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北越コーポレーションが有事型の買収防衛策を導入 ー ところで買収防衛策の効果とは?


有事導入型の買収防衛策

本日は、ダイハツ工業の品質不正問題の新聞報道の整理をしています。機関投資家の品質不正問題への関心は一般に高く、「ところで御社の品質体制は大丈夫ですか?」という質問が対話(エンゲージメント)では出ると思いますので、年明けに対話をするメーカーの経営企画やIRの担当役員は自社の品質管理体制の実務を今一度しっかりと把握しておいた方がよいです。

コスモエネルギーと旧村上ファンド系の投資会社の買収防衛策の発動の是非をめぐる攻防は、投資会社が保有株を売却することで終わりましたが、本日の新聞報道のとおり、北越コーポレーションが有事型の買収防衛策を導入するようですね。
北越コーポのプレスリリースは次のとおりになります。

https://www.hokuetsucorp.com/pdf/20231222_release01.pdf

導入については、取締役会決議のみで株主総会の付議はしないようですが、対抗措置の発動においては、株主総会の決議を経るようです。プレスリリースに次の記載があります。

本対応方針は、本取締役会の決議により導入するものであり、株主総会において 株主の皆様のご承認を得ることは予定しておりませんが、当社は、本対応方針に基づ く対抗措置を発動するに当たっては、原則として株主意思確認総会を開催することにより、株主の皆様の意思を反映いたします。大規模買付者が上記 2(3)に記載した手続 を遵守する限り、株主意思確認総会における株主の皆様の意思に基づいてのみ対抗措 置の発動の有無が決定されることになります。

有事導入型の買収防衛策は、取締役会の決議で導入したとしても、対抗措置の発動においては株主総会で株主の賛同を得ることが肝になります。取締役会の決議で勝手に導入して、勝手に対抗措置を発動されたら、さすがに買収者にはあまりに可哀そうですよね。

ところで買収防衛策の効果って何?

これって意外に知らない人が多いです。「いきなり買収をしようとする輩を排除する施策でしょう」ということは皆さん知っているのですが、どう排除するのか知らない人はかなり多いのだと思います。平時型の買収防衛策を導入している企業の大多数の経営層もほとんど理解していないと思います(結構恥ずかしい話ですが、私の経験則上・・)。

簡単にポイントを箇条書きで書きます。

  1. 買収者を含む全ての株主に新株予約権を無償で割り当てます

  2. この新株予約権には差別的行使条件が付いており、買収者は行使できません。つまり、新株の交付を受けることが出来ず、買収者を除く既存株主のみに新株が交付されます

  3. 結果、買収者の保有議決権比率が希釈化されます

  4. このため、当初の買収の目的を達成するには、買収者は更なる買い増しが必要になり、キャッシュの手当が出来ず買収を断念する

ざっくりとした考えは上記のとおりです。見方を変えると、買収者がめちゃくちゃ金を持っており、株式を買い増す力があれば効果はないとも言えます。その場合、企業はまた買収防衛策を導入するのかも知れませんが、新株発行にも限度があります。定款変更が必要ですから。
要するに買収者の買収のやる気をそぐのが買収防衛先の肝ですので、買収者がやる気をそがれない限り効果は小さいとも言えます。この事案も今後の動向を注視して、noteで記事を掲載して行きたいと思います。