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G.T. Jump 2 EP Performance Review

正直、色物シリーズで継続すると思っていなかった。

Hyperdunkが終焉して以降、Nikeは長らくフラグシップモデル不在の状況が続きました。
フラグシップモデル候補を一応リリースするものの、その後継が続かなかったり。(ALPHADUNKとかALPHADUNKとか。)

個人的にはG.T.(Greater Than)シリーズにおいてもスポット物と思っていたのですが、蓋を開けるとG.T.Cutの異様な人気からスタートし、Run・Jumpも結構な話題性とカラー展開、
Runはコンセプト事見直されたか、Hustleとネーミングを変えて2作目へ、
一足お先にCutにおいては3までシリーズを伸ばしつつ、Academyというエントリーラインにまでカバーしたプロダクトへ成長した事に、自分としては結構驚いてたりします。

ここ近年、個人的にはNikeバスケットボールプロダクトはKyrieの脱退やJAのスキャンダルなどで影を落としていた認識でしたが、一転してかなり力を入れてモデル拡充に取り組んでいるように見えています。
その背景には他メーカー・ブランドの新規参入や市場拡大もあり、シーン全体が盛り上がったこともありつつ、トップシェアとしてうかうかしてられないというのもあるかもしれません。

1消費者として、これまで何度も書かせてもらっていますがこの流れはシンプルに喜ばしい事であり、アジアブランドが日本国内で普通に流通・手に取って見れる環境が出来上がったというのは本国のみならずバスケットシーン全体がかなり活性化しているんだなーと実感できて、本当に嬉しい限りです。

さてさて、ちょっと話がそれてしまいましたが、そんな中でも未だトップシェアを維持し続ける王者Nikeのフラグシップ、特に”ジャンプ”に特化したシューズの2作目は前作とどう変化したのかをじっくり見て行ってみようと思います。

という訳で、今回は”Nike G.T. Jump 2 EP”を見て行ってみようと思います。

前作のレビューでも書いたんですが、この2が出ても頑なに1を履き続けたヨキッチがどうしても気になり、比較をしようと思っていた矢先に361°へ行ってしまい若干モチベーションが…
まぁそれはさておき、相変わらずのてんこ盛り感はありますので、しっかり堪能させて貰います。

今回チョイスしたのは、一応Colorway上は”Bred”に当たるらしいですが、ちょっと印象違う感じが。
ホワイト/ブラックに差し色のレッドが入ったカラーは確かにBredと呼べなくもないんですが、アウトソールのカラーが…。あ、そうか。海外ではこれトランスルーセントなんですもんね…。

■ディティール

ではまず外観から。

カットに関しては相変わらずのハイカットで、足首周りをしっかりと抑え込みたい狙いというのはキープコンセプト。
巷ではヨキッチの為のシューズと呼ばれていましたが、確かにヨキッチ自身がハイカットを好んで着用するので、それに合わせたかもしれませんね。
(まぁこの2は履きませんでしたけど。)

ということは逆に、ヨキッチが抜けた今後においてはトレンドに合わせてローカットに変化するかも…。
個人的にはハイカットモデルが市場に少ない現状なので、できれば維持してほしいなぁーと感じておりまして。

サイドから見てまず真っ先に飛び込んでくるのは”React”の文字と高いウェストラインを保持したミッドソールシルエット。
かなりボリューミーに見えますし、体感的にも勿論ボリューミー(後述)。
それに加える形で、ヒール側、アウトソール側からミッドソール上まで丸まった異様なプレートの存在がとても特徴的。

上も上で結構特徴的なんですけど、どうしてもミッドソールのインパクトに負けますw。

アッパーに関して。
前作のJUMP WIREによる格子状のあの仕上がり、個人的にはかなり好きだったんですけどねー。
とはいえ、今作は今作で結構複雑なパターンのテキスタイルで、少し民族衣装チックな風合いがおしゃれだなーと。
インナーのブラックとのコントラストも相まって、これはこれでなかなか。

アンクル周りにはAirバブル付きで、ハイテク感も。
ただ、地味に疑問なんですが、これって何か効果狙えるんですかね?

■フィット

ではでは、早速堪能させて頂きます。

まずはラストですが、今作からEPラストになりました。
前作がグローバルで且つ、結構タイト目だったのに比べると大分ナチュラルなフィーリング。

縦寸はジャスト、横幅は自然に足指が広がる+α程度、高さ方向も少しだけゆとりを感じる程度。着用後半は高さ方向が少し空間できる感触がありますが、これはインソールによる物なので後述。

内装は意外にもスリッパブーティで、前後セパレートされたもの。
前足側のインナーはメッシュで、それを覆うように前述のテキスタイルメッシュがが覆う構造。
中~後足側はメッシュの下側に厚みを持たせた黒のインナーが入っており、密着感を高めてます。

シューレースホールは基本アッパー貫通式。下から2段目のところだけナイロンバンドでサイドをダイレクトに掴む機構。
アッパー縫い付けで非稼働なので、アッパーに沿ってという形ではありますが。

また、上から2段目がダブルアイレットになっており、イン・アウト&どっちも通す等レイアウトの自由度も持たせてます。
その内側にFlywireがいますが…飾りかな。これに関してはレースホールに比べて余り気味にセットされているので直接的に関与してる感触は特にないです。どちらかというと保険の意味合いが強いかなと。
であればダブルアイレットどちらも通してもらった方がロックダウンの保持力が強いので、よっぽど効果的なフィットが得られるかと。

ヒールパッドはブロック別の構造。
張り出しは少し控えめ。前述のAirバブルが内側にも張り出してくれてる等あれば更にこのスペースを殺してくれると思うんですが、特にそういった仕様でもなく。

それも踏まえて全体のフィット感としては若干プア目かなと。
EPラスト故なのか、少し空間ができやすく感じ、特にフォア周りとヒールの抑え込みにもう一歩欲しいところ。
基本はマイサイズでよいと思いますが、ソックス2枚等で調整したうえで最終サイズを決めてもらうのがお勧めです。

■ソールフィール

続いてソールフィール。

まずはインソール…ですが、凝ってはいるんですけどね…、個人的に一つ目の鬼門に…。

形状は他のZoom Strobelモデルと共通で、Strobelの形状を逃げる窪みの入ったもの。
ただ、今作は前後でフォームの違うデュアルデンシティ(異硬度・異密度)仕様。
中~後足部側は従来通りの発砲系の硬質な物、前足部はArtholiteっぽい低反発系のフォーム。
これはG.T. Husstle 2でも採用されてました。

で、個人的には「従来通りで良かったじゃん…」というのが素直な感想で…。
兎にも角にもフォア側の低反発なフォームは着用数分でつぶれてしまい、足裏にZoom Strobelのごつごつ感を出しつつ、トゥボックスにスペースを生んでしまう感触。
足裏密着感とフレキシビリティを作りたかった狙いというのはもちろん有るんでしょうけど、自分には異物感の方が強く…。
試しに従来の全体が硬質なインソールを入れてみると、やはりこちらの方がフラットに・異物感少なく乗れるので個人的にはこちらの方が好みです…。

Zoom Strobelの仕様は粗変わらないので割愛。
相変わらず初期吸収のところで作用している感触。

お待ちかねのミッドソール。
前作からどの様に変わった・どのように進化したのかわくわく。

構造としては、まずベースにファイロンフォーム。
フォアに、並列配置のZoom Podと中~後足はReactフォーム。
それをNIKE JUMP SYSTEM(正式名称不明。※多分前作同様JUMP FRAMEで良いと思う)というプレートを介して踏むという構造。
サイドから見てわかる通りかなり造形が複雑で、ものすごい凝った構造ですよね。

ヒール後端が上側に巻き込んでいますが、ヒール真下にプレートはいないです。

この構造を要約すると、ヒール~中足部はアウトソール側にいるプレートがスタビライザーの代わりをし、フロアからの入力を綺麗にフォーム圧縮へ繋げつつ、フォア側へのモーメントへ変換し、フォアはプレート越しにZoom Airに乗る事でプレートの反力+Zoom Airの反力を受け取ってリフト力を高める、と。
凄い。前作にも増して更に特化型の進化じゃないかんと思います。

プレートの前端は此処まで伸びており、最後の蹴り出しにも効果を発揮しています。

…で、結論から申しますと、
「凄いけど…」
でした。

まずフォアに関しては個人的には満足度高いです。
Zoom Strobel&プレートを介してZoom Podに乗る感触は今までにない感触で、システム的な反発力という面でいうと過去最高レベルなんじゃないかなと思います。
例えるなら本当にバネの様な感触で、前作にあったダブルスタック特有の大きな沈みもなく、適度な沈みとそれに応じた強力な反力がレスポンス良く立ち上がり、ポンと体を持ち上げてくれます。
寧ろいつも以上に飛びあがりやすいので、ジャンパーとかは距離感が少しずれる程度に。
欲を言うならもう少し沈みを抑えてくれたら、もう1段早く・高くなりそうというくらいで、それ程までに一つの武器と呼べるくらいの完成度にあると思います。

…問題はヒール側。

Reactと言えど、整形の方法や配分によって様々あるわけで…。
結論から言うと今作においては(というより現行のReactが)柔らかすぎてしまうというところになるかなと。

プレートによりスタビライズされ、フロア側の設置の安定感を高められているとはいえ、フォーム自体が柔らかくヒールにアングルが付きやすい&ヒールが下がってしまいやすく、それでいてフォームの反力もそこまで高くない
= フォア側との段付きが強く、狙いであったヒール~フォアへのモーメントをうまく連動出来ないという状況に。

参考までにZoom BBとの比較以下に乗せておきますが、触感だけでも大分弾力違いますし、体重掛けてもその差ははっきりわかっていただけるかと。
もし今作がこのZoom BBのReactフォームで形成されていれば、おそらく狙いの通りヒール~フォアへ綺麗に重心移動が伝達されて更に効果を高められたのではないかなと考えると、すごくもったいない感を感じてしまう今日この頃で。

最後にアウトソール。
パターンはプレイ解析に基づいて設計されたデジタルヘリンボーン。
ラバー自体は柔らかいですが、粘りは少なめで埃の影響は出辛いといえるかと。
全体の接地面積自体があまり高くないので、どちらかというと気にすべきはそちらかなと。
スキール音は少しだけなりますが、しっかり荷重乗せて止まるタイプ。
特にプレート越しに乗りますので、ちゃんと荷重を載せないと思ったよりもトラクション立ち上がっていないと感じてしまうかもしれません。 
その点だけご注意いただければ、フロアにあまり影響されないグリップ感と言えるかと。

■重量

最後に重量。
26.0㎝で414g。
先ほどちらりと映ったZoom BBと同程度ですね。(26.0㎝/409g)
それ考えるとDame 7は結構重たいのかも。(25.5㎝/417g)

■Over All

ということで、以下に評価してみようと思います。
フィット … 7/10
グリップ … 7/10
ベンチレーション … 8/10
クッション … 7/10
コスパ … 6(8)/10
-----------------
ALL … 35(37)/50

率直な表現としては「フォアだけのシューズ」
ちょっと辛辣な表現になってしまいましたが、しょうがない、これが率直な意見で。

勿論フォアに関しても前述の通りパーフェクトという訳ではないです。
感覚的にはフォア下にちっちゃいロイター板がついてるみたいな感覚で、前作よりは全然ましですが、やはり最大限の反力得ようとしたときには綺麗にフォアに荷重を載せたい感はありますし、安定性の面で見ても小子球側に荷重が乗った際に捲られやすい(アウトリガーとして弱く、倒れこんでしまう)のも少し気になるポイント。
ただそれでも、瞬発的に反力も加速も取り出し易いのはかなりのアドバンテージで、ユニーク武器と呼んで過言無いかと。

それと比べてしまうとどうしてもヒールの沈み込みが悪目立ちしやすく見えていて、荷重を掛けても”フカッ”っと吸収してくれる感触はメリットも勿論ない訳ではないですが、この”G.T. Jump”というモデルのコンセプトから考えるとちょっと違う感が否めないかなと。
これであるならば、ヒールのフォームにおいてもベースのファイロンをそのまま使ってくれた方が加速感も出るしコストも下がるしで良かったのでは?と。

何せ定価が27,200円、市場の中では最高級の部類に入るので期待値も高く。
「価格に見合っていない」ということが言いたい訳では決して無いんです。
おそらく通常のシューズに比べてはるかに製造工数掛かっているでしょうし、価格に応じたしっかりしたマテリアルも使っていると思います。
ただ”パフォーマンス”という観点だけで見た場合に「少し違うかな…」と感じてしまったというのが本音です。
あ、でも最近の巷のセールなどで大分価格のこなれたライン(実売1.5k~1.7k)で見ると試す価値はあるといえると思います。(それで採算取れてしまうなら、そもそも利益率いくつなんだよ感はありますが…まぁそれはNikeに限らずですけどね…。)

兎にも角にも結構流通拡大が図られており店頭で見れる場所も広がっていると思いますので、まずは一度足を入れてみてください。
特にフォアの感触、この反力を是非。


最後までご覧頂き有難うございました!
もしレビューがご参考になったり、少しでも面白いなーと思っていただけましたらコーヒー1本奢ってもらえましたら幸いです。🙇‍♂️

これまでは有料記事として皆さまにサポート頂いていたのですが、ずっと引っ掛かりもあって、もっと皆さんに手軽に参考にしてもらうことが目標だった筈なのにいつの間にかクローズな状況を作ってしまって本当に申し訳ないです。
今年のからのレビューにおいては、基本的にすべて無料で全部読める形をとり、もしよかったなーと思ってもらえたらコーヒ代を頂く形を取りたいと考えております。
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