おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか 第三話感想

「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか」の第三話が放送された。今回は大地の内面に触れるような話だった。私が副題をつけるとすると「この親にしてこの子あり」。大地のタフで優しい一面は彼の母親である美穂子の愛で作られた。

以下HPからの引用である。

息子を理解せよ!!イケメンから学ぶ子供を大事にする方法
年の離れた友人・大地(中島颯太)のお陰で娘・萌(大原梓)の大事にしているものを少しだけ理解した昭和のおっさん・沖田誠(原田泰造)。そんな中、大地から「知り合いの両親に贈るプレゼントを選ぶアドバイスが欲しい」と相談され買い物に付き合うことに。爽やかな青年とのデートのようなシチュエーション!?
「いや。これはデートと言うより介護だな……」
そこで誠は引きこもりの息子・翔(城桧吏)が好きそうなかわいいパスケースを見つける。翔に買って帰れば喜ぶのでは? そう思う誠だったが、店員に声をかけられると勇気が出ずにその場を逃げるように去ってしまい……
そんなある日、仕事から帰宅した誠は愛犬のカルロス(こまち)が元気がないことに気付く。慌てて動物病院に駆け込むと、そこにいたのは大地の母・美穂子(松下由樹)で……。ゲイの息子とともに生きてきた美穂子の言葉が、誠にある真理を気付かせる!? 早くもタイトルを回収する前半戦の最重要エピソード!(https://www.fujitv.co.jp/b_hp/oppan/backnumber/724000001-3.html)


 今回の話でキーとなるのは大地の過去だ。私は1話からずっと追ってきて彼がどうしてそこまで大人なのか気になっていた。自分に差別的な視線を向ける誠を受け入れ、一人部屋に引きこもりうじうじしている翔の友人となった。誰一人として置いていかない大地がどうやって作られたのか気になった。そしてそれが今回明らかになった。

一番印象的だったのは翔に掛けた自分自身のポリシーだ。翔は大地に「どうして差別的なことばかり言う父親と友達になったのか?」と尋ねる。嫌なものとは距離を置く。怖いものからは全部逃げてきた翔にとって大地は不思議な存在だったのかもしれない。そんな翔に大地は自分のポリシーを語る。

「俺が心掛けていることなんだけど『ゲ、この人には会いたくなかったなぁ』っていう相手はなるべく作らない。俺はゲイだから否定的な言葉を言われることも結構あってそういう相手を全部苦手にしていったら全部苦しくなっちゃうからね」
(おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか)

大地のこの言葉は、今の翔の状態を超えてきたからこそ言えることだと思う。誰かを嫌うのはエネルギーがいる。自分の心を守るために人を嫌い、遠ざけていたはずなのにいつの間にか自分自身のことを嫌いになっていった。一番近くにいる自分を嫌うのは辛いこと。だから大地は受け入れる努力をすることにした。
相手と対話してみて分かり合えるところを見つけてみる。話せば分かるし、分かり合えるところが見つけられれば相手を好きになれるかもしれない。

誰のためでもない。自分自身のためだ。

ではどうして大地がそういう風に変化できたのか考えると、彼の母親、美穂子との関係があると思う。
この場面の前、大地は翔のために何かしてやりたいと語る誠に語り掛けた言葉がある。

「人ってそんなに長いこと怒り続けられるものじゃない。その時どれだけ悔しくて腹が立っていても誰か近くにいる人が辛い以上の愛を示してくれたら……」
(おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか)

大地は誠に語りかけながらも過去の自分のことを思い出していた。
学生時代の大地と美穂子の姿。美穂子は酷い言葉を掛けられ傷ついた大地に寄り添い、その手を跳ね除けられても静かに抱きしめた。大地の中で、何にも勝る愛を得た瞬間だった。きっと大地はあの時のことがあったからぶれずに生きてこれたんだと思う。

美穂子の愛は終盤、誠がカルロスを連れてきた場面でも見受けられた。美穂子が大地の母親だと知ると、誠は大地を褒めようとするがことごとく言葉選びを失敗してしまう。ゲイであることを否定する発言をしてしまい焦る誠。美穂子は複雑そうな表情でそれを見つめていた。そして、獣医らしい視点でゲイについて語った。

「クマノミの一種は群れの中で一番大きな個体がメス、次に大きな個体がオスになりカップルになると言われている。そしてそのメスがいなくなると残ったなかでも一番大きな個体がメスになります。広い海では性別を決めない方がリスクが少ないんですよ。また、同性愛行為は哺乳類でも観測されています。それもいっぱい。人類に近いと言われているチンパンジーでもイルカでも同性カップルが存在すると言われています。生物にとって性別や性愛はそれくらい多岐に亘るってことです」

「それにそういう理屈を抜きにしても私は自分の子供が望む生き方を尊重したいんです。自分にとって大切な人が何をしたいのか、何を欲しているのか、何を好むのかそれを理解したい。理解したうえで本人の希望をかなえてあげたいというのが愛情じゃないかなって」
(おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか)

恐らく美穂子も大地と同じように苦しんだと思う。息子がゲイであるという事実にショックを受けた瞬間もあったかもしれない。でも一番苦しんでいる大地自身の心に寄り添い彼にとっての最善ができるよう心を砕いた。
親子で性別について向き合ってきたからこそ大地は「人を受け入れる」という最も難しいことを難なくやって見せるのではないだろうか。そしてその思いは誠に伝わった。
物語のラスト、誠は大地と共に訪れた雑貨屋を再び訪れる。かわいらしいデザインの小物入れを手に取り購入を決断する。その時、店員から「娘さんへですか?」と聞かれるが「いえ、息子です」と答える。その表情はどこか誇らしげであった。
タイトル回収もありドラマのキーパーソンである大地の過去も明かされた。重要な第三話となった。次回はついに我が推し、東啓介さんが出てくる。大地の彼氏で、両親にまだ自分の性的思考を伝えられていない彼がどんな選択をしていくのか気になるところだ。

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