に加入することになります。それまで国民健康保険に入っていようが、会社の健康保険に入っていようが、75歳以上は後期高齢者医療制度になります。また、後期高齢者医療制度は個人単位で加入するので、扶養という概念がありません。✕
2、上記1より、妻のHさんは自分で健康保険に入らないといけませんが、子ども達も被用者の健康保険に入っていないので、扶養にもならないです。したがって、自分で国民健康保険に入らないといけません。ということで、正解になります。ちなみに問題文の最後に、「Gさんの収入で生活している。」とわざわざ記載があるのは、生活保護ではないという説明のためです。生活保護の場合は、社会保険ではなく、病院にいくのも医療券をもらい、自己負担なしで行くことになります。〇
3、「健康保険」って具体的には、国民健康保険をさせば正解になるんでしょうが、単に「健康保険」だけでは正解にしにくいです。✕
4、介護保険は、40歳から加入です。ただし、健康保険加入者のみ。これが介護保険の2号被保険者のことです。生活保護の場合も別途、介護保険料加算がついています。✕
5、国民年金も20歳から60歳の40年(480カ月)が年金額の算定の基本となります。それ以上の期間の保険料を納めることはないので、19歳で国民年金に加入することはないです。✕

問題52  公的医療保険における被保険者の負担等に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  健康保険組合では、保険料の事業主負担割合を被保険者の負担割合よりも多く設定することができる。※正解
2  「都道府県等が行う国民健康保険」では、都道府県が保険料の徴収を行う。
3  「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者が、入院先の市町村に住所を変更した場合には、変更後の市町村の国民健康保険の被保険者となる。
4  公的医療保険の保険給付のうち傷病手当金には所得税が課せられる。
5  保険診療を受けたときの一部負担金の割合は、義務教育就学前の児童については1割となる。
(注)「都道府県等が行う国民健康保険」とは、「都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険」のことである。
【解説】
国民健康保険はもともと市町村が保険者でしたが、少子高齢化や貧困の偏在により、市町村で保険料負担の不公平がでていたため、都道府県単位に実施することになりました。ただ、実際に市民がそのために都道府県の庁舎がある場所までいかないと手続きができないのは現実的ではないため、市民と直接やりとりする業務は、市町村で行っていると考えてもらえればいいです。
2、保険料の徴収も窓口は市町村です。✕
3、入院先の市町村が担当すれば、大きな病院がある市町村の負担がおおきくなるため、入院前の住所地の市町村の国民健康保険の被保険者となります。介護保険も同様の住所地特例があります。✕
4、保険給付については、所得税が課せられる場合の方が少ないです。というのは、傷病手当金、失業手当など保険給付を受けるような危機的状態にあるところからさらに税金をとることでさらに危機的な状況になる可能性があり、弱り目にたたり目みたいなことは、さすがにしないです。ただ、保険給付の主旨によるところがあるので、例えば、年金の場合は老齢年金は所得税について課税ですが、障害年金・遺族年金は非課税となっています。課税される保険給付を覚えた方が早いかもしれませんね。✕
5、保険診療を受けたときの一部負担金の割合の基本は3割負担です。
  高齢者を含め厚生労働省の資料要確認
  医療費の一部負担金(自己負担)負担割合について
 1割負担になる場合と、2割負担になる場合がそれぞれあるので、覚えておきましょう。義務教育就学前は2割負担です。ただ、これは実感として覚えにくくて、地方自治体により乳幼児(こども)医療費制度があり、無料から500円程度の負担で病院で診療が受けられる制度が実施されています。これは地方自治体が、この2割との差額を負担する制度になり、地方自治体により、対象年齢や負担金の金額が異なります。実際に窓口で2割払っている人は少ないと思います。
 医療費について議論になるのは、高齢者の費用負担になりがちで、1~3割負担の基準を変えたりして、財政的な安定を保つようにしています。✕
残りの1が〇、ちょっと多めにするということもありますが、保険料の算定は、標準報酬に対して、%を乗ずるため、端数の1円とかの負担が雇用されている人か、事業主のどちらが払うのかという問題が出てきます。そのため、このような条件をいれて、事業主に負担してもらっています。

問題53  次のうち、労働者災害補償保険制度に関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  労働者の業務災害に関する保険給付については、事業主の請求に基づいて行われる。
2  メリット制に基づき、事業における通勤災害の発生状況に応じて、労災保険率が増減される。
3  保険料は、事業主と労働者が折半して負担する。
4  労働者災害補償保険の適用事業には、労働者を一人しか使用しない事業も含まれる。※正解
5  労働者の業務災害に関する保険給付については、労働者は労働者災害補償保険又は健康保険のいずれかの給付を選択することができる。
【解説】 
 まず、労働者災害補償保険法がどういう主旨なのかということを理解していれば、ぎりぎり解ける問題だと思います。略して、「労災」なので、労働者が業務に関わり発生した災害について補償される法律です。イメージは、労災事故が発生しやすい工事現場や、昔は炭鉱などでの事故で、事故ひとつで一家の大黒柱がいなくなり、残りの家族が路頭に迷わないようにということが主旨です。遺族年金などもありますが、いわゆるブラックな企業など、むちゃな働かせ方をする企業もあり、労働者にとって最初からわかっていたらいいでしょうが、最初からブラック企業だとわかっていて就職する人もいないでしょうし、分かっていたとしてもそこで働かさざるを得ない場合もあります。そこでさらに事故に巻き込まれてはどうしようもないです。そういう主旨なので、「労働者のため」に加入し、ブラック企業から守るための保険制度になります。その視点からみていくと、
1の事業主の請求はないです。もし、事業主が請求しなかったら、給付が受けられないということになります。労災は企業にとっても、業務に関わる事故の医療費など補償をしてくれるメリットがある保険制度ですが、やはり労災事故が多いということは、企業にとっても避けたいので、労災事故を減らすために、事業主が請求しないということは想定されますし、もしそうなれば、労働者が不利益を被ることになります。
2のメリット制?ってなにとなりますが、この選択肢は2つポイントがあり、メリット制を知っていることが一つ目で、メリット制の主旨を知っていることが2つ目です。労災事故は、業種によってかなり発生確率が異なります。当たり前ですが、デスクワークより、工事現場や製造現場などの方が圧倒的に労災事故の発生確率は高くなります。そのため、保険料率もそれに見合うようになっています。また、同じ業種であっても、安全衛生にどれだけ力を注ぐのかによって、発生確率が異なるため、労災事故が少ないところは、保険料率を低く、事故多いところは保険料率を高く設定するのがメリット制です。選択肢に戻ると、「通勤災害」によってメリット制の保険料が異なるのは、メリット制の主旨とは違いますね、現場に到着するまでの安全については、積極的に努力できるところではないです。「業務災害」により、保険料率が変わるとあれば正解だったと思います。確かに、わざと通勤時間が多くかかる場所に配属させれば、通勤災害の発生も増減があるでしょうが、それをもって保険料率を増減させるのは、少しやりすぎかなと思います。むしろわざわざ遠くにすれば、通勤手当の分が月額の給与に上乗せされる分だけ、同じ保険料率でも事業主の負担が増えますし。✕
3の保険料の折半については、社会保険の中で、唯一といっていい特徴ですが、全額事業主負担です。✕
4、雇用保険、健康保険、厚生年金と違い、労災はできるだけ多くの事業所が加入した方がいいので、1人でも雇用している場合は加入になります。詳しい条件や適用事業所の範囲などは、社会保険労務士の試験範囲になるので、興味があれば確認してみてください。〇
 詳しくはこちら
 5、労災の場合は医療費は自己負担がありません。健康保険は一部負担金(3割負担)があるので、どちらかを選ばせると、事業主はメリット制の関係から健康保険で対応するようにいいますし、労災になっているうえに自己負担をさせられるのは、いまいちです。基本は労災での給付になります。✕

問題54  社会保険制度の適用に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者は、雇用保険に加入することはできない。
2  労働者災害補償保険制度には、大工、個人タクシーなどの個人事業主は加入できない。
3  日本国内に住所を有する外国人には、年齢にかかわらず国民年金に加入する義務はない。
4  厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者で、一定以下の収入しかない者は、国民年金に加入する義務はない。
5  生活保護法による保護を受けている世帯(保護を停止されている世帯を除く。)に属する者は、「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者としない。※正解
【解説】
 
社会保険制度は、「年金、健康保険、雇用保険、労災」とまず覚えてください。他にもありますが、基本はその4つです。社会保険は、名のとおり「保険」ですので、保険料を払った人がいざというときに、安心して生活できるようにする制度です。ポイントは、どの事業所が保険に加入することができるかと、どの労働者が入ることができるかです。社会保険制度は、まだ男女雇用機会均等法が施行されて久しくたっていますが、夫婦で夫が働き、妻と子どもが扶養されるということを前提にして制度ができており、少しずつですが、改正されているものの、その前提と、またあわせて高齢になっても働くということがあわさって、改正されながら成り立っています。つまりどういうことが行っているかというと、今まで扶養されていた人が、社会保険の制度の中にどんどん組み込まれていっています。おおまかに言うと以前は、週30時間未満(いわゆるパートやアルバイトくらいの労働者、1日6時間程度)は、社会保険に加入することはなかったのですが、保険料の財源の確保と、安心安全の生活のために対象となる労働者を拡大していっています。直近では、さらに踏み込んで、週10時間にさらに緩和しようという動きもあります。
それを踏まえたうえで、
1、20時間以上30時間未満でも加入することができます。他にも条件あったり、複数で掛け持ちしているような場合などのパターンや適用事業所の問題もありますが、詳しくは社会保険労務士の試験範囲になります。✕
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2、個人事業主も加入できます。いわゆる「特別加入」です。これも社会保険労務士の試験範囲です。
 詳しくはこちら
3は、「国民皆保険」なので、住所があれば(住民票があれば)、年金制度に入ることになっています。ただ、単純に帰国するなら、保険料が無駄になるじゃんと思う人もいるので、そのために脱退一時金という形で払った保険料を返す制度があるので、大丈夫です。また、在日韓国人のように、日本で生まれ日本で育った人もいるのに、日本国籍がないということだけを理由に、社会保険の制度から外れるのも、おかしいですよね。✕
4は、厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者の場合、国民年金の3号被保険者になります。国民年金という土台のうえに、厚生年金が建てられているので、厚生年金に入っているのに、国民年金ていないという状況がありません。✕。この選択肢は厚生年金と国民年金との整理ができていない人を判別するために作ったのでしょうか?国民皆保険なので、国民年金は加入するものと理解してください。念のため、生活保護を受給していた期間も国民年金の支給要件の期間には入れます。✕
5が正解です。

問題55  公的年金制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  厚生年金保険の被保険者は、国民年金の被保険者になれない。
2  基礎年金に対する国庫負担は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金のいずれに対しても行われる。※正解
3  厚生年金保険の保険料は、所得にかかわらず定額となっている。
4  保険料を免除されていた期間に対応する年金給付が行われることはない。
5  老齢基礎年金の受給者が、被用者として働いている場合は、老齢基礎年金の一部又は全部の額が支給停止される場合がある。
【解説】
年金制度のポイントが盛り込まれている良問だと思います。
ポイントは、国民年金の1号~3号被保険者を理解しているのか、国庫負担がどうか、年金給付をどう算定しているのか、減免・法定免除、併給調整などです。
保険料(支払うお金)と給付額(もらうお金)もごちゃごちゃにならないでください。
1は、基本になりますが、国民年金は皆保険なので、全員が加入すると理解してもらったうえで、1号被保険者(学生、自営業など)以外は直接支払っている感覚がないのは、厚生年金に加入している場合は、2号被保険者となって、厚生年金保険料とあわせて支払っているからです。また、2号被保険者の扶養者は、3号被保険者となり、2号被保険者の厚生年金保険料の中に国民年金保険料が含まれていると理解してください。✕
2は、正解です。いきなり「基礎年金」とでてきましたが、国民年金でもらえる年金のことを、基礎年金と言います。フェイントかけられた感じです。国民年金は国庫負担がありました。〇
3は、保険料の問題ですが、前提の給付額の計算を知っていた方が理解が進むので、それを説明します。国民年金(基礎年金)は定額×納付月/480で給付額を計算しますが、それに上乗せされる厚生年金は平均の標準報酬×係数×加入月数となります。これは老齢年金の場合で、遺族年金や障害年金などいろいろパターンがありますが、気にしなくても社会福祉士試験は乗り切れます。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

問題56 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  1960年(昭和35年)に成立した精神薄弱者福祉法は、ソーシャルインクルージョンを法の目的とし、脱施設化を推進した。
2  1981年(昭和56年)の国際障害者年では、「Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)」というテーマが掲げられた。
3  2003年(平成15年)には、身体障害者等を対象に、従来の契約制度から措置制度に転換することを目的に支援費制度が開始された。
4  2005年(平成17年)に成立した障害者自立支援法では、障害の種別にかかわらず、サービスを利用するための仕組みを一元化し、事業体系を再編した。※正解
5  2013年(平成25年)に成立した「障害者差別解消法」では、市町村障害者虐待防止センターが規定された。
(注)「障害者差別解消法」とは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。
【解説】
 
大まかな障害者福祉の歴史のイメージを捉えてください。
 社会的に許容されない存在 ➡ 施設に行ってもらう ➡ 地域で一緒に生活するという、優生思想が蔓延していた中で、いろいろな社会の取り組みや経過を経て共に生きるという存在として社会がかわってきたという流れがあります。もちろん、日本だけでなく世界全体の流れもあります。
 あわせて、「措置」➡「契約」という動きも大切です。
1 1960年代はまだ施設に向けて動いていた時代です。大きくはノーマライゼーションがきっかけになりますが、1950年代にデンマークが発症ですが、日本に広まったのは1980年代です。1981年の国際障害者年がきっかけです。✕
2 「Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)」は2006年に国連総会で障害者権利条約が採択されたましたが、それに関わるテーマです。1981年の国際障害者年のテーマは「完全参加と平等」です。✕
3、措置と契約が逆です。✕
4、〇、支援費制度から見直しされて、障害者自立支援法に移行しました。
5、ひっかけ問題です。「虐待防止」なら〇、「差別解消」なので✕

問題57 「障害者総合支援法」における介護給付費等の支給決定に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

1  市町村は、介護給付費等の支給決定に際して実施する調査を、指定一般相談支援事業者等に委託することができる。※正解
2  障害児に係る介護給付費等の支給決定においては、障害支援区分の認定を必要とする。
3  就労定着支援に係る介護給付費等の支給決定においては、障害支援区分の認定を必要とする。
4  市町村は、介護給付費等の支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者に対し、支給決定に、サービス等利用計画案の提出を求める。
5  障害支援区分は、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものである。※正解
(注)「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
【解説】
 
障害者総合支援法において、必要なポイントは「障害支援区分」と、「サービス等利用計画案」です。介護保険の「介護区分認定」と「ケアプラン」にあたるものですが、「区分認定」と「サービス等利用計画案」の作成には、労力を要するので、そのために必要な支援を求めているにも関わらず、早急に決定できなかったり、手間がかかることでサービスの利用が低調になってたりするのは、本末転倒です。それを効率的に支給決定するために、わざわざ「区分認定」や「サービス等利用計画案」をつくったとしても、支給するサービスの程度や内容がほとんどかわらないため、それらの手間を省くことができるものは、「区分認定」や「サービス等利用計画案」を省いているものがあります。つまり、問題の問いたいのは、どのような場合に省くことができるか、そこを理解しているのかを問うていると思います。
1、〇
2、18歳未満の障がい児については、障害支援区分の認定は行いません。(但し、18歳に向けてサービスを必要とする場合を除きます)✕
3、訓練等給付では障害支援区分の認定は原則不要です。✕
4、支給決定前です。✕
5、〇

問題58 事例を読んで、これからの生活においてLさんが利用可能な「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスとして、適切なものを2つ選びなさい。

〔事  例〕
Lさん(30歳)は、視覚障害により障害等級1級の身体障害者手帳の交付を受けている。慣れた場所では白杖{はくじょう}を利用し単独で歩行でき、日中は一般就労に従事している。これまで実家暮らしで家族から介護を受けてきたが、職場近くの賃貸住宅を借り、そこで一人暮らしをしようと準備している。これからは、趣味や外食のため、行ったことがない所にも積極的に外出したいと考えている。Lさんの障害支援区分は3で、調理、洗濯、掃除等の家事援助を必要としている。
1  居宅介護 ※正解
2  重度訪問介護
3  同行援護 ※正解
4  行動援護
5  重度障害者等包括支援
【解説】
 
区分の程度と給付サービスについて、どの程度理解しているかという問題です。
 「重度」とつく場合は、重度訪問介護と重度障害者等包括支援のみです。重度は、「常時介護を要する場合」です。事例では「単独で」とあるので、「重度」ではないです。
1の居宅介護は、いわゆる生活介護でヘルパーのイメージでいいです。〇
2、5は「重度」なので、  ✕
3、4は「同行」と「行動」でどちらも援護なので、実際のイメージがつきにくいですが、「同行」の場合、対象になる障害が視覚障害の方のみになります。 それに対して「行動援護」の場合は、対象になるのが重度の知的障害や精神障害の方になります。事例の場合は、「同行」です。3が〇。

問題59 「障害者総合支援法」等に基づく専門職などに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  居宅介護従業者は、指定障害福祉サービスの提供に係る管理を行う者として配置されている。
2  相談支援専門員は、指定特定相談支援事業所において指定計画相談支援を行う者として配置されている。※正解
3  相談支援専門員は、モニタリングに当たっては、1年に1回、利用者宅を訪問し面接を行わなければならない。
4  児童発達支援管理責任者は、指定障害児相談支援事業所において障害児支援利用計画の作成を行う者として配置されている。
5  居宅介護従業者は、病院又は障害福祉施設への紹介その他の便宜の提供を行う者として配置されている。
【解説】
1、「従事者」なのに、「管理」はないです。✕
2、〇
3、年に1回ではモニタリングとは言えません、間が空きすぎです。✕
4、「管理責任者」なのに、「利用計画の作成」は別の業務になります。
5、「便宜の供与」はあまりいい印象のある単語ではないですね。✕

問題60 事例を読んで、この段階においてU相談支援事業所のM相談支援専門員(社会福祉士)が行う支援の内容として、次のうち最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事  例〕
U相談支援事業所のM相談支援専門員は、V精神科病院の地域医療連携室に勤務するA精神保健福祉士から、精神障害者のBさん(50歳代)の今後の生活について、相談を受けた。Bさんは、V精神科病院において約10年にわたって入院生活を送ってきた。現在、症状は安定しているが、身寄りもなく、帰る場所もない状態であり、聞かれれば、「可能なら就労したい」と答える。そこで、M相談支援専門員は、A精神保健福祉士と連携しつつ、Bさんとの定期的な面接による相談を行い、これからの生活を一緒に考えることになった。
1  地域移行支援による退院支援 ※正解
2  地域定着支援による退院支援
3  公共職業安定所(ハローワーク)を利用した求職活動の支援
4  障害者就業・生活支援センターによる職業準備訓練を受けるための支援
5  後見開始の審判申立て支援
【解説】
 
障害者総合支援法における専門職の役割ですが、他の法律との関係を意識して解いていきたいと思います。また、事例のヒントとしてはA精神保健福祉士と連携しつつとあります。
 3は、ハローワークの就労支援は、職安のお仕事でそういった担当もいるので、✕
 4も、3と同じパターンで職業訓練をする場合ですが、障害者就業・生活支援センターにお仕事でそういった担当もいます。✕
 5は、後見の目的からすると、他の専門職に代理権や取消権を与えることになり、今回の事例はBさんが自分で生活するのを支援するのが目的であれば、ちょっと違うと思います。
 1と2の違いは、「移行支援」なのか、「定着支援」なのかになります。具体的には、入院中から住居の確保や新生活の準備等の支援を行う 「地域移行支援」 と、 地域生活している者に対し24時間の連絡相談等のサポート を行う「地域定着支援」という違いがあります。この事例では、Bさんは入院中なので、1が〇です。

問題61  身体障害者福祉法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  身体障害者福祉法の目的は、「身体障害者の更生を援助し、その更生のために必要な保護を行い、もつて身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。
2  身体障害者の定義は、身体障害者手帳の交付を受けたかどうかにかかわらず、別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者をいうと規定されている。
3  身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は、障害等級1級から3級までである。
4  都道府県は、身体障害者更生相談所を設置しなければならない。※正解
5  市町村は、その設置する福祉事務所に、身体障害者福祉司を置かなければならない。
【解説】
1、「更生を援助」
2、身体障害者福祉法の場合は、身体障がい者手帳の交付を受けた場合に限ります。ただし、障害者総合福祉法は交付をうけたかどうかにかかわらずになります。✕
3、身体障害者手帳の交付は、6級からになります。種別でいうと7級以下もあります。重複している場合は級が上がるので、例えば、7級と7級が重複していると6級になるので、7級以下もあります。また、障害等級1~3級しかないと思っていしまうのは、身体障害者の福祉サービスや障害年金の該当が3級以上になるためにそう思ってしまうかもしれません。✕
4、正解です。〇
5、身体障害者福祉司は、都道府県は設置義務、市町村はおくことができるです。都道府県は身体障害者更生相談所の設置義務があり、それと身体障害者福祉司はペアです。市町村では補装具や自立支援医療(更生医療)もするので、設置してもいいかなくらいの位置づけです。✕

問題62  「精神保健福祉法」に規定されている入院に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  任意入院では、入院者から退院の申出があった場合、精神保健指定医の診察により、24時間以内に限り退院を制限することができる。
2  応急入院では、精神科病院の管理者は、精神保健指定医の診察がなくても、72時間以内に限り入院させることができる。
3  医療保護入院では、精神保健指定医の診察の結果、必要と認められれば、本人の同意がなくても、家族等のうちいずれかの者の同意に基づき入院させることができる。※正解
4  医療保護入院では、精神保健指定医の診察の結果、必要と認められれば、本人の同意がなくても、本人に家族等がいない場合は検察官の同意により入院させることができる。
5  措置入院では、本人に自傷他害のおそれがあると認めた場合、警察署長の権限に基づき入院させることができる。
(注)「精神保健福祉法」とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。
【解説】
1、24時間以内に限ると、実質強制入院になります。✕
2、指定医の診察がないと同意なしで入院させることはできません。何の根拠もなしで72時間(3日間)も入院させることはできません。✕
3、正解です。〇
4、検察官がでてくるのは、刑事事件の時だけです。正しくは市町村の同意です。✕
5、都道府県知事です。措置は行政処分として行われます。警察官ではないです。あくまで「おそれ」なので、警察が関わるのは、自傷他害があってからです。✕ 

低所得者に対する支援と生活保護制度

問題63  「生活保護の被保護者調査(令和2年度(月次調査確定値))」(厚生労働省)に示された生活保護の動向に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  保護率(人口百人当)は、16.3%である。
2  1か月平均の被保護実人員数は、約20万人である。
3  保護の種類別に扶助人員をみると、「医療扶助」が最も多い。
4  保護開始世帯の主な理由別構成割合をみると、「貯金等の減少・喪失」が最も多い。※正解
5  保護廃止世帯の主な理由別構成割合をみると、「働きによる収入の増加・取得・働き手の転入」が最も多い。
【解説】
 
生活保護の動向ですが、実はあまり覚えることは少ないです。
 被保護世帯100万世帯、150万人。人口1%
 あとは、%(パーセント)ではなく、‰(パーミル)を使うのも、生活保護の特徴です。パーセントにすると、増えても減っても1パーセントなので、動向がわかりにくいので、単位を切り下げて、千分率を使って、同じ1パーセントではなく、10パーミルとします。
 貧困層が多いところでは、%を使ってもいいのですが、富裕層が多い地域だと、パーミルじゃないと、動向はわからないんです。 
1、%ではなく、‰です。国民の1割以上が生活保護を受けていません。✕
2、「16.3‰」なので、約200万人です。これも桁がひとつ違います。
3、「生活扶助」になります。生活費をもらっても、病院に行かない人もいます。医療扶助のみ受ける人(医療扶助単給)より多いです。
4、〇
5、令和3年度の統計では、死亡・失踪45.5%、 転出19.2%となっており、受給者の多くが、年金・資産がない高齢者が多いのです。「働きによる収入の増加・取得・働き手の転入」が最も多いことはないです。✕

問題64  現行の生活保護法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  生活保護は、日本国憲法第21条が規定する理念に基づいて行われる。
2  生活保護が目的とする自立とは、経済的自立のみを指している。
3  能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、生活の維持及び向上に努めなければ、保護を申請できない。
4  補足性の原理によって、扶養義務者のいる者は保護の受給資格を欠くとされている。
5  保護の基準は、保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、これを超えないものでなければならない。※正解
【解説】
1、 「最低限度の文化的な生活」ですが、憲法25条です。プログラム規定になりますが。✕
2、自立とは単に経済的自立だけでなくと、生活保護法に記載があります。✕
3、保護は申請できます。✕
4、扶養義務者がいても、受給はできます。DVなどは法律的に扶養義務があったとしても実質は扶養義務を果たすことができない場合なども想定されます。✕
5、〇

問題65  生活保護の種類と内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  生業扶助には、高等学校等就学費が含まれる。※正解
2  生活扶助は、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なものを給付する。
3  教育扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
4  介護扶助は、原則として金銭給付によって行うものとする。
5  葬祭扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
【解説】
この内容はひっかかりやすいところを切り出してくるので注意してください。あと金銭給付と現物給付のイメージですが、お金をもらうのが、金銭給付で、サービスを受けるのが現物給付です。
1、教育扶助とのひっかけです。教育扶助は義務教育が対象になるので、高校への進学費用は、生業扶助扱いです。〇
2、衣食住 ひっかけです。「住」は住宅扶助です。
3、教育扶助は、原則が金銭給付です。入学準備に必要なものや修学旅行の費用など、一部学校給食費などは、学校へ直接払ったりして、現物給付されるものもあります。✕
4、介護扶助は直接サービスを受けるものです。✕
5、葬祭費を支払う形で金銭給付になります。✕

問題66 生活扶助基準の設定方式に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  標準生計費方式とは、現行の生活保護法の下で、栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて最低生活費を計算する方式である。
2  マーケット・バスケット方式とは、最低生活を営むために必要な個々の費目を一つひとつ積み上げて最低生活費を算出する方式である。※正解
3  エンゲル方式とは、旧生活保護法の下で、経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生計費を基に算出し、生活扶助基準とした方式である。
4  格差縮小方式とは、一般国民の消費水準の伸び率を超えない範囲で生活扶助基準を引き上げる方式である。
5  水準均衡方式とは、最低生活の水準を絶対的なものとして設定する方式である。
【解説】
生活扶助基準で覚えることは、「水準均衡方式」「相対的」で、以前はマーケット・バスケット方式だったが、朝日訴訟の影響で、水準均衡方式となり、基準が引き上げられたという所です。
1、標準生計費方式は、生活保護法では採用されていません。✕
2、マーケット・バスケットとは名のとおり、「買い物かご」方式です。説明のとおりになります。〇
3、4はあまり聞いたことがないです。✕
5、「相対的」です。✕

問題67 生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  生活困窮者自立相談支援事業は、委託することができないとされている。2  生活困窮者自立相談支援事業と生活困窮者家計改善支援事業は、必須事業である。
3  子どもの学習・生活支援事業は、全ての都道府県、市町村に実施の責務がある。
4  生活困窮者一時生活支援事業は、生活困窮者に対し、生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行うものである。
5  生活困窮者就労準備支援事業は、雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うものである。※正解
【解説】
1、委託できます。✕
2、生活困窮者家計改善支援事業は、必須ではないです。✕
3、「全ての」がついた段階で選択肢としては怪しいです。必ず「例外」があるものなので、誤りとするために「全ての」をつける時が多いです。むしろ「全ての」がつくものだけを覚えてしまう方が、勉強としては早いです。
4、生活に必要な資金の貸し付け(多分、生活福祉資金)のあっせんと、事業名「一時生活支援事業」と内容があわないように思います。あくまで「あっせん」はあっせん事業とすると思います。✕
5、〇

問題68 生活福祉資金貸付制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  貸付対象世帯は、高齢者世帯、傷病者・障害者世帯、ひとり親世帯とされている。
2  日本に居住する低所得の外国人世帯は、貸付対象から除外されている。3  緊急小口資金の貸付金の利率は年1.5%である。
4  資金の種類は、総合支援資金、緊急小口資金、教育支援資金の3種類である。
5  複数の種類の資金を同時に貸し付けることができる。※正解
【解説】
 
生活福祉資金は市町村の社会福祉協議会が窓口ですね。貸付金の種類もいろいろなものがあり、生活保護に至る前の最後の砦のような位置づけになります。
1、一番貸し付けの対象となる生活保護にいたる一歩前の貧困世帯が抜けています。✕
2は、国籍条項はありません。この社会福祉士の試験の中で、国籍条項により対象外となっている制度はないと覚えておきましょう。福祉の制度で国籍条項を設けていないと理解していください。
3、無利子になります。緊急の貸し付けですので、有利子にすると、事業の目的が達成できないと思います。✕
4、「不動産担保型生活資金」が他にもあります。✕
5、併用は可能です。貸し付けの目的が違うためにそれぞれで貸し付けを行います。例えば、母子家庭が失業してしまい、手元に資金なく、子どもの高校進学のまとまったお金が払えない場合は、当面の生活費(緊急小口資金)+入学金など高校進学に係る費用(教育支援資金)などです。

問題69 事例を読んで、N市の生活困窮者を対象とした自立相談支援機関の相談支援員(社会福祉士)による、Cさんへの支援に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

〔事  例〕
Cさん(40歳)は、派遣社員として働いていたが、雇用契約期間が満了して、P市にあった会社の寮から退去した。その後、N市にあるインターネットカフェで寝泊まりをしていたが、なかなか次の仕事が見付からず、所持金も少なくなって不安になり、N市の自立相談支援機関を探して来所した。1  最後の居住地であったP市に対して、生活保護を申請することを勧める。2  生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金の利用を勧める。※正解
3  住居を見付け、生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金を利用することを勧める。※正解
4  居住地がないため、直ちに救護施設に入所できると判断し、施設に直接連絡をして利用を申請する。
5  当面の住まいを確保するため、社会福祉法に基づく無料低額宿泊所への入所を自治体に申請するよう提案する。
【解説】
1、生活保護の場合は、困窮した場所での「現在地保護」が原則になります。この場合はインターネットカフェで所時金が少なくなり、困窮状態になったので、N市になるでしょう。但し、住む場所もなく、お金もなく道端で倒れて、救急車で運ばれた場合は倒れた場所が生活保護の実施機関となります。
2、目先のお金を何とかすると40歳なので、働くこともが可能かもしれないし、いろいろな可能性も見出せます。〇
3、まずは住居と住所を確保するところからスタートします。〇
4、あくまで生活保護施設への入所は、契約ではなく、生活保護法に基づく自治体の措置で入所します。つまり入所にかかる費用は行政が負担するので、直接施設にいっても自治体の相談窓口に行って申請するように言われるだけです。行くのは行くだけいいかもしれませんが、申請はできません。✕
5、救護施設は措置ですが、無料低額宿泊所は入所者と施設との契約になります。そのため直接施設に申し込む形になります。第二種社会福祉事業で都道府県に事業者が届出します。

保健医療サービス

問題70 日本の医療保険の適用に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  国民健康保険の被保険者に扶養されている者は、被扶養者として、給付を受けることができる。
2  健康保険組合が設立された適用事業所に使用される被保険者は、当該健康保険組合に加入する。※正解
3  「難病法」の適用を受ける者は、いずれの医療保険の適用も受けない。4  国民健康保険は、後期高齢者医療制度の被保険者も適用となる。
5  週所定労働時間が10時間未満の短時間労働者は、健康保険の被保険者となる。
(注)「難病法」とは、「難病の患者に対する医療等に関する法律」のことである。
【解説】
1、大事な所ですが、国民健康保険は扶養という考え方はありません。一人一人が加入します。✕
2、国民健康保険より、適用事業所(ざっくりいうと会社)の健康保険が優先です。それがない場合加入できない場合に国民健康保険に加入することになります。〇
3、難病法で受けることができる給付は、当該の難病にかかる給付のみです。でもそれが以外にも風邪をひいたり、骨折したりしますよね、その場合はちゃんと医療保険(健康保険のこと)に入っていないといけません。✕
4、75歳から後期高齢者医療制度の被保険者になります。何にも医療保険に入っていない人が国民健康保険に加入すると思ってもらえたらいいです。75歳からは後期高齢者医療制度になるため、国民健康保険に加入する必要がなくなります。✕
5、社会保険の対象は週20時間以上の労働者になります。他に細かい上限もありますが、ここでは省略します。選択肢は、10時間未満の労働者が健康保険の被保険者となるとなっているので、明らかに✕。ちなみに社会保険の対象者をひろげようと、週20時間以上が、週10時間以上に変更される方向です。

問題71  「令和元(2019)年度国民医療費の概況」(厚生労働省)に示された日本の医療費に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  65歳以上の国民医療費は、国民医療費の50%を超えている。※正解
2  診療種類別の国民医療費のうち最も大きな割合を占めるのは歯科診療医療費である。
3  都道府県(患者住所地)別の人口一人当たり国民医療費が最も高い都道府県は、東京都となっている。
4  制度区分別の国民医療費では、医療保険等給付分に比べて公費負担医療給付分が高い割合を占めている。
5  入院医療費及び入院外医療費を合わせた医科診療医療費の割合は、国民医療費の50%未満である。
【解説】
医療費の多くは、入院が占めると思ってください。よく入院するのは高齢者になってからです。これを基本に選択肢を見比べていきましょう。
1、高齢者が50%以上を占めます。〇
2、歯科で入院は少ないですね。✕
3、東京は人数が多いですが、若い人も多いので一人あたり国民医療費は低くくなると思います。高齢化が進んでいる都道府県になると思います。✕
4、「公費負担分医療給付」が具体的に何にあたるのか、きちんと言い換えることができると選択肢を見極めることができます。そのままの用語で覚えず、具体的には公費負担分医療給付とは、生活保護、障害、ひとり親、乳幼児医療、難病のような本来は3割負担のところを、他法律により自己負担分を公費で賄う制度のことです。ただ他の法律の対象者ですが通常の医療保険の方が圧倒的に人数が多いです。
5、医科診療医療の他には、歯科診療くらいしか国民医療費しかなく、歯科診療が50%以上になることはないので、選択肢は誤りです。✕

問題72  診療報酬制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  診療報酬の点数は、通常3年に1度改定される。
2  診療報酬点数表は、医科、歯科、在宅医療の3種類が設けられている。
3  療養病棟入院基本料の算定は、出来高払い方式がとられている。
4  地域包括ケア病棟入院料の算定は、1日当たりの包括払い方式がとられている。※正解
5  診療報酬には、選定療養の対象となる特別室の料金が設けられている。
【解説】
 
基本的な事項です。
1、診療報酬は2年に1度改訂されます。
2、在宅医療ではなく、「調剤」です。診療報酬とは別に「薬価」もあります。
3、療養病棟は、急性期と違って疾患、処置・治療の内容等の特性があまり変わらない患者が多数入院しているため、出来高ではなく、患者の状態にあわせて入院料の算定を決めています。もし出来高払いであれば、病状が変わらないにも関わらず、無駄な検査や投薬などが診療報酬を得るためにされてしまう可能性があるからです。✕
4、療養病棟と同じ考え方で、出来高でなく包括的に入院料が算定されるということで正解です。〇
5、「選定療養」とは、最近できた制度なので大まかでいいので覚えておいてください。昔は単なる風邪であっても市中の小さな診療所ではなく、大きな病院で診てもらいたいという人が多くいました。そのため大学病院や、大きな病院が重篤な症例より、軽度の症例を診ることに労力をとられていたので、地域の診療所と、大きな病院との役割分担をきちんとするように制度が変わりました。大きな病院に行くには地域の診療所で紹介書をもらってから行くようになりました。それでも最初から大きな病院に診てもらいたいという人は、「選定療養費」を自己負担で払って、直接大きな病院に行くというのが選定療養です。あくまで患者の自己負担の概念なので、診療報酬とは異なるものです。✕

問題73  日本の医療提供体制に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  医療計画は、市町村が策定義務を負っている。
2  地域医療支援病院は、第1次医療法の改正(1985年(昭和60年))に基づき設置された。
3  診療所は、最大30人の患者を入院させる施設であることとされている。
4  介護医療院は、主として長期の療養を必要とする要介護者に対し、療養上の管理、看護、医学的管理の下での介護、必要な医療及び日常生活上の世話を行う。※正解
5  地域包括支援センターは、地域における高齢者医療の体制を整えるため、地域医療構想を策定する義務を負う。
【解説】
1、「医療計画」というと分かりにくいですが、「医療を住民に効率的に供給ために医療機関を整備(整理や設置)する計画」という意味です。そのため、計画を策定するのは医療機関の許認可権を持っている自治体を策定します。つまり、都道府県になりますので、✕
2、地域医療支援病院は、医療施設機能の体系化の一環として、患者に身近な地域で医療が提供されることが望ましいという観点から、紹介患者に対する医療提供、医療機器等の共同利用の実施等を通じて、第一線の地域医療を担うかかりつけ医、かかりつけ歯科医等を支援する能力を備え、地域医療の確保を図る病院として、大きな病院と機能を分けるタイミングででてきた病院になるので、1985年では早すぎます。✕
 大きな病院と機能を分ける必要がでてくるのは、平成9年になります。きたるべき介護保険制度や高齢化に向けて整理したと考えましょう。
3、診療所と病院の境目は、20人以上です。診療所は「クリニック」「医院」と言う名称もよく使われます。最大30人が入院できるなら病院だと思います。
4、正解です。〇
5、「高齢者の体制」「地域医療構想」など計画や社会の仕組みづくりはどちらかというと都道府県になり、地域包括支援センターは現場で一人一人に向き合うお仕事になります。✕

問題74  後期高齢者医療制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  保険者は都道府県である。
2  被保険者は、60歳以上の者が対象である。
3  保険料の算定は、世帯単位でされる。
4  各被保険者の保険料は同一である。
5  各医療保険者から拠出される後期高齢者支援金が財源の一部となっている。※正解
【解説】
1、保険料徴収は市町村が行い、財政運営は都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が行うが、後期高齢者保険のコンセプトです。都道府県が徴収まですると、徴収率と窓口の数が少ないので、対応できないので、「広域連合」という別法人を作って、運営しています。✕
2、75歳です。覚えましょう。「後期」です。✕
3、個人単位です。高齢者2人世帯だとがっつり保険料を徴収されます。いかに会社の健康保険の「被扶養者」というのがありがたいか分かります。✕
4、保険料は応能負担です。所得が高い人は保険料も高いです。また「被扶養者」という概念もないのも特徴です。あと国民健康保険も「被扶養者」という概念がありません。あわせて覚えておきましょう。✕
5、正解です。もし各医療保険者(75歳未満の人が加入する健康保険組合)からの財源がなければ、75歳以上の年金からの保険料だけで、高齢者の医療費を賄うことになるので、事実上不可能です。〇

問題75  事例を読んで、W病院の医療相談室のD医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)による、妊婦であるEさんへの支援に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

〔事  例〕
Eさん(33歳)は、会社員の夫(38歳)の健康保険の被扶養者であり、夫の母親(78歳、軽度の認知症、要介護1)と3人暮らしである。Eさんは現在、妊娠20週目で、第一子を出産予定である。実家は遠方で、実両親も高齢であることから、産後の子育てと義母の介護の両立に不安を抱えていた。義母は、昼間は通所型サービスを利用しているが、帰宅後は毎日同じ話を繰り返している。夫も多忙で残業も多く、頼りにできないとの思いを持っている。妊婦健診の結果は良好であるが、今後のことを考えると不安であるため、受診しているW病院の医療相談室を訪問した。
1  特定妊婦の疑いがあるため、地域包括支援センターに連絡をする。
2  出産手当金を受け取れることを説明する。
3  認知症高齢者の家族の会などの当事者同士が支え合う活動を紹介する。※正解
4  義母の介護のために特殊寝台の貸与サービスを勧める。
5  産前・産後の不安や負担などを相談するために母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)を紹介する。※正解
【解説】
 
まずは、選択肢を読みましょう。出産のことと介護のことが関係あるようです。子育てと介護が同時に発生することを「ダブルケア」と言って、最近、注目されるようになってきました。支援をするにあたって、別々の支援者が目の前のことだけの対応だと十分な支援結果が得られないです。家族全体を支援する必要があり、これこそそれぞれの福祉が連携する必要がありますね。今回の問題はそのへんをついてきています。もちろんそれぞれの用語の理解も必要です。
1の「特定妊婦」ですが、出産に当たって、心配な妊婦を特定妊婦と言って、関係者がマークをするのですが、「地域包括支援センター」は高齢分野の機関で、妊婦自身に支援が必要な場合は、「地域包括支援センター」より、保健師さんに連絡する方が優先です。
2の「出産手当金」ですが、「出産育児一時金」と混在しないように注意してください。出産にかかる病院での出産費用に対して払われるのが「出産育児一時金」です。出産は健康保険の保険対象外なので、出産に係る費用は全額、出産する人が負担する必要があります。1週間ほど入院して、けっこうな金額(45~50万円くらい)を払うので、その分を支給してくれる制度です。令和5年4月より、42万円から50万円に引き上げられました。健康保険から支払われることもポイントです。ちなみに非課税と生活保護受給世帯は「助産制度」もあります。その「出産育児一時金」とは違う「出産手当金」は、産休の際の給料が補填される制度だと覚えておいてください。ちなみに健康保険から支払われます。
3、正解です。〇
4、特殊寝台を借りて何か解決するのでしょうか?✕
5、正解です。〇

問題76 次の記述のうち、医療チーム内で専門分野を超えて横断的に役割を共有するトランスディシプリナリモデルの事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。※正解なし

1  Fさんの病状が急変したため、医師は、看護師へ静脈注射機材の準備、薬剤師へ薬剤の準備、医療ソーシャルワーカーへ家族への連絡の指示を出した。
2  災害発生による傷病者の受入れのため、G病院長は、全職員の招集、医師へのトリアージ、看護師へ手術室の準備、医事課職員へ情報収集などの指示を出した。
3  Hさんの食事摂取の自立の希望を達成するため、理学療法士は座位保持、作業療法士は用具の選定、管理栄養士は食事形態、看護師は食事介助の工夫を行った。
4  一人暮らしで在宅療養中のJさんの服薬管理について、往診医、訪問看護師、薬剤師、訪問介護員、介護支援専門員等の自宅への訪問者それぞれが、Jさんとの間で確認することにした。
5  自立歩行を希望するKさんの目標をゴールに、理学療法士、作業療法士、看護師、介護福祉士とでケースカンファレンスを行い、立位保持訓練の方法を検討した。
【解説】
 
選択肢の記述が不十分であり、正答が得られないため、全員得点となっています。

権利擁護と成年後見制度

問題77 日本国憲法の基本的人権に関する最高裁判所の判断についての次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  公務員には争議権がある。
2  永住外国人には生活保護法に基づく受給権がある
3  生活保護費を原資とした貯蓄等の保有が認められることはない。
4  嫡出子と嫡出でない子の法定相続分に差を設けてはならない。※正解
5  夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は違憲である
【解説】
1、争議権って、いわゆるストライキです。公務員は争議権はありません。
2、生活保護は外国籍の場合は予算措置として準じているだけで、受給権はありません。そのため不服申し立てができません。✕
3、認められます。生活保護を原資としない場合は収入として認定される場合もあります。✕
4、昔は法定相続分が異なっていましたが、最高裁で違憲判決が出てから、平等になりました。〇
5、もし違憲であれば、既に民法や戸籍法が改正されていると思います。現在も違憲であると判断されていません。✕

問題78 事例を読んで、成年後見人のLさんが、成年被後見人のMさんと相談の上で行う職務行為として、適切なものを2つ選びなさい。

〔事  例〕
Mさん(70歳代)は、自身の希望で一人暮らしをしているが、居住地域は、介護サービス資源が少なく、交通の便の悪い山間部である。Mさんは、要介護2の認定を受け、持病もある。最近、Mさんは心身の衰えから、バスでの通院に不便を感じ、薬の飲み忘れも増え、利用中の介護サービス量では対応が難しくなってきているようである。Mさん自身も一人暮らしへの不安を口にしている。
1  自宅以外の住まいに関する情報収集 ※正解
2  Mさんの要介護状態区分の変更申請 ※正解
3  Lさんによる家事援助
4  Lさんによる通院介助
5  Lさんによる服薬介助
【解説】
 
成年後見人のやることと、介護サービスなど福祉の援助は別です。確かに成年後見人はあくまで本人の代わりに法的な代理人や法的な行為を行うと理解しておきましょう。
 3~5は、介護サービスそのものになるので、✕
 1、2は、住まいに関する情報や変更申請で本人の代わりに手続きなどをする行為なので、〇

問題79 事例を読んで、成年後見人の利益相反状況に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事  例〕
共同生活援助(グループホーム)で暮らすAさん(知的障害、52歳)には弟のBさんがおり、BさんがAさんの成年後見人として選任されている。先頃、Aさん兄弟の父親(80歳代)が死去し、兄弟で遺産分割協議が行われることとなった。
1  Aさんは、特別代理人の選任を請求できる
2  Bさんは、成年後見監督人が選任されていない場合、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。※正解
3  Bさんは、遺産分割協議に当たり、成年後見人を辞任しなければならない。
4  特別代理人が選任された場合、Bさんは、成年後見人としての地位を失う
5  特別代理人が選任された場合、特別代理人は、遺産分割協議に関する事項以外についても代理することができる。
【解説】
 
成年後見人が利益相反状況になれば、特別代理人といって、別の第三者が成年後見人の代わりにならないといけません。本人にとって最善が一番です。利益相反状況では、成年後見人にとっていい状況が本人にとっていいとは限りません。成年後見人が自分に都合のいいようにしないように制度が作られていると理解ください。
1、「できる」は「しなくてもいい」になり、成年後見人が都合よくしそうです。✕
2、通常は成年後見監督人がいるため、利益相反状況であれば別の第三者を選んで対応するので、成年後見人にとって都合のいい状況とはならないですが、選択肢にあるとおり、監督人が選任されていない場合は、「強制的に」選任の請求することが制度として必要です。
3、辞任はやりすぎです。他の手続きもあります。遺産分割協議のみ別の人がいればいいです。✕
4、「特別」➡「一時的」です。✕
5、「特別」➡「その利益相反状況に限って」です。✕

問題80 成年後見制度の補助に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  補助は、保佐よりも判断能力の不十分さが著しい者を対象としている。
2  補助開始の審判をするには、本人の申立て又は本人の同意がなければならない。※正解
3  補助人の事務を監督する補助監督人という制度は設けられていない。
4  補助開始の審判は、市町村長が申し立てることはできない。
5  補助人に対し、被補助人の財産に関する不特定の法律行為についての代理権を付与することができる。
【解説】
 
「後見」、「保佐」、「補助」と字の表すとおり、補助より保佐の方が権限が大きいです。
1、補助はあくまで補助です。保佐ほどの力はありません。✕
2、補助の前提はまだ本人の判断能力があることになりますから、本人の同意のもとになります。〇
3、後見も保佐も補助も監督人がいます。利益相反状況や病気で対応できないなど急迫の時がそれぞれ想定されるからです。✕
4、成年後見「制度」の市長申立てといわれるものです。もちろん成年後見は、後見、保佐、補助のことなので、申し立てることができます。
5、不特定の代理人となれば、白紙委任状みたいなものです。補助にはそこまでの権限は与えられません。特定の法律行為のみです。✕

問題81  「日常生活自立支援事業実施状況」(2021年度(令和3年度)、全国社会福祉協議会)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1  2021年度(令和3年度)末時点で、実契約者数は100万人を超えている。2  2021年度(令和3年度)末時点で、実契約者数の内訳では、知的障害者等の割合が最も多い。
3  新規契約締結者のうち、約7割が生活保護受給者であった。
4  新規契約締結者の住居は、7割以上が自宅であった。※正解
5  事業実施主体から委託を受け業務を実施する基幹的社会福祉協議会の数は、約300であった。
【解説】
1、実契約者数は、5~6万人です。人口の1%も使うメジャーな制度ではありません。✕
2、認知症高齢者等が一番多いです。その次に精神障害者等です。高齢者になって金銭管理ができなくなってから利用を開始するイメージが強い事業です。✕
3、生活保護のケースワーカーより、高齢者の相談の中で利用されるので、包括支援センターやケアマネなどの相談も一定あり、生活保護受給者が7割とまではいかないです。✕
4、〇、施設だと金銭管理などの支援はわざわざ事業を使わなくてもある程度、施設内でコントロールできると思います。
5、約1,500です。地方自治体が市町あわせて約1,500なので、市や町の社協でやっているイメージです。約300だと、都道府県+政令指定都市+中核市+大きめの市だけでやっているイメージになってしまいます。✕

問題82  家庭裁判所に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1  家庭裁判所は、近隣トラブルに関する訴訟を取り扱う。
2  家庭裁判所は、「DV防止法」に基づく保護命令事件を取り扱う。
3  家庭裁判所は、嫡出でない子の認知請求訴訟を取り扱う。※正解
4  家庭裁判所は、労働審判を取り扱う。
5  家庭裁判所は、債務整理事件を取り扱う。
(注)「DV防止法」とは、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」のことである。
【解説】
 
この問題はうまいひっかけあるので、ご注意ください。
家庭裁判所について詳しい人は、そんなにいないので消去法で解いていくことになりますが、家庭裁判所は離婚や相続など家庭に関する事項を取り扱うというイメージどおりです。そのため、
1、近所トラブル ✕
4、労働関係 ✕
5、債権債務(借金) ✕
の選択肢はすぐに消去できると思います。2のDVと、3の子の認知(婚外子で自分の子どもと認めること)を絞っていくのですが、
2のDVに関連して、離婚調停や婚費の分担請求、離婚裁判は確かに家庭裁判所がするのですが、保護命令(接近禁止、連絡禁止、退去命令など)については、地方裁判所に申し立てることになります。これは家庭の問題ではるもの「身の安全」を図るためにかなり法律的には居住の自由などを制限するという強制力のある命令を発するためです。
ちなみに社会福祉士の学習の中で、地方裁判所が関連するのはDVの保護命令だけになるので、むしろこちらを覚えるほうが分かりやすいと思います。
残った3の子の認知は戸籍に記載されたり、相続にも関わってくるので、こちらが〇です。DVにひっかけられやすいですが、無難に選択してください。

問題83  事例を読んで、消費者被害に関する次の記述のうち、X地域包括支援センターのC社会福祉士の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事  例〕
Dさん(70歳)は、認知症の影響で判断能力が低下しているが、その低下の程度ははっきりしていない。宝石の販売業者Yは、Dさんが以前の購入を忘れていることに乗じ、2年にわたって繰り返し店舗で40回、同じ商品を現金で購入させ、その合計額は1,000万円に及んでいた。E訪問介護員がこの事態を把握し、X地域包括支援センターに所属するC社会福祉士に相談した。
1  Dさんのこれまでの判断を尊重し、Dさんに対し、今後の購入に当たっての注意喚起を行う。
2  Dさんの意向にかかわりなく、宝石の販売業者Yと連絡を取り、Dさんへの宝飾品の販売に当たり、今後は十分な説明を尽くすように求める。
3  Dさんの判断能力が著しく不十分であった場合、C社会福祉士自ら保佐開始の審判の申立てを行う。
4  クーリング・オフにより、Dさん本人にその購入の契約を解除させる。
5  これらの購入につき、消費者契約法に基づく契約の取消しが可能かを検討するため、Dさんのプライバシーに配慮して、消費生活センターに問い合わせる。※正解
【解説】
 
消費者被害は知っていたら防ぐことができるものではありますが、人を信じることが大前提の福祉の世界とは違う論理で、相手方は狙ってきますから、直接どうこうすることはできないと思います。
また、クーリングオフや契約の基本を知っておく必要があります。
クーリングオフは、文書が発出された日が基準日となり、到着日ではないです。その発出された日を含み8日以内となります。それと、なんでも適用されるわけでもなく、クーリングオフが適用されない場合もあります。 
 以上をふまえたうえで、
1、注意喚起だけでは宝石の販売業者Yのやりくちを止めることはできません。✕
2、説明していますと言われたら終わりです。✕
3、相談されただけの包括支援センターの社会福祉士では保佐開始の申し立てはできません。✕
4、なんでもいつでもクーリング・オフできるわけでないです。✕
5、既に契約が2年にわたっているので、どういう方策ができるかを探ることが大事です。〇

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