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  • 爺娘孫三代エッセイクラブ|北の家族の図書室

    • 33本

    祖父とその娘、孫娘の三代で作られたエッセイクラブ。主に孫娘、初孫アヤメが運営していきます。

最近の記事

季節外れの雪?かと思ったら、木の生命力🌲   

 ここ数日の間、毎日ほぼ同じ時間帯に歩く道がある。北海道庁旧本庁舎、通称 “赤れんが庁舎” 前の通りだ。  現在、この建物は、改修工事の真っ最中。四角い巨大な箱型に足場が組まれ、実物大の赤れんが庁舎が描かれた幕で覆われている。だから、今観光に来ても、見えているのは、絵。  その通りを毎日歩くのは、入院中の父に会いに行くためだ。入院して今日で1週間。私は数日前に実家に駆けつけ、それから毎日通っている。しかし、面会者に与えられる時間は、わずか15分。文句を言うわけではないが、せ

    • 突然、癖っ毛出現

       直毛が自慢の私だった、35歳頃までは。真っ直ぐで、ツヤツヤで、母に三つ編みしてもらおうにも、弾力が強くて纏まらないほど、ビシッとしていた。    しかし、いつしか私の髪は癖っ毛に変わった。うねりはなかなか厄介で、殊に梅雨時の湿気の多い日などは、どんなにしっかり整えても、無駄。ショーウィンドウに映る人の姿を見て、 “あらあら、あの人、髪の毛爆発してるわ。”‥‥ でも、よーく見たら、私!なんてことも。  学生時代の親友は、癖毛にとても悩んでいた。あのシャンプーが良いと聞けば

      • マティス展 〜こんなことってあるだろうか!?〜

         つい先日まで、国立新美術館で開催されていた『マティス〜自由なフォルム』展に行こうか、行くまいか迷っていた。昨年、同じくマティスの展覧会を十分に堪能し、まだ記憶に新しく、つい最近観たばかりのように感じていたからだ。  マティスは色彩の魔術師。色使いが素敵なフランスの画家だ。今回の展覧会は、晩年に盛んに手掛けた切り絵、内装や司祭服などをデザインし、最晩年に注力したロザリオ礼拝堂に焦点が当てられている。  うーん、行ってみたい。でも忙しい。後ろ髪引かれながらも、今回は見合わせ

        • ピスタチオとカントッチョ

           先日、友人と久しぶりに会い、プレゼントを貰った。私の大好物、その名はカントッチョ。  ビスコッティとも言うそうで、結構硬めで厚め、2センチほどの幅で切り分けたようなビスケットだ。嬉しいことにピスタチオ入り。ピスタチオもまた私の好物で、“ピスタチオ入りカントッチョ”なんて、もう、この上ない贈り物なのです。  40年近く前の話。大学4年になる直前の春休み、友人2人と私は、初の海外旅行に踏み切った。それは確か、“ヨーロッパ周遊・学生卒業旅行”と銘打った、有名旅行会社のパッケージ

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        • 爺娘孫三代エッセイクラブ|北の家族の図書室
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        記事

          厳格な義父

           結婚前、夫になることに決まった彼は、「ウチの父は、厳格だ。」と言った。私のイメージする厳格とは、めちゃくちゃ厳しくて頑固一徹、昭和のこわーい親父さん。 「わーどうしよう。」でも、お義父さんと結婚するわけじゃないし、大丈夫、と思いながらも、こわいなと少しだけブルーな気分だった。  しかし、初めて会ったその日に、イメージは180度ガラリと変わった。とにかく、とてもとても優しいお義父さんだったのだ。  待てよ、彼は確か“厳格”と言ったよね。でも、そうだ、彼は理系、完全理系男子、

          厳格な義父

          ちょっとだけ大きめのミッキーマウス

           いわゆる“キャラクター好き”は、キティちゃんに始まり、ミッキーマウス、スヌーピーと、ぬいぐるみ好きと平行して、私の人生60年、間断なく続いている。今で言う、どっぷりと“沼にはまる”ほどではないのだけれど、いつも体のどこか、あるいは持ち物に、彼らは居る。  私は高三、確か夏休み。兄がアメリカへ旅に出る前に、「お土産何がいい?」と聞くので、間髪入れず、高速で答えた。 「ちょっとだけ大きめのミッキーマウスのぬいぐるみ!」  まさかの高三です、高三。でも、ミッキーだったんです

          ちょっとだけ大きめのミッキーマウス

          従兄弟のヨシ君

           先日、久方ぶりに従兄弟のヨシ君に会った。何年振りかも分からないほど、我々はずっと会うことがなかった。  ヨシ君は6歳年下。野球に夢中だった。高校では甲子園を目指し、親戚一同、彼の活躍を応援していた。甲子園の夢は破れたが、心底野球に打ち込んでいたことは、疑いようがない。クリクリ坊主頭の、野球少年だった。  私が小学六年の時、我々家族はヨシ君の住む街、札幌へ引っ越した。比較的近くに住んでいたので、当時はかなりの頻度で会っていたと思う。ヨシ君には2歳上の姉がいて、我々兄妹、ヨシ

          従兄弟のヨシ君

          エッセイクラブ誕生秘話とその前身

           とにかく書くことが好き、というわけでも、本が好きで暇さえあれば読んでいる、というわけでもなく、活字とはつかず離れずくらいの関係だったのだが、この3月、思いがけず、“家族でエッセイを書く”、というクラブ活動を始めた。  このクラブ開始に関しては、姪であり、このクラブの運営者である、初孫アヤメさんが、その新作『90歳越えの祖父を巻き込んで、家族で「noteエッセイクラブ」をはじめた話』の中で明確に説明してくれている。まさにその通りであり、ちゃんとしたためてくれて、ありがとうの気

          エッセイクラブ誕生秘話とその前身

          アイドル引退

           春まだ早い北国の三月、三十年間続けてきた塾講師を、父は引退した。何かを三十年間続けること、それ自体は特段珍しいことではないかもしれない。しかし、父の場合は、六十歳から満九十歳を迎えるまでの三十年間だから、我が父ながら頭が下がる。  塾の最終日が決まった時、必ず成功させたい、その日、その時を少しでも良いものにしたい、私はそう考えた。  とにかく、先ずは体調面。ほぼ全て、これが鍵を握ると言っても過言ではない。しかし出来ることは、いつも通りを心がけるより他にない。  母は癖っ毛の

          アイドル引退

          赤いちゃんちゃんこ

           もうすぐ私は還暦を迎える。還暦というと思い出す、懐かしい光景がある。父方の祖母の還暦祝いの日の姿だ。  私たち家族は父の運転する車に乗り込み、父の弟、つまり私の叔父の家に向かっていた。その日、祖母の還暦祝いが行われることになっていたからだ。父の兄弟は長男の父を含めて五人。姉、弟二人、妹一人。皆がそれぞれの家族を伴って集まった。あの時、私は何歳だったのだろう。おそらく四、五歳の幼稚園児だったように思う。引っ込み思案の私は、あぐらをかいた父の足の間にちょこんと座っていた。女性

          赤いちゃんちゃんこ

          女性視点、男性視点、そしてたくさんの異なる視点

           私はもちろん、自分の視点で文章を書く。先日は『つばさ』というタイトルで、女だからと性別だけで決めつけられることに不満を抱いていた、少女時代のことを書いた。それを読んだ九十歳の父が、ふと、話し始めた。  「戦時中は、男子はみんな軍隊に入ったんだ。徴兵検査を受けて、多くの若者、学生も、戦地へ赴き死んでいった。自分たち子どもだって、もうすぐみんな兵隊になる、男はそれが当たり前だったんだ。」父はただ、そう言った。  もちろんそれは、知識として理解しているつもりだったが、父の口か

          女性視点、男性視点、そしてたくさんの異なる視点

          未遂事件

           私の生まれ育った実家に残る”重大な”事件について記そうと思う。まぁ、既に60年近く経過して、とっくに時効だけれど。  これは、元々私の記憶の中にはなかったはずなのに、幼い頃より今に至るまで、幾度となく繰り返し聞かされてきたので、まるで自分の記憶のように頭の中にインプットされている。  私は2歳。いつものように、今日も父、兄と連れ立って、駅へ向かった。当時、新聞記者であり、この町にある新聞社の支局長だった父は、記事を書くと駅からその原稿を送っていた。今のように、インターネット

          未遂事件

          花嫁のチカラ飯

           朝からほとんど何も口にしていない。食べ物が喉を通らない。緊張のせいなのか、嬉しいとか悲しいとか、そんな感情のせいなのか。わからないけれど、食べられない。今日は私の嫁入りの日。結婚式に披露宴、さらには二次会が予定されている。一世一代の晴れ舞台。でも、何も食べられない。  結婚式の花嫁というのは、例えるなら『一日アイドル』だ。重たい花嫁衣装に身を包みながらも、辛いなんておくびにも出さず、とびきりの笑顔を振りまくのだから。しかし私はと言えば、なかなかエンジンがかからず、それどころ

          花嫁のチカラ飯

          素敵なニュース

           お昼過ぎのテレビ番組に、地方局からのニュースの時間がある。全国放送では普段取り上げられないような、地方色豊かな情報も発信される。数日前の4月初旬のこと、その日、私の目はテレビ画面に釘付けになってしまった。  青森局からだった。青森県鶴田市の『ツル多はげます会』のメンバーが、入学、進学のこの時期に、五年ぶりに地域の小学校に集結したのだという。この会、『ツル多』『ハゲます』という名前からお察しかもしれないが、頭にあまり毛のない方々の集まりなのだ。皆さん、そのつるっとした頭に、

          素敵なニュース

          『持つべきもの』

          『持つべきものは友だ』とは昔から言われる言葉だ。実際、窮地を友に救われて、心底そう感じたことは、人生を重ねると、一度や二度ではない。  五十を超えた頃から、友人と旅に出るようになった。年に一、二度だが、まるで学生時代に戻ったかのようだ。自分たちの好きな事のためだけに時間やお金を費やす。非日常と自由を満喫する。子どもじみた事に目を輝かせてみたり、かと思えば、急に何歳も歳をとって年相応の顔をして、ちょっと高価な土産物と睨めっこしたり。そんな七変化も楽しむ  昨年は、初めて北陸新幹

          『持つべきもの』

          エピソード

           特定の仲間、それも、例えば親戚とか、古い友だちとか。少し長い時間を共有したことのある仲間が集まれば、必ずこの話になる、そんなお決まりのエピソードをひとつ。  もう二十代後半にさしかかる息子たちが、幼稚園に通っていた頃の話だ。みんなで餅つきを楽しみたいと、有志の親たちが集まって、計画を立てた。 「餅米は何キロ?」 「餅米って蒸すんだよね?」 「大きなセイロ、誰か持ってる?」と、膝突き合わせてわいわいと計画を立てるのも、こんなイベントの楽しみの一つだ。杵と臼は区民センターから

          エピソード