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バレンタインデーの告白

バレンタインデーの夜、

息子から告白された。

「僕は勉強も学校も嫌いだ。でも、毎日、勉強だけはやらなきゃと思って、でも結局、体調が悪くなったりしてできないそんな自分に嫌気がさしてきてる」

ってね。

僕が子供の頃に親父に同じことを言ったら、おそらくげんこつを一発脳天に喰らって即終了だっただろうけど、令和スタイル?の僕は何よりも彼がちゃんと自分の気持ちを正直に言ってくれたのが嬉しかったから、息子にこう尋ねてみた。

「じゃあ具体的に勉強のどこが嫌いなの?」

その質問に対して彼はまだうまく言語化できなかったけれど、たどたどしい彼の説明からなんとなくその理由は想像がついた。

要するに、彼は自分が面白くなかったり無意味だと思ったことをやるのにとても抵抗感とストレスを感じるタイプなのだけど、にも関わらず、すんごい完璧主義でもあるから、結局、その面白くないことにめちゃくちゃ時間をかけてしまってそれでくたくたに疲れ果ててしまっているようだった。

だから、僕はその課題の解決策として息子に以下のような提案をしたのだった。

「漢字ドリルとかあなたの嫌いな宿題は明日からお父さんが宿題オタスケマンになって全部引き受けるから、あなたは、算数とか自分が面白いと思うやつだけやりなさい」

すると、息子の表情が露骨に(笑)パァと明るくなって、

「え、いいの!」

と聞いてきたから、

「もちのろんよ!」

とドンと胸を叩いて答えたのだった。

まあ、その一方で、自称高等師範の僕ではあるけど、中長期的な息子の学習方法についても思いを馳せざるを得なかった。

僕だってずっと彼に付きっきりで勉強を見るわけにはいかないし、毎日忙しくしている妻も明らかにキャパオーバーだしね。

そもそも小3から小4の二学期まで体調不良のせいで不登校で、ようやくこの一月から週一から月二のペースで学校に通い始めた息子には、いわゆる勉強をするという習慣がまったく身についてないし、あと知能検査からある種の学習障害の可能性も感じられたからだ。

そこで、まさに苦肉の策というか、突然、僕の頭に今まで全く頭に登らなかったあるアイデアが閃いた。

「そうだ、塾に通わせよう!」

ぶっちゃっけ、塾とか中学受験とかに象徴される、まるで天国へのパスポートを神様にねだるような「お勉強ビジネス」界隈に対して一定の距離を置いてずっと冷ややかな視線を送っていた僕としては本当に我ながら意外な発想だったけど、

何も塾に通うからって必ずしも受験しないといけないわけじゃないし、学校の授業が簡単過ぎてつまんないという彼の知的好奇心はむしろ塾みたいな場所の方が刺激してくれるかもしれない。

というか、そもそも僕自身、子供の頃、唯一勉強が楽しかったと思えた場所は、中学の頃に通っていた地元の小さな学習塾だったしね。

というわけで今頃、きっと恋人たちがレストランとかホテルとかでいちゃいちゃしているだろう、要するに一年で日本人が一番お互いの愛を見せつけ合う記念日に、僕はそんな色気とは無縁に、ひたすら息子の進路について真剣に考えていたのだった。

まあ、これもまたひとつの愛のカタチではあるとは思ってはいるけどね。

異常なまでにワーカホリックなお父さんを見て毎日みんな呆れ果てているだろうけど、君のことをちゃんと自分や他人を幸せにできる大人にするお手伝いをすることは実は僕にとっていちばん大事なライフワークだって思っているからね。

追伸

ちなみに妻からはちゃんとリンツの高級チョコをもらいました。取ってつけたようで申し訳ないけど、ありがとう!愛してるぜ!



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