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だから私は折れない

 元旦の日、神社の売店で知らない人たちと談笑する祖父に、私は強い憧れを抱いていた。

 なんでこの世の中って、みんな仲良くできないんだろう。小学生の頃に抱いた一抹の疑問は、年を重なるごとに無理なことなんだと思い知らされた。

 人を虐めてしまったことがある、人に虐められたことがある。
 純粋だがそれでいて陰鬱な学生時代の記憶は、今も尚トラウマとして心の片隅に残っている。

 自律神経失調症と診断された。起きたくても中々朝起きられない。出来ていたことが少しずつ出来なくなってきた。保健室通いの春の季節は、新しい校舎ができるという噂で話が持ち切りだったっけ。
 梅雨、うつ病にかかった。友達や家族から非難された。

 「何甘えて生きているんだ。辛いのはお前だけじゃねえんだよ」 

 気づいたら周りから人がいなくなっていた。
 青春時代、私は一人でうつ病と向き合わなければならなかった。

 当時、孤独だった日々。誰も相談に乗ってくれることもなかったし、誰にも相談をしようとしたこともない。

 ただ、祖父から「お前のことだから大丈夫だろう」と信じてくれていたのが心の支えになっていた。

 そうやって約10年という歳月をかけて、私はうつ病を克服するに至った。祖父に元気な姿を見せれなかったのが心残りだが、私は前を歩む。

 元旦の日、神社の売店で知らない人たちと談笑する祖父に、私は強い憧れを抱いた。

 心をオープンにして人と人の間に壁を作らないその姿勢。無意識に皆が祖父の下へ集まって、にこやかにしているあの感じ。

 あれこそ、現代人の我々がもう一度思い出してみてもいいことだろう。

 子供の頃のあの感覚、忘れていませんか。
 一番大事なこと、忘れていませんか。

 私は祖父のように朗らかでもなく、優しくもないだろう。出来ることも少ないと思う。
 だけど、あの日感じた憧憬は忘れてない。だから私はもう折れない。

#未来のためにできること

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