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エロい下着を敢えて着ること。5/11

違う。

注文していた内容と違う。
私はフォーを頼んだはずだ。

届いたのはガパオライス。

そういえば最初から嫌だった。

いらっしゃいませも
声が小さかった。

値段も1180円とか1292円とか
なんかどれも微妙。

味も微妙である。

ごはんもパサパサだし。
店内の音楽も微妙だ。

イヤホンを付けて、
RCサクセションを聞く。
「ぼくとあの娘」

あの娘は泣き虫で、

とっても似合いの二人ではないか。

結局文句の何一つ言えず、

惰性で食うガパオライス。



小さいころからおとなしくて、
ビビりで、
泣き虫だった。


だから電車が嫌い。

列を抜かされる。
足を踏まれる。

そんなことされても
全く怒れない。

内心「クソ、クソ、クソ。」

と繰り返す。

ある日友人がビールサーバーを
購入したことを自慢してきた。


「ビールサーバーがあるだけで

嫌なことも忘れられる」


、、、らしい。


いいな。自分もそういうのほしい。

ある日通りかかった下着屋で、

かわいらしい下着を見つけた。

値段もそこそこしたが、

かわいかった。

そして何より、

ヒモパンである。

水色レースのヒモパン。

白飯四杯ぐらい、いけそうだ。

張り切って買った。

その日からちょっとエロい下着を
購入するようになる。

黒のtバック、白の穴あきパンツ。

何もない日に着ることによって、

電車で踏まれても、

客に理不尽なことで叱られても

フォーがガパオライスになっても

「まあ、私すげーエロい下着着てるんで」

と鼻で笑える。

「脱いだらすごいんだからな」

そんなことを思いながら、
嫌なことを乗り越えるようになった。

そうするとどうでもよくなって、
幸福度が上がった。

エロい下着を買うと
幸せも付いてくるなんて
これこそ

ハッピーセットじゃん。


ガパオライスを完食し、
会計しようとすると、

「お客さんごめん、フォーだったのね。」

と泣き顔のタイ人が出てきた。

「本当にごめん。」

と渡された紙には次回300円引きの文字が。

なんか思えば、
ガパオライスなかなかうまかったな。

タイ料理屋にしては
掃除が行き届いていた。

添えてあったピクルスも
今期1かもしれない。

値段もこのご時世で頑張っている値段だ。

「マジごめんね。

ありがとうございますう。」

また来てもいいな。
なんか今日いい日だったかも。

どれもこれも
エロい下着のおかげだな。

今日はアイスでも買って帰ろう。
握りしめた300円引きのクーポンと、
芯のない自分を愛おしく思う、

5月の午後6時はまだ少し明るかった。


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