生きる力 生きる目的

母は脳出血の手術をして回復病院で、脳血管性認知症状と目眩でリハビリどころか食事も採れず栄養補給の点滴も暴れて外す状態で、遂には徘徊(自分でベッドから落ちて這って!)し

半ば強制退院で連れ帰って来たのですが、家に帰っても目をつぶったまま。デイのスタッフからのアドバイスで私が支えて、ベッドやソファに座らせてみてはいても、食事もすすまず

ガリガリに痩せ、まるで生きる屍。このままでは死んでしまうだろう。私は考えました。初曾孫に会わせてみよう。私の次女が出産間近だったのです。が、病院まで35キロも。

誰もが反対しました。長女が気分転換にと車で連れ出してくれた時、いつもより状態良さげだったのに、ほんの少し走っただけで吐き気がして慌てて戻ってきたりがあったのです。

が、どうせ死ぬのなら…決めました。バンの後部席にマットレスをひいて、タオルを敷き詰めたり吐くときのための用具や薬を揃えたり即成の介護移動車作り。準備完了した頃に

陣痛始まったと連絡が!酔い止めを服ませ頭が揺れないように固定して出発。病院に着くと
産まれてました!母の初曾孫!分娩室に入れて頂くと元気な赤ちゃんの泣き声がしてます。

母は車椅子でグッタリしてます。次女に事情を聞いてあった助産婦サンが赤子を抱いて母に見せてくれました。「初曾孫、男の子ですよ〜」母が首を上げて目を開けました。その時!

赤子が曾祖母チャンに右手を差しだしたのです!母が叫びます「アー、カワイカー!
アー、カタメヲ ツブッテ ジーチャンニ 二トー。ワタシニ ダイテッテ テヲ ダシヨル

デモ ワタシハ ビョーキヤケン ウツッタラ
イカン ヨネー」いいですヨ。助産婦サンがカバーしながら赤子を母に抱かせてくれました。「カワイカー ヒマゴチャーン!」

泣きじゃくりながら、大粒の涙を流す母の目に、確かに私は見ました。その目に生きる力
が蘇ったことを。生きる目的ができたことを。
母の現実との闘いが始まったのです。

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