若草萌蘭

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小説/花暁

 ひらり。ひらり。視界には一面の紙吹雪。ふわり。ふわり。どこからか舞ってきた色とりどりの紙片が少女の鼻先をくすぐった。  それは真冬の黎明。銀世界は朝日を反射してきらきらと輝く。少女の視線の先には、一本の大木と一人の少年が佇んでいた。旭日は彼らの後光となり、その表情は見えない。真白の世界でその姿だけは、黒く濃く、まるで水墨画のような力強さで静かにそこに佇んでいた。  少女は駆け寄ろうと一歩踏み出したが、ぶかぶかの長靴に足をとられ新雪に頭から突っ込んでしまった。刺すような冷気が

    • 小説/雨がやむまで

       それは本当に突然の出来事だった。  今日は久々に朝から晴天で、「どこか出かけようか」「でも気乗りしないなあ」なんて言いながら、結局僕の家で映画を観ることにしたのだ。「もったいないことしたかな」なんて二人で言いながら、まんざらでもない気持ちで画面の向こうのスプラッタな映像を見ていた。  昼食を食べて二本目の中盤に差し掛かったあたりで、にわかに窓の向こうの青空が灰色の雲で覆われ始めた。ゴロゴロと威喝的な音が響き、「そろそろ帰ったほうが……」なんて言いながら、画面の向こうで飛び散

    小説/花暁