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「衰退途上国」たるこの国に未来はあるのか? アベノミクス為政のなれの果てを日銀が演じてきた無様経済

 ※-1 まず『日本経済新聞』2024年3月20日朝刊1面の記事をみて感じるに

 a) 昨日の記事となるが,この『日本経済新聞』朝刊1面を紙面を観て,正直いってズッコケた。「金融正常化へ一歩」という見出しがかかげられていたが,いままで日本の政治と経済の基調は,それでは,いったいどうであったのかという反問が,ただちに浮かび上がってきた。

つぎに図解部分のみを拡大して
下に紹介する
アホノミクスの時期(矢印の期間)がもたらした後遺症は
決定的にこの国を痛めつけてきた

 つまり,安倍晋三の経済政策であった「リフレ」方針が完全に失敗したというか,あのアホノミクスがただ不始末しか残せなかったという「実録の物語」を,いまごろにもなってからだが,ようやくまともに披露(報道)できる時期が来たとでもいうことになるのか?

 アベノミクスの提唱は,いち早く,浜 矩子同志社大学経済学部教授により断罪されていた。浜は,電子書籍版の発行形態でさっさと,『アベノミクスとアホノミクス-浜矩子特別講義』中経出版を,2013年8月に公表しており,要は,安倍晋三が唱えたつもりであったその政治経済的な立場を,完全にバカあつかいしていた。

 また,伊東光晴元京都大学経済学部(名誉教授,1927年生まれ)も『アベノミクス批判-四本の矢を折る』岩波書店,2014年7月を公表し,安倍晋三の経済政策が基本的に錯誤にもとづくがゆえに,ろくでもない結果を招来すると批判していた。それから10年もの時間が経過したが,そのとおりになっている。

 伊東光晴『アベノミクス批判-四本の矢を折る』は,こういう内容として執筆されていた。アマゾンの通販サイトから引用する。

 安倍晋三の経済政策は土台からして完全に間違っていた。伊東光晴はその核心を,経済統計をあれこれ駆使しつつ,多種多様な観点や分析を動員もしたうえで,なおかつ素人にも判りやすく記述していた。アベノミクスは,単に経済政策だけでなく外交面からも,それもさらには安倍晋三自身の「資質」そのものまで俎上にあげ批判していた。

伊東光晴のアベノミクス批判

 2020年代におけるアベノミクスの「負の成果」が,まさしく明確に政治経済的に表現された文句となって,「衰退途上国」という〈概念〉に具現していた。安倍晋三の為政は菅 義偉を介して岸田文雄まで継承された。しかもその悪しき要因がそのまま,現在もなお日本の政治経済のなかに巣くっている。

「後遺症」だと日本経済の現状が表現されている

 「パー券裏金問題」の事後処理ひとつをとっても,自民党〔と創価学会傘下にあって,実態は〈下駄のク▲党〉であるの公明党との野合〕政権は,なにひとつ自浄作用を発揮できなできた。ともかく,誤魔化しとおそうとする意思ばかりであれば実に明快であっただけに,それこそ死ななきゃ治らない根源からの病状を,これからも世間に晒しつづけていく。

 『日本経済新聞』の前掲記事は「ゾンビ企業」という表現を出していた。安倍晋三政権そのものがゾンビ支配を振いつづけてきた日本の政治経済になっていた。そうであったからには,このアベ君が生きていて首相についていた時期においては,「ゾンビ政権」としての弊害が「高度の害悪」を散布しつづけていた。

 b)  ところで最近,こういう岸田文雄首相の行動が記録されていた。

 岸田文雄は2024年3月14日夜,東京・日比谷公園のフランス料理店「日比谷パレス」で,マスコミ各社の大物記者らと会食した。 この会食をともにした人物は,つぎの者たちである。

  時事通信元特別解説委員の田崎史郎(通名は田崎スシロー)
  NHK元解説副委員長の島田敏男
  読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員の小田 尚
  日本経済新聞論説フェローの芹川洋一
  毎日新聞特別編集委員の山田孝男
  日本テレビ取締役常務執行役員の粕谷賢之の各氏と会食。

 この種の「会食設定の機会」は,昨(2023)年7月にも同じ店で同じメンバーでも記録されていた。

 こうした情報に接して思い出すのが,安倍晋三が首相であった時期にも,この種に属する人たちが同じようなかたちで会食を重ねていた事実である。『朝日新聞』や『産経新聞』の幹部記者はこうした会食には参加していなかったけれども,

 言論機関の主要幹部たちが,嬉々としていたかどうかは分からぬが,国家最高指導者と親しく会食の機会をもつようでは,すでに「第4の権力」が「第1の権力」と文句なしに癒着しているし,また,不必要にへりくだって阿諛追従する関係性を,みずから進んで創りだしていると断定されて当然であった。この指摘に彼らは一言も反論できまい。

 安倍晋三政権の時期,日本のメディア・マスコミはまるで完全に牙を抜かられたように,しかも子猫も同然の腰抜けぶりを,それも遺憾なくそして恥ずかしげもなく国民・市民・庶民たちに晒けだしてきた。

 ところが,いままた,岸田文雄政権のもとには,日本の主要な言論機関のうちでも枢要なかなりの社数の幹部たちが,この首相と密になれる会食の機会をなんの疑問もなく,しかも仕事の一環かどうかはさておき,このようにこなしているつもりである。ことは,年に1回だとかいった回数の問題ではない。

 安倍晋三の第2次政権の時期だと格別にそうなっていたが,「権力者たちが平気でウソを吐きつづけ」るなかで,政治・経済・社会などをめぐる「事実関係よりも権力側の主張を垂れ流すだけの」言論機関にまで,それこそ完全になってしまい,いうなれば徹底的に堕落した,

 いうなれば,「前段に出ていたその『社名』や『記者』『幹部』たちは」その汚名を甘受するほかない〈精神構造〉を,自身の仕事にかかわる〈人生観〉として,きっと前もって十二分に自覚しているものと思いたい。

 c) ここでは,つぎのような指摘をしかと受けとめておく必要を強調しておくべきである。日本は,ここで語られているアメリカのジャーナリズムに関連した民主主義の現状までには,とてもじゃないが追いつこうにも,その背中すら目視できない地点に取り残されている。

 ハルブフィンガーさんがジャーナリズムの世界に入ったのは「番犬(watchdog)としての監視」が重要と考えたから。

 記者が取材源と親しくなり過ぎてへつらうリスクを指摘し,為政者に会見で執拗に問いを重ねる「根性」がないなら「この仕事はやらないほうがいい」。米国の民主主義への脅威が高まっているからこそ,番犬の役割もより重要になっていると指摘します。

 註記)「NYタイムズエディターが考える政治報道,記者は『番犬』 論座から」『朝日新「論座」副編集長・吉岡桂子聞』2023年1月25日 11時30分,https://www.asahi.com/articles/ASR1S30SSR1RULZU01B.html

民主主義の観点から問題にされるべき為政者との会食機会

 政権に対してきびしく見張り役を果たすべき言論人の立場があるはずであった。ところがそうではなく,各社・各紙の記者(幹部)たちが,権力側を護るための,その番犬ならぬ単なる「飼い犬」になっていた。

 そのような現状が,この国ではなんとなくでも,いつまでも存在しつづけている。その種の行動をしていても,その自覚の点に関しての生活的な感度が完全に滅失していた。権力に対する「番犬転じて〈飼い犬〉になった」彼らは,この記述が批判を放っている〈批難〉を,多分「蛙の面に水」の要領で聞き流せるに違いあるまい。

 言論人じたいが政治社会全体に対する監視者として,なにか問題があると感じたらただちに,厳重に注意をよびかけたり,批判を投じたりする仕事に熱心でなくなっている。そういった,ある意味,きわめて低次元の疑念がいまもって提示されねばならないのが,この国における「現状言論界の維持する “絶対的な資質・水準” 」であった。ともかく,いまだにその体質・根性を是正できていないのだから,別の意味では哀れであった。

 d) さて,本日2024年3月21日の『日本経済新聞』朝刊はこんどは,つぎのような記事を掲載していた。数日間のうちの経済情報の変動ではあるが,なにか意味深長な報道だと受けとるほかなかった。

「プーチンのロシア」によるウクライナ侵略戦争の影響が観過できない

 だから,編集委員・原 真人「『打ち出の小づち』振り続けた日銀 11年の異次元緩和が払うツケ」『朝日新聞』2024年3月19日 15時00分,https://www.asahi.com/articles/ASS3M4F1RS3MULZU007 が,現状のごときに,日本経済の破壊的様相にまで落ちこんだすえの惨状を,こう批評していた。

 とはいえ,異常な金融緩和状態がこれだけ長きにわたって続けられてきたツケはあまりに大きい。

 日銀がおこなってきた禁断の財政ファイナンス,つまり日銀が紙幣を刷って政府財政を支える行為によって,政府が発行する普通国債の残高は異次元緩和が始まった2013年度からの11年間で371兆円も積み上がった。政府予算の3年分である。それをまるまる借金に頼ったのだ。

 いまや政権・与党も,野党も,それほど政府の借金膨張に鈍感になってしまった。この政治の劣化に異次元緩和の長期化が影響しているのはまちがいない。

編集委員・原 真人の批判

 e) つづけて説明させると,『東京新聞』の「こちら特報部」による報道が「『マイナス金利』解除秒読みで考える 日銀が抱えるもう1つの『爆弾』,きれいに後始末できるのか?」2024年3月17日 12時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/315637 と題した記事で,こう批判していた。

 この記事じたい長文なので,冒頭段落のみ紹介し,あとは小見出しを振ってある段落はなるべく少なめの引用にしてみたいが,それでも全体としてはいくらか長い紹介となる。これでもってもなんとか趣旨は十分に伝わると思いたい。

 先回りして指摘しておくが,岸田文雄が猿まね的に常用してきた「異次元のなんとか」といった用法が出てくるので,この記事を読もうと思った瞬間からいささか吐き気を催したが,ともかくガマン,ガマンで読みすすんでいくことにしたいい。

 円安と物価高を助長してきた日銀の「マイナス金利」の解除が迫っている。日銀の異次元緩和政策が転換点を迎えるなか,日銀が抱えるもうひとつの問題にも注目が集まる。

 10年以上にわたって日銀が爆買いした「株式」の処理だ。保有時価総額は71兆円超と,国内上場株式の約7%に上る。その「大株主」が売却に動けば株価暴落を誘発しかねない。専門家が「禁じ手」と口をそろえる日銀の株買い。その罪と後始末について考えた。

 ◆-1 10年以上続く市場の「常識」が覆されたのは

 「今日は午前の株価が 2.2%下がった。もし日銀が買ってなかったら,臆測を呼びそうだ。『いよいよ買い入れも撤廃か』と」

 (中略)
 
 午前中の取引で日本の株価が大きく下落したら,日銀が午後に買い支えに入る。これが10年以上にわたって株式市場での「常識」になっている。……2021年春以降は,午前中に東証株価指数(TOPIX)が前日終値より「2%」ほど下がると日銀が買っていたという。

 日銀は買い入れの判断基準を明らかにしていないが,実施の有無は当日夕方に公表している。下落率が2%を超えた〔3月〕11日,「常識」は破られ,日銀は買い入れをしなかった。市場では,日銀が株買いをやめる予兆との受け止めが広がった。

 ◆-2 中央銀行の株価操作,そもそも不健全

 (前略)
 
 黒田東彦総裁が就任直後の2013年4月に,アベノミクスの象徴である「異次元緩和」を始め,ETFの買い入れ枠を年間1兆円に拡大した。その後も3兆円,6兆円と増え,新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年には最大12兆円に増やし,この年の買い入れは過去最大の約7兆1000億円に達した。

 ◆-3 日銀が投資家から奪い取った「巨万の富」

 (前略)

 ニッセイの井出さんの試算では,日経平均株価が約34年ぶりにバブル期を超えた2月末時点の保有額は時価で約71兆3000億円,含み益は約34兆2000億円に上る。井出さんはこの巨万の富について,日銀が投資家から奪い取って懐にためた,と断罪する。

 補注)34年前の株価をいまごろに超えたといって,はたしていかほどに意味がありえたのか。どういうわけか,日経をはじめ大手紙はこの点を明確に指摘しないし,読者に向けて充分にその点を解説する報道にもなっていなかった。

 ◆-4「まっとうな投資家の投資機会を奪った」

 (前略)

 株価は本来,企業の業績や景気予測などにもとづいた投資家の売買で決まる。将来の株価が上がると思ったら買い,下がると思えば売る。需要と供給によって適正な株価が決まっていくのが市場メカニズムだ。この原理を近代経済学の父アダム・スミスは「見えざる手」と呼んだ。

 しかし,市場原理と無関係に,日銀は株安になると,ほぼ自動的に買い入れてきた。井出さんは「もう少し下がったら買おうと思っていた投資家は,目の前で機会を日銀にかっさらわれてきた。34兆円の含み益は,投資家からかすめ取ったものだ」と批判する。

 ◆-5 もし日銀が債務超過になれば,国民負担も生じかねない

 影響は投資家にとどまらない。「年金資産を運用するGPIFF(年金積立金管理運用独立行政法人)も株価が下がった時に買い足している。日銀が余計なことをしなかったら,もっと利益が出て,年金財政はいまより良くなっていたかもしれない」と井出さんはいう。

 ETFを通じて,日銀が実質的な「大株主」となった企業も多い。井出さんの試算では,2月末時点で株式の10%以上を保有する企業は70社に上る。東短リサーチの加藤さんは「政策当局が多くの民間企業の大株主という社会主義的な状況は望ましくない」と話す。

 状況しだいでは国民負担も生じかねない。野村総研の木内登英さんは「含み益があるうちはいいが,株価が大きく下がったら,含み損が出て日銀の財務を悪化させる可能性がある。政府への納付金が減ったり,もし日銀が債務超過になって公的資金が注入されれば,国民負担になる」と話す。

 (中略)

 木内さんによると,日経平均株価が2万円を下回ると,日銀は含み損に転じるといい,「日銀としては爆弾を抱えている状況だ。焦る必要はないが,異次元緩和の正常化を進めるなかで,ETFも出口に着手しなくてはならない」と話す。

 ◆-6 出口考えずに突っ走ってきた異次元緩和のツケ

 償還期限が訪れる国債と違い,ETFFは売らない限り日銀がもちつづける。急に売却すれば株価急落を招きかねない。日銀は過去に買った株を市場に影響しないよう,約3000億円ずつ売却している。ただ,これと同じペースで時価71兆3000億円のETFを売っていっても,237年かかる計算になり,現実的ではない。

 (中略)

 「中央銀行が株価に介入することじたいがナンセンスなのに,多くの懸念に対して『指摘は当たらない』と出口も考えずに突っ走ってきたことが大問題だ。マイナス金利を含めて異次元緩和の後始末は相当な難路になる

 ◆-7 デスクメモ

 中央銀行が恒常的に株価を下支えし,いくつかの企業の大株主になる構図。尋常とは思えない。「禁じ手」が常態化した背景はなにか。一つには長期の安倍政権下で,株価上昇を成果として強調したい政府の後押しがあっただろう。異次元緩和の功罪はしっかりと検証されるべきだ。 

アベノミクスがアホノミクスとよぼれるゆえんはバカノミクスにあり

 安倍晋三と組んで以上のように,いまごろになってからようやく『東京新聞』がまともに批判したところで,また安倍晋三の悪友みたいな前日銀総裁黒田東彦がようやく姿を消したところで,その間に日本経済はその間GDPでドイツに抜かれ第4位に下降していただけでなく,そのほかの経済指標にみならず,政治・社会面の諸指標で関しても,なにかにつけて,あちこちの国々に劣位化しだしていた。

 そうした経済統計関連の諸指標において,日本があれこれの分野において遅れをとっていく現状は,「衰退途上国」としては当然の摂理的な事態進行だったといえ,誰もがなにか裏さみしくも情けなくも感じる現状である。

 つぎは経済学の専門家を登場させて,あの「アホノミクスの思い出」を語ってもらおう。

 

 ※-2「適正な日本銀行の政策修正」『植草一秀の「知られざる真実」』2024年3月19日, http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2024/03/post-adf2eb.html

 この植草一秀の文章は少しだけ長めだが,問題の根柢をしるために有益な説明になっているので,全文を引用しておく。

 a) 日銀が政策修正を決定した。マイナス金利を解除し,イールドカーブコントロールを撤廃した。想定通りの政策修正である。日銀の政策修正は当然のもの。遅きに失した面が強い。理由は安倍内閣がインフレ誘導をゴリ押ししてきたことにある。

 インフレ誘導は庶民にとってメリットのある施策ではない。2%程度のインフレ率が安定的に維持されることは悪いことではないが,インフレの亢進そのものは弊害が多い。

 物価上昇率が2%程度ある状況は悪いことでない。財サービスの価格が平均で2%程度上昇する状況下では相対価格の調整が円滑に進むからだ。モノの値段は上がるものもあれば下がるものもある。

 〔しかし〕全体のインフレ率がゼロであると相対価格の調整が進みにくい。理由は価格に下方硬直性があること。値段が上がることは普通だが,値段が下がることは起こりにくい。

 値段が下がることが少ないと,平均インフレ率がゼロの場合,相対的に値下がりするべきものの値段も下がらず,価格のばらつきが生じにくくなってしまう。

 平均で2%程度のインフレがあると,相対価格が下がるべきものの値段が下がらず横ばいであっても,他のものが2%値上がりしたり,4%値上がりしたりすることにより,相対価格の調整が円滑に進む。

 価格変化のばらつきが広範に広がることが相対価格の調整の進展で資源配分の適正化に資する。この意味で2%程度のインフレ率が安定的に維持される状況は悪いものでない。

 b) ただし,インフレがどんどん進行することの弊害は大きい。インフレとデフレは経済に影響を与える。ある者にとってはプラスに,別の者にとってはマイナスに作用する。

 インフレで利益をうるのは賃金を支払う者と借金をしている者。逆に賃金を受け取る者と預金している者はインフレで損失を蒙る。デフレはこの逆。デフレになると賃金を支払う者と借金をしている者が損を蒙る。逆に賃金を受けとる者と預金をしている者は利益をうる。

 2012年12月に発足した第2次安倍内閣が「インフレ誘導」の旗を振った。この「インフレ誘導」で利益をえることを期待したのは企業と政府だった。企業は支払う実質賃金を抑制できる。政府にとっては,借金の重みがインフレ進行によって軽くなる。

 2022年から2023年にかけて,日本でも激しいインフレが起きた。4%を超えるインフレだ。このようなインフレを日銀が容認するのは誤り。〔だが〕日銀総裁が代わり,ようやく金融政策正常化が動きはじめた。

 黒田東彦氏は安倍晋三氏と手を携えてインフレ誘導をめざした。不幸中の幸いで,その政策目標は実現しなかった。インフレ誘導政策を強行したがインフレ誘導は実現しなかった。

 c) ところが,2022年から23年には特殊な要因でインフレが生じた。このインフレを抑止するのが日銀の役割。

 黒田東彦氏は自身が提示した路線に執着して,最後の最後まで政策修正を断行できなかったが,日銀総裁が交代して,ようやく異常な金融政策運営に終止符が打たれつつある。

 この日銀政策修正を批判する者がいるが間違っている。インフレ誘導を推進する人々は,当人が大きな借金を背負っている場合が多いといわれてきた。インフレが生じると借金が目減りするからだ。

 しかし,一般的な庶民にとって,インフレは百害あって一利なしである。このことを正確に認識しておかねばならない。日銀が政策を修正し,インフレ抑止の姿勢をもつことは正しいことを認識しておかねばならない。(引用終わり)

 以上,植草一秀の文章は理解しやすい。素人のわれわれにもすんなり把握できる論旨を開陳してくれていた。

 さきほどゾンビということばを登場させてみたが,以前の2010年代からいまの2020年代にまでかけて,いわば「安倍晋三と黒田東彦」という「政治担当と経済担当のコンビ」が「極悪ゾンビ」となって,のさばってきたせいで,この日本国の政治経済は,前段に出ていた文句「衰退途上国」という窮地に,とうとう追いこまれるハメになった。

 森嶋道夫『なぜ日本は没落するか』岩波書店を1999年に公刊していたが,安倍晋三のごとき無教養で不勉強な首相は,たといこの本を読んでいたとしてもその含意はまるで理解しえなかったと断定してよいくらい,無知蒙昧さを高く誇れる「世襲3代目の政治屋」であった。

 森嶋道夫のこの本を読んだある者は,つぎのような感想を記していた。

 本書は1998年の時点で2050年の日本の状態を予測したものですが,2023年の現状を観たただけでも25年前の予測がまさに正確で,没落の理由についても的確に分析されていることに感嘆します。

 しかし,ただ感心している場合ではないのです。実は本書は恐るべき絶望の書であり読む者を暗澹とした気持ちにさせます。著者の予測によれば,日本は今後2050年に向けて没落につぐ没落を続け,もはやそれを救うことはできないからです。

2050年の日本,どうなる?

 岸田文雄も同類であったが,「世襲3代目の政治屋」として共有する無知蒙昧さ,その一般教養からしての「不在性」には,目を覆いたくなるものがあった。安倍晋三から菅 義偉をあいだにはさんで,岸田文雄へとバトンタッチされてきた日本の政権は,まさに「貧国ジャパン」の基盤を突き固めていくための為政を記録してきた。

 

 ※-3『田中龍作ジャーナル』に語らせる昨今「日本政治・経済の惨状」そのみっともなさ

 この『田中龍作ジャーナル』が最近書いた文章から3点を紹介してみる。※-2までの議論の「あだ花」として咲いている「日本の政治経済」のみっともなさないしは見苦しさが,以下の文章のなからいちいち発掘されている。

 なお順に,a) は政治次元の問題,b) は経済次元の問題,c) は社会次元の問題になっていた。

 a)「安倍の御用記者に『クソ野郎』 れいわ大石議員が全面勝訴」『田中龍作ジャーナル』2024年3月13日 21:02,https://tanakaryusaku.jp/2024/03/00030434

 ① 元TBS記者で安倍総理の御用,山口敬之氏。伊藤詩織さんに対して計画的な強姦をおこなった。

 ② 1億円超のスラップ訴訟を伊藤さんにしかけた。とことんまで人を暴力で屈服させようという思い上がったクソ野郎。

争点

 歯に衣着せぬ言論でしられる大石あきこ議員(れいわ新選組)の上記2ツイートが名誉毀損にあたるとして,元TBS記者が訴えていた裁判の2審判決が今日〔2024年3月〕13日,東京高裁でいいわたされた。

 1審の東京地裁は ② の「クソ野郎」が論評の範囲を逸脱しているとして,被告の大石議員にツイートの削除などを命じていた。2審の東京高裁は1審判決を破棄し,「クソ野郎」に違法性はないとの判断を示した。

 上記2つのツイートが名誉毀損にあたるとする原告の訴えはすべて斥けられ,大石議員の全面勝訴判決となった。大石氏がツイートを投稿したのは2019年12月19日。東京地裁が山口氏による伊藤さんへの性加害を認める判決をいいわたした翌日である。

 判決文によると,ツイート ① は事実を摘示しており,② は意見ないし論評の表明に属する。東京地裁が認めた性加害の事実に対して,大石議員が論評し,意見を表明したというのである。

 「クソ野郎」のクソについては「クソじじい」「クソまじめ」「クソ忙しい」などとする強調にあたるとした。被告代理人の佃 克彦弁護士は「表現の自由について配慮してくれた判決」とコメントした。「画期的」とも評価した。

 「権力者に踏みにじられている人を強く庇う」〔のであってそのために〕けっして上品とはいえない大石議員の言論を高裁は認めたのである。安倍晋三元首相がまだ健在であったとしたら,御用記者に対する判決が今回のように画期的なものになっていただろうか。(引用終わり)

 b)「訳あり激安食品店 『貧乏人は賞味期限切れを食え』」『田中龍作ジャーナル』2024年3月18日 20:49,https://tanakaryusaku.jp/2024/03/00030462

 2年前に賞味期限切れになったパンの缶詰が2個100円。1年前に賞味期限が切れているパスタは99円。1月30日までの韓国製ジュースは3個100円。都内某所「訳あり激安」スーパーに置かれた商品の一例だ。

 もちろん,普通のスーパーのように賞味期限が1年以上ある食品も置いてある。だがここは賞味期限切れがデフォ(定番 / 前提)だ。客はそれを分かってやってくる。

 なかにはゴディバのチョコレート小袋が2個298円もあれば,コオロギせんべい49円もある。共通点は「賞味期限切れ」である。

 スーパーは駅から3分もかからない場所にある。混雑はないが客足が途切れることはない。ほかにも埼玉県,足立区などに系列店があるが,成城石井や紀伊国屋の立地とは重なっていない。街にはタワマンなどない。

 激安店の存在は食品流通のなれの果て,とでもいうべきものかもしれない。売れ残った食品は,廃棄するだけでカネがかかる。タダ同然で店にもちこんで売ってもらえば,激安店側もメーカーや問屋もウィンウィンなのである。

 そこへ「エコ」だ,「Mottainai」だ,という美名がくわわり,激安店への抵抗感は少なくなった。

 お店のいいぶんはこうだ。

 生鮮品など消費期限(いついつまでに食べなければ品質は保証しない。切れたものを売ったら違法)。しかし賞味期限は切れたものを売っても違法ではない。

 客からの質問が多いのだろう。レジの所に詳しく説明書きが貼ってあった。「賞味期限切れの食品を買って何か問題が起きたことがあるか?」とレジの女性に聞いた。

 「そういった例はない。自分で(賞味期限切れであることを)納得して買っているので問題はない」 レジの女性はけげんそうな顔をした。

 明治末期,東京に流入した貧困層は軍隊などの厨房から払い下げられた残飯を買って糊口を凌いだ。

 ジャーナリスト松原岩五郎は『最暗黒の東京』(1893年出版)のなかで,農家がもらうはずの豚のエサや畑の肥やしを,「残飯屋」が貧民たちに量り売りしていた様子を描いている。魚の骨やたくあんの切れ端が入っていれば喜ばれたのである。

 「貧民の群れがいかに残飯を喜びしよ,しかして,これを運搬する予がいかに彼らに歓迎されしよ」と。

 130年経ち,社会は再び底が抜けつつある。明治の残飯屋は激安食品スーパーに姿を変え,人びとの前に現れたとしか思えなかった。(引用終わり)

 c)「酷似してきた自民党と最大暴力団」『田中龍作ジャーナル』 2024年3月1日 19:25:05,http://www.asyura2.com/24/senkyo293/msg/641.html
 
 自民党が裏金相当額(5.8億円)を能登の被災地に寄付することを検討しているという。阪神淡路大震災(1995年)のさい,当時日本最大の暴力団だった山口組が被災者に支援物資やカンパを送ったのを思い出した。

 片や「脱税でえた裏金」,片や「覚せい剤を売ってえた金」のロンダリングである。暴力団と自民党の両方に詳しいジャーナリストは「被災者に寄付を送れば報われると思っているメンタリティーは自民党もヤクザも同じ」と苦笑する。

 自民党政治と訣別しなければ,反社と政府の区別がつかなくなる。(引用終わり)

 以上,3点の記述を『田中龍作ジャーナル』から紹介してみたが,最近における日本の政治・経済・社会の様相は,政治が「クソ」化,経済が「ビンボウ」化,社会が「ヤクザ」化したという特徴を,それら記述からの日本国的な特徴として把握できるかもしれない。

 その,もっとも代表であった政治屋がいうまでもなく,あの安倍晋三であった。アベの悪政・失政・暴政は,2010年代から本当に本格的にこの国を破壊しまくってきた。


 ※-4 安倍晋三の悪政・失政・暴政-亡国・国辱の政治屋の棚卸し-

 この※-4では,つぎの一文を紹介する。安倍晋三の為政がどれほど悪質であったか,それほど反国民的であったかなどを,アベの死後20日ほどあとに,このようにまとめていた。これらの中身に関してとなれば,実質,まともな業績は安倍晋三の経歴のなかには皆無であった。

     ★ 悪政と疑惑は残されたまま 凶弾に斃れた元首相 ★
  =『新社会党』2022年7月27日,https://www.sinsyakai.or.jp/board/detail.cgi?sheet=hp3&no=509=,

  安倍晋三元首相が遊説中〔2022年7月8日〕,奈良市内で凶弾に斃たおれた。衷心より哀悼の意を表する。民主主義に敵対する暴挙として銃撃を厳しく糾弾するものだが,安倍政治の罪と闇はけっして忘れてはならない。

 安倍内閣は2020年9月〔16日〕に総辞職した。第1次を含めた在任期間は3188日,憲政史上最長となった。長期政権下,どのような「罪」を重ねたか振り返る。 

 a) 歪んだ歴史観で

  第2次内閣は,「アベノミクス・3本の矢」と「戦後レジームからの脱却」を標榜し,憲法や行政システムの見直しをかかげた。アベノミクスは,雇用と賃金を改善できず,岸田現政権に至るも賃金は上がらず,四半世紀も先進国で最低だ。

 元首相はまた,歴代で最多の外遊をこなしたが,中国,韓国,朝鮮,ロシアと関係打開はできなかった。その要因は元首相や自民党の歪んだ歴史認識と外交姿勢にあった。

 一方で日米同盟を「アジア安保」に拡大し,米国の要求のままに高額兵器を爆買いし,沖縄辺野古新基地建設,南西諸島の軍事化を強行した。また,核兵器禁止条約への不参加,原発再稼働など反動的姿勢を通した。 

 b)  憲法破壊の数々

 内政では,消費税を2014年4月に5%から8%,19年10月には8%から10%に上げた。また,憲法と相容れない悪法を数々強行した。第1次内閣では教育基本法改悪,防衛庁の省昇格。
 
 第2次内閣では

  2013年 特定秘密保護法,

  2014年「武器輸出三原則」を「防衛装備移転三原則」に改悪,

  2015 年に内閣人事局を発足させ,忖度政治の温床を作った。

  2014年には集団的自衛権容認の閣議決定,

  2015年集団的自衛権行使のための安全保障関連法( 戦争法),

  2017年は悪名高い「共謀罪」法だ。 

「森友・加計」や「桜を見る会」など,元首相自身にまつわる数々の「疑惑」も残された。森友学園建設予定地の国有地が,なぜ約8億円も値引きされたのか。
 
 疑惑隠蔽のための文書改竄,虚偽答弁がおこなわれたことによって近畿財務局の赤木俊夫さんの自死があった。学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る疑惑もある。

 さらに2019年には首相が主催する「桜を見る会」の疑惑が浮上した。血税を使った公の場に元首相自身の後援会会員を多数招き,「桜を見る会」を私物化した。その前夜祭でのホテルの飲食代金の値引きは公選法違反の疑いが指摘された。

 元首相の死去で,悪政と疑惑の幕引きは許されない。(引用終わり)

 これに対していまの首相は,どうなっていたか?

 岸田文雄現首相は安倍晋三の真似をして,2024年3月14日夜,東京・日比谷公園のフランス料理店「日比谷パレス」で,マスコミ各社の田崎スシなど大物記者らと会食していた。

 その会食をともにした人物たちも,むろん大問題であったけれども,そして,その種の「会食設定の機会」は,昨(2023)年7月にも同じ店で同じメンバーでも記録されていたとなれば,

 岸田文雄は安倍晋三の為政時期とまったく同じ誤謬を,性懲りもなく犯しているというかそれ以上に,モノゴトの論理「政」も歴史「性」も,その意味をなにも学びえないほどに「異次元の鈍感力」だけならばりっぱに誇れたとはいえ,結局はできそこないの「世襲3代目の政治屋」であったという結論しか導き出せない。

 結論である。 

 過去2年と5ヵ月ほどのあいだ,岸田文雄の執政がまともに日本経済の運営をできていたといえるか? これは,もとより否であった。

 さらには,岸田文雄による日本政治の担当が,その間においてそれなりにできていたと思えるか? これも,そもそもダメであった。

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