見出し画像

「グッド・バイ」を読んで


 
この本は短篇集で、太宰治作品のなかで読んで無かった本で、最近購入して読んだ本です。

目次は次のようになっています。
・薄明
・苦悩の年鑑
・十五年間
・たずねびと
・男女同権
・冬の花火
・春の枯葉
・メリイクリスマス
・フォスフォレッセンス
・朝
・饗応夫人
・美男子と煙草
・眉山
・女類
・渡り鳥
・グッド・バイ

太宰 治の生家は、私の実家から二時間かからない場所にあり、太宰治が泊まった宿は、車で三分ぐらいの場所です。

同郷のためか、作品を読むと引きづられそうになり、あえて何十年も距離をおいていた作家でした。学生時代、三島由紀夫、川端康成、井上靖を中心に色々読みましたが、バブル崩壊後、地元に戻り読みはじめたのが太宰治でした。

故半田富久先生(石彫家、全日空の慰霊塔や、故小渕恵三の銅像、筑波エクスポセンターのゆらぎ石を創作した方です)は、色々お世話になった先生で授業が終わったら、いつも下北沢の焼き鳥店で、芸術のことや、女性の話しをして、最後に経堂のそば屋さんでざる蕎麦を食べるのがルーティンで、とても楽しい時間を過ごさせてもらいました。
あるとき、半田先生が青森出身で一番の芸術家は誰だと思うか?と聞かれ、少し考え込んでいたら、「すぐ、太宰治と、答えないとだめじゃないか!」と叱られたことが懐かし思い出があります。そんな事もあって、同郷出身の太宰治の作品を遅ればせながら読み始めました。

太宰 治の作品は、中学生、高校生がかかる流行り病のようだと言う人も多いけれど、それは大人になり道路の雪のように排気ガスで黒くくすんでしまった雪のような心で見るからでないだろうか。彼の作品は、心に残る文章、作品ばかりで、作家の肩書・勲章を全部とっぱらって小説のみを純粋に読んだとき、その作品の上手さ、人間の深部の心の琴線に触れる描写、ユーモアなど共感するところが多く、やっぱり秀逸な作家で、そして津軽人だなと感じた。

この本に収めた十六編の作品は、すべて戦後に書かれたものです。太宰が自殺するまでの三年間は、太宰文学の声価を決定した優れた作品を次々に生み出した充実の時期でした。敗戦の昏迷の中にいた多くの日本人、特に青年の魂をとらえた。彼の書くもののみ真実の魂を感じ、己の生き死にをそこに賭けようとした者さえ少なくなかった。

芸術作品として最も価値あることは、人間の魂・心を揺さぶることだと思う。太宰治、夏目漱石、芥川龍之介、スタインベック、ドストエフスキー、チェーホフの作品は心にずっと残る作品が多い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?