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落日の日本-世襲政治の大勢を変更できない日本の政治は今後も凋落していく自国を救えない

首相になって第1にやりたいことは「人事」(内閣組閣・改造人事)だと,子どもたちから寄せられた問いにそう答えた岸田文雄は,一国の最高指導者の使命・任務を弁えない『札付きの丸出だめ夫』であった

 昨日,2023年9月13日岸田文雄政権は内閣の人事を更新(改造)したが,そもそもがろくでもなかった自民党的に世襲議員を中核としてきたこの政治徒党集団に,なにか新味を期待することじたいが最初から無理な期待であった。

橙色で囲んだ女性議員は世襲

 自民党の世襲議員はおおよそ4割近く占めており,先進国における国会議員たちの「出自,そのの中身:実態」としては,ずいぶん “異例というか異様な構成” になっている。
 
 専制強権独裁の国家体制を構える国々はもちろんのこと,この地球上にはいくらでも存在している。けれども,いちおう先進国のつもりでいた日本は,ここまで来るなかでいよいよ,世襲議員が国会議事堂のなかで占める比率をじわじわと増やしてきた。

【参考記事】-板垣英憲,植草一秀の指摘-


 ※-1 本日発売の『週刊文春』2023年9月21日号の新聞広告には,つぎのような記事の見出しがでていた

 『文春オンライン』のこの「最新号」の広告電子版は,その冒頭記事としてこういう見出しを並べていた。

 内閣改造 “失敗の核心”

 小渕優子がドリル秘 書 “不動産会社” に政治資金1200万円を還流させて いる!

  ▶役員は小渕だらけ ファミリー企業にも1400万円還流
  ▶明治座から献金120万「疑惑の発火点」観劇会が復活
  ▶夫はTBS編成局長,夢は次男を「総理にする」
  ▶茂木幹事長の嫌がらせ「お前が松川るいを叱れ」

『週刊文春』目次

 この見出しを読んで吹き出しそうになった。

 そういえば,岸田文雄の息子も「外務大臣になって首相になるんだ!」といったごとき(単に思っただけなのかとしても,それはもうたいそうな)与太話が,世間に向けて流れたこともあった。前段のような類似したその話題,いちがいに排除はしにくい性格のものであった。

 ドリル小渕の夫が優子とのあいだで儲けた子どものうち,次男を「総理にする」とかなんとかいったたぐいの「週刊誌の記事」の見出しであるが,あながち「当事者・関係者の生活圏内」では,相当に大真面目な話題でありえたのかもしれない。

 世襲議員たちのあいだでは「末は博士か大臣か」という文句は,かなりの程度まで実現可能性が期待できているらしい。最近における日本の博士号は安っぽいことこのうえないが,大臣職それも首相(総理大臣)となれば,これは別格中の別格である。

 とはいっても,冗談いうのもいいかげんしてくれよといいたくなる。前段のごとき話題は,日本の政治に関した話題としては,けっして与太話のたぐいといいきれず,ほんのわずかであっても確実に現実味が感じられるものであった。もちろん世襲議員が想定しうる未来の問題として,どこまでも限定版で話せる物語であるが……。

 それゆえに,この国の民主主義の水準ないしはその実態が,いかなる程度の中身であったかという論点は,おのずとバレていた。お里がしれた話題になっているのは,必然的にそれなりのこの国政治のけったいな様相がからんでいたからである。

【参考記事】-『日刊ゲンダイ』『リテラ』などから-


 ※-2 豊田真由子(元国会議員の体験者の寄稿)「政治は世襲で引き継ぐものが当たり前ではない海外 豊田真由子が分析『政界の世襲』のリアル(5)」『神戸新聞 NEXT』2022/11/7,https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/omoshiro/202211/0015787065.shtml から

 この『神戸新聞』の記事は,前半の一部のみをつぎに引用する。

 「日本の政界における世襲」は,各国と比べても飛びぬけて多く,国政選挙のたびに問題とされます。世襲や有力企業一族の議員が多いことは,ある意味,日本政治の制度上の必然の結果で,複雑で底深い歴史と事情があり,これを変えるのは容易なことではないですが,されど,政治だけが旧態依然としたままでよいわけもありません。

  ★ 海外の状況から分かること ★

 海外の主要先進国の政治状況をみて,日本への示唆を考えたいと思います。

 ……自民党における世襲議員(衆院)の割合は,近年3~4割で推移しています。イタリアでは世襲がみられる一方,他は,(選挙によって変動はありますが),英(下院)で1割,米(上・下院)で5~10%,ドイツや韓国はほとんどない,という状況です。

 さらに,英米においても,「親の地盤をそのまま引き継いで,同じ選挙区から出るケース」となると,多くても1%程度で,ほぼみられないとのことです。

 ここで米国というと,ケネディ家やブッシュ家など,著名な政治家一族が思い浮かびますが,全体においてそれが多数を占めるわけではないということになります。なお,米国政治は,とんでもなく巨額の資金が動きますので,米国を参考にするべきかというと,私は否だと思います。

 主要国においては「政治は世襲で引き継ぐもの」が当たりまえではなく,さらに,地盤や後援会システムをそっくり引き継ぐものではなおさらない,と考えられているということだと思います。

 補注)その真逆をいっているのがこの日本の政治。

 そして,ここでの注目点は,各国とも,制度として世襲を禁止・制限しているわけではなく,不文律として,議員という公職に就こうとする者が,そうした特権的地位を求めるようなことをしない,ということや,有権者が候補者や議員を評価する基準が違う,といったことだと思います。(引用終わり)

 つまり,日本においては「不文律として,議員という公職に就こうとする者が,そうした特権的地位を求めるようなことを」,現実には当然のようにおこなっている。

 また「有権者が候補者や議員を評価する基準が」,前段に出ていた先進各国とは顕著に基本から「違う」ことになっている。つまり,日本はまだ先進国のつもり(気分・空気)だけはもっているつもりであるけれども,その中身を観たら,いってみれば「畸型で逸脱した民主主義・国家体制」をいまだに不全に形成したまま,依然それを維持しつづけている。

さて,昨日の2023年9月13日,岸田文雄首相が内閣を改造したさい,5名の女性議員をそのなかに選んでいた。いままで最高であったその人数と同じだと報道されていた。

 ところが,である,この5名のうち3名はバリバリの世襲議員である。そうだったとなれば,せっかく『売りにしたかった』はずの「大臣への女性議員の抜擢」が,このたびの内閣改造人事としては,世襲問題がらみになっていたのでは,「?」の何乗にもなるほかない疑問を誘引させてやまない。

 女性の参画が図れる基盤が造れることはいい。しかし,世襲の問題がそこにまで介入していたとなれば,その企図は根底から無意味化する。換言すると,その意味は蒸発させられ無化している。

 それにしても,自民党は女性議員にあいだにも,ろくでもない連中が多くいた。この事実は,先日パリへ研修旅行にいったけれでも,その実質は観光旅行であって,研修のために実際に当てられた時間は2桁になっていなかったしだいがバレてしまい,日本社会から大ヒンシュクを買った「松川るいとそのご一行」を組んでいた自民党の女性議員たちがいた。

 松川るいは,外交防衛委員会委員,国防部会長代理,2025年大阪・関西万博推進本部事務局長, 女性局次長広報本部報道局長代理,女性活躍推進本部事務局長などの,国会や自民党の役職をとくに務めてきた。ところが,あのエッフェル塔ポーズでこれまでの実績を,ドブのなかに捨てるハメになっていた。

ルイ16世とは事後に松川に進呈されたあだ名となった

 

 ※-3 今日(2023年9月14日)の朝刊には,岸田文雄がやりたかった内閣改造人事関係のニュースが,各紙朝刊1面をかざっていたが……

 さて,今回の内閣改造人事は女性の閣僚(大臣・長官)を据えていた。ところが,そのうち3人が世襲議員であった。
 
 1) 土田品子・復興担当大臣は,父が土屋義彦(つちや・よしひこ,1926-2008年)であり,この義彦は参議院議員(5期),参議院議長(第17・18代),環境庁長官,埼玉県知事(第54・55・56代),埼玉県議会議員(2期),自由民主党参議院議員会長を歴任した。

 2) 加藤亜由子・こども政策担当大臣は,父が加藤紘一(1939-2016年)であり,この紘一は,内閣官房長官(第54代),防衛庁長官(第43代),〔党務関係では〕自由民主党幹事長(第36代),自由民主党政務調査会長(第40代),自由民主党幹事長代理を歴任した。

 3) 自見英子・地方創生,沖縄・北方,万博担当大臣は,父が自見庄三郎であり,この庄三郎(1945年- )は,ハーバード大学公衆衛生学部主任研究員,九州大学医学部講師などを経て,衆議院議員(7期),参議院議員(1期),郵政大臣(第63代),内閣府特命担当大臣(金融担当)・郵政改革担当大臣(菅直人内閣,野田内閣),国民新党代表(第3代),同幹事長(第2代)などを歴任した。

 さきほどの豊田真由子の指摘がこういうふうに触れていた。

 日本の国会議員には,各国と比べても飛びぬけて世襲が多く,この「日本の政界においては世襲」や「有力企業一族の議員が多いこと」が,格別に目立つ特徴になっていた,と。

 換言すると,日本の国会議員を選ぶ現行制度が,小選挙区比例代表並立制をいままで長期間採っていたために,その弊害面がこの世襲という結果を,固陋の因習として全面的に現象させつづけてきた。

 「世襲3代目の政治屋」として,もっともその存在がきわだっていた安倍晋三は,2010年代のこの日本国を「完全に壊した」と非難されてなんらおかしくないどころか,いまでは国恥・国辱,亡国・壊国の「子どもの裸の王様」であった事実は,彼の死後となれば,それこそきわめて率直な評価として定まってきた。

 岸田文雄も「世襲3代目の政治屋」の1人としてであったが,自分の人生の目標を具体的に語たったとき,日本国総理大臣になったら一番やりたかった仕事は「内閣改造」などの人事采配だと,それもあるとき,子どもたちに尋ねられてそう答えたというのだから,「語るに落ちた」も同然の思考方式を全国民たちに向けて披瀝した。

 内閣改造とはむろん,人事の問題をとりあつかう手順・工夫を介して国家の目的に資することを方針・目的とするはずのものであって,それをよりよく実現するための手段・方法である。

 ところが,この「世襲3代目の政治屋」の1人である文雄にいわせると,「ボクは総理大臣になって一番やりたかったことは人事の采配」だといったのだから,最近までの日本が先進国から格落ちするという一国に成り下がったごとき国家運営を,

 とくに,安倍晋三政権が「貫き通してきた実績」にまで,岸田文雄のこれまでの采配ぶりを関連させて考えてみるに,まさしく悪い意味ばかりで首尾一貫している。いうなれば,両名の政権のあいだにはりっぱに悪筋が通されていたことになる。彼ら2名の為政は完全に落第生の道を進んでいた。かれれをどう採点しようにも「不合格になるほかない点数」しか取れていなかった。

ところで,今回における内閣改造人事では,自民党務に関しては,小渕優子が選挙対策委員長に就任することになっていた。これまた世襲議員の話題になっていた。父は首相経験者の小渕恵慶三。

 正直いってなにかにつけて,なぜ「どいつこいつも世襲議員」が出てくるのか,ともかく「入れ替わり立ち替わり世襲議員ばかりよくも顔をみせてくる」という印象がとても強い。

 要するに今回,岸田文雄が首相として内閣を改造した結果は,大臣・長官の人事として女性5人のうち3人が世襲であった。この比率は6割だから,いったいどうなっているのだ,なにをやっているのだという,この改造内閣を評価するとかしないとか,その以前の段階における疑問しか出てこない。

 日本の政治が根幹からトチ狂っている現状に気づけないのは,当の国会議員たちそのものであったが,国民・市民・庶民の側が有権者の立場においてそうした現在の事実を批判できる目線を向けて直視しきれておらず,おまけにその弊害の根深さにまだまともに気づいていない現状を,いままでどおり軽くみていたら,これからの日本の政治はさらに坂道を転げ出す危険に瀕している。

 簡単にいえば,「民主主義国家体制の日本政治」ではなく,「世襲政治路線のそれも正道から脱線した日本の陋習政治」がまかり通っている。これでいいわけがない。

 さあ,どうするか? 世襲政治家たちほうのせいばかりにしていたら,有権者側は,みずからが立っているはずの民主政を,気づかぬうちにみずからの手で墓穴に追いやることになる。

 もっとも現状はすでに,われわれの片足が完全にそこに嵌っている状況になっている。

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