DXで試されるのは誰?
「DXの一環として融資システムを全面改定する!」
僕の勤める銀行業界は、最も保守的な民間企業の一つと言われております。
銀行の中の人として、いくつか理由を考えてみますと、
①免許事業で、銀行法をベースとした厳格なルールのもとに営業しているという点。
②お金という命の次に大事なものを扱っているという点(しかも自分のではなく人から預かったお金)。
③主商品である「融資」がお客様に対して優越的な地位に立って営業しやすい性質がある点。
④融資はいわゆるストック商品であり、営業実績を上げられない期間があっても貸出残高がある限り収入が途絶える事がない点。
と、挙げればきりがないですが、まあお堅い業界ということです。(そのわりに中の人はわりかしファンキーでぶっ飛んだ人が結構いるのは疑問)
弊行もその例に漏れず、むしろ田舎な分その傾向は顕著にあるわけです。
当然DX化も進んでおりません。
FAXはいまだ現役。書類は原則紙保存。メール発信は上席の承認が必要。等等…。
そんな銀行業界ではありますが、昨今の情勢の中で、若干風向きが変わってきた様に感じ、田舎の弊行にも遅ればせながらDXの波が押し寄せてきております。
今回のDXの件も最初に話を聞いたときは、「いつもの通りお茶を濁すのかな?」と正直思っていましたが、どうやら本気らしい。
20年以上つぎはぎで使ってきたシステムの全面改定に併せて、同じくつぎはぎで使ってきた規程の全面改定も行うとのこと。
まあ、当然弊害も色々と出てくると思うのですが、やらない事には何も起きないと思うので非常に好意的にとらえています。
その中で、つい先日我々営業店にも、現時点の改善案が下りてきました。併せてその現状の案に対する意見・感想も欲しいと。
実際にMVP(Minimum Viable Product = 必要最小限の機能を実装した初期プロダクト)があるわけではないので、何とも言えないのも事実ですが、今までは
「出来た!これ使え!」
「使いにくい?慣れろ!」
「改善してほしい?金がかかるから我慢しろ!」
の3段構えだった、従来の弊行と比較すると非常にユーザーフレンドリーな対応です。
そこで弊行がDXを進めるうえでの大きな問題に気づきました。
支店内で意見を出せる者がほとんどいないのです。
当然システム的な事については僕も含めて全員素人なので、その機能をどうやって実装するのかまでの回答は出せません。
ただ、今回は「今の機能で何が困っているのか?」「どんな機能が欲しいか?」「どんな業務を削減したいか?」というレベルの質問で、言いっ放しでも構わないレベルのアンケートです。
それでも中々意見が出ない。なぜなのか?
これは推測になるのですが、おそらく今まで我慢しすぎたのだと思います。
不満があっても「解決できない事」という認識のもと無意識に自分の中で完結させてきた、抑え込んできた結果、「いざ意見を!」と言われても意見が出なくなってしまったように感じます。
その一例としてまだ組織に染まっていない新入行員はわりかし好き勝手言ってました。「素人のように考える」というのも中々難しいので、いっそ素人に考えさせるのも一案かなと思ってみたり。
そんな状況下で、一番現場を知っているはずの中堅・ベテランから意見が出ない。彼ら彼女らの中に業務プロセスやシステムに対する不満がある事は日頃の会話から僕もわかっています。
が、こうやって改めて意見を出すとなると口が堅くなる。
ここで実感しました「現場が動かないとDXなんて進まない」という事はこういうことかと。
このまま、システムが実装されると彼らや彼女らは不満を口にするでしょう、
「思ってたのと違う」と。
でもそれは誰の責任なのでしょうか?
「DXで試されるのは誰?」
今、現場が試されています。
「いつも文句言っているけど、実際どうなの?何を改善したいの?」と
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