私はあの子になれない

こんにちは。どろっとした感情は外に出していく方針の青犬でございます。

この間、YOASOBIさんの『アイドル』を聞きました。
良いですね、曲調と言い、歌詞といい、歌声といい。
実際歌ってみるとなかなかに難しい曲でした。
知り合いがアニソンは誰でも歌えるように作られていると言っていましたがアイドルは該当しないのではと思いましたよ、これ。

ところで『はいはいあの子は特別です』の歌詞。

胸にぶっ刺さって痛いんですよね。


最初から違うあの子


夢を追いかけて飛び込んだ専門学校、そこはエゴとマウントと妬み嫉妬が渦巻く社会でした。
私は声優になりたくて専門学校に行ったのですが、これがまあ、ストレスと地獄の嵐で。
自我の強い同期達、横行する恋愛事情、女の子達は気に入られるために教務の先生に媚び売り。
だけど悟っていた私はそんなもんだろうと分かっていました。分かっているつもりでした。

たくさんの女の子に媚びを売られ、鼻の下を伸ばす男教務。
そこで生まれるのが贔屓です。
贔屓されば講師の先生に押してもらえる。インターシップに斡旋してもらえる。
私も最初は頑張っていました。
でもそんなことは花のある、特別な『主人公』の前では無意味でした。

出会って話せば大体分かるのです。
ああ、彼女は主人公だ、と。
眩しく可愛くてお芝居も上手で、今の世の中のニーズを答えるために与えられた才能。

負けず嫌いの私も必死に食らいつきましだ。もちろん、今も。
でもスタートが違う。能力値が違う。才能が違う。
空いた距離を埋めようと、あの子に追いつこうと走るが一向に縮まらない。それどころか離れていくばかり。

何故追いつけないのか。
簡単です、彼女も走っているからです。しかも早いスピードで。

ふと思うのです。もしも彼女と私の立場が入れ替われたらな、と。
ただ不安もなく、挫折を知らなかった過去の私なら『むしろその子より上手くやれる』と思っていたでしょう。
でも現実を知り、挫折を知り、実力不足を知り、運の無さを痛感し、生きていくことがどんなに大変で辛いことかを知った私は『あの子にはなれない』と思ってしまったのです。

きっとあの子のように器用に振る舞えない、お世辞にも世渡り上手とは言えない私には。
だからオーディションも受からない。ライバル達に簡単に蹴落とされる。

こうしてじんわりじんわりと自己嫌悪は心を蝕んでいくのです。
自分の足りないものを探し、体が傷だらけになっても探し掘り続けた指から血が滲んでも上手く息ができなくなっても私は止まりませんでした。

だって止まってしまったら泣いてしまうから。
嫉妬や妬み、嫌悪が襲いかかってくるから。
好きなお芝居も歌も嫌いになってしまうから。
あの子に追いつけないから。

そんな日々を送る中でようやく人に止められ、疲れていること、傷ついていること、体が悲鳴をあげていることに気づいてしまったのです。

そこからは意識を変え、私は休むこと、自分のペースを見つけることを大事にしました。

そこから経験が足りないと言われたので自分ができないと思っていたことを始めて自分なりの経験を作り上げよう、と動き出しました。

不思議なことに入れ替われたらと考えても『あの子のように振る舞えないけど、きっとあの子も私になれば振る舞えないだろう』とむしろ『誰かと入れ替わっても誰にも振る舞えない私になろう』

そう思えるようになれました。
今はそんなんでいいんだと泣けるようになったのです。
この考えを続けた結果はまだ出てませんが、今はその結果に出会えるのを楽しみにしています。

それではごきげんよう。

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