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その夢はもう叶っているかもしれないし、まだ叶ってないかもしれない、というお話


みなさん こんばんみ!

Dream Ami だよ!

嘘だよ!!!

・・・・・・・・。

さて、気を取り直して、今回、僕がみなさんにお届けするのは

ひとつの夢を杖にして歩き続けてきたひとりの青年の物語です。

そして、これはきっと僕や君の物語でもあるかもしれない…。

なんて、気障なことを言うのはこれくらいにして、

早速、物語のはじまり、はじまり

↓↓ここから本文↓↓

時は、今から遡ること30年以上前の

1990年

青年は

ホモ※

だった。

※当時はLGBTQなんて言葉はまだなくて、同性愛の男性はホモ(モーホー)かオカマと呼ばれるのが相場だった(ミスターレディとも呼ばれていたが、この呼び名は確かミスターチルドレンの登場によって消滅した)

あわせて、当時は、エイズがまだ不治の病だったこともあり、同性愛者に対する偏見や世間からの風当たりも今よりもずっと強かった。

そんな年のある日、中学生だった彼はうっかり同じクラスに好きな男の子がいることが同級生のみんなにばれてしまい、男の子たちにさんざんからかわれた挙句に、その好きになった男の子から、面と向かって

「気色悪い。」

と言われて、さらに自分の生徒手帳をダストシュートに捨てられてしまうというドイヒーな失恋体験をしてしまう。

「僕は気色悪い・・・。」

「僕は汚い・・・。」

「僕はダストシュートに捨てられるゴミ・・・。」

苦すぎる初恋の結末に、彼はショックのあまり、その晩、自殺を図る。

しかし、彼の異変に気づいた父親のおかげで本当に間一髪のところで彼は一命を取り留める。

どうして間一髪だったのが分かったかというと、彼が前世の記憶と一緒に意識を取り戻したからだ。

その前世では彼はどうやら

たよ子

という名前の女性だったらしい。

前世の自分(彼女)は、

ヨーロッパ調の木製の瀟洒なドア

ドアまでの小さな階段

その階段の横に植えられた薔薇の花壇

が特徴的な洋館で愛する夫と仲睦まじく幸せに暮らしていたのだけど、若くして病気で亡くなってしまったらしかった。

そして、今際の際に彼女の名前を泣きながら叫び続ける男性の顔を鮮明に頭に思い浮かべながら、

彼は一度ゴミ箱に捨てたはずの自分の人生をしっかりと生き抜いていくために、ある突拍子のない夢を打ち立てる。

それは、

"死ぬまでにあの洋館を探し当てて、きっと今も悲嘆に暮れているはずの前世の夫と再会するんだ"

という夢だった。

そして、その夢を打ち立てた日を境に彼は大きく変わった。

もうこれまでのように

「自分はどうせフツーの人たちとは違うホモ野郎なんだ・・。」

などとウジウジと悩む代わりに、むしろホモである自分をしっかりとアピールしながら逞しく生きていくことに決めたのだ。

なぜなら、その夢の洋館を見つけ出すためには、とにかくたくさんの人と出会い、そのたびにちゃんと自分のことを説明して、その手掛かりをみんなから聞き出さないといけないからだ。

そして、その後、実際に彼はたくさんの人たちと出会った。

例えば、高校時代、人生で初めて出来た親友の女の子。

雑貨好きという共通の趣味がきっかけで仲良くなった彼女と街の雑貨屋さんを片っ端から巡り回って、そのときにそれまでずっと憧れていたけど近づけなかった

可愛くて綺麗でキラキラとした雑貨たちを実際にその手に触れたときの感動は永遠に色あせることはないだろう。

そして、大学時代にトイレの洗面台の前でさりげなく僕にハンカチを貸してくれたあいつのこと

あのときは、そのさりげない優しさに思わず涙がどんどんあふれてきて、困惑させちゃったよなあ・・・。でも、あいつはドン引きするどころか、僕のあふれる涙をどうにかしようと他の友人たちからもハンカチを借りて渡してくれたんだよな。

そりゃ好きにならないわけがないって。

でもなかなか勇気が持てなくて告白できなかった。

そして、あの日以来、ずっとノン気の男友達として付き合ってきて、いよいよ告白のラストチャンスだと思って臨んだ大学生活最後の夏休みにみんなで遊びに行ったキャンプ場

たまたまなかなか寝付けなかったあいつと僕は、湖を臨む芝生の上で二人きりずっと無言のまま水面に浮かぶ丸い月の光を見つめていた。

あのときの夜の闇の優しさとリーンリーンと鳴り響く虫の声、そして、ドキドキという自分の鼓動の高鳴りと、結局、何も言えなった後のさみしいような、でも、ちょっぴりホッとしたようなギュッと締め付けるあの胸の痛みのこともきっと永遠に忘れないだろう。

そして、大学を卒業して以来50年間、勤め続けた2丁目のおかまバー「大輪の薔薇」の塩沢とき似のママを筆頭とする個性豊かな仲間たちとのケイン濃すぎな思い出の数々も忘れようたって忘れられるわけがない。

そして、最後はやはり大好きだったお父さんのこと

年老いた彼が田舎から僕に会いにわざわざ上京してくれたときに、電車の窓越しに緑がすっかりなくなってぴかぴかで真っ白な高層ビルだらけになった東京の街を眺めながら、

「なんだか何もかもがすっかり変わってしまったなぁ・・・。」

とさみしそうにつぶやくその小さくなってしまった背中を見つめながら、そういえば、子供の頃、彼に

「いつかおまえと酒を酌み交わしながら、ラグビーと女の話をするのがお父さんの夢なんだよ。」

と言われたことを不意に思い出し、

「自分の夢を叶えることは、愛する人の夢を壊すことでもあるのだな。」

と思ったあの日のことも僕は一生忘れないだろう。

205X年

そんな風にとにかく自分の夢を叶えるためにひたすら我が道を貫いてきた彼は、その日も老体に鞭打ちながら、ある情報を頼りに、ひとり街をさまよっていた。

しかし、最近、どうにも調子が優れなかった。ずっと呼吸は浅く、さっきからしきりと脂汗をかいていて、杖を突きながら歩いていた足ももはやピクリとも動かなくなってしまった。

そして、目の前が暗転し、いよいよ万事休す!と彼が思ったその瞬間だった。

先程、出てきた人たちを含めて、これまでの人生で彼が出会ってきた大好きだった人たちの笑顔がぐるぐるとまさに走馬灯のように目の前に浮かんでは消えていったのは・・。

このとき、彼の心には自然と 

「僕がこれまでずっと探し続けていた、あのドアと階段と薔薇の花壇のある洋館というヤツに実はもうすでに僕は出会っていたのかもしれない・・・。」

という気持ちが芽生えたのだった。

「そうなんだ。僕はずっとあの夢の洋館を杖にして生きてきたけれど、きっとそのおかげで、みんなと出会えたんだよな・・。」

「だから、もうこれで何も悔いはないや・・。」

パタッ!

<fin>

とありきたりな話ならここで終わるかもしれないけれど、実はこの物語にはまだ続きがある。

こと切れるつもり満々で路上にぶっ倒れた彼はまだしぶとく生き延びていて、そんな彼が歩道の石畳に右ほほをくっつけながら視線を前に向けると、そこにはまさしく

あの

ヨーロッパ調の木製の瀟洒なドア

ドアまで続く小さな階段

その横に植えられた薔薇の花壇

があったのだ。

「みっけたーーーーーーーーー!」

と絶叫した彼のその後については、皆さんの想像にゆだねることにしよう。

<本当のおしまい>

ちなみに、これは僕の創作(?)でも何でもなく、僕が高校2年の時に出会った「ハッピーエンドの女王©️橋本治」こと大島弓子先生の

「つるばら つるばら」

という漫画のかなり記憶があやしいあらすじである。

なぜ急にこの話を僕が思い出したのかについては割と明確な理由があるのだけれど、どうやら僕の根気が尽きたようなので、その話はまた別の機会に。


















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