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終わりが素敵であるように。

以前、華麗に却下されたコラム案がある。
最終回が素晴らしかったドラマについて論じるというものだ。
確かに面白そうだが、ネタバレを嫌う人も多く
最終回を知ってしまったら、観た気になって
逆に観ないで終わるケースも多いのではないか。
そうやんわりとボツにされた。
言われて、納得した。
観終えている自分には面白いネタだが
1話から順を追って観ることに作家の意図があるはずだ。
自分が「やりたいこと」と人が「求めている」ことは、
同じとは限らないと、痛感した出来事だった。

にしても、最終回、ラストシーンには
その作品のすべてがあると、思う。
とくに優れた作品は、その最終回を描くために
1話から、それまでの紆余曲折があったのだと思わされるような、
ラストのたどり着くまでのすべての出来事に意味があるような、
それが感じられる内容になっているものだ。

ネタバレになるので、詳しくは書かないが
韓国ドラマ枠での話になるが、
大好きな最終回が2作ある。
『応答せよ1997』と、『悪の花』だ。
いずれの作品も、最終回のために、
それまでの挫折や悲しみや喜びやなにやらがあったのだと思わされて、
ラストのラストに、ぶわ〜っと何かが込み上げてくるのだ。
一言では表現できないけれど、
様々な過程があったからこその「彼らの今」がそこにあって、
何度観ても、泣くのである。

終わりの設定は大事だ。
終わりが見えないものは、なかなかモチベーションがあがらない。
マラソンでも、仕事でも、終わりがあるから頑張れる。
連ドラや連載漫画の最終回もそうで、
終わりに向かって、物事は展開し、観る側も見守っていく。

昨日のnote「書店で牡蠣鍋、はじめてのおつかい」でも書いたけれど
「お父さんを喜ばせる」という終わり=目的に向かって
幼い子供たちは、ドキドキしながらおつかいの旅に出ていく。
終わりがあるから、その過程が輝いてくる。

話は変わって。
今日は、年に2回開催されている経営者にして教育者、
髙橋俊浩氏が講師を務めるセミナーに行ってきた。
毎回さまざまな“AWARENESS”、気づきをもらう。
ここで、講師がとても面白い話をしてくれた。

激混みの新幹線に飛び乗った。
東京から大阪、2時間半、立ちっぱなしだ。
トラブルがあってクライアントに謝罪に行くためだとする。
終始気持ちはブルー、なんでだよ!ってな気分だ。
同じ状況で、恋人に会いに行くとする。
月に1度、ようやく会える日だ。
ぎゅうぎゅうの社内で、立ちっぱなしもつらくない。
楽しくて、嬉しくて、ワクワクしてたまらないって気分だ。
同じ2時間半、ゴールは同じ大阪、同じ大変さでも
過程がどう見えているか、どう感じられるかは、
人によってこんなにも異なる。
という話だ。

本当にワクワクする目的があるなら
同じ距離で、同じ時間で、同じ大変さでも
それらはすべて、いい意味を持つ。
最終回もまさにそうで、
終わりに喜びや幸せがあれば、
たくさん傷ついても、たくさん苦しんでも、
すべての出来事に意味があったことを知り
過程が輝いて見えてくるのだ。

今年の年始の箱根駅伝で、
青学のある選手が走り終えたあとにマイクを向けられ
「楽しかったです!」と笑顔で話していたのが印象的だった。
勝っても負けても、過程を楽しかったと思えるって素敵だなと感じた。
(彼らは優勝したわけだけど)

結果がすべてではないけれど、
どんな終わりを思い描いて、行動しているかで
どんな失敗があろうが、挫折があろうが
すれ違いや誤解や別れがあろうが、
過程の感じ方は変わってくる気がする。
『応答せよ1997』や『悪の花』の主人公たちが
どんな終わりを思い描いていたかはわからないが
作家自体は、明確なラストシーンを描いていたのだろう。

私の場合、仕事で原稿を書くとき、
この作品の、こんな魅力が伝わるといいな、
読んでくれた人が喜んでくれるといいな、
そんな終わりを思い描きながら、書いている気がする。

仕事だけでなく、子育てでも、推し活でも、
「ここまでに、こんなふうになりたいな」という
理想のゴールを思い描き、
そのためにさまざまな行動を積み上げていく。

某アイドルが、たとえどんなことがあった日でも、
毎日「あぁ今日も楽しかった!」と口にして眠りにつくと言っていた。

どんなに大変な一日も必ず終わる。
どんな大変な仕事も必ず終わる。
終わりが良い気分であるように
過程を味わえるといいなぁ。
終わりよければ、すべてよしというけど
ほんとうに、終わりは大事だと思う。

『悪の花』U-NEXTほか配信中

https://www.netflix.com/watch/81357270?source=35

『応答せよ1997』
U-NEXTほか配信中





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