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銀河鉄道999 1巻 第3話 ここまでする毒親

「透明の女 ガラスのクレア」

停車駅 999車内

 今回は星に到着しません。そのかわり999号の内部がいろいろ紹介される面白い回になっています。
 まずは機関車、なんと今何かと話題の独立AI頭脳、絶対ミスを犯さない機関士だそうです。私たち日本人は今までに「絶対」という言葉には何度も裏切られてきただけに、これフラグじゃない?と思ってしまいますね。そして機関車心臓部にはあの有名な「松本レーダー」です。かっこいいですよね。
 次にメーテルと鉄郎は食堂車へ行きます。そこにかいてあるメニューがビフテキやコロッケなのが松本氏の人柄があらわれています。しかしそんなメニューすらも鉄郎には読めません。
 これは若い読者にはわかりにくい表現だと思いますが、松本氏の世代ではレストランといえば庶民が行ってはいけないところという意識があったのです。もし間違えて行ってしまえば自分の知らないメニューしかなく、大恥をかくぞという時代です。ですので鉄郎が銀河鉄道のメニューをすらすら読める事のほうが違和感があると考えたのでしょう。
「ごめんね鉄郎 私がたのんであげる。」
どんな時にもメーテルはやさしいですね。

 999号は小惑星帯(アステロイドベルト)にさしかかっています。そこでは宇宙トンネルなるものがあり、通過中は電気系統が使用不能になるそうです。その影響で食事中に真っ暗になってしまった時、ウェイトレスのクレアという女性に出会います。クレアは機械の体ですが、全身がクリスタルガラスでできています。両親が見栄っ張りでこんな体にされてしまったこと、自分の生身の体を買い戻すためにアルバイトをしていることが語られます。
 子供を自分の装飾品だと思っているのでしょうか。でもこういう毒親が整形をさせたりする様子は現代でも変わりません。程度は違うでしょうが過度に学歴にこだわる親も同じではないでしょうか。

 そして、またしても機械の体否定が展開するわけです。クリスタルガラスの体をきれいだと言った鉄郎に対してクレアはこう答えます。
「そう・・ありがとう・・でも・・私の体はガラス・・光も影も私の体を通りぬけてしまいます。それが私は・・とてもさびしいのです。」
 両親の言いなりで自分の人生に何も残っていない事を、クリスタルガラスの体を見るたび感じていたと思われる言葉です。
 その後宇宙トンネルのもう一つの謎について事件が起こります。それはアステロイドベルトは以前ひとつの星がくだけて今の状態になり、その星の住民の心のエネルギーが不思議な現象を起こすというのです。滅んだ文明の心のエネルギーなんてよくないものに決まってます。そして今の科学をもってしても学説はいろいろあるものの宇宙トンネルの謎は解明できていません。
 そのエネルギーはなんと鉄郎にお母さんの幻影を見せるのでした。「葬送のフリーレン」でも同じような現象を扱ってましたね。
 幻影は鉄郎に取り付き宇宙空間へ引きずり出そうとします。相手が幻影なので鉄郎には抵抗する術もありません。しかしなんとクレアが自ら犠牲となり鉄郎を救います。これで鉄郎の犠牲?となったのはゼロニモにつづき二人目ですね。クレアの体は砕け散り、社内に涙の形をしたガラスのかけらだけが残されます。

 なぜクレアが命をかけてまで鉄郎を救ったのかはあまり語られません。しかしクレアが鉄郎の生身の体に魅力を感じた事は確かなようです。想像するにクレアはクリスタルガラスの体のためにいろいろなつらいこと事があり、最後に鉄郎との出会いが何か心の奥に響いたのかもしれません。鉄郎に生きていてほしいと思ったのでしょう。残念なことですがクレアは死ぬことで親の呪縛からは解放されました。

「宇宙トンネルを人の目で見ることはできない
それを見ることができるのは心だけだ・・」

ちなみに映画版ではクレアは大活躍をします。ぜひそちらもご覧下さい。

 

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