2024年2月24日(土)ひとりだけれどひとりじゃない

昨日のnoteに書いた森田童子さんのことをnetで調べていた。すると、森田さんは、なかにし礼さんの姪だと書いてあった。なかにし礼さんのお兄さんの娘さんだということだ。お兄さんについては、小説を読んだことがあった。

そういえば、なかにし礼さんは、ぼくの通っていた高校の先輩だ。ぼくより12年も先輩だから詳しく知るよしもないのだけど、なかにしさんも、あの飯田橋駅から上り坂をいそいで走り、バルコニーが迫り出したような石の校舎の入り口に入って行ったのかと思うと、気持ちは寄り添ってゆく。

靖国神社のすぐそばにあった。フランス系の高校(歌舞伎の御曹司の通う)が向かいにあった。女子校もいくつか近くにあって、体育で外の道を走る時に、女子校の前を通ると、授業中なのに窓から手を振ってくれる女生徒が何人もいた。他愛もないことだけど、そんなことがみんな、嬉しかった。

なかにしさんは柔道部だったから、おそらく若者らしく元気に高校に通っていたのだろう。でもぼくは、特に部活動をすることもなく、無表情な、劣等感のかたまりのような暗い高校生だった。いつだって早く家に帰りたかった。外よりも家が好きだった。自分の机に向かって、目の前の壁を見つめて、詩のことばかり考えていた。

あれから半世紀も経ってしまった。

ぼくは老人になり、今、なかにし礼さんの姪御さんの歌を聴きながら、相変わらず机に向かって、詩の原稿を書いている。

森田さんもなかにしさんも、もう亡くなってしまったけれど、森田さんの言葉も、なかにしさんの言葉も、こうしてきちんと僕の心に届いてくる。

たった一人で生まれてきても、生きていれば人生はいろんな人と、細くつながっているのだなと思う。

孤独よりも、そっちの方を感じていたい。

ひとりだけれどひとりじゃない。詩行をほどいて端と端をつなげてずっと延ばせば、時をこえて、大切なだれかに、しっかり繋がってゆく。

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