音楽と歩む

音楽と歩む

 

私の学生時代はFMラジオから流れる曲を

カセットテープに録音して聴くのが主流だった。

当時これを”エアチェック”と呼んで、

〇月◇日の何時からの1時間番組で

どのような曲が流れるかを記した雑誌まで

売られていたのだ。

(FMレコパルとかFM fan という名前だったな?)

もちろんレコードを買って録音してしまえばよいのだが、

あれもこれもレコードを買っていたらお金が続かない。

どうしても欲しいレコードは買うけれども、

あの歌イイナ、程度のレベルなら取り敢えずは

“エアチェック”して何回か聴き、気に入ったら残し、

そうでなければ、上書きで新しい曲を録音する。

そんな繰り返しで、お気に入りのカセットテープを作っていった。

この”エアチェック”にまつわる話を。

先程の専門誌でお気に入りの曲の”エアチェック”時間を調べる。

時間がくるとカセットデッキの録音ボタンを押す。

DJの紹介の後、イントロからしっかり入っていれば目的達成!

ところがイントロが流れているときに

DJがしゃべってしまうこともあり失敗することも多々ある。

このときの脱力感は半端ない。

ここまで費やした時間はどうなるんだと独り唸っていた。

また、専門誌の時間枠で流される曲の順番が、

記載通りのものと、そうでないものがあった。

後者の場合、ひたすら曲が流れるタイミングを待つ。

まだかまだかとひたすら待つ。

1時間番組の最後に流れた時は、ひと仕事終えたような疲労感が。

お気に入りの1曲を録音するまでに相当時間がかかることもあった。

レコードから録音したカセットテープや

“エアチェック”で録り溜めたカセットテープは、

大学時代、ドライブミュージックとしても大活躍!

彼女と青い海を横目に走る時のカセット、

彼女の家に夜送って行くときのカセットなど

シチュエーションごとにカセットテープを作っていた。

実家を離れ、3度引っ越しているが、

その都度これらのカセットテープも一緒についてくる。

もう、カセットテープを聴く機器もないというのに…。

同じ時代を共に生きた仲間みたいなものだから。

今でも整理箪笥の引き出しの一角に静かに眠っている。

現代の音楽事情と比べたら、本当に化石みたいな話。

どれだけ時間をかけ、どれだけ苦労して曲を集めたか。

だから、そう簡単にカセットテープを捨てられないし、

一曲一曲に凝縮した想い出が詰まっているのだ。

世はスピードの時代。便利になったことが大半だが、

どこか失われたこともあるような気がする。

 

じっくり時間をかけて自分だけのオリジナルを作る。

時間的にも精神的にも余裕のあるところを

日常生活にもう一度取り込んでみたい。

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