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アパラチアントレイルについて話したいこと

 今年(2024年)もLDHD で発表の機会をいただいたのだが、コロナ感染のため参加出来なかった。コロナ禍によって2020年にPCT行きが全てキャンセルになった。それがアパラチアントレイルに行き先が変わった原因なのだ。

 今回話そうと考えていたことは、どういう形でアパラチアントレイル(以降AT)が管理運営されているかという点で、そこに焦点を当ててみた。はじめにATについてもう少し知って欲しいことを付け加えた。

 まず、ATについてのおおよその情報だ。南部ジョージア州から北東部のメイン州に続く3,500kmに渡るトレイルである。日本の里山のような道が続いていると皆が言っている。地図を見ると標高は低く、概ね1,000m以下の低山歩きの様相である。

 低山ではあるもののメキシコ湾流の影響で天候が急変する事が多いそうだ。もっとも日本でも異常気象が言われているので甘く見てはいけない。また、緯度が高くなると標高2,000mを切っていても森林限界を越える場所があるので気をつけたほうが良い。

 足元については、ペンシルバニア州以北で特に岩だらけになるのでトレランシューズで行く人は登山用の硬いインソールを用意すると良い。僕はハイカーボックスで見つけた。このエリアだけローカットの登山靴に履き替えるのも一案だ。

Mahoosuc Notch (GoogleMapより)

 メイン州に入ったらすぐにマフーサックノッチという岩だらけのエリアがある。距離にして1.2kmしかないが、車、バスサイズの大きな岩がずっと続いているのだ。20分でやっつけたという人もいれば、3時間かかったと言うハイカーもいた。
 カタディン山もそうだし、他にも大きな岩を越える場所や、嫌というほど長い大岩だらけのトレイルを歩くにはボルダリングのスキルがあるとかなり楽だと思う。


日本のロングトレイルはATを参考にしている⁉︎

 日本のトレイルがATを参考にしているとよく聞くのだが、以下のどの部分が同じかを考えてみてほしい。

 ATには寄付のみで泊まれる宿泊所が多い。多くは教会であるが、地域で管理していたり、個人で無料開放している場所もある。地域のマウンテンクラブが宿泊所の管理者を配当していて、ジュースやお菓子をくれたり、朝ごはんのパンケーキを好きなだけ食べさせてくれる。

教会の一部がハイカーに開放されている。ベッド、シャワー完備


 また別のエリア(ニューハンプシャー州ホワイトマウンテン)では高級なヒュッテを運営している。しかし、1日での人数制限があるものの、簡単な作業をすることで、余りの食事と寝場所を無料で提供してくれる。もちろん、経験させてもらった。
 ニューハンプシャー州は1日に歩ける距離が伸びず、うまく計画しないとテントサイトもなくビバーク(緊急宿泊)する羽目になる。そういうハイカーに会った。

Lakes of the Clouds Hut


 トレイル整備ボランティアの皆さんだ。左手のペンキの缶とブラシを持っている人はATのメインルートを示すホワイトブレイズ(木に短冊状に白ペンキでマークをつける)の補修をしています。水色はシェルターへつながる脇道などを示します。
 2人の女性は雨が多いATで道に雨水を脇へ流す溝を掘っています。オレンジのTシャツの人は下草刈り、青Tシャツの人は道を塞ぐ倒木を切っています。
 もっと大人数で作業をしている場面もありました。

整備ボランティアの皆さん


 「ここは〇〇マウンテンクラブが維持管理している場所である」といった掲示板はよく見かける。それぞれのエリアで特定の団体が責任を持って管理している事がわかる。

グリーンマウンテンクラブ管理の地域だ


 標識を見てもらいたい。読めない文字はない。どれだけの頻度で手入れをしているか想像を超えている。ちなみに、日本の山頂にあるような〇〇山 標高△△mといった標識はほとんど見当たらない。

朽ちた標識は見当たらなかった
ニューハンプシャー州の標識はオレンジだ


 ATではシェルターという宿泊施設が10〜20kmぐらいの範囲でトレイル上もしくは1km以内に存在している。その間を補うようにテントサイト(空間だけ)がある。私は極力シェルターを利用したが、ハンモックを利用している人も多かった。シェルターだけは古くなって使えない場所もあったが、メンテがしてあったり、新たに作られたものもあった。

眺めの良いシェルターは稀だ
焚き火ができるところが多い

 ATはトレイルヘッドと街の距離が近く、日帰りハイキングや犬の散歩、トレランの練習などの形で多くの人に利用されている。街まで歩いていると車の方から止まってくれることが割とある。ハイカーに対しての認知度が高い。当然、整備をするにも便利なわけだ。


管理人さんの焼いてくれたパンケーキ。30枚は食べた


 ATにはリッジランナーというトレイルを見回る人(ハイカー)がいる。僕は一度(2日間!)迷子になり、警察のお世話になった。携帯を含め全ての荷物をシェルターに置いたまま、帰れなくなった。ガイドがいないと帰れないと無理なお願いをしていたら、偶然シェルターの僕の荷物を見つけたハイカーの中に彼女がいて、トレイルヘッドまで迎えに来てくれた。警察に彼女は何者か尋ねたら、トレイルを巡回している人とのことだ。僕は彼女のことを知っていると伝えると“Incredible!”(信じられない)とびっくりしていた。
 実は彼女とは何回も出会っている。上記の教会で初めて会っている。この事件後にも朝食の無料のパンケーキを食べながら話をしている。「昼間(Daylight)歩こうね。」と言った彼女の言葉からトレイルネームをいただいた。

個人の庭、水、トイレ、Wi-Fi完備。小川も流れている

 どうだろう、日本のトレイルにあるATと同じものを見つけられただろうか?100年以上愛され育てられているATと比べてはあまりにも可哀想すぎる。まず、トレイル整備あたりが手を付けられそうだ。トレイル上に住んでいれば宿の提供(庭にテントを張れる)は可能なので誰かやって欲しい。少しずつ理想な形に近づけていって欲しい。

 日本にATのようなトレイルができたらどんなに素敵だろう。


興味があれば、私の旅行記をお読みください。
https://note.com/brainy_otter897/n/n25d45f7d687b


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