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鬼子母神の角と『愛の不時着』

昨年末、母と一緒に雑司が谷の鬼子母神堂にいった。
安産・子育の神様である鬼子母神を祀る神社で
個人的に思い出深い場所だ。
母を連れて行ったのには、理由がある。
「この鬼子母神には角がない」という話を
実際に証明するためだ。
そう、この鬼子母神には角がないのである。

鬼子母神は神様とは言え、そもそもは鬼。
インドの夜叉神の娘で
嫁いだのち、多くの子供を産んだが
荒い性分で、他人の子供を奪って喰うため
人々から恐れられていた。
これに胸を痛めたお釈迦様が
彼女を戒めるため、その子を隠すと
初めて彼女は子を失う悲しみを知るわけ。
自分がこれまで食べてきた子供にも親がいる。
そう気づいた彼女は今までの過ちを悔い
仏に帰依し、善神となったとか。

鬼じゃなくなったというわけで、
雑司が谷の鬼子母神は
「鬼」という漢字の“角”がないのだ。

角がとれた鬼

この話、大学時代に聞いていたく感動し、
以来、私のお気に入り雑学のひとつになっている。

母鬼が、子を失う悲しみを知り
角をとって、子育ての神となった話もいいが
なによりイカしてるな!と思ったのは
この神社が、そんないわれがあるなら
うちは「鬼」という漢字から、角をとっちゃうよ!
と、漢字のルールを変えちゃったことだ。

もちろん、ルールや原則を守ることは大事だ。
でも、ときと場合によっては、
プチアレンジによって、
鬼子母神のような素敵な物語ができたりする。

話は変わって。
最近楽しく観ている韓国ドラマがあり、
そこに出てくる派出所所長が個人的にツボだった。
彼は、原理原則主義で、間違っていると思うことは絶対に許さない。
要は融通がきかない、世の中を生きにくいタイプだ。
この手の人が、ヒロインとの出会いにより
自分のルールを少しずつ破り、変化していくさまが
とってもとっても、好きなのだ。

その代表例が、『愛の不時着』のリ・ジョンヒョク(ヒョンビン)だろう。
北朝鮮と韓国の境界を超えてはいけない。
でも、一歩だけなら、ときにいいだろう。
お母さんは子供を守らなくちゃいけない。
でも、一日くらいは、遊びに出かけてもいいだろう。
ガチガチのルールに縛られているなら、
ちょっと破ってみるのもいい。

もちろん、基本的ルールは大事だ。
母鬼のように人のものや命を奪うことは
許されることではない。
でも、人道に反するものでなければ
こうじゃなきゃ絶対ダメ!というものはない。
絶対、ってないよなぁ。

話は戻って。
その今ハマっているドラマで
カタブツ派出所所長が熱血ヒロインと行動をともにするうち、
彼女に似て、無謀な、バカなことをしていく姿が
とってもよかったのです。
最後の最後は、所長の口から
「バカなこともおもしろかった」という言葉が出る。
それだけでときめいたもの。

だから、鬼の角を取っちゃえ!みたいな発想は
いいなと思う。


所長が出てくるドラマ
『ラブパッセンジャー〜私たちの恋愛事情〜』
U-NEXTにて独占配信中

鬼子母神

雑司が谷鬼子母神堂 公式HPより


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