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従軍慰安婦問題の本質(13・完)

 ※-0 2023年9月23日,岸田内閣改造人事に触れてから従軍慰安婦問題の本質を再考する

 岸田文雄は本日内閣の人事を改造する予定である。いままで,内閣官房副長官木原誠二は,『週刊文春』が7月から8月にかけて文春砲からの連射を被弾してきた立場から,この週刊誌を発行する出版社を刑事告訴し,反撃を試みていた。けれども,すでに1ヵ月以上(正確には40日ほど)が経過してきたなかで,その後につづくための木原関連側からの動きは,なにも起こされていない。

木原誠二は閣僚から外れる

 岸田文雄は,自身が首相としてこなす仕事・業務の前さばきのすべてに関して,木原官房副長官の支援・助力なしにはなにもできなかった。その筋の事情にくわしいジャーナリストは,そのように教えていた。

 岸田首相は今日(9月13日)内閣改造をほどこすにあたり,すでに既知の情報であるが,この木原誠二はその閣僚候補から外されることになった,という報道がなされていた。

 そうだとなれば,今後において「世襲3代目の政治屋」である文雄の国家運営に支障・不具合が生じないという保証はない。木原抜きの岸田政権の運行は,たいそうな不安をかかえこんで出発・進行していくと,そう判断するほかない。

 ところで,木原誠二が妻以外に第2夫人をかかえており,しかもこの女性の自宅から首相官邸に通勤していた事実があり,そしてくわうるに「風俗業:デリヘル」の常連客であった事実も周知であった。木原がその顧客として風俗営業を利用する形態:目的は,なんといっても「▲番行為そのもの」にあった。

 すなわち昔風にいえば「女郎買い」を頻繁におこなっていた内閣官房副長官が,『週刊文春』の十字砲火ごとき連続報道の攻撃を受けてきたが,これに対してなんら具体的に弁明も反論もしてこなかったなかで,岸田文雄首相が今日正式に発表する内閣改造では,木原みずからが自身は退くことを決めたと思われる。

 ところで,その「デリバリーヘルス」とは,派遣型のファッションヘルスのことであり,略してデリヘルという。出張ヘルスとも呼ばれるように,その店舗は設けず,客のいる自宅やホテルなどに風俗嬢を派遣し,性的サービスをおこなう業態である。

 木原誠二はこのデリヘルの「▲番」を当然の前提にして,風俗嬢を頻繁に呼び利用していた。しかも,毎日の官邸への通勤のほうは,第2夫人が運転する車で送られてきていた。

 『東京新聞』の記事にも出ているように,それでも岸田文雄は木原誠二の首を斬りたくはなかったというから,この首相はよほど木原を頼り,頼みの綱にしていたということになる。

 しかし,その官房副長官がデリヘル買いの常習者で,しかも法律に抵触する「▲番行為」を前提に風俗嬢を呼んでいたというのだから,これをしらないわけがない首相が,それでも本日(2023年9月13日に)正式に発表される内閣改造人事については,当初,木原を外したくなかったという情感をもっていたのだから,この首相,よほど自分に自信がなかった点を自証したことになる。

 結局,その程度の「世襲3代目の政治屋」がこの国の運営を担当しているとなれば,政治はもちろん経済も社会も発展などできるわけがない,そのように思うほかない点は,本ブログ筆者1人だけが感じるものではあるまい。

 デリヘルと基本のところでは共通する要因もあった問題が,本日の記述をもって最終回となる「従軍慰安婦」の問題であった。しかし,同じ買春的な話題であっても,時空の相違は大きく一筋縄では比較対照できない歴史の要因と状況があるなかで,それでも基底のところでは通時的に共通する要因もあった。

【参考記事】-『日刊ゲンダイ』から-

 

 ※-1 本日の主題・副題はこうなる。「従軍慰安婦問題の本質(13)-いまだに慰安婦問題を全面否定したい極右の故・安倍晋三的にデタラメ三昧だった政治集団:自民党政権は,21世紀の国際政治を生

 なお,「本稿(13・完)」の記述は初出 2014年8月8日であり,更新 2021年9月30日を経て,本日に再掲している。

 従軍慰安婦の歴史的な核心問題は「強制」性にある。だが,この歴史の事実を否定したがる迷盲政治家が蝟集する自民党は,2021年9月29日実施した自民総裁選で安倍晋三カイライの岸田文雄を選出,私物化(死物化)による内政をさらにだらしなく継続してきた。これでは日本の政治に明るい展望はもてない。

 上の段落は2021年9月30日に書いた文章であったが,この指摘・内容はまさに本日の時点になってそのとおりに進行中だと観察できる。

 その2021年9月29日に実施された自民党総裁選は,安倍晋三・麻生太郎・甘利 章たちが,あたかも生ける亡霊集団が舞い踊るかの要領で,岸田文雄を選択,応援して当選させた。

 そうだとなれば,従軍慰安婦問題に対する自民党の歴史的な姿勢は,これからも当然に後ろ向きのままであり,振りかえってみなおすことすらできないと,このようにも思わせた。

 いままで,産経新聞・読売新聞の示してきた迷盲的な国家主義に寄りそった安倍晋三第2次政権風の反動路線は,従軍慰安婦問題となるや,ひたすら「歴史の事実」とは無縁だと批判し,闇雲な主張に終始してきた。

 すなわち〈社会の木鐸〉とはほど遠い言論機関の本性を丸出しにしてきた両紙は,「政治社会思想の次元」で観れば,日本におけるイエロー・ジャーナリズムをになえる代表的な報道機関になりはてていた。

 ましてや,安倍晋三の応援団でしかなかった御用紙:政府広報紙は要らない。それにしてもあいもかわらず,支離滅裂で噴飯モノの報道姿勢が目立つ点は,『三K新聞』は当然として,一番の大手紙『ゴミ売り新聞』までこのサンケイと同列なのだから,まことにみっともない新聞業界:大手メディア・マスコミにおける因習的な惨状がさらけ出されていた。

 読売新聞社は,日本において原発を導入する旗手の立場を採っていた事実も忘れられない。正力松太郎という人物がその有名な関係者であった。この正力は関東大震災直後の「朝鮮人虐殺事件」にも国家官僚として重大な関与をしていた記録を有していた。
 

 ※-2 前置きの話

 2014年8月5日と6日の出来事であった。『朝日新聞』が特集して報道した従軍慰安婦問題を見直した記事に対して,日本の新聞紙でいえば,とくに『産経新聞』『読売新聞』あたりが,なにを勘違いしたのか,この2紙も同じ内容の報道はしてきたはずなのに,同業社の『朝日新聞』をなぜか,しゃかりきになって非難・攻撃を繰り出していた。

 従軍慰安婦問題に関しては〔当時までであっても〕すでに数多く文献・資料が公表されていた。つまり,日本においてそれまで公開されてきた従軍慰安婦問題関連の,そうした文献・資料をみれば,一目瞭然であった特定の事実に気づく。それは,従軍慰安婦の問題が歴史的に強制「性」を基本にして発生していたことである。

 そのあまりにおいて明々白々な「歴史の事実」をまっこうから否定していわく,「そうではない,強制連行などなかった」(とくに「狭義のそれ」を概念として区別・用意しえたつもりでも)と。その狭義か広義という論点がしかも従軍慰安婦問題をともかく否定するための材料に利用されていたから,こちらの議論の方途は,初めから “否定のタメ” にだけにする意向に即して決められていた。

 しかも実証的になんの根拠もなく,まったく無責任にいい放ってきた政治家たちなども,大勢いた。彼らは多分,従軍慰安婦問題の歴史を解明した関連の文献を1冊も読んでいないのではないかと思わせるような〈無知かつ無謀〉な見解を,そのころは,無制限につまり惜しみなく披露していた。

 本ブログはすでに前後してだが,従軍慰安婦問題をめぐって公表していた旧ブログで〔2014年の〕8月5日以降に連続ものとして開始していた「関係する記述」を,最近の事情・背景も考慮したかたちで,前述のように継続的に, 2014年8月8日から2021年9月30日へと更新,改訂してきた。

 以前,安倍晋三第2次政権の政治家たちは,自分たちが大きな過誤に陥っていても,その過誤に気づくための努力はいっさいしようとしなかった。朝日新聞社を攻撃したいのであれば,まず従軍慰安婦問題に関する,これまでに判明している「歴史の事実」を最低限でも勉強したうえで,挑めばよかった。

 ところが彼らは,その関連する歴史の事実を彼らはまともに学習したことがない。ただ,この問題の存在を闇雲に否定し,問答無用に排除することにしか関心がなかった。

 補注)2020年初頭から2021年の9月末日になったころ,そして,今日 2023年9月になったところでもなお,日本の政治・経済・社会「全般」に対して悪影響を与えつづけている新型コロナウイルス感染症の「問題」について自民党政権は,〔ここでは2021年の〕この秋から冬にかけてその第6波が到来すると医療専門家が危惧しつつ予測している点を,ろくに考慮すらしようとしていなかった。
 
 補注)2023年9月も中旬になった現段階では,関連してつぎのような事情に移行している。また5類感染症に指定変更となった新型コロナウイルス感染症は,現在「第9波」が襲来中であるが,このところインフルエンザがより多く流行している。

 2023年5月8日以降,新型コロナウイルス感染症の取り扱いが感染症法上で2類感染症から5類感染症に変更されていた。 感染症法の類型は以下のとおりである。

 1類に指定されているのはエボラ出血熱やペストなど。

 2類は重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS),鳥インフルエンザ(H5N1,H7N9),結核など。

 3類はコレラや腸チフス,赤痢。

 4類はA型・E型肝炎,日本脳炎,狂犬病など。

 5類には新型コロナウイルスが新たに分類されたが,季節性インフルエンザやRSウイルス感染症,後天性免疫不全症候群(エイズ),風疹,麻疹(はしか),水痘(みずぼうそう),手足口病などが指定されている。

感染症法の類型

 その第6波は,第5波の5倍程度の規模までコロナ過をもたらすかもしれないという警告もなされいた。当時,またもや襲来するといわれたこの第6波に対してだが,自民党政権は新型コロナウイルスの「新株襲来」も含めて,この「第6波」の問題について総裁選ではまともにとりあげられていなかった。

【参考記事】-岸田文雄政権が発足する2021年10月4日の直前に公表されていた記事である-

    ★「上 昌広医師『新政権でも迷走は続く』                    非科学的な医療政策は『専門家の暴走の表れ」★
   =『YAHOO!JAPAN ニュース』2021/9/29 (水) 11:30 配信,
         (元記事『AERA dot.』,『AERA』10月4日号)=  

 日本の新型コロナウイルス対策は,諸外国より非科学的だとされる。なぜ安倍・菅両政権下で医療政策の迷走が続いたのか。その背景について,上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が語る(『AERA』2021年10月4日号から)。

 a) 新型コロナウイルスについては世界中が試行錯誤し,ネイチャーやサイエンスなどの科学誌に論文を発表しています。ワクチンにしても,中国の研究者が発表した遺伝子配列をもとにドイツのベンチャー企業がワクチン候補を選定,ファイザー社が治験に入りました。つまり,科学的にグローバルコンセンサスをとれるという意味で,理想的な時代になった。そこに独自解はありません。

 ところが,日本はグローバルコンセンサスから外れ,非科学的な医療政策を続けています。偽陽性を引き合いに出してPCR検査を拡充しなかったことも,クラスター対策や濃厚接触者探しも,空気感染が主流とわかったいま,すべて失敗だったといっていい。

 そもそも,空気感染が主流であることは遅くとも今春には医学界のコンセンサスになっています。現在,世界は冬に向けて備えているのに,日本では季節性の問題を議論せず,人流抑制を続けています。

 b) なぜこんな事態になっているのか。私は,日本の専門家たちは暴走していると考えています。医療は高度に専門的なので,メディアや行政や世論もチェックしづらい面があります。

 たとえば,昨〔2020〕年夏,エッセンシャルワーカーに定期的なPCR検査をおこなう議論があり,自民党の行革本部もその方向で提言しましたが,7月16日,コロナ分科会後に尾身 茂会長が記者会見で「(感染リスクの低い無症状者には)行政検査を実施しない」といったのです。

 結果,今年の感染症法改正には具体的に盛りこまれませんでした。PCR検査を事実上独占する保健所や感染研の利権を優先したためではないかと私は考えています。

 尾身氏が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)では,補助金を受けながら,コロナ患者を十分に受け入れていなかったことが報じられています。コロナ名目の補助金235億円のうち,40億円しか使っていなかったことも判明しました。けれども,大きな批判は起こっていない。

 この惨状こそ,安倍・菅の政権1強の9年間で民主主義が劣化したことの表われでしょう。

 補注)その地域医療機能推進機構(JCHO)は,政府が都合した補助金の余り百数十億円以上を,本来の病院経営の使途ではない投資目的に転用していた。つぎの記事を参照したい。まるで焼け太りである。しかも「国民たちの健康」を犠牲にしたその肥満ぶりであった。

JCHOに補助金を出したときの首相は
安倍晋三だったが
尾身茂は安倍といっしょにしばしば
ニュースに登場してもいた

 
c) 現在,緊急事態宣言を発令しているのはG7で日本だけです。

 感染者も死者も少ない日本で,なぜ緊急事態宣言を続けなければならないのか。政府は病床逼迫が理由としていますが,世界で病床数がもっとも多いにもかかわらず医療が逼迫するのは,やり方が悪いからです。

 新型コロナ医療の基本を規定しているのは,感染症法です。感染症法の主体は国民ではなく国家であり,この法を変えないと状況は変わらないでしょう。そして,それを変えるのが政治の仕事です。

 d) 菅 義偉氏の退陣は,周囲の技術官僚をコントロールできなくなった結果とみています。9月に発令された厚生労働省の人事では,医系技官のトップの医務技監は留任しました。つまり,厚労省は方向転換しないということ。

 つぎの政権でも,医療政策は迷走が続くと思います。ただし,専門家の間違いを指摘し,患者中心の治療をすべきであると,アカデミズムとメディアが訴え,世論が支持するのであれば,変わると思います。(構成 / 編集部・井上有紀子)(引用終わり)

【参考記事】-新型コロナウイルス感染症関連の記事-


〔前段の「従軍慰安婦問題」記事に戻る→〕 ところが,彼ら(従軍慰安婦問題を否定する特定の集団)のその攻撃の態度は事実にもとづかないだけに完全に逆立ちしている。それだけでなく,そのいいぶんは,ほとんど狂乱に近い域にまで到達したかのような倒錯感を露呈させてもいた。

 もう一度強調しておく。従軍慰安婦問題には,旧日本軍のすなわち旧大日本帝国の国家意志が貫かれていたのである。とくに朝鮮人女性を連行した記録は,朝鮮総督府にその記録文書にあったが,敗戦直後にその官庁資料はすべて焼却された。だが,東京の朝鮮総督府支所にはその写しがあり,それがいまも政府部署のどこかに隠匿されている。この点を指摘したのは千田夏光であった。

 註記)千田夏光『従軍慰安婦 正篇』三一書房,1978年,11-12頁。

 敗戦後における日米密約問題でもそうであったように,アメリカ側に公文書として残されている文書が日本側には残されていないといいはってきたように,いまは存在しない朝鮮総督府に従軍慰安婦関連の記録は求めるべくもないものの,日本の官庁のどこかに奥深く眠っている可能性が完全にないとはいいきれない。

 すべからく,強制連行は従軍慰安婦問題についてそれをありえないなどと主張する者は,その誰であっても,すでに数多く公表されている専門研究書などのなかに記述されている「その強制性」にかかわる諸論点に関して,きちんと自身で読み,必要があれば実証的に批判してから,積極的に論破にかかればよいのである。しかし,そうした学術的な基本作法とは無縁のいいがかり的な非難しか彼らにはできていなかった。ただ,感情面から浮上してくる否定的な反対論をいいはることに熱心であったに過ぎない。

 補注)本日のこの記述を更新する機会に,つぎの髙木健一『従軍慰安婦と戦後補償-日本の戦後責任-』三一書房,1992年の書評を紹介しておきたい。この書評記事のスクラップが,同書のなかに挟みまれてあったので,これを画像資料で紹介しておく。

高木健一・書評

 この書評のなかには「例の吉田清治のフィクション的な語り」がとりあげられているが,当時においてはまだこの「吉田の問題」はまだ格別には意識されていなかった。なお,本ブログ・「本稿」の連続ものの記述のなかでは,この吉田清治の著作に関連する吟味は,別途おこなっている。

 また,この書評のなかにさらに登場する佐藤勝巳は,北朝鮮による日本人拉致問題に対しては,「理論指導」の見地に立って特定のイデオロギーを教導していた人物であった。ところが,この佐藤は「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)が収集した金銭に関して,疑惑をもたれる場面を提供していたゆえ,なにをかいわんや。

 従軍慰安婦問題そのもの存在が,文句なしにともかく大嫌いな識者たちのなかには,反論や批判の仕方がいつの間にか,ひどく滑りすぎてしまい,つぎのような失敗を体験するハメになっていた。高木健一が提訴した裁判に関する事後談である。少し長いが参考にしておきたい。この藤岡信勝や池田信夫の語り方は,事実とは無縁の発言をするところにこそ,彼らなりに独自の個性が発揮されていた。

  ◆ 藤岡信勝氏・池田信夫氏が「誤り」認め謝罪文               慰安婦訴訟の弁護士批判記事-元慰安婦らによる
       戦後補償の訴訟を多く手がけた高木健一弁護士が起こした
            名誉毀損訴訟2件が,相次いで和解した- ◆
  =『 ハフポスト』2016年07月26日 23時53分,
    https://www.huffingtonpost.jp/2016/07/26/fujioka-ikeda-                         apoligized_n_11208488.html =

 元慰安婦らによる戦後補償の訴訟を多く手がけた高木健一弁護士を批判する記事を雑誌やブログに書いた藤岡信勝・拓殖大客員教授と,アゴラ研究所所長の池田信夫氏が,それぞれ記述の誤りを認めて高木氏にお詫びする謝罪文が載ることになった。高木氏が起こした名誉毀損訴訟2件が,相次いで和解したためだ。

 a)〔2016年〕7月26日発売の月刊誌『WiLL』〔2016年〕9月号には以下の謝罪広告が載った。

 『WiLL』2013年9月号に掲載した藤岡信勝「『従軍慰安婦』で日本の名誉を売った2人の弁護士」と題する記事において,高木健一弁護士がインドネシアを訪問し,地元紙に元慰安婦を募集する「広告」を出したと述べた記述は,誤りであることを認め,お詫び致します。

 高木氏はサハリン残留韓国人の帰還問題や日本軍の慰安婦問題など戦後補償の裁判を多く手がけた弁護士。藤岡氏は,従来の歴史教科書が「自虐史観」の影響を受けていると批判して1997年に「新しい歴史教科書をつくる会」を発足させ,現在は副会長。『WiLL』は今〔2016〕年初めまで文藝春秋出身の花田紀凱氏が編集長を務め,保守系の論客が多く寄稿する言論誌だ。

 2013年9月号の記事で藤岡氏は,高木氏ら2人の弁護士を「慰安婦問題をでっち上げ,世界にその噓をばらまいて国際的な大問題に仕立て上げた」と批判。高木氏について「インドネシアを訪問し,地元紙に『補償のために日本からやってきた。元慰安婦は名乗り出て欲しい』という内容の広告を出した」と書いた。

 高木氏は「記事で名誉を傷つけられた」などとして,藤岡氏と同誌発行元ワックを相手取り,慰謝料など1100万円の支払いと謝罪広告掲載を求めて2013年12月に提訴。「1993年の日弁連によるインドネシア調査には参加しておらず,現地紙に広告を出したとの事実はない」と主張した。

 東京地裁は2015年4月の判決で,高木氏がインドネシアを訪れ広告を出したとの記述について「真実との証明があったとはいえない」と認定する一方,「広告を掲載したかどうかは重要とはいえない」とも述べて,高木氏側の請求を棄却した。

 高木氏側は控訴。控訴審の東京高裁で今〔2016〕年6月20日,和解が成立した。被告側が『WiLL』誌上に謝罪広告を掲載し,原告側に解決金50万円を支払うとの内容だ。

 b) 一方,池田氏のブログ「池田信夫blog」のトップページには,7月末までに以下の内容で謝罪文が載る予定だ。

 2014年9月1日に当ブログに掲載した記事において「慰安婦を食い物にする高木健一弁護士」「ハイエナ弁護士」と記載したことは誤りでしたので,高木健一弁護士に多大なご迷惑をお掛けしたことをお詫び申し上げます。

 池田氏は元NHK職員の経済学者。主宰する言論サイト『アゴラ』や自身の『池田信夫blog』に時事問題に関するブログを掲載している。

 補注)本ブログは池田信夫をことを,安倍晋三寄りの識者と呼んでみたが,当たりであった。

 高木氏は記事で名誉を傷つけられたとして2014年9月,池田氏を相手取り,慰謝料など330万円の支払いや謝罪文の掲載を求めて提訴。「戦後補償の訴訟では韓国人被害者から費用をいっさい受け取っていないのに『慰安婦を食い物にするハイエナ弁護士』とレッテルを貼られた」と主張した。

 今〔2016〕年7月20日,東京地裁で和解が成立。被告側が問題とされたブログの記述を削除し,トップページに7月末から30日間,謝罪文を掲示。原告側に和解金30万円を支払うとの内容だ。

 高木氏は「藤岡,池田両氏は事実と異なる記事を書き,元慰安婦を支援する運動をおとしめた。両者とも誤りを認めて謝罪広告や謝罪文を掲載し,解決金や和解金を支払うことになった。実質上の勝訴といえる和解だ」と話している。(朝日新聞編集委員・北野隆一) 

 といったような経過も当時にあったものの,従軍慰安婦問題となると新聞紙でいえば『産経新聞』や『読売新聞』に,冷静さをともなった報道はまったく期待できていなかった。前段のごとき記事が出たことになっていても,たとえば『産経新聞』は翌年,つぎのような煽動目的とみまがうほかない記事を書いていた。見出しのみ紹介しておく。

 「 “情緒司法” 韓国焚きつけ 『解決済み』の戦後補償…人権派は日本の『非』強調,事実検証なく歴史も断罪」『産経新聞』2017/7/25 06:00,https://www.sankei.com/article/20170725-CXBHBLT2N5JEZDG3K27F3MNXAI/ がそれであった。  

 一字一句がいちいちピントはずれでなければ,初めから意図された論点はずしがなされていたとみるほかない,扇情的な見出し文句。議論じたいがすでに決着している問題であったにもかかわらず,あえて無視して蒸し返すための煽動記事であった。

 

 ※-3「日本の沈黙に米政府が声を上げた慰安婦問題」『東亜日報』2014年8月7日「社説」http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2014080721628

 『朝日新聞』2014年8月5日・6日朝刊が従軍慰安婦問題を特集記事にして以降,そのもっとも深い関係国である韓国では,このような関連記事がたくさん登場していた。なお,北朝鮮ではこの従軍慰安婦問題を,日朝国交回復に向けてどのように利用できるかを模索中と思われる〔この本日の記述がなされる時点まで早,10年が経過した〕。

 --日本軍慰安婦被害者のイ・オクソン(87歳),カン・イルチュル(86歳)さんが〔2014年〕先〔7〕月30,31日,ホワイトハウスと国務省の関係者に会った。議会ではなく米政府が被害女性に公式に面談したのは異例だ。2人は,「私たちはもうすぐ死ぬ。慰安婦問題を解決しなければならない」と訴えた。5日,米国家安全保障会議(NSC)と国務省報道官は,「慰安婦問題は重大な人権違反」と確認した。

 慰安婦問題に対する米国社会の関心が高まっている。2010年以降,慰安婦の碑や平和の少女像が数ヵ所で設置された。2人の訪米も,ニュージャージー州ユニオンシティに設置された米国内の7つ目の碑の除幕のためだった。在米韓国人ではなく地方政府が主導した初のケースだ。除幕式で,ブライアン・スタック市長は,「慰安婦問題は,子孫への人権教育の問題だ。若者に過去にどのようなことが起こったのか教えてこそ同じ失敗が繰り返されない」と強調した。

 米政府と慰安婦被害者の面談は,マイク・ホンダ民主党議員がとりもった。2007年,下院を通過した「日本軍慰安婦決議案」の立役者だ。今〔2014〕年1月,オバマ大統領は7年ぶりに下院決議案の順守要求法案に署名することで,安倍政府に圧力をかけた。さまざまなチャンネルを通じて,米国人に慰安婦問題の本質を伝えることが重要だ。米政府が前向きに日本に過去の反省を促すようにしなければならない。

 国際社会の圧迫が強くなればなるほど,日本の立場は弱くなる。過去の反省の模範例であるドイツと違って,反人権犯罪を否定し,謝罪しない日本みずからが招いたことだ。今後,韓国政府は,慰安婦問題のように人間の尊厳と価値を傷つけることが地球上で再び起こらないよう国際社会の関心と支援をえることに努力しなければならない。

 〔2014年8月〕5日,朝日新聞は過去の退行的な社会に向かって勇気ある発言をした。3面に渡って「女性に対する自由の剥奪や尊厳の蹂躙など日本軍慰安婦問題の本質を直視しよう」と報じた。

 〔当時〕安倍政府が,国際社会と日本国内の良心的勢力の声を無視することは,国家の品格を落とし,国民を辱めることだ。1991年8月14日,故金 学順(キム・ハクスン)さんが日本軍慰安婦の被害を世の中に初めてしらせた。残された被害者たちの最後の願いが実現するまで,どれほど待たなければならないのか。

 

 ※-4「慰安婦:自民党・一部メディアは一斉に『朝日たたき』,産経『慰安婦=朝日新聞の捏造』,自民党『議会で記事検証が必要』」『朝鮮日報』2014年8月7日,http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/08/07/2014080700596.html?ent_rank_news  

 朝日新聞が32年前に報道した旧日本軍従軍慰安婦関連の記事で,一部の過ちを認めたことを口実に,日本の一部メディアや自民党は「慰安婦の強制動員がねつ造である証拠」とこじつけ的な論法を展開している。
 付記)なお,中央日報は韓国の有力紙の1社。

 朝日新聞は第2次世界大戦時に済州島で女性を慰安婦として強制動員したという吉田清治氏=故人=の1982年のインタビュー記事を裏付ける証拠がみつからず,「一部に事実関係の誤りがあった」と〔2014年8月〕5日,認めた。

 これについて,自民党の石破 茂幹事長は「地域の平和と安定,隣国との友好や国民感情に大きな影響を与えてきた報道だ。検証を議会の場でもおこなうことが必要かもしれない」と,朝日新聞の記事を国会で検証する可能性があるという考えを明らかにした。

 産経新聞は〔2014年8月〕3日,3面にわたる特集記事で「慰安婦=朝日新聞のねつ造」という主張を展開した。同紙は社説で「朝日新聞が慰安婦問題の報道について,一部の記事が虚構だったことを認めた。(中略) 根拠なく作文された平成5年(1993年)の河野洋平官房長官談話などにおける,慰安婦が強制連行されたとの主張の根幹は,もはや崩れた」というこじつけ的な主張を繰り広げた。

 読売新聞も「これ(朝日新聞の吉田氏発言報道)が韓国の反日世論をあおっただけでなく,日本について誤った認識が,世界に広がる根拠のひとつとなった」と主張した。(東京=車 学峰(チャ・ハクポン)特派員)

 

 ※-5「慰安婦問題めぐり… 日本,新聞各紙の戦争」『中央日報』2014年8月7日,http://japanese.joins.com/article/646/188646.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp|main|ranking

 日本の朝日新聞が〔2014年8月〕5・6日の2回にかけて掲載した慰安婦関連の特集記事について日本の右派言論が波状攻勢を繰り広げた。「慰安婦問題の本質を直視してこそ未来がある」という記事の趣旨はものともせず,一部の記事の虚偽を認めたことに対して待っていたかのように「慰安婦強制動員は虚構だった」といった主張が続いた。

 これら右翼メディアは,韓日関係が悪化した全責任は朝日新聞の慰安婦記事にあるように追いこんでいる。保守政治権も関連記事を国会で検証する必要があるとして火に油を注いでいる。

 保守指向の産経と読売新聞が,先頭に立って「朝日たたき」に出た。産経は6日付1面に「朝日の慰安婦報道に間違い」という記事をはじめ,2・3・8面に集中的に批判記事を載せた。とくに社説では「慰安婦強制連行の根幹が崩れた」と主張した。

 「済州島(チェジュド)から205人の若い朝鮮人女性を狩猟するように強制的に連行していった」という日本人の吉田清治(故人)の主張を裏づけるだけの証言を新しく探せなかった朝日が記事を取り消したことに対するものだ。

 産経は引きつづき,慰安婦動員の強制性を認めた1993年河野談話を「根拠なく作文された」と釘を刺した。産経はまた「自国(日本)の名誉を守ろうとする一部論調が韓日両国の民族主義を刺激して問題を悪化させている」という朝日の指摘には「責任を転嫁している」と追い立てた。

 読売新聞も「朝日32年後の撤回,強制連行証言は虚偽」という1面記事など4面にわたって朝日を糾弾した。1991年8月に報道された慰安婦出身女性については「妓生(キーセン,芸者)学校に通っていた事実があとで明らかになったが,言及されなかった」として慰安婦被害女性の全員をさげすんだ。

 読売はまた最近,河野談話検証に参加した歴史学者・秦 郁彦が1992年,吉田証言に疑問を提起したが修正されなかったとして「20年以上放置していた朝日の責任は非常に重い」と断じた。「慰安婦として自由を剥奪されて女性として尊厳を踏みにじられたのが問題の本質」という朝日の主張については,「広い意味の強制性があったとして日本政府の責任を問うのは『議論のすり替え』」として保守勢力の「責任否定論」を援護した。

 自民党も右翼言論の肩入れに参加した。朝日新聞によれば石破 茂幹事長は5日「地域の平和・安定,隣国との友好,国民感情に影響を及ぼした報道」として「議会で検証する必要があり,朝日の関係者を国会に呼び出す可能性もある」と話した。

 これに対して東京新聞は「報道内容に関連して,記者を証人や参考人として国会に呼ぶのはきわめて異例」としながら,「政府・与党に不利な報道をするメディアを牽制する手段として悪用されるなら報道の自由を侵害すること」と憂慮をあらわした。(引用終わり)

 この記事を介して明確に分かる産経新聞・読売新聞の報道姿勢は,一部の間違いを針小棒大に拡大解釈しようとする「意図的な悪意」を前面に押し出していた。

 吉田清治のでっち上げ話の問題は批判されるべきは当然であった。しかしこの吉田の存在があったからといって,従軍慰安婦問題そのものが歴史的になにも存在しえなかったように,極度に申し(わめき)たてた産経新聞・読売新聞の論調は完全に「タメにだけする偏執的な議論」でしかなかった。

 要は,自分たちは日本人・日本民族の立場から,従軍慰安婦の問題が歴史の事実であっても,どうしても絶対に認めたくない。ただ「認めたくないものは認めたくない」のだ,どういっても「そうしたいのだ」といいつのるだけであって,非常にかたくな立場に終始していた。

 朝日新聞社の報道内容がただちに「刑事裁判の被告人を生む」ような事件性があるわけでもあるまい。産経新聞と読売新聞の口調はともかく,必死になって「従軍慰安婦問題」じたいを頭から否定したい気分を,剥き出しにする発言を披露していた。

 それにしても,産経新聞や読売新聞は自社にとって都合の悪い「従軍慰安婦問題」に関する文献や資料には,いっさい目を通そうとはしていないようにしかみえない。というよりは「目を向けよう」ともしないでいたのではないか。両紙のイエロー性は否が応でもにじみ出ていた。

 なかでも吉田清治の問題については,『産経新聞』も『読売新聞』など多くの他紙が『朝日新聞』と同じようにとりあげ報道していた。この相互関係を踏まえていえば「天に唾するヘリクツ」そのものを,サンケイや読売は強弁していたことになる。

 

 ※-6「産経・読売,今度は韓国メディアを攻撃」『中央日報』2014年8月8日,http://japanese.joins.com/article/684/188684.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp|main|ranking

 この中央日報の記事は,朝日新聞の慰安婦特集記事に関連させて,「韓国各紙,朝日を擁護」という記事をかかげた『産経新聞』2014年8月7日付の記事をとりあげている。

 産経は「韓国紙が『朝日は,日本の保守勢力が唱える(慰安婦問題に関する)責任否定論に警告を発した』と指摘」として「(朝日の)誤報が日韓関係や国際社会での対日観に及ぼした重大な影響には触れず,『潔い反省だ』と評価した」と,批判的に報道した。

 保守(極右)指向の産経・読売新聞が〔2014年〕8月7日の朝日新聞の慰安婦特集を扱った韓国メディアの報道を非難したのである。産経は「擁護」,読売は「追随(批判なく他人のあとに従う)」という表現を使いながら,韓国メディアが朝日に肩入れしたと主張し〔批判し〕た。

 これら新聞〔産経新聞や読売新聞〕は,朝日が慰安婦に関連した過去記事の一部の誤りを認めたことについて「結局,慰安婦強制動員は虚構だった」と主張して,韓国メディアにもその責任を転嫁した。産経は「韓国各紙は(朝日の)誤報そのものは問題視しなかった……(中略)……一連の釈明や主張を代弁した」と批判し〔非難し〕た。

 中央日報が〔8月〕6日,「朝日が過去の一部の記事の誤りに対しては率直に認めたのが目を引く」という一部分を問題にして,「(朝日の)誤報が日韓関係や国際社会での対日観に及ぼした重大な影響には触れなかった」とした。朝日が一部の過去記事の誤りを認めたことを口実に,慰安婦問題の本質をひっくり返そうとするような〔産経新聞や読売新聞の〕論調だ。

 読売は「韓国メディア朝日に追随」という見出しの記事で,根拠もなく「韓国の専門家の間では『韓国では “少女20万人強制連行” などというとんでもない誤解が広まってしまった』との反省もある」と主張し,韓国マスコミがその誤解を呼び起こしたと主張した。

 慰安婦被害女性の証言には目を向けず「朝鮮人女性を狩り出すようにして強制的に連行した」という日本人・吉田清治(死亡)の主張の新たな証言がないとし,強制連行の事実じたいを否定した。

 補注)この20万人説は歴史的に一定の根拠のある主張である。冒頭にかかげた本ブログの記述でも言及した問題点である。したがって,「とんでもない誤解」というほうが,実は,むしろトンデモな反論(感情的な反発)を返していたに過ぎない。

 吉田清治のでっち上げたごとき慰安婦狩り「そのもの」に相当する諸行為は,彼以外の関係者「無数」が,日本国家:日本軍からの直接的と間接的な依頼を受けておこなってきた。この種の話は,関連の文献のなかにはいくらでもみいだせるる。

 〔記事に戻る→〕 過去の慰安婦関連の妄言を出した橋下 徹大阪市長は〔2014年8月〕6日,「(朝日の)罪はとても大きい」とし「強制連行の事実は少なくとも朝鮮半島においてはなかった」と主張した。石破 茂自民党幹事長は6日午後,BSフジ放送で「朝日の記事は日韓関係にも影響を与えた」とし「国会で朝日(慰安婦)報道を検証する」と述べた。

 補注)この橋下の独断そのものであった見解は,そもそもまともな主張にすらなっていなかった。石破の発言に至ってはすべてを他者・他社のせいにする独善的な押しつけ論でしかなかった。

 進歩指向の毎日新聞は7日付社説で「『旧日本軍の関与』という言葉で政治決着させた河野談話を安倍政権が引き継ぐと世界に約束した以上,広義の強制性か狭義の強制性か,といった国内論議に改めて時間を費やすのでは,国益を損ねる」と指摘した。


 ※-7 若干の詮議

 1) 過去の歴史

 浅薄な思考しかもちあわせない「ネトウヨ(歴史修正主義)」に観念の基盤を置いたかのような日本の右翼的な新聞社,また自民党の視野狭窄の幹部政治家,あるいは自治体首長の発言は,自分たちの教養水準のつたなさなど棚に上げたまま,「朝日新聞社がともかく間違えた(従軍慰安婦問題のごく小部分であったものについて)・悪い・憎い」という感情を横溢させていることだけは,よく伝わってきた。

 このような政治感覚や日常感情のあり方は,一歩間違えばただちに「すわ,戦争事態が発生か」という危険性につながりかねないものであった。

 第1次大戦を勃発させた原因は暗殺事件であったが,こんどは従軍慰安婦問題で「強制性があったのだの,いやなかっただの」いいあっている程度ゆえ,まだその心配は少なかったにせよ,

 その底に控える「問答無用」的な「他者攻撃性の粗暴さ」には,その間に1世紀もの時間が経過してきた現時点になっても,なおなにか危険な共通する要素を感得させる。

 それにしても,自民党総裁の(元)首相安倍晋三,自民党(元)幹事長の石破 茂,この2人はいずれも,世界政治の一角に存在するこの日本国の内政を任すには,その資質・実力に関して難があり過ぎた。

 安倍晋三は「戦後レジーム」のなんたるか,その本質理解において完全な欠落があった。石破になると防衛大臣にさせたら,戦争でもおっぱじめたい「身中に宿す虫」(「お宅」的性質)を,みずから勇気づけることに熱心であったかのような印象しか与ええなかった政治家である。

 第2次大戦終了までの大日本帝国は,米欧の諸帝国主義国に準じた帝国主義路線をアジア地域において実践していた。しかし敗戦後,現在の日米安保条約体制下では,実質はアメリカに手綱を握られて(首根っこを押さえられて)いながら,いつもまでも愚かな対アジア政策でもってする対応しかできていなかった。

 最近(これはまだ2014年のころの話だったが)でも,日本はロシアのプーチンから冷たい仕打ちを受けていたが,これにまともに対抗できるといえる対抗措置(外交交渉?でのやりとり)を,安倍晋三は実行できていたか? それにしても頼りない男であった。プーチンにはいいようにあしらわれていた晋三の姿ときたら,みっともないというか,たよりないの一言であった。

 たとえば「安倍晋三内閣総理大臣記者会見,2014年5月15日」は,安倍が力んでこう語る姿を伝えていた。

 内閣総理大臣である私は,いかなる事態にあっても,国民の命を守る責任があるはずです。そして,人々の幸せを願ってつくられた日本国憲法が,こうした事態にあって,国民の命を守る責任を放棄せよといっているとは私にはどうしても考えられません。

 だが,これはしごく当たりまえのことをいっていただけである。あとは日本国憲法にイチャモンをつけていた点秀逸な「憲法観」になっていた。また,いわれた「こうした事態」とは,集団的自衛権の憲法解釈論による「容認」への変更を理屈づけるときに例示した,それも専門家にいわせればきわめて非現実的な想定話(下掲,『リテラ』の解説図解参照)のことを意味していた。

 補注)安倍晋三は首相の座に居たときだが,つぎの画像資料に記載されているように,なにか大きな勘違い(当人はそれほど深く考えもしなかったのだが)を犯していた。

本当にそう思いこんでいたのか
さすがこの日本を2010年代に
壊しまくってきただけの人間が口に出せた
お言葉

 2) 自覚表情がないままに自己陶酔の激しかった安倍晋三君

 たとえば,つぎの図解パネルが,集団的自衛権の必要性を説明するときに安倍晋三が使用したもののひとつである。だが,アメリカ側からすると,このような「想定」は現実にはほとんどありえないと批判されていた。それでも,このパネルを国会の場にもちだして説明した安倍晋三は,大まじめに,その必要性を解説していたのだから,これそこトンデモの典型例であった。

小学生向けのパネル? 

 日本国の現状にとって,このような「私」=「内閣総理大臣」の安倍晋三君は,この一国にわざわざ〈国際的な緊張→危機〉をもたらしかねない「病原体:危険分子」を意味してきた。

 ところで,在日米軍基地はいったいなんのためにあるのか,みなさんご存知か?

 ここまで外国の軍隊が日本のそれも「東京(首都)の中心部」まで占有して基地を構えているのは,朝鮮戦争に連合軍の名目で参戦したアメリカ軍が戦死者3万6千人を出していた〈関係のある韓国〉をのぞけば,この日本だけである。

 いわば日本国は,自国首都の喉元の場所にまで「外国軍である米軍」を喜んで駐留させている。米軍にとってみれば,世界次元の軍事作戦に必要不可欠かつ非常に重要である在日基地が,この国のなかに散在して配置されている現状はきわめて好ましい。この軍事関係は,これから,いったいいつになったら解消されるのか?

 在日米軍基地が日本全国に点在している軍事的な必要性は,アメリカ側にとってみれば,いうまでもない事情である。だが,「敗戦という大きな歴史上の出来事」があったために日本側は,否応もなしに「賊軍(正確にいうと自衛隊の属軍)」にさせられる目に遭っていた。日本は現在もなお,そのアメリカとの政治的な服属関係から脱却できる見通しがないままである。

 以前からそうであったがとくに最近(2021年以降になって)の安倍晋三君は「戦後レジームからの脱却」というお得意であったセリフを,もうすっかり口にしなくなった。

 以上のように言及されうる日本国をとりかこむ軍事情勢の政治社会的な意味は,いったい「なんであるなのか」を,昔もいまもそうであったが,まともに考えている日本人はどのくらいいたか?

 要は,そこに目立つかたちで映ってみえている日米関係のありようは「対米服属国家としての日本国」ではないのか?

 閣議決定によってしごく簡単に,集団的自衛権を方向付けた国になる以前から,この国は,現在の日米安保条約体制の枠組のなかに組み伏せられていたごとき相互関係のなかで,「いざ鎌倉」という秋になれば,もっぱら「日本軍(自衛隊3軍)」が「米軍にご奉仕する関係しか生じない」。

 まともな独立国の間柄として観るとき,以上のような米日軍事同盟関係の現象態様が軍事学本質論としてなにを意味するか,いうだけヤボである。

 3) 徴兵制を敷きたい「彼ら」かも

 今〔2014〕年7月ころの時期までには,日本の18歳になっている若者全員に対して,政府から自衛隊入隊を勧誘するための案内状が届いているはずだという。これは初めての出来事であった。安倍晋三や石破 茂がなにをもくろんでいるかは,いまからみえみえである。

 なお,安倍晋三には子供はいない。石破は女子の子供2人である。女性も自衛隊員になれる時代であるが,集団的自衛権を認めた国に日本はなったのだから,とくにアメリカの都合で自衛隊3軍がどこの戦地・戦場に動員されるか(実質,米軍の都合で勝手にどこかに送りだされるか)分からない時代となった。

 補注)自衛隊に兵隊として自分の息子や娘を送りこむ両親たちは,彼・彼女たちが自衛隊のなかで獲得できる専門的な各種の特殊技能で,それも職業社会に移動した時に多いに役立つそれを進んで習得するように勧めるべきである。

 そして,その点が成就しえた時点になったら,なるべく早めに除隊させて一般企業に転職するのが好ましいと思われる。命〔あっての物種〕の問題が自衛隊においても現実的な意味あいをもちはじめた。

 以前,イラクに派遣された隊員から自殺者が,一般社会よりも多めの比率で出ているという情報は,そう簡単に無視できない。

 集団的自衛権の直接の狙いは,日本を防衛する任務のためであるよりも,アメリカの軍隊を補助するだけでなく,さらには直接に代替させられる範囲にまで展開されていくに決まっている。

 アメリカ政府・軍部関係者は,いままでの日米軍事同盟関係にもとづく枠内であっても,自衛隊に対する柔軟な運用方法でもよいと考えていないわけではなかった。しかしそのところへ,安倍晋三が独自の考えがあってのつもりか,愚かにも集団的自衛権を憲法解釈によって行使できる日本国に変質させてしまった。

 アメリカにだけやらせておけばいいものを,あえて安倍は,日本からしゃしゃり出るようにして,自分だけは「イイかっこう」をつけた結果,国民たちには要らぬ負担がこれから課せられる時代にしてしまった。

 いずれにせよ,アメリカ側においてはその安倍晋三の申し出を歓迎しながらも,いささかならず迷惑顔でもって,ついでに小バカにもする態度がなかったとはいえない。それは「あのボクちゃん首相」は,ともかく子供っぽくて困ったもんだ(けれども御しやすいね),という受けとめ方であった。

 

 ※-7 高木健一『従軍慰安婦と戦後補償-日本の戦後責任-』三一書房,1992年の議論

 数万人から10万人を超える朝鮮人女性が組織的に日本軍の性の処理の道具にさせられたことは,明白な事実である。ところが,この驚くべき事実は,長い間,「闇」のなかに埋もれ,多くの戦後世代の日本人にしられることなくきた。なぜか。

 補注)本ブログ全体の議論からもすでに判明している朝鮮人従軍慰安婦の総数については,20万人という理解もあった。ほかには50万人いたと分析しつつ概観する山田盟子まであった。この人数に関連する検討は,すでに12回にわたって記述してきたこの「従軍慰安婦問題の本質」のなかで,なんどか言及してきた。

 旧大日本帝国の陸海軍は,日中戦争・太平洋戦争(1937年7月7日~1945年8月15日〔9月2日〕)下,数多くの「不正義」をおこなっていた。そのなかでも,この「従軍慰安婦」問題は,とくに「不正義」の頂点を位置していた「国家の軍による恥しらずな行為」であった。にもかかわらず,問題の解明が困難であったいくつかの理由がある。

 以下の記述は,高木健一『従軍慰安婦と戦後補償-日本の戦後責任-』1992年(5-6頁)からの引照である。

 a) 公的な記録に乏しく,全体像の把握が困難をきわめる。日本政府がこの事実を認めたのは,戦後47年目であったのは,この理由による。

 b) 加害者たる日本軍将兵にとっても,戦闘行為は話せてもみずからの性的処理について,告白するその口はきわめて重い。中国戦線においてみずからの罪業を自己批判して自白した人でも,慰安婦についてだけは話せなかったというほどである。

 補注)もっとも,例外がないわけではない。関連の文献を挙げておく。中国帰還者連絡会 『私たちは中国で何をしたか-日本人戦犯の記録-』三一書房,1987年。

 その後,満洲国の関係者が敗戦後中国に抑留された記録をまとめた本も公刊されていた。新井利夫・藤原 彰編『侵略の証言-中国における日本人戦犯自筆供述書-』岩波書店,1999年。

 c) なによりも,被害者たる元従軍慰安婦の口が重い。現在もなお儒教の影響の強い韓国・朝鮮人においては,当人のみでなく親族らもみずからの自尊心を傷つけられて恥を感じ,被害者と名乗り出るには大変な勇気がいる。

 d) このように解明の困難だった「朝鮮人従軍慰安婦問題」も,しかし最近になって従軍慰安婦自身の証言を筆頭に,さまざまな資料や証言が出はじめてきている。防衛庁図書館やアメリカの公文書館などから発見された資料が市民団体が開設した「従軍慰安婦110番」に寄せられた元軍人たちからの証言である。

 それらの記録や証言をみなおすと,この制度がまさに国家と天皇の名のもとに遂行された日本の侵略戦争の本質そのものにかかわるものであったことが,あらためて明白となる。

 安倍晋三や石破 茂といった自民党政治家や産経新聞・読売新聞といった新聞紙が,なにやら必死の形相になってまで,従軍慰安婦問題についてはその存在じたいはもちろんのこと,とりわけその強制「性」を否定したがるのは,もともとその回避もその否定もできない「歴史の事実」が厳然と控えていたからである。

 そしてとくに『3K新聞』や『ゴミ売り新聞』の本来的な立場は,歴史的事実としての従軍慰安婦問題であっても,とにかく,それを最初から既定観念的にいっさい認めたくなかった。

 ある意味で,その種の新聞社の基本姿勢は「語るに落ちた話に過ぎなかった」。けれども,従軍慰安婦にされた女性:当事者の立場から回顧するあの戦争の時代は,「自分の一生を台なしにされた大事件」が国家の暴力によって起こされていたゆえ,絶対に許容しえない過去の体験であった。それは,旧日帝が国家を挙げて遂行した犯罪行為の顛末であった。

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