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レアモデル列伝-33: Ford GT40 Roadster(Spyder)

 23.09.09 ある大手モデル販売会社から在庫一掃のセールがあり、Spark(SP)Ford GT40 Roadster(Spyder)を入手した。
 1967年のスパ1,000kmで 6位入賞したモデル。

 オープントップで2座の車を一般にはRoadsterと呼び、イギリスやドイツでは好んで使われている名称。
 Spyderは主にイタリア車に使われているオープントップ車。元々、イギリスでは軽量で速い車をスピードスターと呼んでいたが、これがスパイダーと変わった様で、本来はSpiderと書くのが正解なのだが、「i」「y」にした方がデザイン的には格好が良いとのことでSpyderという総称画としている様だ。
 他にアメリカではConvertible。フランスやドイツではCabrioletと言われクローズ状態を基本とするので今回購入の車はCabrioletが正解と思う、このモデルは屋根を除けばNo.15と同様だがSpyderと書かれていないのはその所為と思われる。

1/43 SP製 台座に書かれている様にSpyderが今回の話の肝
1965年のLe Mansを戦ったFord France SAより参戦した
Guy Ligier / Maurice Trintignant 結果はDNF

 この様なオープントップで優勝経験のある車はFord Kk-II roadster(Ford X-I Spl. Roadster)だ。1966年世界選手権の第2戦、Sebring 12h、Ken Miles / Lloyd Rubyは予選1位で決勝は2位のMk-IIに12周差をつけた1位と、この車唯一の好成績を残している。クローズドのMk-IIの屋根を取っ払っただけの様にも見えるが、内部の軽量化が図られ、ギアボックスは2速のオートマの噂もあった、他のSpyderと比べると後方の空気取り入れ口の形が異なるが、AピラーはSpyderと同様な傾きをしている。

1/43 SP製 奥はFord VS Ferrariの主役 Ken Milsの駆ったFord MK-II@Le Mans
前は今回の話のKen Milsの駆ったSebring 12h優勝のRoadster
単に屋根を取っただけでなくAピラーの角度が異なる

 もう1台のRoadsterもFord X-Iと言われる車、しかしこの車は世界選手権には出走せず、NassauやRiversideのレース経験しかない。Mk-IIを大幅に軽量化したとの事であり、デザイン上ではオープントップがさらに進み、Aピラー等は最初から無し、ノーズは先代のMk-II同様なロングで左右のノーズも同様なフィンが付くが後部のエアインテークは他のSpyderと同じ形をとっている。最初はBruce McLarenに開発を依頼したが、その後はChris Amonが駆って4回のレースに参戦したが、全て DNFであった。

1/43 Marsh Models(MM)製 フロントウインドウが小さくなり、フロントが長い

その後、この車はShelby Americanに引き継がれ、改造後に前述の優勝車となった次第。

 モデルは2台入手。この趣味に嵌った最初の頃から欲しくて仕方が無かったが、大手のメーカーからは販売された記録はない。eBayでMarsh Models(MM)にあるのを知ったが、どこを探してもないので懇意にしているフィニッシャーに相談、MMのキットは持っていないが、M.A.Scale Modelsならあることを知り、制作を依頼した。

 完成したモデルは写真の如く。その後数年してeBayのオークションに挙がったので金額に上限を設けず入札し落札、21.08.27に入手となった次第、No.17は65年10月Riversideで行われたTimes GPのモデル。

 2台を並べると結構な相違をみる。フロントフードの色は艶消しのネービーブルーで同じ、1番の違いはキャブレターのラムパイプ。残念ながら、エンジンの映っている写真は1枚も無い。運転席のメーター類は一寸違う感じもあるが、この写真も見つからない。M.A.Scale ModelsのキットはNo.17のRiversideとNo.4のNassau(65年12月)仕上げも作られる様になっていて、ラムパイプの形が異なるのか、その様なことを推測することもモデルを眺める醍醐味と考えている。

1/43 左はMM製、右はM.A.Scale Models製
この角度からみるとフロントのフィンの大きさが異なる
上記のモデルを後方から見た図、エンジンのラムパイプや室内のメーター類が異なる

 今回初入手のモデルは、SPから発売された1967年のスパ1,000kmで 6位入賞したモデル。この写真を探したが、今度こそ本当に1枚も無い(前回のレアモデル列伝-32は再度の調査で2枚探し出せた)。近しい写真は有ったが、トップの有無とNo.違いで異なる車と判断。

 それでは何でこんな無名な車がモデルになったか、それはモデルの台座で判る。台座にある旗はベルギーの旗、箱書きをみるとベルギーSparkが企画したモデルと推測される。であるから、地方(といっても世界選手権)のレース結果からこの車を選んだのであろう、特にスパ・フランコルシャンサーキットは高速コースと降雨で有名、そこでRoadsterに屋根を付けたCabrioletのモデルを選んだのではと推測した。このレースを探しだした結果、1967.05.01のSpaはFord Mirage M1の初優勝のレース。前日の予選では好天であったが決勝の当日は朝から激雨、レアモデルの範疇としては最適な車と判断した次第。

1/43 SP製 Peter Sutcliffe / Brian Redmanが駆った英国FordのエントリーしたGT40
実車の写真は全く無いが当日の大雨の写真はあった
大雨のSpa 1000km、先頭の車は優勝したジャーキーイクスのMirage M1
1/43 SP製 台座のベルギー国旗がその由来を物語る
今回の参考文献

                          (2023.09.15)
                          (2023.09.18一部追加)

参考文献
Trevor Legate Ford GT 40 Production & Racing History Individual Chassis Record Veloce Publishing England 2001

Ken Breslauer    SEBRING    The Official History Of America's Great Sports Car Rase   David Bull Publishing Cambridge.  Cambridge MA   1995

Dave Friedman  SHELBY AMERICAN Up Close And Behind The Scenes 
Quarto Publishing USA 2017

Dave Friedman FORD GT   Quarto Publishing USA 2015

Dave Friedman   SHELBY GT40  Shelby American  Original Archives 1964-1967 Including GT40、MK.II、MK.IV、and More  Motorbooks International  CA 1995

Mark Cole  Ford GT40 MK II   The remarkable history of 1016  Porter Press International UK 2018

檜垣和夫 Ford GT   Sportscar Profile Series -2  二玄社 2006


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